紙の本
女心と内野ゴロ
2011/06/09 16:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
口は悪く、品もない。煙草は吸うし、酒も欠かせない。生き物大好き、男はうんざり。
著者は、そんな高校生物教師である主人公の女性に、移ろいやすく変わりやすい女心を芽吹かせ、その秋空模様をなんともリアルに描きだした。
本書は、主人公まりと、タイムスリップしてきた三百年前の侍・小弥太とのラブストーリーである。
まりの一人称で展開されるラブストーリーは、きわめて少女漫画的。
男っ気のない女性の前に現れた三百年前の美形侍。始めは嫌っていたものの、次第に心を惹かれ、彼と相愛に。しかし、彼には妻子があり、一年後には過去へ帰る身。二人は永遠に結ばれることはない。別れの時が迫る。
そんな少女漫画のような悲恋の情景が、次々と展開される。
悲恋の主人公まりはといえば、小弥太と親しくなってからというもの、ちょっとしたことで心が揺れる。素直な言動があるかと思えば、好意にも拗ね、何もされていないのに怒り、かというと急に冷静に。
まるで内野ゴロのイレギュラーである。球がどう変化するか分からない。一流の内野手でも捕れるかどうか。
だから普通の男性は、捕球できるはずもなく、困惑するしかない。三百年前の侍も困惑である。しかし、この困惑は愛情である。捕球できなくてごめんね、という愛情。こんな球とれるか!だと困惑にはならないのだ。
この物語は、そういう女心とか、男心とか、内野ゴロとか、恋する男女の機微を見事に描き出した作品なのである。
本書を読む注意点を一つ。
本の厚さに加え、状況描写ばかりで、ちっとも進まない物語に挫折しそうになるが、それも三分の一まで。それ以降、まりと小弥太の関係に変化が現れて面白くなるので、短気を起こしてはいけない。
本書にも、捕球できなくてごめんね、という愛情が必要なのである。
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雑誌のお薦め本のコーナーでピーコさん(たぶん)の『これを読んで泣かなきゃ女じゃないわよっ』につられて読んだ。
泣かなかったが切なくて切なくて胸がきゅ〜〜んとなり、ぎりぎり女か?とホッとした。のちに映画化されたがそれも良かった。タイムトラベラー好きの私にはたまらない小説。
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300年前の侍が現代に現れたら・・
なんてファンタジーでありながら
主人公・まりが祖母と暮らす様子が
淡々としていながら丁寧に描かれていて引き込まれます。
本筋はもう切ないラブロマンスですがオススメです。
侍・小弥太の格好いいこと。
中秋の名月の頃になると毎年この本を手に取るのです。
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とあるブログで、侍タイムスリップものならコレ!と薦められていたので手に取ってみた。
せ、切ない・・・!!!
仲秋名月の夜の膳に、きぬかつぎと鶏のつくね焼き、豆腐としめじの吸い物というような風流で細やかな祖母の暮らしぶりに魅せられて読み始め、アイヌ史ももっと知りたいななんて思いながらページをめくっていましたが。
後半は、胸がきゅーんとなって、読み進めるのがつらいほど。
結ばれないとわかっていても、臆病にならず真正面から気持ちを伝える主人公だからこそ、感情移入できて心から好感が持てた。
札幌が舞台で私のよく知る地名がぽんぽん出て来るのも臨場感があって良かった。とはいっても30年?ほど前の札幌だから、今は「石狩ブリザード」も体感できないし、違うところも多々あってそれもまた良い。
今まで、森見富美彦の面白さは京都が舞台だからで、札幌じゃあ情緒が出ないよねと思っていたけど、いやいやいやなんとも抒情的です!
