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【播磨国に伝わる巨鹿の怪に、陰陽師兄弟が挑む!】室町時代、蘆屋道満の子孫として民と暮らす陰陽師兄弟。「嘉吉の乱」前夜の播磨国で、異形の式神と彼らが目にした巨大な陰謀とは。
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播磨国妖綺譚の第二弾。読切かと思って手に取ったら思いっきり続きものだった。先が気になります。あまり室町時代にフォーカスを当てた話を読んだことがあまりなかったので新鮮でした。まだ応仁の乱も始まってない頃の話ですが、かなり血腥い感じです。イメージ通りというか。
この話がどういう顛末になるのか、次が出たら必ず読みます。
他の方も書かれてますがネコの神様がかわいい。
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「私は仏の言葉を伝える者であって、自身が仏なのではありません」(p.161)
真言宗の坊主は自身が仏になるために修行するんじゃないんですかね?
絶対者たる大日如来と衆生の間を取り持つ預言者であると自認してる?
まぁ、所詮はファンタジーだし、当たり前に三部作になるようではあるけど、なんだかなぁ、と思う。
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上田作品の中では比較的ほんわかした雰囲気の陰陽師モノ…なんだけれども、明らかに終わってない場合にはタイトルに<上>とか<1>とかつけられないものでしょうか??
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時は室町、六代将軍足利義教の治世(義教は作中で死ぬが)。
薬師・陰陽師の兄律秀と物怪あきつ神の主にて僧侶の弟呂秀が巷に蔓延る怪異と対峙する。
本書で向き合う敵蒲生醍醐は巨鹿の物怪伊佐々王を蘇らせるなど強力な妖力の持ち主。
本書では決着がつかず、次巻へ持越しとなった。
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法師陰陽師の律秀と呂秀、そして式神のあきつ鬼は新たなる敵蒲生醍醐なるものと出会う。全てを呪う蒲生の強力な呪詛の力と闘うべく守り刀を手に入れる兄弟。人の魂を救う刀「水瀬丸」と穢れと禍を祓う刀「薬師神鬼丸」。闘いの行方は次巻に持ち越しのようだ。
足利義教の赤松満祐への冷遇が招いた謀反、史実と伝承、神話が混ざり合って非常に面白い。
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あきつ鬼の本来の姿はどんなものなのか
恐ろしいものだとしても、呂秀たちはもちろんあきつ鬼自身も戻ることを望んでいないように思うから、ガモウダイゴは引っ掻き回さないでほしいな
世を呪うようになってしまった背景を知ると同情心がわいてしまうけれど
まだまだ先がわからない不安な状態で終わってしまった…早く続きを!
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【収録作品】突き飛ばし法師/縁/遣いの猫/伊佐々王/鵜飼と童子/浄衣姿の男
室町時代、蘆屋道満の子孫として民と暮らす薬師の律秀と僧の呂秀。二人は陰陽師でもあり、術者として優秀なのは律秀だが、異形の者が見えて会話できるのは呂秀。呂秀は式神・あきつ鬼を使役している。舞台となるのは、「嘉吉の乱」前夜の播磨国。
敵方登場。
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今回はあきつ鬼はもちろんのこと、
瑞雲(しろね)、慈徳
伊佐々王(いざさおう)」、温羅、蒲生醍醐・・・
たくさん登場しました。
第3弾、いつ出るかな。
マツリカのデジタルペインティング、
あきつ鬼もよかったけど、伊佐々王も良い!
ちゃんと、瑞雲(しろね)もいる!
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失敗して前の巻があるのに気づかずに読んでしまった。でも違和感なく読み進めて、半分以上読んだところで作者紹介のところで気づいた。室町時代、薬師と僧侶の兄弟。淡々と人々に寄り添い、傷ついたり病にかかった人々を助け、妖怪に対処する。途中で急に猿楽の「鵜飼」の話になったりしながら進むのが面白い。いかにも続きがある様子で終わっていて、後も気になるけど、それより前巻を読まないと!
