紙の本
フェーズ5の本日に ペストを読むこと
2009/05/10 15:45
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新型インフルエンザでフェーズ5が宣言された2009年5月に 20年ぶりに再読した。当然ながら 今回の事態に対して何か勉強になるものがあるかを期待して である。
当然ながら 中世のペストを巡る言説と 現代のインフルエンザを巡る言説は科学的見地から見て重なるものは無い。特に ここ100年の医学の進歩は目覚ましく 病気を病気として分析するだけの道具と知恵を僕らは手に入れたと思う。その意味で本書から 現在を判断するものはない。
一方 本書で展開される ペストを契機としたユダヤ人虐殺や鞭打ち運動の活発化に関しては 心理学的見地から見て 現在にも 重なるものが出てくる可能性は排除出来ないと思う。
勿論 当時のような直載的な反応が出てくるとは思えない。しかし人間というものは 何か大きなストレスに曝された場合に引き起こす 「動物的」な反応においては 中世の時代と余り変わっていない可能性は常にあると自戒すべきだ。
本書を読んだことが 本当に役に立つような事態にはならないとは思うし また ならないことを祈るばかりだ。
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「コロナ以前」とは変わってしまった私たちの社会のこれからを考える
2020/07/06 10:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「この元史の記録にも、蝗という字が登場しているが、いわゆるトビバッタの跳梁が惨事に輪をかけた。奇妙なことに、ペストの流行とトビバッタの大発生とは不思議に暗合する。」(57ページ)と本書にあります。アフリカで大発生したサバクトビバッタは東進を続け、現在はインドにまで至っているそうです。トビバッタの発生と新型コロナウイルスの発生。無関係に思える二つですが、もしかしたら関連があるのかもしれません。上の引用のように、ペストの流行とトビバッタの発生は過去にも同時に発生してきた歴史があるのです。もちろん、トビバッタの大発生に伴う農作物の被害は世界中で何度も何度も起こっているので、そのすべてが感染症の発生と関連しているわけではないでしょう。それでも、無関係とも言えません。「こうした自然環境の極度の悪化や、それに伴う飢饉によって、人々の抵抗力が予想以上に低下していたこと、食物連鎖のバランスの崩壊から、あるいはそれよりも早く始まっていたアジア大陸での飢饉によって、穀物が不足していたことから、アジア地区から大量のクマネズミが、ヨーロッパに流れ込んだこと、そうした間接的な状況が、あの黒死病の惨禍を助けていたことは間違いあるまい。」(60ページ)トビバッタの大発生は、普段は起こらない規模の大雨により、サバクトビバッタが大量に産まれることから起こります。そして、ペストのような感染症も、自然環境の変化が原因の一つとなります。上の引用のように、ペストの場合、クマネズミが大量にヨーロッパに発生したことが、ペスト大流行へとつながりました。トビバッタにしろ新型感染症にしろ、自然環境の変化という共通の原因が影響をしているようです。
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中世ヨーロッパにおける流行を中心に網羅的にペストの歴史について知れる
2021/07/18 08:52
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
科学史の大家である村上陽一郎先生のペストに関する著書。
ヨーロッパにおいて住民のほぼすべてが罹患し、滅亡した村もあったとのことで、現在のコロナ禍と比較してもその凄まじさが想像できる。中世以降何度か大流行したペストに関する侵入経路、病因論、人々の精神や芸術・信仰に与えた影響、などが網羅的・百科事典的に語られ、歴史好きな私にとっては大変面白かった。
ただし、新書一冊の分量なので広い範囲の記述でもあれば中身を深く知ろうとする向きには本書を入口に、さらに専門書を手に取られることをお勧めする。文末には何冊かの参考文献があげられている。
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ペスト大流行
2020/04/08 20:38
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
14世紀のペスト大流行を中心に詳述し、ヨーロッパ中世崩壊の端緒となった可能性に言及。何と言っても、当時の人口規模で3千万人規模の死者が出たということは、社会としての根幹を揺るがす問題だっただろうことは容易に考えられます。実際、農民の激減による中世荘園制度の瓦解が、資本主義の発生に繋がったようです。また、人間がパニックに陥ったときはスケープゴートを求める特性があるようで、中世ヨーロッパではユダヤ人迫害が助長されました。新型コロナでも、欧米人によるアジア人差別が見られます。差別は人間のさがなのでしょうか。
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研究発表に使ったよシリーズ。
何故よりによってペスト…友人達に微妙に笑いネタを提供した一冊。
いやおもろいって!!
