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紙の本
新井白石の政治戦略 儒学と史論
著者 ケイト・W.ナカイ (著),平石 直昭 (訳),小島 康敬 (訳),黒住 真 (訳)
【和辻哲郎文化賞(第14回)】天皇・将軍間での二分化された支配という現実。白石は儒教思想をもとにした歴史の捉え直しと改革により、この現実に果敢に挑戦し、将軍を真の王としよ...
新井白石の政治戦略 儒学と史論
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商品説明
【和辻哲郎文化賞(第14回)】天皇・将軍間での二分化された支配という現実。白石は儒教思想をもとにした歴史の捉え直しと改革により、この現実に果敢に挑戦し、将軍を真の王としようとした。その戦略の解明を通して、日本の政治秩序の特徴を析出する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ケイト・W.ナカイ
- 略歴
- 〈ナカイ〉1942年カリフォルニア州生まれ。ハーバード大学大学院修了。上智大学比較文化学部教授、Monumenta Nipponica編集長。
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紙の本
知っているようで、知らない新井白石
2001/09/10 08:42
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投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史上の人物で、名前は良く知られているけれど、実は何をした人物なのかよく分からないという人物がいる。新井白石も、そういった「有名な人物」ではないだろうか。確かに、「正徳の治」と称する「幕政改革」を行った儒学者という位のことは、教科書にも書いてあるから、知っている人も多いだろうが、正直「それがどうした??」と疑問を持っているは、私だけではないのではないだろうか。
さて本書は、大きく2部構成とされており、前半部分は「白石の見方や政治的経綸の多様な側面を形作った背景要因」を描き、後半部分では「白石がどのように自分の経綸を正当化しているか」という点を描き出すことに充てられている。そして、これらの記述を通して描き出されるのは、「主権は二人の支配者の間で正しく分割することはできない」という儒教の原則=包括的な権威の原理に則り、朝廷の上からの権威と譜代家臣団や諸藩の支配とに掣肘されていた18世紀初頭の徳川将軍を「国家君主へと変容させ」るべく、譜代家臣団を含む諸藩の権力と朝廷の権威の「曖昧な配分に挑戦」した白石の悲壮な姿である。
不勉強を省みずに言うが、白石には何とはなしにエリート儒者というイメージを持っており、本書の後半部分で描き出される白石の自己正当化の論調の『矛盾』と『くどさ』には意外の感を逃れ得ない。財政政策の面を除くと吉宗によってほとんど政策が引き継がれなかったという点も併せて見ると、著者が白石を評して「ゴリアテが長剣をふるいつつ単身イスラエル軍に突入したように戦った。」としているのは、言い得て妙である。
ただし残念なのは、白石の当時の政治状況に対する孤高の挑戦の描写は非常に興味深いものがあるが、そもそも「なぜ、白石は徳川将軍を儒教的国王に改変しようとしたのか」という点が、本書では些か不分明であることである。単に、白石が儒者として儒教の原則論に忠実であり、かつ将軍権力の至高性を高めれば将軍の私的側近としての自己の政治力も高まるという現実的打算があったからという説明だけでは、少し説得力が弱いのではないだろうか。白石の思想的根元、つまり当時の朝幕二元政治という「因習」に挑戦せざるを得なかった理由−危機感とでも言えば良いのだろうか−について、更に突っ込んだ言及が欲しいところである。
なお、本書は英語版の翻訳であり、「日本語版の本書では読者の背景や関心が英語版の読者のそれとは異なることを考慮して」、前半部分は「大幅に省略し書き改めた」とのことである。素人の私は、白石の自己正当化の過程を論述したほぼ原著のままの後半部分については、前半部分に比較して、それほどの知的興奮を味わうことができなかったことから考えると、本来本書は江戸時代の思想史の専門家向けに計画された書であり、白石自体の歴史的意義に対する知識が十分にある方が読むべき書なのだろう。この点、ご留意されたい。
紙の本
出版社からのオススメ
2004/04/08 03:17
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投稿者:こや - この投稿者のレビュー一覧を見る
〈主要目次〉
第一章 白石と将軍サークル
第二章 思想的影響,心理的気質
第三章 幕藩制国家再編への視座——経済・行政問題
第四章 王の創造——将軍権威の象徴の再形成
第五章 批判への応答
第六章 歴史からの議論——皇統の永続的主権性の再検討
第七章 武家支配の位置づけの再定義
第八章 矛盾
【担当編集者から】
白石については,その博学に圧倒されるとともに,言語学者・歴史家としてきわめて合理的な思考をする人物であるというイメージを持っていた.特に「神とは人也」というメッセージは,当時もそして近代日本においても,大いなるカタルシスとなったのではないか.ところが本書では,全く異なる白石像を描き出す.是非ひもとくことを勧めたい.日本について,歴史について,多くの知見を本書から得ることができる.と同時に,苦心の翻訳の程も感得するはずである.