里見義堯
著者 滝川恒昭
安房・上総を基盤に里見氏の最盛期を築いた戦国大名。庶家に生まれながらも、一族の内乱に勝利し家督を継ぐ。房総の交通・経済の要衝久留里城を本拠に、上杉謙信と連携して江戸湾をめ...
里見義堯
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商品説明
安房・上総を基盤に里見氏の最盛期を築いた戦国大名。庶家に生まれながらも、一族の内乱に勝利し家督を継ぐ。房総の交通・経済の要衝久留里城を本拠に、上杉謙信と連携して江戸湾をめぐり北条氏と対立。下総香取海へも侵攻し、東国の水運掌握を目指した。限られた史料をいかし、「関東無双の大将」「仁徳の武将」と呼ばれたその軌跡と人物像に迫る。
目次
- はしがき/義堯の誕生と房総里見氏(里見氏の本国安房/義堯の誕生/里見一族のあゆみ/房総里見氏の成立と始祖義実/発見された足利政氏書状/上総武田氏の発展/小弓公方の成立/元服と婚姻、そして子供たち)/天文の内乱と義堯の登場(語られてきた家督交代劇の虚構/父実堯の暗殺と義豊/関東戦国史のなかの里見家内乱/勝者義堯の登場)/政権確立と復興(内乱の後始末/義堯の苦悩と妙本寺日我/荒廃からの復興/義堯を取り巻く政治情勢)/小弓公方の滅亡と北条氏(第一次国府台合戦/上総進出と北条氏との抗争/本拠地久留里城/激化する北条氏との抗争)以下細目略/江戸湾周辺に生きる人々/上杉謙信の越山と反転攻勢/第二次国府台合戦/混沌とする関東の争乱/策謀渦巻く関東情勢/義堯の死とその影響/その後の里見氏)/あとがき/里見家略系図/略年譜
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房総の戦国大名
2022/11/17 16:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mt - この投稿者のレビュー一覧を見る
房総の戦国大名の評伝。謎に満ちた義堯以前の里見氏の動向や、後継者の義弘・義頼らのことも描くなど、後期里見氏の通史としても読める。下克上で宗家を滅ぼし、一代で版図を広げるという戦国大名の典型のような生涯だが、仏僧との交流から統治者としての苦悩も描くことで、なかなか味わい深い読み物になっている。江戸湾を巡る北条氏との攻防もそうだが、イケイケのころは下総の香取海まで手に入れようとするなど、水運の支配を重視した動きが面白い。また後代まで里見氏を縛った関東公方の権威や、上杉謙信との微妙な距離感も印象的であった。
里見氏だけでなく戦国時代の関東を知る上でも有益
2023/07/18 09:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おくちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦国時代に家督争いで勝利を収めた義堯・義弘親子の時代から、江戸時代初期に滅亡するまで100年余りの里見氏の歴史を解説している。隣国の真里谷武田氏、長年のライバルであった北条氏、同盟関係にあった越後上杉氏、足利一族の古河公方や小弓公方などの複雑な動きもていねいに追っており、房総の一大名里見氏の歴史というより、関東の戦国史としても十分読みごたえがある。また、こうした大名だけでなく、江戸湾で活躍する商人(戦いにおいて食糧や物資の供給に大きな役割を果たしていた)の活動についても描かれており、当時の戦いの裏側を知ることができて興味深かった。文体も平易で読みやすかった。
「八犬伝」の虚像を拭い去り、史実に基づく里見氏の歴史を描く、と帯に書かれている。たしかに八犬伝には結城合戦、足利持氏など史実や実在の人物が登場するが、里見氏については、当主義実の娘・伏姫が犬と交わり、腹から八つの玉が飛び散った、というまったくのファンタジーで、これを史実と誤解している人はいないだろう。残念ながら里見義実については実在の人物か確認できないとのことだが、それから数世代下ると急に視界が開けて史実が次々と現れてくる。「八犬伝」の知識がゼロでも本書を読むうえでは何の支障もない。
ただ、欲を言えば、古文書や史跡の写真に比べて地図が少なく、もっと充実させてほしかった。巻末に「戦国時代後期の南関東」の地図があるがやや大雑把で、たとえば上杉謙信が関東に侵攻したルートや、たびたび攻防戦が行われた葛西が水上、陸上交通の要衝であったことなどはこれだけではわかりにくかった。