紙の本
『ぼくらは、まだ少し期待している』
2023/10/24 20:33
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
札幌の私立高校に通う3年生の土橋輝明
成績はトップクラスで、ある事情で高校生ながら資産もある
同級生の秦野あさひに呼び出され行方不明の弟について相談された輝明は、冷たくあしらってしまったあさひが失踪したのを知り、異母弟の吉川航とともにあさひを探しに東京へ行く
ひと夏の冒険の果てに輝明が手にした“探し物”は……
〈当事者になるか、ならないか、それが問題だ。〉p.142
身勝手な大人に傷つけられた子どもたちの喪失と再生の物語
『氷の海のガレオン』『悦楽の園』「マイナークラブハウス」シリーズの著者による10年ぶりの新作長編、2022年10月刊
《輝明の冒険は、理不尽に打ち勝つ方法をタフに考え続けるためのヒントをくれる。そしてそれは、時に絶望的に思える未来に、どうにか「期待」し続けるためのヒントになる。》──「神奈川新聞」書評(2022.12.28)
広げたカバーの美しさが結末とシンクロして、しばし見入ってしまう
紙の本
明るく逞しい主人公たち!
2022/12/07 21:15
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
初読みの作家さん。流行りの言い方だと「親ガチャ」を軸に、震災やその後の生活、株の取引に振り回される人々など様々な重たいテーマに触れながら、若い主人公たちが明るく逞しく生きてゆく姿が印象的です(毎日新聞「エンタメ小説・今月の推し!」221106)。
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前の世代 次の世代
2023/01/09 11:11
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて読む作家さん。
若い方かと思ったら50歳代。
両親が離婚して父親と一緒に暮らす秦野あさひは同級生の土橋輝明に相談を持ちかける。
母親に引き取られた弟が福祉施設で暮らす若者としてテレビに写ったのだと。母親とも弟とも連絡不通だがなんとか探したい。君の頭脳を借りていい方法を考えて欲しい。
本書の序章は二人が同棲していて、両親に知らせずに婚姻届を出すところから始まる。二人はカップルだが両親とは何か訳があって不仲な事情がある事を知った上で、二人の物語を読み始める。
両親のネグレクトが主題だが、話の重さに似合わない沖縄の離島のリゾート地が舞台になったり落ち着きの無い小説に感じた。
ただ前の時代よりマシな今があり,次の世代が今より良いのだったら、期待できるこれからがある。
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自分はまだ第三者かもしれない。
前半は2人の会話のリズムに違和感があって、正直あまり楽しく読み進められなかった。
でもいつの間にか気にならなくなって、最後はその会話がすごく愛しく思えた。
分かってしまった事は、自分は今だに大切な人に対して第三者なんだろうと。感情を素直に出せなくて自分の感情を嘘っぽく思う所があって、寄り添っている振りをしてるだけなんだなと。分かってしまって切なくて寂しい気分になった。主人公みたいにしたいと思った事を出来るようになりたいな、心から。
虐待の話は別の本でも、何回聞いても、辛くなる。実際に受けていた側よりも、兄弟が酷い扱いを受けているのを見ていた側の方が回復が遅いと言うのは、衝撃を受けた。やっぱり人には優しさがあってそれを出せなくて、攻め続けてるけどそれも出せなくて。まっとうな感情を抑えつけられると壊れてしまうんだろうなと思った。想像するだけで息が苦しくなる。
人の嫌な部分が見えて辛くもなったけど、次の世代が良くなるように生きた人に会えて、それが世間一般からしたら足りなくても、それってすごい事だと思った。何だか自分の言葉が足りなさ過ぎて、うまく伝えられなくて悔しい。
それから、久しぶりに紙の本を読んで、やっぱり良いなーと思った。読んで良かった。
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先日、『ねこの小児科医、ローベルト』という絵本を読んで、その作者の木地雅映子さんを調べていたら、町田そのこさんがお薦めしている著作があるということで読んでみました。
