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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の豊富なフィールドワークを基にして中国農村の姿を描き出した好著である。一見似ているようで根本の考え方が異なる中国農村と日本農村に違い、共産党独裁下における中国社会の安定性、習近平政権の都市化計画など、初めて知り、なおかつ納得できるような解説が目白押しである。トピックス エピソードを並べることによって全体を推測させる という著者の手法にも納得感がある。
そして最後の「麦の花」の話で全体を締めくくる読み物としての技法にも非凡なものがある。
おもしろかった!
2024/04/20 00:02
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
田原先生が長年にわたって調査した中国各地の農村のリアルと、そこからわかる中国の独特な社会の様子、変化。読み応えあり。
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配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01427079
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経済発展めざましい中国でいまだ多数が暮らす農村はどんな状況か。長年にわたり中国各地の農村で調査を重ねた著者だから書ける実像。
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中国では、農村戸籍と都市戸籍の区分、大都市における農民工の劣悪な労働環境、農村からの大学進学希望者の急増による大学の乱立による就職難、など、様々な中国の農村に関する情報を見たり聞いたりしてきている。1種の農奴性ではないかと思い、毛沢東がこの農民たちを取りまとめ、社会主義革命を達成するため、大動員したのではないかと考えていた。本書を読みながら、魯迅の阿Q 正伝を合わせて読んでいた。辛亥革命の前、魯迅は農民をどう考え、どういった方向に導こうとしていたのか?絶望的な環境の中で、狂人として振る舞う農民、故郷に出てくるルントウ、阿Q 正伝の阿Qこれが現在の農民の考え方と一続きではないだろうか?と考えていた。
本書の中の中国農村調査は様々な視点を与えてくれたが、現在の習近平体制では、筆者が後書きでも述べているように、このような調査活動は不可能であろうと思われる。映画 麦の花も機会があったら、ぜひ見てみたい上昇思考だけの農民、競争社会から脱落する都市生活者、様々な矛盾を抱え、現在の経済混乱、バブルの崩壊、金融体制の混乱等筆者の次作にも注目していきたい。
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本書のタイトルは「中国農村の現在」だが、中国農村は膨大であるのに対して本書で取り上げる事例は少なく、また、現在という割には古い内容も含まれている。
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1990年代から2005年ぐらいまでの、中国農村の仕組みを、主に著者のフィールドワークをもとに描き出している。
大変に面白かった。
記述しきれなかった部分も多々あるだろうけど、なんとなく中国の農村の方が民主的な自治を実現しているような気すらしてしまう。
冒頭の中国という国の統治構造について述べられている部分も興味深かった。文革時代の枠組みが継続しているという点で。
語り口も、過度に学問的でもジャーナリスティックにもならずに、人間というものに焦点が当てられていて、良い。
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最後の麦の花の話が圧巻。フィールドワークとはこういうものか、とそれが困難になっていく状況の話から、結論として提示される。ある意味絶妙なはぐらかしにも思えたのは気のせいだろう。
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すごく勉強になった。
・中国は封建制が遥か昔に終わっており、土地の流動性が高く(=地縁的結合が弱い)家族主義が強い
→中間集団となりうるコミュニティがなく、個人が集団を代表する代議制の選挙は合わない
・農村の発展は公の精神を持ったデキる幹部農民に依存してきたのに、選挙導入後は落選し今やヤクザ者タイプが村を仕切っている
などなど大変興味深かった。
全体的に面白かったが、社会学の理論の部分がサラッとしすぎな点は物足りない。
费孝通の差序格局をきちんと勉強したい。
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本のタイトルを見て、読みたかった内容はなんだったろう。
偉大なる文明の復興という、ファンタジックな野望を掲げる指導者の下、その大半を占める「農村」民の実態はどうなのか。
全く判らなかった。
その文脈では。
上に政策あれば下に対策あり、はよくわかったけど。
著者によれば「改革前」は少なくとも、貧しくとも清く正しく力強い人々だったってことか。
だが、何度も「改革前」と言いながら改革後はどうなのよってところをあまり評価していない気がする。
農村保護に力を入れる中央って表現もあったやに記憶するが、それが上手くいってないってこと?
