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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.8
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/378p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-590025-0
紙の本
パイロットの妻 (Crest books)
深夜に届いた、夫の突然の死の知らせ。衝撃に耐え、溢れる感情を抑える間もなく、さらに信じがたい事実が浮上する…。結婚の深層に光を当てるスリリングな物語。【「TRC MARC...
パイロットの妻 (Crest books)
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商品説明
深夜に届いた、夫の突然の死の知らせ。衝撃に耐え、溢れる感情を抑える間もなく、さらに信じがたい事実が浮上する…。結婚の深層に光を当てるスリリングな物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
アニータ・シュリーヴ
- 略歴
- 〈シュリーヴ〉アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。タフツ大学卒業。短篇でO.ヘンリー賞を受賞。後にケニアでジャーナリストとして働く。
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紙の本
カバーだけ見ていると、伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』を連想するんだよね。でも、この小説のもつ静けさは、生半可なウェットさじゃあない
2004/06/10 20:45
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《娘と二人で夫の帰りを待つキャスリン。午前三時、彼女にもたらされたのは機長である夫の訃報だった》
家族の誰かが死んだら、と思うだけで寒気がする。夫などは、「娘のどちらかが大怪我をしたり、死んだりしたら、ま、離婚だな」という。一生、あのとき、ああしていたら、こうしなかったら、と傷を舐めながら生きるなんて、出来ないとほざく。ったく、うちで死んでも喜ばれこそすれ、悲しまれない男が!とは口が裂けても言うまい。死は、やはり厳粛なものなのだ。
まだ夜も明けぬ午前三時に、機長である夫のジャックの帰りを娘と二人で待つキャスリンの家を訪れたのは、夫が勤めるヴィジョン航空の組合のロバート・ハートだった。ジャックが操縦する旅客機がアイルランド沖16キロの上空で爆発を起こし、104人の乗客と共に絶望視されていることを知らせるために、そして、機長の妻が不用意な発言をマスコミに対してしないように訪問したと言う。
夫の死を受け入れることの出来ない妻の哀しみ。15歳の娘マティに事故を伝えることの出来ないキャスリン。事故の前日、父親と行き違いがあったことを悔やむ娘。孫の世話をするために訪れた祖母ジュリア。遺された家族をマスコミから守ろうとするロバート。ヴォイスレコーダーに残された言葉。夫のジーンズから出てきたレシートの謎のメモ。
幸せな結婚生活の裏に見えてくる現代人の孤独。厳しい労働条件下で、人の生命を預かる職業の厳しさ。それを埋め合わせるかのように、潜行する個人の生活。夫の本当の姿を求めるキャスリンが見たものは。職務で彼女と行動をともにするロバートの心に帰来するものは。霧のロンドンに響く女性の慟哭。
原作は1998年の出版、日本で出版されたのは2001年の8月末、一ヶ月も経ないうちに、あのWTCへのテロがあったのかと思うと、その符合に思わず考え込んでしまう。この本にとって、事件の前に出版されたことは幸運だけれど、果たしてこれが冷静に読まれる環境にあるかというと、今でも難しいかもしれない。
それにしても、翻訳者の高見浩は、いい作品を見つける。外れが少ないクレストブックに、またしても傑作が追加されたという印象だ。朝焼けの海が美しいカバーもいいけれど、作品に流れる湿り気を帯びた音楽感が堪らない。上質な海外文学に出会いたかったら、先ずクレストブックを見てみる。あるいは、高見浩が訳した本に当たる、これが一番。静かなクラシック音楽をかけながら読みたい一冊。
紙の本
いつまでたっても男女の仲は,ミステリアス
2002/03/25 14:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぐりぐら - この投稿者のレビュー一覧を見る
お互いのことを何もかも知っている、理解していると信じていた夫婦。最愛の夫はパイロット。ある日、夫が操縦中の飛行機が爆発し、乗客と乗務員が全員死亡してしまう。テロか操縦ミス?あるいは自殺?
