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紙の本
松風の家 上 (文春文庫)
著者 宮尾 登美子 (著)
明治初年、京の茶道宗家後之伴家は衰退し家元も出奔。残された者達は幼き家元を立て、苦難を乗切ろうとする。千利休を祖とする一族の愛憎の歴史を秀麗に描く傑作長篇。(阿川弘之)【...
松風の家 上 (文春文庫)
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商品説明
明治初年、京の茶道宗家後之伴家は衰退し家元も出奔。残された者達は幼き家元を立て、苦難を乗切ろうとする。千利休を祖とする一族の愛憎の歴史を秀麗に描く傑作長篇。(阿川弘之)【商品解説】
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紙の本
千利休を祖とする茶家一族の男女を描いた芸道小説。「イエ」という日本ならではの経営組織体について多々考えさせられる。
2001/09/27 11:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
茶道についてはほとんど何も知らないのだけれど、表千家、裏千家、江戸千家などの流派に分かれているということは知識にあった。この小説では、それをモデルにしているのであろう、前之伴家、後之伴家、武者之伴家という千利休を祖とする三つの家が登場する。
本文中に記述があるが、京都の旧家といえども開祖以来の家職を守って今日に伝える例は僅かだそうである。賀茂禰宜神主の岩佐家、和歌師範の冷泉家のほかに、この茶道の三家が筆頭に挙げられるということだ。
そのような名門であれば、何を心配することもなく国の手厚い保護を受けてきたのだろうと思いきや、明治初期の動乱期には、その日の食事代にも事欠き、そこいらに菜っ葉でも落ちていやしないかと探したり、いつまで経ってもツケを払えないという噂を聞いた物売りたちが、その家の門前は静かに通り過ぎたものだということが書いてある。
茶道は武人のたしなみとして発展してきたものだから、武家の人たちが傘貼りしたり商いをして糊口をしのいだ時代であれば、茶家の出る幕はない。稽古に通ってくる人もなく、茶会のために蔵のなかにしまっておいた由緒ある品々を道具屋に引き取ってもらっては、薄いかゆにする米を手に入れていたという。
上巻では、落ちるところまで落ちぶれながらも何とか千利休以来の家を絶やすまいと爪に火を点す後之伴家の有り様が描かれている。実家の武家の資産力を期待され、成人してから婿として後之伴家に入った12代恭又斎は、30代で隠居を申し渡して家を出奔する。新家元は14歳。
ヒロインの由良子は、その妹である。誰もつまびらかにはしないが、由良子は12代の子ではあるが異腹である。しかし、子は「家」の子として育てられていくし、「家」の者として家職に貢献していくことが求められる。
縁ある寺の修学教室で読み書きを習う以外は外に出ることなく、由良子は兄家元の裏方として台所で水仕事を担う。やがて、兄は宗家再興を賭け、貴人たちを追うように、身ごもった妻と業躰(商家の番頭のようなもの)を伴って東京に向かう。思い通りの展開ができないまま帰洛するが、力ある人とのコネだけはつけることができるし、子も二人成す。
少しずつ上向いていく家のなかで、由良子は意外な相手との縁談を兄に持ちかけられる。
伝統を守るということが、家を守るということが、人にどのような生活や運命を規定していくかということが存分に描かれている。当主であれ、その家族であれ、弟子や使用人であれ、守っていくための「道具」だという点において同じなのである。
点茶のための道具がいろいろ出てくるのだが、それが何とも皮肉な気さえする。こちらの本物の道具たちは、掛け軸も器も匙も着物も、どのような名品であるかということが書かれ、骨董などの知識として楽しめる。
道具である人たちは、家という生き物の体内で、愛したり憎んだり間違いを犯したりを重ねていく。組織と人というものがじっくり書き込まれていて興味尽きない大作である。
紙の本
茶道宗家の再興小説
2001/10/13 06:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みんみん - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治から大正にかけての茶道宗家を再興していく小説。
その日の米代にも困り、かなりの貧困の中を耐え忍びやっとの思いで茶道宗家を立て直す姿に感動した。この時代、結婚は家同士のもので本人の意思に関係なく結婚させられるのは、今の時代からは考えられなく、驚きの思いで読んだ。また、多くの人達が静かに耐えてきた姿が良く書けていた。
紙の本
地べた這ってでも、夜叉になってでも
2021/03/25 14:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
裏千家ともなると、悠々自適に茶道を伝えてきたのかと思いきや、食べるものにも困るほど衰退していた時期があったとは知りませんでした。逃げ出した入り婿の家に乗り込み、「地べた這ってでも、夜叉になってでも」と啖呵を切り髪を切る家元の母の姿が凄まじかったです。