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評価内訳
2018/10/15 18:53
投稿元:
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久々(初めてか?)「大人の恋愛もの」でGoodだった。「東京青年」との相似性を確認しよう。 19991005 --- この物語は「大人の恋愛もの」ではない。芙美子を頂点として後藤と川島の3人が描く正三角形の物語。しかもそこには世俗的な恋愛をはるかに超えた観念的恋愛関係が成り立っている。 物語はJRが出てくるように現代なのだが、「東京物語」「原節子」そして日本映画最後のスター女優といったワードから、現在が徐々に過去へ溶けだしていき、結果として非常にいい意味でのノスタルジックな雰囲気を醸し出している。 片岡作品でよく語られる女性の外面及び内面のきちんとしたスタイルは、現代が舞台となっている場合、ともすると「おシャレ」で「キザ」なものに誤解されがちである。しかしこの作品ではひとつのキーとなっている原節子に日本でもっとも美しかった女性像を重ね合わせることによって、片岡が言いたかったであろう観念としてのスタイルのようなものが、うまく表現されていると思う。 前述の3人に恵子さん(片岡作品常連の女性。やっぱり空手のインストラクター)を加えた4人が織りなす現在と過去の物語に、後藤が作り出すもうひとつの4人の物語がうまく混ざり合い、夏という季節(千倉の海岸という設定も非常にうまく作用している)の中で、過去と現在、虚と実がえもいわれぬ多重的なストーリーを描き出している。 小説家と写真家、そして完璧な美しさをもった戦後の自由な日本女性という片岡作品の重要な要素をすべて盛り込んだ作品である。 物語の終盤近く、後藤が創造したストーリーの中の芙美子・後藤・川島が作り出した完璧な三角形は実は一触即発の関係をも孕んだものであるが、現実の3人が観念としての関係性をとるというシーンはこの物語全体のひとつのラストシーンである。ヤマをそこに配し、ラストは中華街での穏やかな描写でまとめるあたりもさり気ない演出である。 さらに川島と恵子さんの手紙のやりとりの一番最後に恵子さんが、自分が撮った川島の写真を見ることでレンズのこちら側の自分を感じるというラストが、(レンズという特殊性を通しているせいもあるのか)はっとさせられるほど印象的である。 片岡作品の本質をもっともよく表している作品かもしれない。 20000829
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