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- カテゴリ:一般
- 発売日:2020/01/20
- 出版社: 中央公論新社
- サイズ:20cm/262p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-12-110102-0
読割 50
紙の本
建国神話の社会史 史実と虚偽の境界 (中公選書)
著者 古川隆久 (著)
「古事記」「日本書紀」の記述が国によって「歴史的事実」とされた時、普通の人々は科学や民主主義との矛盾をどう乗り越えようとしたのか。建国神話が近代日本社会と戦後日本社会にも...
建国神話の社会史 史実と虚偽の境界 (中公選書)
建国神話の社会史 史実と虚偽の境界
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商品説明
「古事記」「日本書紀」の記述が国によって「歴史的事実」とされた時、普通の人々は科学や民主主義との矛盾をどう乗り越えようとしたのか。建国神話が近代日本社会と戦後日本社会にもたらした影響を探る。【「TRC MARC」の商品解説】
天照大神の孫が高天原から降臨し、その孫である神武天皇がヤマトに東征、橿原宮で天皇の位に就く――『古事記』『日本書紀』に記されたこれらの神話が歴史的事実ではないことは、戦前の普通の々にとっても当たり前のことであった。史実ではないが、史実として扱い、そう振る舞っていたのである(こうした「建前と本音」的なものは、現代の私たちにも心当たりがある)。
神話の「史実」化には、天皇による統治を正当化するという明治政府の政治的目的があったのはもちろんだが、一方で民主化(神々の話合いは「万機公論」の根拠とされた)や経済振興の手段でもあったことは、今ではあまり知られていない。もっとも、「神話」を「史実」として受け止めることには、さまざまに無理も生じる。とくに教育現場における混乱は、いくつもの「笑えない」笑い話を残した。
本書は、幕末水戸学の尊王攘夷思想という建国神話重視の発端から、昭和天皇が「人間宣言」によって事実上、建国神話を否定するまで(そもそも、昭和天皇は科学者でもあった)、日本社会に起きた悲喜劇をエピソードたっぷりで描き出し、近代とは何か、歴史とは何か、国家とは何かを問い直す。
目次より
序 章 虚偽と史実の境界
第一章 神話が事実となるまで
一 日本の建国神話とは
二 なぜ「事実」になったのか?
三 教科書で「事実」とされたのはなぜか?
第二章 「事実」化の波紋
一 学校の外ではどうだったのか?
二 学校の中ではどうだったのか?
第三章 建国祭と万国博覧会
一 政治にどう利用されたか?
二 経済にどう利用されたか?
第四章 満州事変の影響は?
一 教室外でも始まる建国神話の「事実化」
二 建国神話教育への影響は?
第五章 日中戦争期の社会と建国神話
一 紀元二千六百年をめぐって
二 社会はどう受け止めたか?
第六章 太平洋戦争期とその後
一 国史教育のその後
二 効き目はあったか?
三 その後
終章 「建国神話の社会史」の旅を終えて【商品解説】
著者紹介
古川隆久
- 略歴
- 〈古川隆久〉1962年東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了。博士(文学)。日本大学文理学部教授。専攻は日本近現代史。「昭和天皇」でサントリー学芸賞を受賞。
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紙の本
虚構が現実を侵食する政治史
2021/09/12 00:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テオドラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
記紀に著された神話が、近代いかに政治や社会動向を規定したかを丹念に論及されている。
虚構だと分かっていた事柄について、次第にそれを考察することや「虚構であること」と認識することすら憚られるようになり、政治体制の確立や動員の基盤といった一つの方向に向かわせる装置として機能するようになる様は、思想を取り巻く力や恐ろしさを改めて実感させられた。
安易な伝説伝承を用いた地域振興や偽情報の横溢といった知を巡る問題が相次ぐ昨今、虚構と現実、虚構と客観的分析の在り方を再考する上で一助となる一冊だと思う。
紙の本
建国神話を事実とみなす考え方は、戦争を防ぐ手立てにはならず、むしろ人々を戦争に駆り立てる方向に作用した
2020/05/12 15:05
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
政府により「建国神話」が「建前」から「事実」とされた時、戦前期の人々はそれとどう向き合ったかを分析した一冊『建国神話の社会史』。驚かされたのは、第二講で紹介される藤田藤平なる人物の歴史教育論。彼は「純正史学」「応用史学」という考え方のもと、歴史学と歴史教育の分離を主張している。天皇と日本社会の近代史を読み解く話題作。同著者が、「「理性の君主」の孤独」を描き出した『昭和天皇』とともに読んでほしい。
紙の本
思わず笑うところもありました
2020/04/29 12:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずは建国神話にまつわる貴重な研究をなした著者に敬意を表したい。
建国神話が皇国史観や国粋主義と結びつき、神話全体が歪んだ解釈と受け止め方を戦後も引き続いてされてしまったことは残念である。
神話自体は私は、日本の貴重な言い伝え、民俗伝承と思っている。神話が正しく理解されていくためには本書はなくてはならないとば口の書だと思った。