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播磨国の薬師と仏師の陰陽師兄弟シリーズ第2弾。おそらくシリーズ通じてのヴィランとなるであろう強敵蒲生醍醐登場。
短編6編を収録するが、前章を読んでないとよくわからないということは短編というより章立てという感じ。連載物と考えて読む方が良い。この1冊では完結せず、ここから先はシリーズ物として順を追って読んでいく方が良いのだろう。
外伝的な話、「鵜飼と童子」が良い。下手でも好きならやり続ける方が良いというテーマは、今趣味で抱えている忸怩たる思いに沿っていてとてもとても沁みた。
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播磨国妖綺譚 伊佐々王の記
著者:上田早夕里
発行:2023年12月10日
文藝春秋
初出:『突き飛ばし法師』=オール讀物2022年8月号、その他は書き下ろし
山荘まちの図書館・新刊本コーナーで見つけた本。山荘のあるまち(加東市)も、播磨国(播州)の東端に近いところにある(とはいえ北播州と呼ばれるエリア)。地元本かと思ったら、全国的なエンターテインメント作品だった。シリーズ第2弾のようで、第1弾は「播磨国妖綺譚」、文庫化して「播磨国妖綺譚~あきつ鬼の記~」というタイトルになっているようだ。
室町時代の播磨国が舞台。若き兄弟、薬師の律秀と僧の呂秀が法師陰陽師として働き、あきつ鬼という式神を引き連れてトラブル解決をする話。あきつ鬼については、シリーズ第1弾に詳しいと思われるので、次に借りて読むことにする。今回は6編の短編が並ぶ。もちろん、全てがつながる長編小説的な短編ばかり。
最後に本人による註があり、
岡山県に伝わる「温羅(そら)の伝説」と兵庫県に伝わる「伊佐々王(鹿が壺)の伝説」は、どちらも実在する物語だが、本書収録の「緑」「伊佐々王」のエピソードを執筆するにあたり、著者による創作を随所に差し込んだ、とある。
全部で6話あるが、それぞれに一応の区切りはあるものの、最後に大きなおちはなく、なにかが解決した強い教訓話のようにもなっていない。次に続いていくような長編的な、中継ぎ的な小説の臭いも少しした。人と動物の生存の中に発声する環境破壊問題や、大和朝廷と地方という政治や統治に関する現代的な対立なども、少し盛り込んだ構成になっている。
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『突き飛ばし法師』
嘉吉(かきつ)元(1441)年。若き兄弟、薬師の律秀(りっしゅう)と僧の呂秀(ろしゅう)が薬草園(播磨国・構(かまえ))で、法師陰陽師として庶民のために働く。京の陰陽師は宮廷に仕え、地方の法師陰陽師は庶民のために働く。
3人の男が訪ねて来た。一人は平介。少し離れた地の山奥から来たという。普段は田畑をし、必要な時だけ山で鉄をつくる「農人」。製鉄専業はまだ播磨国にはいなかった。鉄づくりは、小鉄(こがね)を川で集め、炉で溶かすところから始まるが、鋤簾(じょれん)で川底を掻き、舞い上がった砂を箕(み)で受けとめて揺すり、小鉄だけ残す作業中、川の中で作業しているみんなが一斉に転び始めるという奇怪な出来事が起きたという。平介も後ろから突き飛ばされた。
何度もされ、作業ができない。悪戯の域を超えて命の危険も。やがて、川の対岸に旅装束のお坊さんが立ち、睨み付けている。ふいに口が耳までさけ、うなり声を上げる。恐ろしくなり、相談に来たとのこと。
2人は平介を助けに出かけることにした。身を守るため、「あきつ鬼」を呼んで同行させることに。あきつ鬼は、かつて播磨国随一の法師陰陽師だった蘆屋道満(あしやどうまん)に仕えていたが、今は呂秀と主従関係を結ぶ式神。呂秀には見えるが、律秀や他の者には見えない。「あきつ」とはトンボの古名。なぜあきつ鬼が新たな主人として呂秀を選んだのかは謎だった。呂秀にも分からなかった。