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時任三郎、原田知世 主演で映画化されました。
プリンセスプリンセス が「Mr.ムーライト」 のカバーもしています。
かなり切ないラブストーリーです。
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300年前の武士が現代にタイムトリップして来るロマンティックファンタジー。主人公の女性が妙に現実的でちゃっかりしているのでチャキチャキ楽しめた感じかな。北海道の一年を若武者と共に過ごし、共に現代生活を楽しんで恋に落ちる。そんな物語に現実感と共に浸ってました。面白かったです♪
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文章が美しく軽快。サバサバ今風な主人公と300年前からやってきた侍。涙は出なかったけど、キューンと切ないお話。しかしなんでこの本、廃盤なの?ホントに素敵なラブストーリーだと思います。
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侍が現代にタイムスリップしてくるところから始まるラブストーリー。
成り行きから一緒に住むことになって、恋に発展する。
ありがちな展開だけど、日常シーンが丁寧に描かれていて、
感情移入しやすい。
ラストの展開は1級品の切なさ。
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現代にタイムスリップしてきた三百年前の侍との恋愛物語。
20年以上前の作品だけど、全く古い感じがしない軽快な文章。
自分からガツガツいく肉食系(?)主人公まりと、彼女に押され気味の硬派で生真面目な小弥太。そしてそんな二人を落ち着き払って見守る、一枚も二枚も上手なおばあちゃん。
魅力的とまではいかないけど、憎めなくて「なんか良いなぁ」と思わせる登場人物たちにも好感が持てた。まりはちょっと暴走し過ぎな気もするけど。
小弥太が元の時代に戻ってから、まりの記憶を失ってしまったのだとしたらあまりにもやるせない。記憶の奥底で良い、ほんの少しでも良いから彼女の事を覚えていて欲しい。
それにしても戻り方が、ちょっと乱暴じゃないかい。
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原田知世&時任三郎のコンビで映画化された時に、新装丁で出た文庫版を初読。
お月見の夜に、江戸の時代から現代に飛び込んできた小弥太。どこからどこまでも‘武士’の小弥太と、いかにも‘現代っ娘’(書かれた当時の)マリの、出逢いから別れまで、ぴったり一年間のストーリー。
小弥太が関わる人々が、みなその不思議な魅力のとりこになっていく。現代の人々の中に、ちょっぴり浮き加減ではありながら、小弥太が自然に生きている、そんなエピソードのひとつひとつが、面白く切ない。
後書きからは、映画版では製作スケジュールなど現実的な問題のために、二人の時間は半年ほどに詰められて、ラストも変えられたことがわかる。
生きる時代のギャップの大きさから、水と油ほど異質に見えた心が、いつしか混ざり合い、けれど必然の別れを静かに迎える。満月の夜の清浄さにリンクする切ないストーリー展開と、ラストのマリとその祖母が酒を交える静かなシーンが気に入って読み終えただけに、後書きを読んで、映画への興味を一気に失ったことを想い出した。
表紙とカバーにある映画からのカットシーンを見ると、原田知世は凛としてキレイ(今もかわらないね)、若き時任三郎もなかなかステキ。DVDあったら、観て見ようかな?なんて思った。
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二人の関係性とその変化が、情景描写のなかに垣間見える。
舞台設定を練ることの楽しさと重要性を覚えさせてくれた作品。
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仲秋の満月の夜、愛犬セタを連れて散歩に出た
若い高校教師まりは、豊平川の河原で奇妙な男と
出逢う。まるで時代劇から抜け出してきたような
格好の男は、津軽藩士・お手廻り組、杉坂小弥太重則と
名乗った。アイヌの老婆フチの魔術によって
時を越えて北国の街に現れた三百年前の侍と、
現代的な女教師との不思議な恋愛を描く、ちょっぴり
切ない長編ロマンティック・ファンタジー。
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けっこう前の本と聞いて読みましたが、とても新鮮な気持ちで読みました。
アイヌからタイムトリップしてきてしまった侍と本の語り手、「わたし」との一年間の日々。
じわじわとお互いを好きになっていくのに、別れの日も近づいているのがわかるので、せつない気持ちで読み進めました。いい一冊でした。
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もう何度も読んだのだけれど、何度読んでも、切なくて心乱される。
映画の公開をきっかけに読んだので、かれこれ25年も読み続けていることになる。
過去から来た侍と現代女性との期限付きの恋。
最初のうちは彼小弥太に反発・反感を持っていたまりの心が彼に向いていく。それゆえ、彼の過去へおいてきた者への思いに悩む様子に切なくなる。
まりの祖母のできぶつぶりも魅力的。かなわないなーと思わされる。
昭和の時代の物語だけれど、古くならない。
永遠の名作。
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[関連リンク]
ひさかたの - なんて退屈。: http://d.hatena.ne.jp/wtnbt/20130408/1365594061