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ペストという伝染病を軸に、ヨーロッパ社会の変化を活写しており、大変興味深い内容です。また、中国や中央アジアが感染源らしいことが指摘されています。病原菌理論がない時代の病因論は地震による空気の腐敗、視線による殺人、ユダヤ人謀略説など、さまざまな思惟があり、興味深いです。とにかく、歴史を理解する場合に、とくに14世紀や17世紀は、ペストの影響を見のがすことができないということを教えてくれます。
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当時考えられた病因論は興味深かった。それ以外は死者数も発祥地もよく分からないということが分かったくらいで、特筆することはない。少しでも西洋史をかじった人には新鮮味は感じられないと思う。科学思想史?というジャンルに馴染みがないせいもあるが、読みづらかった…。コラムを集めた様な文や構成も流麗とは言えない。
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ペストの流行について、歴史的地理的観点から論じた本。魔女狩りやユダヤ人との関連についても話されている。
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本書で考察されている主に中世ヨーロッパでのペストの流行はさまざまなことを引き起こし、世の中もかえた。この時もユダヤ人の迫害が行われたりした事もあったのが描かれている。日本での関東大震災時の流言蜚語を思い出す。
人間の本質的な考え方や行動は変わらないと思う反面、現代では科学の進歩もあり、中世のペストの大流行時と、今回のコロナに対する人々の臨みかたは違ってもいる。ここに明るい人間未来を見たいと思う。
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(2回目)こんなことがなければ読み返すこともなかっただろう。ネットで高値で売買されているとか、増刷されただとか、そういう情報が流れ込んでくるので、本棚から探し出して読んだ。私が高校生のころに発行されているが、すぐに読んでいるわけではなく、ずいぶん後に、図書館のリサイクル市でもらって来て、しかもしばらく積読したあとで読んだ。当時はどんな想いだったか思い出せない。鞭打ち運動の件だけは、何だか鮮明に覚えている。いや、それは誤解かも知れない。たぶん、映画(ダヴィンチ・コード?)で見て、自分で自分のからだを鞭打つ姿が強烈で印象深かったからかもしれない。さて、パンデミックである。10年ほど前の新型インフルエンザのとき、私の身近に感染者が出た。1対1で補習したりしていた。保健所から何度か電話があり、状況を聞かれた。それでも、私自身はなんともなかった。そういった経験から、今回も大丈夫だろうと、バイアスがはたらいていた。しかし、そうも言っていられないくらい、今回は、恐怖を感じるようになってきた。それは、感染者の体験談などをネットで読むからだろう。10年前とも状況が違うわけだ。本書に登場する中世の町では、生き残ったのが3分の1とも4分の1とも言われる。死体はそのまま積まれていく。ひどいにおいがただよう。そんななか、人々は自分の死をどう受け止めようとしていたのか。好き勝手な振る舞いにおよぶ人、急に信心深くなる人、などいろいろだったようだが、さて、いまもそれはあまり変わらないのではないだろうか。メメント・モリ。死を忘れるな。
(1回目)これまた20年以上前の本ですが、図書館のリサイクル市で見つけて読み始めました。ペストは現在、それほど恐れるべき病気というわけではありません。しかし、完全に絶滅しているわけでもなく、いくつかの地域では時々散発しているのだそうです。(この20年ほどで変化がなければ。)そしてまた大流行が起こるということもありうるのだとか。さて、本書では、過去に起こったペスト大流行が世界の歴史にどんな影響をもたらしたのかが記されています。原因も分からず、解決策も見つからないまま、たくさんの身近な人々が次々に亡くなっていく。そして、神に祈りながら収まるのを待つしかない、そういう場に置かれた人々の思いは想像を絶します。当然のことながら当時の政治や経済にも大きな影響を及ぼしたことでしょう。そして何よりも宗教への影響が大きかったことでしょう。今また、新型インフルエンザの大流行が懸念されています。そのときいったい何が起こるのか。新興宗教に走る人はそうは多くないでしょうが、社会に対する打撃はかなり強いものになるのでしょう。もっとも、そんなときくらい、学校も会社もすべて休みにしたらいいのかもしれません。でも、食物は、電気は、水道は、ゴミは・・・どうなる?! しかし、どうして村上先生は難しい漢字を使いたがるのだろう。それが、当時の先生の流儀だったのだろうか?
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古代化のペストの歴史を概括。第7章「黒死病の残したもの」がこの本のクライマックス。14世紀のペストがヨーロッパ社会に残し、そして現代にも引き継がれているものが多い。ユダヤ人迫害、マリア聖堂(ユダヤ人迫害→贖罪の大きさ→助けをキリストに直接求めるのは大きな罪)、死の恐怖→素朴な信仰への立ち返り→宗教原理主義→宗教改革、中世社会の崩壊(農民の激減→農民の権利向上→農奴から賃金労働者→資本主義の発生の土台)等々。
ストレスを受けた社会が、日常の中で燻っていた社会の中の不満不安をあぶり出し、それを権力者が利用する。歴史上何度も繰り返され、その都度、大きな災いをもたらしている。
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中世のヨーロッパ世界を席巻したペストについて、科学史と精神史の両面から考察している本です。
病因をめぐる医学上の論争のほか、ペストを逃れようとする人びとが信仰に頼ったことや、ユダヤ人がスケープ・ゴートにされたという事実など、病気をめぐる人びとの振る舞いを多様な側面から描き出しています。
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1983年刊行。著者は東京大学助教授。
タイトルどおり、本書は、14世紀の西洋社会を震撼させたペスト禍を、具体的に叙述する。
ところで、なぜ、15世紀に西洋人は欧州外へ出ようと努力したのか。なぜ、大航海時代と言われるようになったのか。
この疑問に関して、例えば、①地域における木材枯渇によるエネルギー不足、②所謂「富」が西洋より東洋・中東に多かったということも想定され、種々議論されているところだ。
が、本書を見ると、その理由の一がペスト禍ではないか、と思わせるほどの大惨事である。少し古いが、歴史的なペスト被害を概括できる点で、一度は目を通しておいても良い書である。
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なんかえらい表現が文学的。物語を読んでる気分でした。だからこそ逆に、どこまで事実でどこから想像なのか分からなかった。カミュの『ペスト』は19世紀の流行のときの物語なんだね。もうちょい前だと思ってたわ。
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書店の感染症特集コーナーで見つけて購入。
14世期のヨーロッパでのペスト大流行の様子を、当時の医学やキリスト教と絡めて論述されている。
世界史の知識ゼロでも読み切ることができた。
「ペスト」という語が本来「悪疫」という意味で用いられていたため、14世期に大流行したペスト(黒死病)よりも前の「ペスト」の記録は他の疫病を指している可能性が否定できないということは興味深い。
中世ヨーロッパでのペスト大流行によって、社会制度の変革が起きたりしているが、現在世界的に流行している新型コロナウイルスが沈静化したのち、世界はどうなっているのだろうか…。