紙の本
凛とした万葉歌人
2022/08/07 12:24
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
額田王という万葉歌人の名前は憶えていたが、どのような時代にどのように生きたかは、この物語にて、初めて知ることになった。長歌や短歌などの唄は、どのような想いで読まれるのか、あるいはどのような状況で読まれるのか。国が滅び、政は望郷されても、人の口から口へと歌い継がれていく歌は、はかないものであるが、決して消えないであろう。白村江の戦いから、壬申の乱に至る時代の流れに弄ばれるように生きた女流歌人の姿は、凛としていた。
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額田と葛城と大海人
2022/09/03 20:27
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
額田王といえば万葉の歌人として才能にあふれた女性ですが、この本では割と普通の女性として描かれてます。
特に歌が好きでもないです。しかも、色が判別できなハンデを持ってる意外な設定。
デリカシーの欠けた大海人をとっとと見限り、宮女としてバリバリ働いてます。
別れてもまだ自分に気があると思ってる大海人にイラっとし、親との確執にうんざりしたり、娘を心配したりしてます。
結構なページ数ですが、割とするする読めます。新しい額田王像です。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
二人の兄弟の天皇の妻になった女性といして有名です。単に、したたかに権力者の妻になりたかっただけの女性なのか……、又は、子供までなした男性とは純愛だったが、その男性のために、その兄へと、嫁いだのかと思っていましたが、こういう解釈もあるのですね
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万葉の歌人
2024/02/21 20:54
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宝女王(斉明天皇)の宮人として支える額田王はかつて宝女王の息子の一人、大海一王子の妃で娘が一人いる。しかし夫の底の浅さに気付いて別れ、仕事に生きる。采配を振るい、人々を鼓舞する歌を詠む。だが時代は政争と戦乱が起き、額田の人生も巻き込まれる。
著者の額田に関する設定が活きたかどうかはいまいちながら、理性の勝る額田の性格は愛に恋にといわれるよりも面白い。また謎の多い漢王子が魅力的だった。
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長い物語だし、古代のなじみ薄い時代の小説ですが登場人物が生き生きと人間らしく、生き方について自分ならどうするか考えさせられるなど、深く入り込める物語でした。
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飛鳥から近江京に遷都する頃を舞台とする小説は恐らくとても少なくですよね。意欲作だと思う。時代に対する興味と、星落ちてなお、を読んだ印象が良かったので手を取りました。
源氏物語、枕草子と読み進めて、その次の本だったからか、感想としては、額田王の読んだ歌が、もう少し沢山出て来るとよかったかな、と物足りなさを感じました。朝井かまて、さんの、恋歌、と心のでは比較してしまいました。また、次の作品にも期待したいです。
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政と戦。歴史的中心人物:天智天皇や天武天皇の側であまり語られることない活躍した人達の苦悩や葛藤、命懸けの活躍を、額田王が自身の行動力で鍛えられていく洞察力で語られるストーリー。壬申の乱闘う人達の必死さ恐れ怯えや絶望などなど表や裏や内心いろんなことが見事に想像でき、引き込まれました。
貴族の歌人とは優雅に過ごしていたんだろうという印象をガラッとかわった。軍勢の士気を高め一団にするためにとか、後世にあせることなく変わる事なく伝わるからこそ歌、意味を深く理解することは真実により近いのかもしれない。万葉集にも興味がわく。澤田瞳子さんの作品に登場する必死に働く女性にはいつも惚れてしまってます。
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『天の果て地の限り』育ちの私。
え、鎌足って、金髪ロン毛で痩身の優男じゃないの!?ヒゲ生えてるの!?と最初は戸惑いました(おいおい)。あ、キャラクタは割と典型的。隙なく優秀で、優雅で冷たい現実主義の忠義者です。
キャラクタ造形が魅力的だったのは、なんといっても唐への留学から帰国した、鎌足の長男・定恵。聡明でかつしなやか。この人が長生きしていたら、壬申の乱もなかったかも〜。
更に、自由奔放で宝(斉明)にこそ鬼子扱いされながらも至極真っ当で、実は額田が一番信頼していた、漢王子。
あとまあまあ印象的なのは、この度は徹底的にヒール役に設定されていた、傍若無人で横柄で権尽くな讃良(里中真智子『天上の虹』では全く違う)と、宮仕えで育児放棄した母親のせいで不思議なしぶとさのありそうな十市王女かなー。
一方で、母・宝の影に霞んで最期には凡夫と成り果てた葛城(中大兄皇子)と、額田にゃ見限られ讃良にゃ振り回されのどこまでも覚悟の足りないダメ夫振り全開な大海人の兄弟は…このお話では美味しくない役回りでした。
女盛りを過ぎて美貌な訳でもないけど、宮人の束ねとして女だてらに朝廷の中枢に侍る額田王。よりによって《官位十二階》の時代に色盲とは、ホント大変でした。
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しきしまの大和の国は 言霊の幸わう国ぞ ま幸くありこそ