鉄造りをしている大撫山(おおなでさん)の東側(佐用町)についた。川で押されたけが人に薬を与え、翌日から川へ。すると生臭さとともに謎の突き飛ばしていくものが現れた。あきつ鬼がやっつけると、川魚の死骸が浮いていた。山女魚(やまめ)だった。正体はヤマメか。すると、川の向こう岸に僧衣をまとった者たちが杖を手に並んでいた。今度は1人でなく何人も。その姿は、呂秀と平介には見えるが、律秀には見えない。やっつけようと、あきつ鬼。
彼らに話を聞くと、川で小鉄を取り、近くに炉をつくり、辺りの木々を切り倒して火を使う。木がなくなると炉を捨て、別のところにまたつくる。木がなくなった川は土砂が入って汚れ、山女魚はじめ魚や沢ガニたちが迷惑をしていることが分かった。そこで、作業の前日に川辺で鉦(かね)を大きな音でならし、太鼓を叩く。みなさんは上流へと逃れて。他の生き物たちにも教えてください、鉄づくりが終わったら、また音で合図します、と約束して納得させた。
一件落着したかと思うと、今度は鈴を縫い付けた白い狩衣(かりぎぬ)を着け、烏帽子を被った陰陽師が現れた。都から来ているようだった。そして、あきつ鬼に対し、都に来いと誘う。あきつ鬼は断ったが、あきつなどと弱々しい名前でこんなところにいるのではなく、もっと力が出せるはずだから来いと誘う。私の名前はガモウダイゴだから、その名を呼べ、いつでも現れる、と言って去って行った。
『緑』
科学の目を持った律秀は、何日かかけて鉄造りを観察して勉強した。ようやく満足した兄をつれ、呂秀はたたら場をあとにして廣峯神社(姫路市)へ。実父の蘆屋道延が勤めている。山女魚の一件を話すと、ガモウについて説明した。今の陰陽道は安倍家と賀茂家が覇権を握っているが、安倍は主流が土御門家、賀茂は勘解由小路(かでのこうじ)家と名乗っている。賀茂家主流を支える一派にガモウの名を持つ庶流があったと聞く、と。字は蒲生。
ガモウダイゴが、あきつ鬼は遙か昔に吉備国に生まれたと言ったことも伝えると、吉備四国に伝わる鬼なら備中国の温羅(うら)が有名だと道延。十代崇神天皇の頃の話。
吉備四国が一つで吉備国と言っていたころ、温羅が仲間をつれてやって来た。女子供に手をかけたため、大和朝廷が吉備津彦を派遣して討伐させた。温羅は言う。「我がこの地を治めれば、穢れや禍が寄りつかぬ。我が一族が繁栄するがゆえに、奪われずに済むものや、守られる人々がいる。朝廷にはできぬことを我はやっているのだ。立ち去るべきはおまえたち」と。吉備津彦は勝って首を取ったが、犬に肉を食わせて髑髏にしても、まだ叫ぶ温羅。吉備津神社の御釜殿の竃の下に深く埋められた。でも、まだうなっている。13年後のある夜、吉備津彦の夢に温羅が現れ、我妻、阿曾姫(あぞひめ)に御釜殿の神饌(しんせん)を焚かせれば、これからはこの釜にて吉凶を占ってやろう、と言った。吉備神社は釜で湯を沸かした音で吉凶を占っている。
父は2人に対して、呂秀の身に注意せよと言う。あきつ鬼は、本当はなんでもできる巨大な力を持っているかもしれない。主従関係を結んでいるうちはガモウダイゴに取られないが、呂秀が死んだら解消される。そういって護符を与えた。そして、刀をつくらせ、携えて吉備氏の菩提寺である真蔵寺や、美作の山奥にあるたたら場などを訪ね、鉄と鬼の話を聞いて回れといった。
あきつ鬼は、道満時代の自分の名前を覚えていない。道満以前の記憶もない。道満は都から呼び出された時、あきつ鬼を巻き込みたくないため井戸に封じた。しかし、帰ってきても封を解かなかった。なぜだ?そして、都から来た陰陽師と戦い、相打ちで死んだと言われている。その陰陽師は安倍晴明だとの説もある。
薬草園に戻った2人だが、雷の被害にあい、間一髪で命拾いしたが、呂秀の怪我はひどかった。呂秀は、刀ができるまでに時間がかかるため、あきつ鬼だけ先に備中国に行かせた。刀匠に刀づくりを願う文を携えさせて。
『遣いの猫』
草庵に猫が迷い込んだ。しかし、呂秀だけにそこに神様の姿が見える。瑞雲という備中の西を護る神だった。あきつ鬼が置いていった文を刀匠の青江政利が読み、どうしたものかと判断つきかね、神社に相談にいくと、神様を呼び出すのでそれに従ってくれといわれた。神社に呼び出されたのが瑞雲で、発注した者がどういうものか、暫く滞在して判断することになった。呂秀と律秀はしばらく監視されることになった。2人は燈泉寺を訪ね、武術の心得のある僧侶の慈徳に来てもらい、護ってもらうことにした。