事故の原因を探る調査員が失意の妻の元に派遣される。次々に明らかになる結果は家庭での夫とは異なる、もうひとつの夫の姿を浮き彫りにしていった…。
怖いですよ。一番良く知っていると思っている同居人が、実は全く知らない一面を隠し持っているとしたら。それまで築きあげた十数年というものが、砂のお城のようにさらさらと足元から崩れ落ちていく虚無感。自分が相手を愛した時間は,一体なんだったのか?と考えると、眠ることも出来ないでしょうね。
一人娘も素直に可愛らしく成長し、美しい妻は結婚した頃と変わらぬ愛情を夫に注ぎ、パイロットとしてのキャリアもあり周囲からは羨望の眼差しをおくられる夫。何が彼を、二つの別の世界を持つ男に変えて行ったのか…。読者の興味津々な疑問を、緻密に掘り起こしていきます。
出張が多いご主人を持つ奥様、必読の書? かも。
紙の本
常連投稿者<カレンさん>のレビューと、最後の50ページで急速に意外な転回をしていく配偶者の裏切りを書いた小説に寄せて。
2002/04/25 19:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『朗読者』『アムステルダム』『停電の夜に』などロングセラーを輩出するクレストブックスをせっせと読んで、せっせとレビューを寄せるには理由がある。
人間関係のドラマを、独自の社会観・史観のなかにしっかり位置づけて描こうとする、世界各国の脂の乗った作家たちの意欲作が積極的に取り上げられていると思うからだ。小説には、上記2つの観と、更に言うなら宇宙観があってほしいと願っている。
最近読んだなかでは『最後の場所で』が印象に残る。読書パドックに入っている『ウォーターランド』も楽しみに控えている。
さて、ここに書き込みをしようとして、カレンさんのレビューを興味深く読ませていただいた。カレンさんは本サイトに投稿レビューの多い「つわもの」とお見受けするが、私も意識的に寄せている児童書のレビューでかぶる部分があったりして、当てにさせていただいているお一人である。
このサイトのレビューに私が入れ込んでしまうのは、自分が読んだ本を他の方がどう感じたかを読むのが楽しいからであるし、現実社会ではなかなかお目にかかれない「ネットの向こうの素敵なあなた」の存在に、強く思いを馳せているからである。
だからこそ自分もなるたけ丁寧に、読んでくださる方の心に何か響くものが書ければいいなといつも考えている。
カレンさんのレビューでは、この本、物語の大部分を占める夫婦の深層が解き明かされていく流れに感心した旨が記され、最後の謎解きにも当たる部分がどうもしっくり来ない、惜しかったというような感想が漏らされている。
私の印象は、それとまったく逆。最後の50ページに至るまでの人間ドラマには、むしろいささかの退屈を感じ、終盤で一気に★の数を取り戻したというところである。
読者個人が抱く小説に対する期待や興味、あるいは置かれている環境や精神状態など、ありとあらゆる要素で、1冊の本が様々な位相を見せることの面白さといったら!
パイロットである夫が操縦する旅客機が洋上で墜落。
自分が住みたいと思っていた家を夫にプレゼントされ(いいなあ、たまには意外性のあるプレゼントをお願いしたいよ、わが君!)、ひとり娘マディと申し分ない暮らしを送るキャスリンには信じ難い、寝耳に水のふい打ちであった。
事故の真相が明らかにされるたび、激しい衝撃に堪える母娘にさらなるストレスがかかっていく。多くの搭乗者たちの死が遺された者たちに与える悲しみ、原因は操縦ミスか、爆発事故か、機長の自殺か…。マスコミの取材標的となった自分をコントロールしつつ、キャスリンは娘と夫の名誉を守ろうとする。
そのさなか、妻が見つけた謎の詩篇とメモが、思いも寄らなかった夫のもうひとつの生活を知る入り口として開けていく。
「美しい結婚生活の裏に隠された秘密」については、2時間ドラマの例を持ち出すまでもなく、ドラマのパターンとして多くの読者のなかに刻み込まれているものがあろう。だが、この小説では、キャスリンたちの不幸をいやす役割と、別の役割を帯びて航空会社から派遣されてくる男性の存在感に目を留めさせられる。
そして、最後の50ページ、いや最後の30ページの急転回で行き着く先が、あの国のこの問題であったかという驚きが、私には待ちかねた社会観と史観の断片なのであった。
紙の本
私は夫のことを本当に知っていたのだろうか?
2002/04/10 01:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
深夜、パイロットの夫の乗った飛行機が墜落した知らせが届くところから、物語りは始まる。事故とも自殺とも原因がはっきりしない中、キャサリンは手がかりを求めて、夫の書斎や持ち物を調べ始める。そして、次第に漠然とした不安がはっきりと形をとり始める。私は夫のことを本当に知っていたのだろうか? そのときは気にも留めなかったささいな出来事が、次々と記憶の淵からよみがえってくる。
ロンドンでの2週間の研修についていきたいというキャサリンの申し出を、受け付けなかったのは、なぜ? スタッフの宿舎に深夜に電話しても出なかったのは、なぜ? 墜落した飛行機に、なにが起こったのか。
全米でベストセラーになったらしいが、著者の女性の心理描写の巧みさが、成功の原因に違いない。本書のキャサリンの描写は、本当にみごとでリアルだ。赤ん坊を見て、ふたりの愛が新しく密なしるし、と嫉妬したり、ロバートのささいなくせに、女は決してしない男だけの習慣、と言及することで、彼にひかれる気持ちを言外ににおわせたり、とにかくうまい。
それだけに、前半のスリルに後半の謎解きがついていけないのがおしい。夫の秘密と事故の真相が、もっと納得がいくオリジナリティーのあるものだったら、もっと良かったのに。ロバートのキャラクターも、多くを語らない、職務に忠実で有能な、優しいけれどどこか影がある男、といったところだが、カッコよすぎる。都合よく作られてすぎていて、結局本当はどういう人だったのか最後までわからない。ミステリー小説ではないのだから、衝撃の事実を用意することはないのだが、もうちょっとうまくまとめてほしかった。