紙の本
新時代の本格ミステリーの旗手、誕生。
2023/04/03 01:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイムリープと人格転移というSF設定を組み合わせた本作は、外連味溢れるミステリー小説と思われがちだが、その実は王道ミステリーの換骨奪胎に成功した本格パズラーである。
タイムリープと人格転移という大味の設定を、破綻なく組み合わせるだけでも十分に凄いのだが、本作の著者であるスチュアート・タートンの才能はそれだけにとどまらない。
上記の設定に加え、「従僕」と呼ばれる殺し屋(殺人事件の謎を解く主人公の邪魔をする)などの、主人公よりも先に真相究明すべく、ありとあらゆる手段を使って捜査を妨害してくる存在を配置。
「従僕」の存在によって、主人公は証人や証拠を多角的に検証しなければならなくなり、タイムリープする度に人格を転移する度に、これまで見えていたものが一つの側面に過ぎないという事実を突き付けられるのだ。
こうした設定の巧妙さが、伏線やミスリードに活用され、最後の最後まで気が抜けない展開が我々読者を待ち受ける。
また、本作は「人は変わることができるのか」というテーマを描いており、成長小説としての側面をも持ち合わせている。
人格転移し一日ごとに違う人物に宿り、同じ一日をタイムリープするにもかかわらず、だ。
いや、むしろそういった状況下だからこそ変わりたい・変えてみせるという確固たる意志が必要不可欠となるのかもしれない。
例え違う人物に宿ることになろうとも、何度同じ一日を繰り返そうとも、少しずつでも人は変わっていけるはずだ、という著者の人を信じる気持ちが通奏低音として本作にはあるおかげで、清々しい読後感を味わえるはずだ。
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【究極の特殊設定ミステリ、文庫化!】犯人を見つけるまで令嬢は何度も殺される。殺人の夜をタイムループし、関係者の人格を転移しながら真相を追え。阿津川辰海氏絶賛。
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殺人事件の犯人を特定するまで同じ一日を毎回異なる人物として繰り返すというミステリ。記憶喪失の状態から始まり、異なる視点で同じ日を繰り返すことで事件の解像度がだんだんと上がってくる感じは良い。
ただ、作者の主眼は特殊な状況下に於いて成立するミステリ小説にあり、そういう意味ではかなり良く出来ているとは思うが、その状況を構成するループや人格転移などは単なる舞台設定に過ぎずそこら辺に期待を持ちすぎると落胆することになる。
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今時流行りのループ系小説と言って良いのかはわからないけれどもループして同じ日を繰り返し、事件を解決するお話。面白いのが、一日が終わると違う宿主として目覚め、その宿主の性格や元々持っている判断力、思考力や人格に左右されるところ。期限は7日間で、傍観している人曰く、相当数繰り返しているらしい辺り、傍観者というか観察者も大変そう…
ミステリーとしては面白いんだけど、この舞台設計を作ったというSF的な仕組みはちょっと読み終わっても「ん?」という感じ。繰り返す度に毎回注意喚起に行くのは大変そうだし、そこも踏まえて過去の自分が行った行為は7日分は更新されるんだろうか?なんかややこしい。そして、この場合モブのような他の人物達はすべてAIが管理しているのであれば、そもそもその中から犯人を見つけ出すのは難しくない?動機づけしてない人格が勝手に動くのかな?でもそもそもAIが動かしているとしたら、ナマの人間を投入しなくても事件そのものはこの世界を走らせている機械がすべて丸っとオミトオシなんじゃないだろうか?
まぁメタ的なことは置いておくとすると、なかなか面白かったです。お前だったのかよ!みたいなところも含めて。
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登場人物が多い上に翻訳物独特の言い回しが多いので、読むのがかなり大変でした。何回ページを戻ったことか…。
でも、逆に言えば、ページを戻っても確認したくなるくらい、面白かったです。最後、どんでん返しもあって、そういうことかー!となります。
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タイムループ×人格転移という帯に書かれた設定に魅力を感じ読み始めた。
海外文学が初めてということもあり、独特のジョークや人物名の色んな呼ばれ方が理解しづらく混乱を極めたが、最後まで読み切るとようやく全体が理解できたような気がする。
ブラックヒース館の意味、なぜこのようなことが行われるか…、面白さと気持ちの悪さが漂う作品だと思った。
映像で観たい!