村で疫病が発生した。2人は村人から助けを求められ、慈徳を含めた総力を結集して救済に当たった。井戸水が原因のようだった。雷も疫病もガモンダイゴの仕業か?と疑う2人。
事態は数日で好転し、新たな井戸を掘ることに。瑞雲が地の龍に聞いて適切な場所を教えてくれた。そして、井戸は3つ掘ること、そこに田畑を広げてなにかあったときに協力しあえる体制をつくること、をアドバイスした。
そして、呂秀たちの人柄を見て判断し、刀匠にゴーサインを送る手配をした瑞雲だった。
『伊佐々王』
ガモウダイゴは山奥へと入り、巨鹿を甦らせた。何百年か前に封じられ伊佐々王である。体長6メートルで甦り、さらに大きくなっていった。
何百年か前、伊佐々王たちは森で好きなものを食べて生きていたが、人が田畑にしたため森が減り、人々が作ったものを食べるようになった。人々は穴を掘って罠をしかけると、鹿たちは次々と引っかかった。人は鹿を殺し、吊して烏に食わせた。伊佐々王は森に入って暮らそうと鹿たちを諭したが、従わない3鹿がいて暴れ出した。伊佐々王を含めた4鹿と人々との戦いに。首長は帝に助けを求めた。播磨国から兵が集められ、3鹿は仕留められ、伊佐々王も渓流に落ちて巨大な跡を残し、それが淵となった。しかし、死体は残らなかった。
その跡(淵)から、甦った伊佐々王だった。
薬草園には、慈徳のほか、燈泉寺からあと2人、弦澄(げんちょう)と浄玄(じょうげん)が手伝いに来ている。ガモウダイゴは、物の怪と人とが半々に混じっているのではないか、つまり物の怪が死人に入り込み操っているのかも、などという話で朝餉を終えた。呂秀と律秀は、慈徳をつれて近くの田畑を見回りに出かけた。畑で、草木を食べずに「気」だけが吸い取られている現象を発見した。もしかして物の怪かもしれない。呂秀、律秀は、瑞雲とともに見張ることにした。
伊佐々王が現れた。瑞雲が前面に立って争ったが、形成は不利。そこに、吉備からもどったあきつ鬼が現れ、近くで爆発した炉の炎につつまれながら戦い、持ちこたえた。伊佐々王はとりあえず森へと戻った。
草庵に帰ったあきつ鬼は吉備の話を報告し始めた。刀匠が刀作りを了承してくれたことも報告。しかし、自分のことは何も分からなかったという。もしかして、道満が自分をつくったのであり、それ以前は己を持たぬただの熱の塊、形のない存在だったのではなかろうか・・・道満はなにかの理由で吉備国に行き、そこであきつ鬼の元となった霊と出会ったのかもしれない。あきつ鬼には、火にも耐える鱗があるので、自分はなんらかたたら鉄と関係あるのではないか。吉備は、今は衰えているが、昔はたたら鉄の中心地だったところだし。
『鵜飼と童子』
瀬戸内を巡業する一座で生まれた竹葉は、幼い頃から能楽が好きでまねごとをして舞っていた。舞手たちも面白がって軽く稽古をつけてくれたりしたが、両親が道具や装束をつくる立場であり、舞手でなかったため、舞手にはなれない。大夫に呼ばれ、お前は上手くはないが、下手でもない。しかし、ここでは舞手になれないので、播磨国の寿座に入れ、と言われる。あちらは大きく、舞手も大勢いる、と。
しかし、寿座に入ってもなかなか活躍できない。シテにもワキにも登用されず、ツレにすれずに舞台に上がれないことも。憂鬱になり、律秀に薬をもらったりした。
ところがある時、常磐大夫から『鵜飼』の前シテ(前半の主役)に抜擢される。鵜使いの翁役である。後シテは早変わりではなく、別の舞手である熟練の浦風(うらかぜ)が閻魔大王役をする。浦風が稽古をつけてくれたが、よくはなるが何かが足りないという。竹葉は本物の鵜飼のもとに行って、実際にやってみる。舞はよくなったが、それでもなにかが足りないと言われた。
落ち込んで河原にいると、藤の花が咲いていて、そこに童子がいた。追い掛けて川上へ行く。童子と一緒に舞った。童子は、あと2日、ここに来るという。翌日も来て2人で舞った。そして、最終日である翌々日、童子は元気がなかった。どうしたんだと問うと、自分は子孫を残す役目だけをしたら終わりだという。意味が分からなかったが、やがて黄色い蝶の死骸を見つける。彼は蝶々だった。竹葉の舞を春先からずっと見ていたと言っていたが、蝶々がいた、それだったのだ。鵜飼は、殺生を繰り返したことで、地獄へ落ちるかどうかの話。でも、鵜飼は好きだからしているだけなのに、という思いも込めた猿楽だった。竹葉も、ただ舞うのが好きだから舞っているだけだ、という思いがあった。童子のお陰で、足りないものが補われた気になった。
