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中井久夫 人と仕事
著者 最相葉月(著)
― 患者にはよく「実験精神」について語った。たとえば、「三日間家に戻ってみよう。三日間なら取り返しのつかないことにはならないだろう?」と提案する。そして、「途中でこれはい...
中井久夫 人と仕事
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中井久夫 人と仕事
商品説明
― 患者にはよく「実験精神」について語った。たとえば、「三日間家に戻ってみよう。三日間なら取り返しのつかないことにはならないだろう?」と提案する。そして、「途中でこれはいかんと思ったらさっさと帰っておいでなさい。まだ少し早いということがわかったから実験は成功さ」「実験に失敗なし」などと患者に告げた。絵や箱庭は患者のことばの添え木となった。
― 「患者とは、あるいは患者も含めて不幸な人とは、考え、考え、考え、考えている者」であり、認知症の人も統合失調症の人もがん患者も、「考えに考えをつづけています」。
― 誰もが病気になりうる存在であって、自分たちにも統合失調症の人たちが示す症状が一過性でも起きることはある。だから治療にあたっては症状よりも患者の健康な部分に光を当て、そこを広げていけばいい。慌てずに患者を見守っていなさい──。この疾病観はどれだけ医療者の意識を転換させ、患者やその家族を勇気づけただろうか。
われわれの世界に数々の知恵と言葉とヒントを遺し、2022年にこの世を去っていった精神科医・中井久夫。著者は『セラピスト』(新潮社、初版2014)以後も中井の聞き書きをつづけ、その生涯と仕事を追いかけてきた。
『中井久夫集』(全11巻)の「解説」を大幅に改稿して本書は成った。1960年代前半、精神科医誕生の前後からその死までを軸に、統合失調症やトラウマ研究はじめ医療とケア、膨大な執筆や翻訳、人との付き合いなどをつぶさに記す。詳細な年表付き。
目次
- 第1章 二つの筆名――精神科医誕生
- 第2章 橋渡しことばとアンテナ問答――臨床作法
- 第3章 詩と真実
- 第4章 考える患者
- 第5章 災害と心のケア
- 第6章 いじめの政治学
- 第7章 災害とトラウマ
- 第8章 有機の人
- 第9章 地水火風になって
- 第10章 認知症と長いたそがれ
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紙の本
はじめて知ることの大切さ
2024/02/19 15:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:バベル - この投稿者のレビュー一覧を見る
中井先生が出版された書籍は多くても、中井久夫先生のことを記した書籍は少ないことから手にしました。そのような意味で中井先生をすることができて良かったと思います。
紙の本
グッド・ドクター
2023/11/05 08:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第11章に、中井久夫の洗礼(2016年5月29日カトリック垂水教会。洗礼名パウロ)のことが記されている。入門講座に月一回通って。
あとがきに、最相葉月が記す。ーおもわず、「先生、私、双極2型の診断を受けました」と打ち明けたところ、中井は一瞬のためらいもなく、「ほう、私と同じです」といった。「え、先生も2型ですか」「私も2型です。2型は休むのが下手でしょ」「ええ、そうですね」「悩みに悩むというところがあるね」
紙の本
中井久夫を知るための丁寧な入門書
2023/10/19 17:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶんてつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中井久夫さんが精神科医になるまでのいきさつから著者との最後の日までが、とても丁寧に描かれている。
著者の最相葉月(さいしょうはづき)さんは、『絶対音感』や『セラピスト』などを執筆した方。
気にはなっていたが、今までその著作を手にしてはこなかった。これを機に読んでみたいと思った。
中井久夫さんと言えば、もちろん精神科医として有名な方。
ただ、本人の著作だけを追いかけていると、中井さんの丸ごとを理解できないと感じてきた。
そんなとき、この本と偶然に出会った。そして、私にとって、とても良い入門書となった。
中井さんをより深く知るために、手がかりとなる記述がたくさん出てくる。
たとえば、「中井久夫には、二つの顔があったといわれる。一つは精神科医としての、もう一つは文学者としての。」という記述。
中井さんを知る人には、当然のことで、よく「いわれる」ことなのだろう。
しかし、私のようなにわかファンにとっては、大きな発見だった。
私は中井さんが精神科医として有名になったので、時事的な話題についても意見を求められて、書き継いできたものが本になったのかと思っていた。
しかし、そのようにして中井さんの本を読むと、見えてこない部分ができてしまう。
それを「二つの顔」の一つとして、「文学者」を「精神科医」と対等に置くと見えてくるものがある。
中井久夫という人にとって、文学的なものがいかに大切であったか。
文学的な考察が単なる感想ではなく、本当に切実なものであったということが、はっきりと見えてくる。
そして、そのような「二つの顔」が必要だった意味も、この本は丁寧に描き出している。
また中井さんの本を読む楽しみが増えた。そう思える良い本であった。