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紙の本
ヴァレンベリを知った本だけど
2022/01/06 15:02
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラウル・ヴァレンベリを知った本なので改めて入手して読み返してみたら、「モスクワのウラジーミル監獄」なんて出て来るから白けてしまう。著者はヴラジーミル監獄に収容された事があるマルチェンコの「わたしの供述」を読んでいないのか?ヴラジーミルがモスクワ市内にあったら、モスクワ大公国の首都にヴラジーミル大公が共存していた、と書くようなものだ。ヴァレンベリの舞台となったブダペストならばブダペスト戦での司令官だったプフェッファー-ヴィルデンブルッフSS大将ならともかく、ユーゴスラヴィアにいたアウグスト・シュミットフーバーSS少将を彼が恫喝したという記述もあるが、ホルティ提督が曲がりなりにもいた時期とサーラシの国民統一政府(矢十字党政権)を一緒くたに書いている。
ベリヤが「非合法工作員」として「フランス語、ドイツ語、チェコ語を流暢に使い分けながら、亡命者グループに浸透」したとか「トルコからドイツへ、そしてデンマークからメキシコで暗殺されるまで」トロツキーを追跡していたとかデタラメを書き飛ばしているが、著者はトロツキーの伝記を読んでいないので彼の晩年の遍歴を把握していない事も分かる。アンドロポフがプラハの春の後の「正常化」で亡命しなかった「人民の敵」を「五日間以内にことごとく逮捕され、ほとんど全員が抹殺された」!駐ハンガリー大使だった彼がハンガリー事件で担った役割と混同しているのだろうが、これでいくと著者によると「いかにもひ弱そうな」、「勇敢だがみじめな試みをくわだてた」と中傷しているドゥプチェクは真っ先に「抹殺」されないとおかしいが、この本が出た時点でも健在なのは知られている事だ。
フルシチョフが昭和37年に訪日していたとデタラメを書いているから、思わず「昭和天皇実録」で確認してしまった。
ユダヤ人の記述が多いのは当時のソ連からの出国がニュースとなっていたからだが、タリートはユダヤ教徒が礼拝の際に使う布の肩掛けなのに「祈祷書」だから、そんなに知識がないようだ。タリートはフォーサイスの「オデッサ・ファイル」に出て来る。
もっとも「オデッサ・ファイル」もゲットーと強制収容所を混同しているけれど。
何よりもソ連時代の秘密警察は最初はレーニンとスターリンに従属した暴力機関として生まれ育ち肥大化して、スターリンの死とベリヤ一派の粛清の後は省から委員会に格下げされて党中央の官僚に従属していた組織に過ぎないのに、「仮面ライダー」のショッカーのような世界規模に暗躍する組織であるかのように書いている。そんなにすごい組織ならば、この本が出てから10年もしないうちにあっさりと「剣と盾」として守護していたはずのソ連とソ連共産党が崩壊してしまったのだろう?、と思ってしまう。ソ連大好きな人士風に言うと「ソ連とKGBに対して嘘だらけの反ソ反共文献」に近い位置づけになりそうだ。