紙の本
何が誠なのか。読めばわかります
2023/08/28 22:01
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
修学旅行の自由時間を使って、生き別れたおじさんに会いに行く高校生の1日を描いた中編。人を食ったような独白形式の文章と、茶目っ気のある軽い会話は「最高の任務」とか「皆のあらばしり」に通ずる良さがありつつ、終盤に明かされるおじさんと会いたかった理由は泣ける。
吃音と孤独と青春がテーマの物語で、短い文章ながらも無駄が無くて、しかも全員良い奴で結構面白くてちょっと泣ける。言いたいことこそ言いたいときに相手の目を見て素直に言えないけど、下手でも伝わる"何か"の尊さを表現したかったんだろうし、それこそがまさに「誠」そのものなんじゃないかと思う。
紙の本
芥川賞受賞には至らなかったが、愛すべき青春小説
2023/08/17 16:21
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第169回芥川賞の選評を読むと、
乗代雄介さんの『それは誠』は受賞作に次ぐ評価を得たようだが、
受賞には至らなかった。
以前にも芥川賞候補となった『旅する練習』がよかったので
それ以降乗代さんの作品に注目していたから
残念というしかない。
この作品は高校生の修学旅行を利用して
かつて別れたおじさんを密かに訪ねていく少年の物語。
その少年と行動を共にする三人の少年。
さらには同じ班である三人の少女。
彼らのキャラクターを巧みに描き分けている。
特に主人公の少年と悉く対決する優等生の男の子がいい。
そういったことから見て、青春小説として読んでも面白い作品といえる。
乗代さんの作品には純文学ぽくないエンターテインメント性が感じられて、
おそらくその点が私の好みでもあるし、
選考委員にはその点を高く評価する人と
作為的とする意見が対立しているといえる。
特にラストのシーンがいい、と高い評価をしたのは吉田修一委員。
「これまでにも数多ある青春小説の名作と並べてもまったく見劣りしない」と、
絶賛している。
乗代さんがこれから芥川賞を受賞するかどうかはわからないが、
これからもこのような作品の系統を書き続けてもらいたい。
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芥川賞候補作。
読み終わって、なんかいいな〜この青春!って感じだった。
修学旅行の自由行動の一日で、同じ班の男女7人の距離が近づいて行く感じがとても良かった。
主人公は最初はめんどくさいやつだな…とあんまり好きじゃなかったけど、読み終わる頃には愛着が湧いていた。
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2023.7.12 読了
最初の方はなかなか読む手が進まなくて。。
でも、後半、特におじさんに会ったあとからがすごく良かった。これがエモいという感情なのかもしれない。小川楓ちゃんと両思いになれるといいね。
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修学旅行の思い出を綴る誠の文章を通して
冒頭のただの文字の羅列だった7人の名前が、自分の友人の如く圧倒的に其々の色を持つようになる。書き手の筆力の凄まじさを感じるとともに、書く行為が自己と向き合う究極の手段となった誠の生い立ちの切実さを感じました。
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高校生のリアルな会話はずっと映画のワンシーンを見ているかのようだった。叔父に会えるのかという引きもあったり、蔵並が間に合うと主張するシーンはあたかも鉄道ミステリーに出てくる時刻表トリックの謎解きのようでもあり、純文学が苦手な人でも最後まで飽きずに読めるのではないだろうか。最後の列車内でもシーンは旅の終わりのホッとする気持ちもあいまって爽やかな感動がこみあげてきた。
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スリルある冒険譚に緊張感が張り詰める場面もある中、青春真っ只中に感情の機微にほっこりと感動もさせられ、色んな感情が湧き出てきた。あくまで主人公が「書くこと」を通じて物語が語られる乗代雄介らしさも凄く良い味を出してして、余韻の残る読後感も爽やかで凄く心地よかった。名作。
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主人公・佐田誠君のちょっとした振る舞いに身に覚えがあり過ぎて、高校時代のあれやこれやを想起してたまらなくなる。現代日本における『ブレックファスト・クラブ』的人間関係はもちろん、「修学旅行の自由行動の一日」っていう設定が余りにも青春で、読了後は確かな余韻。
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こういう冒険譚好きだ。
高校の修学旅行で東京に行くことになった、誠は
ある人に逢いたくて、密かにある計画を自分の中で考えてた。その計画を班員とともに実行していく。教師たちには、バレずに日野市に住む叔父のもとへ。班員たちの絆に涙するし、叔父に逢いたいかった理由とは。第169回芥川賞候補作となっている本作は、心に残る傑作となっています。
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Amazonの紹介より
第169回芥川賞候補作に選ばれた、いま最も期待を集める作家の最新中編小説。修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言われぬ感動がこみ上げる名編。
読んでいて最初に思ったことは、芥川賞候補作っぽくないなという印象でした。あまり文学的な表現を使わず、むしろ親しみやすい言葉の数々を使っているので、個人的には読みやすかったです。
修学旅行の合間に、ある目的のために、主人公たちは予定とは違った行動をとる冒険譚になっています。
全体的に青春小説なのですが、多く青春小説を読んでる身としては、少し物足りない印象でした。
みんな大いに、はしゃぐわけでもないですし、大きな盛り上がるような出来事が多く発生するわけではないので、個人的にそのような印象を受けました。
ただ、それはあくまでも小説としての面白さであるため、それよりも日常的な生活の中で垣間見える場面としての面白さが作品として際立っていました。それにより、より身近に感じる風景を切り取っているなと思いました。
修学旅行での班決めや計画、旅行中では班同士の会話など皆んなが経験したような光景が、小説としては淡々としている雰囲気なのですが、そこに生きる世界観としては日常的でリアルに映しとっている印象があり、絶妙だなと思いました。
また、修学旅行でのイレギュラーな行動をとる場面では、ハラハラ感やドキドキ感があって、冒険心をくすぐられました。大袈裟ですが、先生にバレずに色んなトリックや他の人を共犯者に仕立てたりと高校生たちの行動が面白く見えました。
こういったイレギュラーな行動が、後に大人になって印象に深く残るので、青春しているなと思いました。
果たして「目的」を果たすことができるのか?