構造の説明はなるほどと思うところ多々あって、かの文明では春秋戦国の頃にはもう封建制が消滅し、結局「父系」の血縁のみが重視される社会になって。
代表する利益団体もないから、代議制民主主義はこれっぽっちも馴染まなくて、中央もまさにそれを利用していると。
どっちにしろ、共産党の口車に乗って、何度も隣人を虐殺して来た方々が、ただ素朴ないい人なわけないと思うんだが。
小金が手に入ってからもっともっととうるさいと言う、それも真実なんだろうし、清く正しく美しかったのは、夢も希望も何もなかったからなんじゃないのと思った。
結局、何も分からなかった気がする。
現地調査の心得みたいなんもあったようだが、これっぽっちも興味ない。
あー。
そう言う人向けの本だったのか。
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中国の知られざる姿。急激な経済成長により都市部の大発展。日本から目立つのは沿岸の大都市部だがそれは人口14万人のうちの4万人。残りの多数の農村の実態を長年のフィールドワークから明かす。あくまで外国人から見た姿であり、また当局の協力を得られずまた文化的な側面からも、全てが描かれるわけではないが、大事な一面を捉えているように思う。また民主主義が、日本も含め欧米以外の諸国でどのように変化し利用されていくか、大変に興味深い内容であった。
高度経済成長期の日本の都市部と農村に似てはいるが、また違った中国のリアルな姿を描いた良作。
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封建制と民主主義は相性が良く、中国の農村は早くから封建制度から解放されており、階層化されていないので、民主主義が根付くことは難しいとの指摘には驚いた。
華流ドラマには、盛んに「〇〇家」が出てくるが、中国のそれは家族主義、血縁主義であり、日本の家制度とは異なるらしい。日本の家制度の原点は中国にあると考えていたので、この点についても驚いた。なるほど九族族滅などを発想するわけだ。
研究調査のわき道からの視点で書かれた本のようだが、本筋から外れたところでいろいろ学ぶところのある本だった。
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中国は都市と農村の2つの社会があると言われる。かつてある日本企業の中国駐在員が中国は農村という植民地を抱える国だ、という発言を聞いたことがある。自分は中国に住んでいた経験があるにもかかわらず農村に足を踏み入れることはなかったが、本書を通じて実態の一端に触れることができた。
中国農村は企業や役所といった中間団体が希薄な地帯であり、血統による家族主義に基づいている。日本の村のような地縁に基づく社会とはまた違っている。重視されるのは血縁に由来する人的なつながりである。筆者は、大学などで縁者をリクルートして農村に滞在し調査を行っている。
本書はこうした農村を舞台に農民工の出稼ぎや一人っ子政策といった共産党の施策に果たした基層幹部の役割などを丁寧に論じている。村単位では競争的な選挙が実施されているのは、基層幹部を固定化させたくない統治者側の都合というのは興味深かった。
ただ、近年、特に習近平体制以後は、外国人研究者が中国の農村に分け入って調査することが難しくなっているとのこと。
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中国農村の現在
「14億分の10億」のリアル
著:田原史起
中公新書 2791
中国人民公社は、1958年に毛沢東の肝いりで制度化され、中華人民共和国憲法の成立とともに1983年に消滅した
大量の餓死者を生み、一人っ子政策の遠因となった中国の農村政策を、人民公社の消滅を視野にいれて、社会学者の分析したのが本書になる
中国のアキレス腱は、食である。農村の生産性は低いままであり、農産物の安全性は低い。
都市部はスマートテックなどのIT振興政策で発展し、農村との格差は広がる一方である
