カシオペアの丘で みんなのレビュー
- 重松清
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カシオペアの丘で 下
2010/08/26 10:33
赦されたい者と、赦したい者。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
読後、ぐううと唸り声しか出ない。最後の100ページくらいはもう、何と言う奇跡的な文章かと言葉も無い。重松さんの筆致の凄さを、改めて痛感。物語そのものも凄いけれど、その物語を紡ぐ言葉一つ一つが何とも素晴らしい。そんな表現をどうして生み出す事が出来るかと、これが天才という事かと思わされた。
物語は後半に入り、肺癌が全身に転移し死を覚悟したシュンが故郷の北海道へと帰る。そこでやはり老衰で死期の近づいた、祖父と再会する。その土地の王にして、友人の親たちを見殺しにした祖父。絶対に赦せない祖父。しかしその祖父も、赦される事を願っていた。強くあらねばならぬからこそそんな姿を見せられず、苦悩の人生を歩んできた。その事に気が付いた時、シュンの心は揺れ始める。祖父を赦さねばならない、そして親友達には赦して欲しい。妻と息子にも、先立つ事を赦されねばならない・・・。一方妻の不倫相手に娘を殺された川原も、妻を赦したくてもどうしても赦せず、死ぬためとして北海道にやってきた。「赦されたい者」と「赦したい者」が、死期を悟った二人を中心に集い、命と人生を深く考える。そしてそれぞれの答えに、歩み出していくのだ。
先にも書いたが何しろ最後の100ページ。物語が色んなエピソードや布石と共に昇華していく様が、非常に素晴らしい。死期が近づき意識も朦朧となった者達の思いや、言葉。それらがとても深くて胸に染み込むようだ。晴天の霹靂のように、突然訪れる死がある。そのあまりの不条理に自分が陥った時、何が出来るか残せるか。それを深く考えさせられるばかりか、一つの答えさえ、見つけさせてくれたように思う。
カシオペアの丘で 上
2010/08/20 10:24
何でもない今の幸せが、ものすごく大切に思えて、怖くなる。
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松作品には、昭和40年代生まれを主人公にした作品がいくつかある。そのどの作品を読んでも、昭和43年生まれの私の胸には痛いほど響いてくるのだが。比較的それらの作品では「何でも無いような当たり前の人生」が実実は結構大変なんだよと、それでもドラマチックで、やっぱり素晴らしいのだと表現される事が多いように思う。ただ本作品は、それらの作品とは少し違うように思う。主人公の4人には、とても「普通」とは言えない人生が待っていたのだ。
3人の少年と1人の少女が、昭和初期に炭鉱の町として賑わった北海道のとある町の丘で、夜空を見上げた。美しい夜空を見上げ、ここを「カシオペアの丘」と呼ぼうと決める。そして再開発が決まったこの丘が、いつか遊園地になればいいのにと願いあった。少年の1人はその土地再開発を担った有力者の孫であったから、その夢はきっと叶うだろうと少年達は思っていた。しかしそこで起こった炭鉱事故の真実を知るに連れ、少年達は仲の良い友達同士では、いられなくなった。そして少年達は、大人になった。
離れ離れになった少年達を、辛い現実が襲った。一人の少年は事故で一生足の自由を奪われ、一旦東京に出た少女は辛い堕胎を経験し、地元に戻って少年を支える事を決めた。職を点々とした少年はテレビプロデューサーとなり、あまりに辛い事件の担当となり被害者と共に苦悩する。炭鉱事故を起こした会社の総帥を祖父に持つ少年は逃げるようにして東京へと出て結婚し、子供を設け幸せな日々を送っていた。しかしある日突然、胸に癌が発見されるのだ。あと、たった半年の命。そこで考えること。家族のいとおしさと、過去への憧憬。そして清算しなければならない、他の少年たちへの思い。その思いを抱えて、少年は故郷へと帰って行く。
良く言われることだが、何にもない平凡な毎日こそが幸せだと。家族みんなが健康で、笑顔でいられる事。それ以上の幸せ等無いという事。その幸せを、暗く覆うように突然襲う病魔の影。そんな晴天の霹靂がいつ自分の身に降りかからないとも分からない。今日この日を、大事に生きねばならないなと考えさせられる。そして万一そんな事が起きてしまった時に、一体何が出来るか残してやれるのか。考えておかねばならないなと、痛切に思わされた。
2020/05/24 09:41
再会の丘
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼年期をともに過ごした4人に待ち受ける、過酷な運命に胸が痛みます。再会を果たした時のそれぞれの葛藤と、忘れかけていた大切な思い出が感動的です。
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