『浄衣姿の男』
律秀と呂秀たちは、現在の刀づくりの本場である備前を通り過ぎ、備中に。刀の質では、やはり青江派が一番だった。刀は出来上がっていた。呂秀には、90センチほどの刀で、杖のように持てるように鞘に補強がしてある。「水無瀬丸」という名で、役目は人の魂を救うこと。律秀は40センチほどの脇差しで、「薬師神鬼丸」という穢れと禍を���う刀だった。
播磨の草庵に戻り、報告に燈泉寺にいくと大中臣有傳がガモウダイゴについて分かったと言ってきた。都に調べに出していた三太郎が、大中臣信正から話を聞いて戻ったのだった。100年ほど前に死んだ陰陽師の蒲生醍醐だった。当時、武家の力が増して、公家に仕えていた陰陽師を武家もつかうようになった。それをよく思わない公家や陰陽師もいたが、武家にすりよる公家も多く、陰陽師もしかりだった。しかし、蒲生醍醐は正面から武家を批判した。そんな中、裏でこっそり武家に呪をかける陰陽師がいて、蒲生醍醐が疑われた。蒲生醍醐は正々堂々と批判しているのでそんなことをせず、濡れ衣だった。
しかし、首をはねられることに。そして、彼に同調していた公家なども、誰一人として彼を救おうとしなかった。首をはねられる時、「すべてを呪ってやる」と叫んだ。首は荒れ地に埋められたが、その後、復活した。復活を望んだ公家がそうしたのか、最初からしっかり埋めなかったのか。
そんな報告を聞いて、用心しなければと思った矢先、都からとんでもない情報が来た。播磨、備前、美作を守護する大名の赤松満祐の嫡男が、足利に逆らって義教を殺したのだった。赤松は播磨に戻ることに。大中臣有傳と三太郎は京に呼び戻された。これからは、播磨を潰す立場に。敵同士になってしまう。この反逆もガモウダイゴが仕掛けたことなのだろうか。
https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp/digital_museum/legend/story23/
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シリーズ第二巻目。
前作の短編集とは異なり、宿敵「蒲生醍醐」との戦いの序章という感じ。
前巻の時代背景でも感じていたが、本巻のラストでついに「嘉吉の乱」が発生する。
これってもしかして、「蒲生醍醐」と対決しつつ応仁の乱まで行くのでは?
室町時代中期の勉強にもなりそうなので、次巻にも期待します。
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この巻は長編のスタート部分。
【突き飛ばし法師】製鉄の工程で川で砂鉄を採る者たちがなにかに転ばされ怪我する事件が続発。あきつ鬼を欲しがるガモウダイゴなる怪しい人物が出た。
【縁】父の蘆屋道延にガモウダイゴについて相談すると製鉄に関することを調べろ、そして守り刀をそれぞれ打ってもらうようにとのアドバイス。
【遣いの猫】守り刀を与えるに相応しいかどうか呂秀、律秀の為人を見るため猫型神様の瑞雲がやってきた。
【伊佐々王】巨大な鹿の姿をした伊佐々王をガモウダイゴが「この世の敵」として甦らせた。自然を体現する存在と言えるかもしれない。
【鵜飼と童子】伸び悩んでいる猿楽師の竹葉はある日見知らぬ童子と出会いともに舞う。
【浄衣姿の男】ガモウダイゴの正体とおぼしき人物について少しわかる。赤松教康が足利義教を弑逆し、播磨国に戦が起こりそうだ。
■簡単な単語集(第一巻から累積)
【青江政利/あおえ・まさとし】備中国の刀匠。呂秀、律秀の守り刀を討ってもらえるよう依頼した。
【赤松教康/あかまつ・のりやす】赤松満祐の嫡男。足利義教を弑逆した。
【赤松満祐/あかまつ・みつすけ】播磨、備前、美作の三つの領土を守護している忠臣だが足利義教に煙たがられており遠からず罷免されそう。