それぞれの理由で、親に傷つけられ、もう期待をしていない高校生が、自分の力でもがき、抗い、成長していくお話。暗さも内包されていますが、暗さよりも若者の、工夫して生き抜く等身大の力から感じるエネルギーに満たされていて、楽しく読めました。
読み始めは、いわゆる現代の子が使う独特な言葉や、オタク言葉だらけの会話にもやもやとし、ついていけないかもと構えましたが、そのうち、その言葉遣いも、彼らの個性の愛らしさを増すものと感じられるようになりました。
児童自立支援ホーム、東日本大震災の話も絡んできます。虐待を受けた人、PTSDに悩む人が実際にどんな事に苦しみを感じているのか、作品自体はフィクションですが、その部分はルポのように、生の声を聞いているようでした。
○主人公輝明の母の言葉
「どんな時でもテルの決断を尊重する。ただ、苦しくなったときに「大丈夫だから、気にしなくていいから」って、あさひちゃんを蚊帳の外に置くことだけは、絶対にやっちゃだめ。それは相手を心配させまいと思いやっているつもりで、実際は自分のプライドしか守ってないの。話し合いなさい。二人で、どんなときも、どんなことでも。それだけ約束してくれたら私の子育ては完全に終了するから。」
○前の世代よりも今の世代が、今の世代よりも次の世代が、ほんの少しでも良くなっているのなら、それ以外の事は、割と何でも良い。あの人は自分(の人生)よりも、自分の娘の人生を豊かにすることに成功した。そうやって俺の手に届けてくれたんだから、安全圏から感謝するくらいのことはしてもいいのかもしれない。
読み応えがありましたが、家出をしたあさひが東京でどんな日々を送っていたのか、もう少し知りたかったです。
今までに感じたことのない独特な読後感で、戸惑いもありましたが、読んで良かったと確かに思える一冊でした。
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孤独に生きてこざるをえなかった少年と少女の、魂が出会った――。『氷の海のガレオン』の著者、十年ぶりの新作。町田そのこ氏推薦。
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家族に問題を抱え、失踪してしまった腐れ縁の女子生徒の行方を追う男子高校生が主人公の小説。
タッチは軽いが、児童虐待などを取り上げた重くて深い内容で、刺さる人には刺さるのかもしれないが、文体というか、登場人物のキャラを含む小説全体のノリが自分にはちょっと合わなかった。
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北海道の進学校の3年生、輝明。同じ高校のもう一人の秀才ひかりとは、学校の行事などで何かにつけて引っ張り出される。そんなひかりから相談を受け、その内容にたじろぐ。そして、翌日ひかりは姿を消す。輝明の異母弟の航とともに、夏休みを使ってひかりを探し始める。
登場するほとんどが何らかの問題を抱えている。育児放棄・ネグレクト・家庭内暴力などなど。とんでもなく暗くなりそうな内容を支えるのは、輝明の知性と航の明るさだ。そして、しょうもない親がいる一方で、無償で手を差し伸べてくれる明るい大人たちもいる。ぜんたいとしては、かなり特殊な環境下の高校生たちなのだが、ある意味平凡ともいえる輝明たちの未来に「少し期待」できた。
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新感覚な読み心地だった。
町田そのこの帯に惹かれて初めて読んだ作家さん。
冒頭の前口上の小気味よい文章でグッと掴まれたと思ったら、随所に散りばめられている現実的な事象や問題。それによって単純な読む楽しさだけではなくて、ドキュメントを読んでいるようなリアルさを感じさせて遠い世界の出来事ではないように感じさせてくる。
「家族再統合」というような知らなかった知識、家族神話のようなものからの脱却と、だけれでも捨てきれない親への期待とそれを経た上での良い意味での諦めと断絶、冷静な主人公が巡り巡って辿り着いたシンプルな愛情、そして予期していなかった人物との邂逅で生み出される濃密な時間。本当にたくさんの要素が詰め込まれていて、安易にジャンル分けできない何層にもなった面白さにのめり込んだ。
読み終わった後にはタイトルがグッと印象深いものになっていた。