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初のスチュアートタートン。
館もの+タイムリープ+人格転移と、盛りまくりな設定。
一見なんでもアリになりそうなものだが、SF的な要素には厳格なルールが敷かれ。着地は思った以上に本格ミステリだった。
面白かった。。。のだが、それ以上にとんでもなく読みづらかった。ある程度のボリュームもあったけど、読了まで一週間以上かかった。訳の問題なのか、そもそもの文体が原因なのか。。。
8人の転移者が使えるのは一日だけ、朝から夜への時間の流れは逆行しない等。ある登場人物の行動の理由が後の章で判明したり。緻密で飽きないストーリー。
次作も特殊設定盛り盛りの様で、楽しみ。
ところで、イヴリン嬢が殺されるのは七回どころではなさそうだけど、如何に笑
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最初はとっつきにくくて、でも読み進めるうちに面白くなってきて、だけどどうにも頭がついていかない・・・
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読むのにものすごく時間かかった
仕掛けが多すぎて難解でした
解決編の喜びはその分味わえたけど
めっちゃ難しくて複雑なパズルが解かれていくのを、感嘆しながら読み進めていく小説でした。
カニンガムが好きでした。
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殺人に見えない殺人事件ことイブリン嬢殺人事件の犯人捜しのために探偵役の私が八回人格転移とタイムリープをするという特殊設定ミステリー。
むちゃくちゃややこしかったし、580ページとなかなかのボリュームだったのでちょくちょく休憩挟みながらも1日で読破させる面白さのある作品。
初めて読了後、即再読した。
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☆3.5くらい
設定の面白さ、ミステリ物語としての緻密な構成は素晴らしい。だがそれを損なわせているのが文章。翻訳か原文か、どちらかがとにかくこちらの理解を曖昧なものにしてくる。するすると読めるとは言い難い。人物も多くて覚えきれず、それも分かりにくさに一役買った。誰?と思いながら読むことが何度も。
ただそれでもサスペンスじみた構成力には脱帽だ。タイムループものは混乱して然るべきとも言えるし、整理しながら読めば傍観者ではなく探偵として没入し、もっと楽しめただろう。
いやそれにしても久しぶりにミステリでここまで主人公に寄って物語を読めた。大抵探偵役には早く推理聞かせてくれないかな、と思っているところがあるのだが、今回は真相を解き明かすのを応援しながら読んだ。長めの物語なうえ読みにくさがあったとはいえ、よい読書だった。
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館×タイムリープ×人格転移
読んだことのないタイプの特殊設定ミステリー
なにはともあれ、ややこしさが勝る
そして、展開を呑み込むのに一苦労……いや、七苦労くらいした
ただ、それを乗り越えればページをめくる手が止まらない
細かい設定とラストの展開が少し雑に感じなくもないが、なかなかスリルはあった
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事前情報もなく、何も考えずにタイトルと装丁に惹かれて読んだけど凄いなこれ!
人格?交代タイムループなんてもの良く思いつくな!
久しぶりに1日ぶっ通しで読んだし、興奮冷めやらぬうちにこれ書いてるのは深夜1時!
ポケモンスリープに勝ったのがこちらの本です!
いや、もう何も分からないまま始まって記憶喪失ものかな?と思いながら読み進めていって殺された瞬間の衝撃!
思わずページの厚み確認した。
まだこんなにあるが??
目が覚めるたびに貴様は誰だ!と登場人物欄確認し、終いにはノートに人物整理を書き出す。
ややこしいけど楽しい!
不自然に感じたところがどんどん理由が明らかになっていく時のパズルのピースがはまっていくけど正解の絵が全然見えない浮遊感。
誰が裏切り者で殺人者か。
アナの正体を知った時のエイデンの決断。
黒死病医者の決断。
ぐるぐるぐるぐるチェス盤をひっくり返され、宿主の人格という枷をつけられ、そして不可能だと思われたアナとエイデンふたりの救済。
イヴリンの正体、本性。
扉が開けられたような結末。
凄かった。
この作家さんの他の作品も読みます。
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設定、あらすじ、物語ともに面白かったに違いない。
だけど、最近では読むのに一番時間がかかった。次が気になるのになかなか読み進まない。
原文ではもちろん読んでないので、原文のせいなのか翻訳なのかわからないが文章が読みにくいのだと思う・・・もったいない。。
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ミステリスクールから。これ、日本版を読みたかった…。ただでさえ登場人物が多く(しかもそれほど個性的な面々という訳でもない)、かつカタカナのせいで覚えにくいのに、しかもその人物の人格に順次侵入する、ときた。そんなもん、理解が追い付かない。せめてもの、と思って頻繁に人物表に立ち戻るんだけど、その度に、いちいち流れが途切れる。最後の最後、到達した結論部分だけは、そこだけでも話が成立することもあり理解できたけど、じゃあそこまでの紆余曲折の意味は?って感じ。再読したいほど好きでもなく、このモヤったイメージだけが残ったのであった。