「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
凄い作品
2006/02/11 00:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ありさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
古代ローマ、暴君ネロが支配する廃頽した街で、主人公ウィニキウスは、人質であるリギ族の娘リギアに惹かれ、手に入れようとする。行方をくらましたリギアを、奴隷や哲学者と名乗るいかがわしい男キロンに捜索を依頼し、手を尽くすのだが……。
上、中、下巻と長いですし、難しそうだと思っていたのですが、恋人を救うため炎に包まれたローマに飛び込んでいく、そんなフレーズを見て読んでみました。
上巻の前半は、廃頽したローマの様子などが長く語られているので一度読むのをやめてしまったのですが、時間を見て続きを読んでみたら、主人公の恋する女性が姿を消す辺りから展開が早くなり、夢中になって最後まで読んでしましました。それから急いで中巻、下巻と購入しました。
愛する人が目の前から消え、すさんでいくウィニキウスと、それを利用とする哲学者キロンの駆け引き、叔父でありネロの気に入りの詩人ペトロニウスの存在、うつくしい文章で一気に読ませてくれます。
上巻のラスト付近では、今のように世界中に広まる前のキリスト教徒たちの集会の様子、ペテロなどが登場し、当時の様子が鮮明に甦ります。
紙の本
ローマ世界が目の前にある
2019/12/23 21:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
悪名高い皇帝ネロの時代。爛熟を迎えたローマ社会が舞台でそこでの貴族の暮らしぶりが描かれる。貴族は大勢の奴隷に囲まれ何不自由ない暮らしをしながらも、一方で権力を追われる危惧を常に持っている。ウィニキウスという、軍人で若い貴族がけがをした滞在先でリギアという少女を見初める。彼の叔父で有力者で趣味人であるペトロニウスは甥の願望を叶えるべくネロにリギアを宮廷に召喚させ、ウィニキウスのものにさせようと画策。この陰謀はリギアと同じく勃興しつつあったキリスト教徒の力によって妨害されリギアは行方をくらましてしまう。ウィニキウスは怒り心頭し我を忘れるが、キロンという怪しげな人物に彼女を探させて遂にリギアを発見するのだが、それは秘かにローマを音売れていたキリストの使徒ペテロの説教の場でだった。
ローマ世界に遊びつつ、次の巻へ。
紙の本
ローマへ
2003/09/25 21:08
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケンタッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
某新聞のコラムを読んだのがこの本を手にする契機。何と、19世紀末に書かれたという。その新聞を手にしていなかったら、おそらく一生読むことはなかったであろう。そう思うとぞっとするばかり。時は西暦60年頃。所はローマ。ネロが皇帝であった。言わずとしれたキリスト教の弾圧がある。主人公はローマの高官。徐々にキリストの教えに傾いていく。パウロが、そしてペテロが、弾圧されるキリスト人を導く。ありきたりと言えばそれまで。しかし、醸し出される香りは高い。ペテロが聞く“クオ、ワディス?” そして彼が答える。“ローマへ”。
紙の本
宗教の種がまかれる時
2024/01/10 20:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
皇帝ネロのもとで狂乱と恐怖を道連れに破滅へ向かうローマ帝国の物語です。
作者のシェンキェーヴィチはポーランドの作家で、本作は1895年に新聞に連載されたものだそうです。
百年以上たっても色褪せない魅力があるのは、舞台が永遠のローマだからだろうか。
「典雅の審判者」であるペトロニウスを通し、ネロとその取り巻きの貴族たちの生活を描いていきます。
そこには形骸化したローマの神々への崇拝と、豪華を極めていながら醜悪なネロの日々が綴られていた。
そんな中で秘かに広がっていったのがキリスト教だった。
神にすべてを捧げる清廉潔白な宗教といえば聞こえはいいが、現実社会を否定して来世で永遠の幸福を手に入れるために死さえも厭わない宗教だ。
ペトロニウスの目を通して描かれるネロは常に他人の目を気にし、エゴで肥え太った皇帝だ。
そんなネロに追従しながらも裏に嘲笑を込めるのを忘れないのがペトロニウスだった。
ネロの不興をかえば死があるのみという宮廷だが、そんな緊張感さえも冷笑しつつ楽しむことができるペトロニウスは貴族の象徴だろう。
自らの死さえも芸術に変えてしまう精神に美学に極みを見ることができる。
そんなペトロニウスの甥で軍人であるウィニキウスは、最初は力こそすべてというローマ人的な考え方をする短絡的な人物として描かれる。
そんなウィニキウスが一目で恋に落ちたのが美しいリギア、退位したルギイ族の王の娘であり敬虔なキリスト教徒だった。
ウィニキウスはリギアを手に入れようとラテン系の激しさと自己中心的な心をもって奮闘する。
しかしリギアに感化されてウィニキウスの恋情は純粋な愛に変わり、キリスト教に改宗することで生じた人間性の変化とそれによって得られた心の平安が細やかに描かれていく。
残虐な皇帝ネロはローマ大火の罪をキリスト教徒に着せることで自身への非難をかわしてみせた。
だがキリスト教徒は来世を信じ甘んじて殉教していく。
その信仰心には無神論者でさえも胸を打たれるものがあり、特に使徒ペテロが刑場へと向かう姿には感動しかない。
狂信的ではあるが、それゆえに世界を征服したのだと納得できるものだった。
ペトロニウスに象徴される古代ローマが終焉を迎え、ウィニキウスとリギアに象徴されるキリスト教帝国ローマへと変換していく歴史の転換点を見事に描いた作品だった。