家族制度や政治との関与について中心とされ、農作物の流通や、農業生産性をいった経済面にあまり触れられていないことがちょっと残念でした。
気になったのは以下です
■人民公社の解体
中国はわずか40年まで、人口の8割程度が農民を占める、農民国家であった
現在の中国の政治や経済、対外関係を理解するために農村社会を理解することを避けて通れない
中国の歴史は、春秋戦国まで続いた封土を各諸侯に分配する封建制ではなく、秦の始皇帝が発明した中央集権的な郡県制がこれまで統治形態になっていた。そして、その最低単位は、2849もの県である
人民公社が1958にできると各農家から余剰食糧をすべて取り上げようとした。そして、これまで食えなければ他の地域に流出すればいいという流浪は禁止され、人口の移動を厳しく制限した。
こうしたことで、大飢饉が中国を覆っていく。そしてのその反省から、一人っ子政策が誕生する。
これ以上増加する人口で、再び大飢饉が起きないように中国政府と国民が選択したからである
1980年代に憲法が改正され、人民公社は解体されていく、所有権は、集団に残したままで、使用権だけが各世帯に分配された
■中国の家
中国の家の制度は、本家分家ではなく、それぞれの家庭が等しく、共同体を形成する
力があるものが、力なきものを養う、大きくなれば、そこから分離して同じように成長していく
結果として大きな共同体ができる、そして共同体の理念は同じ先祖をもつものである
農民が現金収入を得ると
①耐久財の購入
②家屋の新築
③孫世代への教育投資
に再配分される
より良い未来の生活と、血の流れである
農村に流れるダブルスタンダード
①絶対公平、平等に
②都市住民と、農民住民がことなっても比較しない
■農村の変遷:人民公社解体後
血縁から地縁へ
まず人脈とは、近しい家族とのつきあいから始まる
農村をまとめるのは、3つの関係をバランスよく対応できる大人が必要
①フォーマルな政治・行政の代表として上位政府・国家との調整を行う
②村落コミュニティとして、コミュニティの利益を最大とするように、種々の問題の解決を図る
③幹部であっても、一般の農民の一人である
農民の基底にあるのは、家族主義である
⇒リーダを選挙できめるようになって、プロのリーダが入って来る。かれらは、官���けをみて、農民たちの調整をしなくなる
⇒中間集団の不在、調整者がいなくなってしまう⇒地域代表なのに、地域の調整をしてくれなくなる
農民から中国の中央の距離は非常に遠い。なので、農民のこうした思いが中央へ伝わりにくかった
■習近平政権以後、フィールドワークやりにくくなる
・日本人は拘束され、尋問される
・調査現場には、公安とおもわれる人がまとわりつく
フィールドワークは、中国の格言でいる「一万冊の書をよみ、一万里の道をいく」ことだといっています。
目次
まえがき
序章 中国農村の軌跡
第1章 市民との格差は問題か?―農民の思考様式
第2章 農村はなぜ崩壊しないのか?―村落生活の仕組み
第3章 なぜ村だけに競争選挙があるのか?―農村をめぐる政治
第4章 中国農村調査はなぜ失敗するのか?―「官場」の論理
第5章 農村は消滅するのか?―都市化政策と農村の変化
終章 中国農村の未来
あとがき
参考文献
ISBN:9784121027917
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:304ページ
定価:960円(本体)
2024年02月25日発行
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農民工といえば、中国内部の格差を背景に搾取される存在、というイメージだったが、実は中国特有の家族主義に基づく、したたかな経済的上昇戦略の文脈で捉えられ得ることを知った。老親・子・孫が田畠・現金収入・教育の最適解を求めて拠点を構え行動する様は逞しい。また、その主な舞台となる県域社会を、大都市への人口集中の防波堤にしようとする習近平政権の政策にもなるほどと思わされた。長年のフィールドワークに裏付けられたそれらの分析を飾らぬ筆致で楽しく読めるものに仕立てた著者に脱帽である。