額田王の物語。この壬申の乱は…
大海人王子がこのように描かれるとは驚き。
『天智と天武』をもう1度読み直そう❗️
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飛鳥時代、壬申の乱前後に宮人として生きた額田王の半生を描いた長編小説。
額田王といえば万葉の歌人、その昔大学で万葉集を専門に学んだ私にとっては、歌の詠まれた背景も含めなかなか興味深い作品だった。
人物関係が複雑なため、何度も略系図を見ながら読む。ちょうど読了時に作者のインタビュー記事が新聞に出ていたのだが、主人公についての資料は少ないため、色覚異常という設定を創作したそうだ。先天的な体の不具合を原動力とし、妻であることよりも宮人として生きるたくましさを強調しているところが新鮮。
読後に少し歴史をおさらいし、残された人々のその後を調べてみた。そして、あの讃良王女が後の持統天皇だったことを思い出し、改めて怖さを思い知った。
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飛鳥時代に生きた、額田王(ぬかたのおおきみ)を描く。
「大海人王子(おおあまのみこ)の妻となり、十市王女(とおちのひめみこ)を産む」
という、日本書紀の確実な記録のみを尊重し、澤田瞳子の額田像を作り上げている。
額田をめぐって、天智・天武が三角関係だった、とか、絶世の美女だった、とか、カリスマ歌人だった・・・というのをあたかも史実のように言う人もいるが、実は全てうわさや憶測が後から作り上げた像だ。
この作品の額田は、大海人と離婚したあと、宝女王(斉明天皇)、葛城王子(天智天皇)と、2代の大王(おおきみ)に宮人(くにん)として仕えた。
今風に言うと、シングルマザーのキャリアウーマンだ。
葛城には、女としてではなく、臣下として認めてほしい、と焦るあまり失敗もするが、やがて鎌足にも信を置かれるようになった。
そして、娘の十市が葛城の長男・大友王子の妃となると、大友にも頼りにされるようになる。
記録に名前は残るが特に活躍が描かれたことのない、漢王子(あやのみこ)をちょっと気になる厄介者に、同じく知尊を百済から亡命してきた出世欲の強い頭脳明晰な青年に描き、個性を与えている。
壬申の乱については、今まで天武・持統サイドの視線で描かれることが多かった。
頑張れ!気丈なプリンセス・さららちゃん!!・・・的な感じで。
しかしここでは、讃良は徹底的に大海人を支配する悪女扱い。
対して、今までは、勉強は出来るが人望のない二代目、しかも性格に問題あり、のように描かれることが多かった大友王子が、頑張って臣下を率いている様子が見られて良かった。
額田は、男女は関係ないという信念で、戦の最中も大友たちの側を離れない。
その目によって、近江宮側の奮闘が描かれる。
壬申の乱の進行も、丁寧に迫力を持って描かれていた。
2代の大王(おおきみ)に仕え、自分はもはや過去。
全てを見届けることが自分の務めだったと、来し方を振り返る額田目に映るのは芒(すすき)の波。
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大海人皇子と中大兄皇子、ふたりの皇子に愛された飛鳥の歌人。という額田王のイメージが180度ぐるりと変わった。
戦に付き従い、最前線で歌を詠んで兵士たちの士気を高めたり、馬で飛鳥と近江を駆け抜けたり、宮人として政に関わったり。そうか、この時代の女性って、こんなにも自分を生きていたのか、と。
額田以外の女性たちも、誰も彼もが自分の命の火を熱く鮮やかに燃やしている。
女は弱きもの、男の後ろを付き従う守るべきもの、なんてどこから始まったんだよ、と思わずにいられない。
色鮮やかに、自然や人の心を歌い上げるために必要な目が、その色を感じられなかったという説。なるほどそれゆえの額田の苦悩と、それゆえの額田の宮人としての人生なのか。
壬申の乱前後の、それぞれの中心人物たちの想像もしなかった描かれ方。おもしろい、おもしろい。この時代のことをもっと知りたい、飛鳥にも行ってみたい。近江の宮も訪れたい、いろんな思いがどんどん膨らむ。
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額田王は超有名人だが、和歌を詠むということが
こういった状況で生まれているのが面白い。
長さを感じさせず、生き生きとした描写だった。
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額田王の物語であるのだが、読み終えた直後の感想としては讃良王女の物語を読みたくなってしまっている。
葛城王子、額田王、中臣鎌足ら3人が追い求めた理想を、1人の思いが打ち砕いてゆくという破壊の物語になってしまうから、読後は良くないものになるのだろうけど。
彼女の野望を達成するだけの、ただそれだけに至高の座へと上り詰める物語が読みたくなってしまいました。則天武后に通じる成り上がりとしての物語が読みたい。
額田王たちに対しての敵役としての役割が大きかったための、キャラクターづけだったとの思うのですが、作中で最もぞくぞくしながら読んでいたのは事実。一番、魅力を感じました。
作者の意図したものとは違うでしょうが、そこに惹かれてしまったのでこれはもう仕方がないです。
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長かった~。
政の世界に生きた、一人の女性の物語ですが、この人の目から見た時代のうねりを描いているので、とても興味深く読めました。
仕事一筋に懸命に生きている様子が目に浮かぶようです。
吉年の若さ溢れる一途な気持ちが爽やかでした。
額田王側から描いたものなので、大海人の気持ちが今一つ分からず、唐突に戦が始まった感が否めませんでした。
額田王の歌も、もう少し入れて欲しかったな~。