【あきつ鬼】蘆屋道満の式神。呂秀が使役することになり強大な力をあえて弱めるために「あきつ(トンボ)」と名づけた。どういう理由で呂秀を主と定めたのかは不明。
【足利義教/あしかが・よしのり】征夷大将軍。
【蘆屋道延】呂秀、律秀の実父。廣峯神社に勤める。
【蘆屋道薫/あしや・どうくん】赤松満祐に仕えている薬師。
【蘆屋道満】呂秀たちの血縁、播磨では人気が高い。
【伊佐々王/いざさおう】巨大な鹿の王。かつて人に殺されたが怨霊に近い存在として復活した。ガモウダイゴいわく「この世の敵」。自然を体現する存在と言えるかもしれない。
【温羅】備中国の鬼。吉備津彦に倒された。髑髏になっても叫んでうるさいので吉備津神社の地中に埋められたがついには吉凶を占うようになった。あきつ鬼の正体というわけではないようだ。
【大中臣有傅/おおなかとみありもり】燈泉寺に逗留している。都の星読博士。当初はいろいろ不満があったようだが今は播磨国が気に入っている。
【勘解由小路家/かでのこうじけ】加茂家の主流。庶流の数が増えたので主流は勘解由小路を名乗るようになった。
【ガモウダイゴ】怪しい陰陽師らしき人物。あきつ鬼のことを知っているらしく自分の式神になれとスカウトした。呂秀の母の魂を連れ去った。蒲生醍醐という字かもしれない。真名ではない。記録では南北朝時代の宮中に勤めていた陰陽師で恨みを残す形で斬首された。
【漢薬】生薬、決まり多し。
【吉備】鉄づくりの発祥の地であり、陰陽師発祥の地でもある。
【吉備津彦】温羅を倒した朝廷の武将。
【吉備真備】陰陽師の始祖。
【恐怖】呂秀《人は皆、何かが怖いのです。怖いこと自体は構わない。怖さに気力を奪われ、判断を誤るのがまずいのです》第二巻p.219
【弦澄/げんちょう】燈泉寺の僧。呂秀とは親しい。
【寿座】播磨国の猿楽の一座。座長は常磐大夫。紅扇、白扇、蒼柳、竹葉が所属する。
【理】手順が基本。
【三郎太】大中臣有傅の部下。
【式神】主の好まない行為はなるべくしないように心がける。
【慈徳】燈泉寺に所属するデカい僧。腕は立つ。心やさしい。
【時代】足利義教の時代。
【貞海和尚】師匠。
【浄玄/じょうげん】燈泉寺の僧。呂秀とは親しい。
【しろね】大中臣有傅が飼うことになった猫。当初は瑞雲が憑依していた。
【瑞雲】備中国の西方を守護する神。猫の姿でやってきた。大中臣有傅をあっさり籠絡した。《この都人は、もはや吾が下僕だ。》p.92
【蒼柳】猿楽の寿座メンバー。
【竹葉/ちくよう】猿楽の寿座メンバー。
【土御門家】安倍家の主流。庶流の数が増えたので主流は土御門を名乗るようになった。
【伝承薬】一症状一種類。
【燈泉寺】貞海和尚や滋徳がいる。
【常磐太夫】猿楽の寿座メンバー。
【なぎ】薬草園を手伝ってくれている女人。
【白扇】猿楽の寿座メンバー。
【人】呂秀《でも人は違います。いつも負けています。負け続ける者は己の弱さを知り、他の人にも優しくなれる。》第二巻p.141
【法師陰陽師】役職としての陰陽師でなく市井の呪い師的存在。
【水瀬丸/みなせまる】青江政利が呂秀のために打った守り刀。太刀。人の魂を救う刀。錫杖として使えるような仕様になっている。刀身は魔物が触れるだけで浄化されそうだが、呂秀は抜いて使うことはしないだろうと思われる。
【薬師神鬼丸/やくしじんおにまる】青江政利が律秀のために打った守り刀。脇差し。穢れと禍を祓う刀。
【薬草園】呂秀と律秀が世話をしている。
【律秀】呂秀の兄で薬師、法師陰陽師。見えない人。
【呂秀】律秀の弟で僧侶。この世ならざるものが見える。
【和剤局方/わざいきょくほう】漢薬のテキスト。
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シリーズ二作目にしての長編。
の、序盤、スタートって感じの位置付けかな。
蒲生醍醐のとの戦いがこれから始まってくるのか。
室町時代なんてさっぱりなので、なんのこっちゃなのだけどシリーズを読んで学びたい。
そしてやっぱり律秀と呂秀の兄弟いいなぁ。
瑞雲の猫ちゃんも可愛い。
あきつ鬼、過去が辛いものじゃないといいな。