個人的には、消化不良な部分もありましたが、当事者同士にしかわからない言葉や表現ああって、これはこれで良かったのかなと思いました。
物足りなさはありましたが、いかに日常的な光景が段々と心に沁み渡ってくるのか、この作品を通じて段々と感じてきた自分がいました。
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修学旅行で、ある冒険を実行する高校生メンバー達。会話が進むうちに、我が子の友人達との会話が思い起こされた。思春期の馬鹿馬鹿しい風景を切り取ったようでありながら、愛おしい時間を彼らと共に過ごし清々しい気持ちになった。
年齢的に青春ものを読むのはキツイなと思いつつも手に取ったが、読後感はとても良い。
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『旅する練習』以来、乗代雄介さん2作目でした。4度目の芥川賞ノミネートも、結果的に受賞に至らず残念でしたが、『旅する練習』の清々しさは好みで、本作は先入観なしに読みました。
物語の語り手は、高二の佐田誠。回想する形で綴られています。複雑な家庭環境の佐田こと〝僕〟は、修学旅行のグループ別自由行動から抜けて、生き別れの叔父に会う計画を立てます。
登場人物も、高二の同じ自由行動グループの男女が中心で、青春群像劇になっています。
元々仲がよかったメンバーではなかったのですが、佐田の生い立ちや過去を知り共有することで、心情が変化していきます。
結果的に男子3名が佐田の傍に寄り添い、女子も協力(口車を合わせ)し、読み手もスリルと背徳感を味わいながら、メンバーに不思議な友情が芽生えていく、その変容が読みどころと思います。
叔父さんの扱いやかなり大胆なことをしている割に軽い(青い)高校生に、少々響いてこない面もありましたが、若者の瑞々しい会話・心理描写は、改めて上手だなあという印象を強くしました。
まだ2作品しか読んでいませんが、乗代さんは登場人物(主人公)に「書かせる」ことにこだわりをもっているのでしょうか? 他作品も読みながら、今後も注目していきたいと思います。
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乗代さん、やっぱりめちゃくちゃ好きかも…
去年読んだ『パパイヤ・ママイヤ』は、実は去年のベスト3として本屋大賞に応募したんだけど、この作品も、青春のまばゆさが溢れていてすごく好き。
高2の佐田くんの、東京への修学旅行の手記。
もったいをつけるような、照れ隠しのような、本当はとても大事に思っていることをさもなんてことないかのように書く、ユーモアの織り込まれた文章がすごくよかった。
急いで読んだから、また本がたまってない時にもっかい読みたい。
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1.感想
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ちょっと、私にはあわなかったです。
非常に読みにくいし、少年たちの会話の流れがとてもわかりにくく、178ページがとてもながく感じました。
冒険感もよくわからず、何がしたいのかもよくわらず、とにかくストーリーに入り込めませんでした。
もう、純粋さとかわからないから、入り込めなかったかもな…
ざんねん。
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2.あらすじ
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修学旅行で東京に行くことになった佐田誠は、自由行動の1日を利用して、日野に住むおじさんに会いに行く計画を立てる。
最初は反対していた3班の男子メンバーが、行動を共にすることになっていく。
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3.主な登場人物
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■3班
佐田誠 目立たないキャラ
井上奈緒
班長、
蔵並研吾
勉強できる、まじめ
大日向隼人
スクールカーストで上位キャラ、サッカー部、王妃
松帆一郎
松、なんらかの障害持ち
畠中結衣
おとなしい
小川楓
明るい、リーダー的キャラ、人気女子
■先生
名取先生 担任
高村先生 細くて美人、女子生徒に人気
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物語としては読みやすい。修学旅行の自由行動日に佐田のおじさんに同じ班の男子が会いに行くという、まだ時間が無限にある若者の時間の無駄遣い行動が瑞々しい。若者の間だけにあるコミュニケーションは自由であり、どんな境遇でもお互いを尊重できる。引率の先生を騙そうとする悪のりも若者の特権だ。そんな清々しい物語のように思ったが、作品自体は技巧を試して失敗した感じもする。分かりやすそうで、きちんと読み解けたか心配になった。