読割 50
電子書籍
持続可能な魂の利用
著者 松田青子 著
「毎日会社に行くたびに思うんです、わあ、なんだ、このおっさん地獄は、って」。会社に追いつめられ、無職になった三十女が、女性アイドルに恋して日本の絶望を粉砕!? 新米ママや...
持続可能な魂の利用
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持続可能な魂の利用 (中公文庫)
商品説明
「毎日会社に行くたびに思うんです、わあ、なんだ、このおっさん地獄は、って」。
会社に追いつめられ、無職になった三十女が、女性アイドルに恋して日本の絶望を粉砕!? 新米ママや会社員も連帯し、「地獄」を変える賭けに挑む。世界幻想文学大賞受賞の著者がおくる、最強レジスタンス小説。
〈解説〉松尾亜紀子
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紙の本
男性社会と女性との感覚のずれガストレンジ
2023/08/23 08:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:天使のくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
松田青子の初の長編である。あいかわらず、ストレンジな話である。
『スタッキング可能』以降、男性社会との感覚のずれという形で、そのストレンジさを描いてきたといえる。そして、この作品では、おじさんと若い女性という対比で、そのことが示される。なんといっても、エピグラフからして、「少女革命ウテナ」である。
続いて、最初のシーンは、おじさんから少女たちが見えなくなるという現象が起きる。少女にとって有害でしかないおじさんから見えなくなるというのは、なかなか理想的なことなのだろう。
ところが、話はそう単純ではない。主人公の敬子が日本に戻ってきてはまるのは、欅坂46なのだから(いちおう作品の中では、固有名詞は示されていないけれど)。欅坂46は、秋元康がつくった女性アイドルグループの1つ。AKB48に代表されるこれらのグループは、まさにおじさんによってつくられた商品であり、実際のところ、持続可能どころか魂は消費されている、とでも言っておけばいいのだろうか。そうであるにもかかわらず、笑わないアイドル、とりわけセンターの平手友梨奈(という固有名詞ではなく、××となっているけれど)にひかれていき、コンサートにまで足を運んでしまう。そこには、おじさんによってつくられたものであるにもかかわらず、おじさんを裏切るような存在になっていく痛快さがあるのだろう。
ちょっと話はずれるように思われるかもしれないけれど、女性の生きにくさの事例の1つは満員電車での痴漢による被害だ。実害だけではなく、男性社会の痴漢被害に対する思いやりのなさというのも問題だ。という話は、ツイッターにはいっぱいアップされているのに、痴漢の被害にあいやすいような制服を強制しているということに対しては、あまり批判されていないような気がする。というか、あまりにもあたりまえ化しているものは批判されないのだろうか。学校は痴漢の共犯者なんじゃないか、と思うのだけれども。という点では、松田はこの作品の中で制服についてもしっかり批判している。欅坂46もまた、制服をしっかり着ているのに。AKB48と同じようでいて、しっかり逆転させている存在になっているということか。
結論はというと、おじさんは絶滅していく。まあ、どんなふうに絶滅するのか、女性の持続可能な魂の利用はどうなるのか、というのはまあふせておくけど。
紙の本
私も「おっさん地獄」の一員か
2023/07/03 13:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
男とは、女とは、会社とは、同調圧力とは、といろいろと考えさせられた「スタッキング可能」の作者の作品、ということで、、また、いろいろと考えさせられるんだろうなあ、そうだよなあ、彼女たちから見れば、私も「おっさん地獄」の一員でしかないんだろな