名残の花(新潮文庫)
著者 澤田瞳子
ご一新から五年。花見客で賑わう上野の山に、かつて南町奉行を務め、「妖怪」と庶民から嫌われた鳥居耀蔵の姿があった。失脚し、二十三年の幽閉の末に耀蔵が目にしたのは変わり果てた...
名残の花(新潮文庫)
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商品説明
ご一新から五年。花見客で賑わう上野の山に、かつて南町奉行を務め、「妖怪」と庶民から嫌われた鳥居耀蔵の姿があった。失脚し、二十三年の幽閉の末に耀蔵が目にしたのは変わり果てた江戸の姿。明治を、「東京」を恨み、孤独の裡に置き去られていた男の人生は、金春座の若役者・滝井豊太郎と出会ったことで動き始める。時代の流れに翻弄されながらも懸命に生きる人々を描く感涙の時代小説。(解説・末國善巳)
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書店員レビュー
江戸から明治へ過渡期を生きる人々の物語
ジュンク堂書店福岡店スタッフさん
かつて江戸の町民の贅沢を厳しく取り締まり、「妖怪」と人々に嫌われた鳥居耀蔵こと胖庵。失脚し二十余年の地方での幽閉の末、もどってみれば「江戸」は「東京」へと変わり、明治という新しい世に人々は浮かれているようにみえる。
そんな世間への不満を胸に江戸の町を散策していた胖庵がたまたま窮地を救った若き能役者見習い滝井豊太郎。能もまた古きものとして明治の世では地位を失い、人材も流出し将来の見えない世界。
旧弊の側に立つふたりは新時代にどう向き合い生きていくのか、能にからめ、ていねいに描かれた連作短編集。
作中の胖庵は七十代だか、とにかく元気に町を歩きまわる。そして元気な老人は胖庵だけではない。豊太郎の能の師匠もまたかなりのもの。胖庵が現役の役人の時には取り締まり、取り締まられる側という立場だった二人の含みありの会話は傍で聞く豊太郎とともにひやひやしてしまう。ただここぞという時にはどちらも割りきった上で最善をつくすべくやりあうところがおもしろい。
能にかける豊太郎と師匠の師弟関係もこの作品の見処のひとつ。清々しい感動がある。
鳥居耀蔵といえば悪役として描かれることも多く、時代小説を読まれる方ほどその印象が強いかもしれない。
だが、この作品では胖庵は鋭さ厳しさとともに意外な柔軟さをみせてくれる。そしてやっぱり妖怪といわれただけのおそろしさもある人物だということも描かれているので、油断のできない楽しさがある。
時代の新しさだけに目を向けてはいけない
2022/10/09 19:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治初期、天保の改革を実際に推進した鳥居忠輝の失脚後に隠居老人となった姿と、零落した能役者とその見習い人との関りが主軸となり進んでいく短編連作集である。ご一新の言葉通りに、古きものは捨てるべきものであり、新しい西洋渡来のものが重要とされる時節、世の推移に左右されずに己の道を歩むことはおても困難だ。そんな困難さを選ぶ登場人物たちはなんと凛としていることか。古きものが良いとも、新しいものが良いとも一概に言えないが、人それぞれが己の進む道をしっかりと見積もることが重要なのだ。
明治という時代
2023/03/31 20:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて「妖怪」と呼ばれ嫌われていた鳥居耀蔵と、見習い能役者とのふとした出会いからの交流が面白かったです。能役者の豊太郎はしっかりしていてもまだ16歳、真っすぐな気性で応援したくなります。すっきりしない結末のものもありましたが、それもまた味があって良かったです。
かつての…
2024/11/15 22:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつての姿はどこへやら。あれから何年もたって、明治初期のお話です。昔、天保の改革を実際に推進した鳥居忠輝さん。彼が、失脚後に隠居老人となってからのお話。そして、16歳の能役者と……。いろいろあるなあ、が感想。