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10年近く前、2013年のひと夏の少年少女たちの経験が中心になっている物語。親による身体的やネグレクトなどの虐待を受けてきた彼らが立ち向かい乗り越えていく。
まったくゲームをやらないんだけど、どこかゲームやアニメのような世界観が気になる。主人公の輝明とあさひの会話もその世界の人たち、あるいはその世界を信奉するオタクな人たちのような口調になっているのはなぜだろう。北海道から首都圏の自立援助ホーム、そして沖縄へと舞台が移っていくのもどこかゲームでステージが変わっていくのと似てないだろうか。
たぶん、中心的に描かれているのは虐待に遭った子どもたちの大変さなのだろうけど、その一方で、人と人のかかわりみたいなことも考えさせられた。
頭脳明晰で物事を判断するには余計なものを省いて効率的にジャッジすることをよしとしてきた輝明が、途中から傍観者にしかなっていないことを指摘され、(たぶん)変わっていく。
あわせて、現代(2020年代のコロナ下)であさひとの結婚を決めた輝明が母親に言われる「苦しくなった時に『大丈夫だから、気にしなくていいから』って、あさひちゃんを蚊帳の外に置くことだけは、絶対にやっちゃだめ。それは、相手を心配させまいと思いやっているつもりで、実際は、自分のプライドしか守ってないの。話し合いなさい。二人で、どんな時も、どんなことでも。」(p.339)ってところも、けっこう響いたなあ。
相手のためによかれと思ってかカッコつけてか、相手が求めない対応をしてギスギスした関係になることってわりとある気がする。虐待もいってみればかかわりがゆがんでのことだし、人と人がかかわっていくのって難しい。素直にありのままにというのが理想的解なんだろうけど、それがまた難しい。それでも人と人のあり方に「ぼくらは、まだ少し期待している」って感じ?
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高校生の青春ものかと思っていたら、子育てに関わる虐待もの。
突然姿を消した友人を探して東京、沖縄と旅する主人公。それは家出した彼女を探す旅であるとともに、閉ざされた自分の心を開く旅でもあった。偉そうな高3の主人公だが優しさも秘めていて、不器用な彼が素直な気持ちになって通じていないアイフォンに告白するところが良かった。
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同学年の腐れ縁であるあさひが家出した。輝明はその行方を探し求める。
なんらかの理由があって親元から離されて施設で養育されざるを得ない子供たち。家出したあさひの複雑な家庭環境、とりまく大人たち、養育を放棄した親たちの状況。
考えさせられる一冊。
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町田そのこ、につられて読んだ。
出だしはよかったけど後半の内容のシュールさと文章の軽さに気持ちがついて行かず、流し読み…
結末も悪くはなかっただけに残念。
虐待の連鎖とか家庭の複雑さとかに加えて株やら投資やらで無駄にお金のある主人公が高校生で、佑荘の人たちや沖縄編あたりで挫折した。
よかったキャラはお母さんの夕子さんくらいかも。
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中盤から、先が気になって、一気に読了。
ただ、内容については、自覚症状のない親による児童虐待が続き、それに対するカウンセラー的なアプローチが押し付けがましく、ちょっとしんどかった。読み口は軽快で読みやすかったし、適度にハラハラしたアドベンチャーしていて、面白かったが。
でも、若者たちが自分たちの弱さと向き合いながら、助け合いつつ、傷みを克服していくのは心地よくもある。
主人公の弟、航がいい。
こういうストレートな思いを持つ友人がいたら、誰もが助けられるのではないだろうか。
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意外や経済のこともわかるラブストーリー。北海道〜東京〜沖縄と舞台が変わり、かつ登場人物も多く複雑だが個性が粒立っており混乱はしない。
精神疾患の描写がライトで物足りなさを感じなくもない。