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商品説明
どうして「K」がまた現れたのだ! 作家の「私」が旅先で出会った女は、誤って死なせた女によく似ていた…。めっぽう危険な男と女のものがたり。私小説と超常世界がクロスする、ミステリアスでエロティックな新境地小説集。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
椎名 誠
- 略歴
- 〈椎名誠〉1944年東京都生まれ。東京写真大学中退。流通業界誌『ストアーズレポート』編集長を経て、現在は作家、『本の雑誌』編集長、映画監督など幅広い分野で活躍。著書は「黄金時代」など多数。
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紙の本
幻想譚に分類するのが無難なんでしょうが、全編を通じて溢れ出すエロスというのも、今までのシーナさんにはなかったのでは?何だか、つげ義春の漫画を小説で読んでいる気がします
2005/10/12 21:45
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《チベットから来ていた青年と一緒に旅たった妻を見送った作家は、14階の仕事場の窓から、外を吹く風のざわめきを見ているうちに、飛べるのではないかと思い始める》幻想エロス、と書いてしまうと、ちょっと違うんですが・・・
表題作の「飛ぶ男噛む女」は、チベットからきた青年が椎名の家に寝泊りし帰国するとことから始まります。青年が日本の文化に慣れていくあたりは、他社のエッセイでも何度か読んだことがありますが、それが作家の仕事場の情景になった瞬間に、妖しく変貌するのが劇的です。しかも、その話に、以前出版された『中国の鳥人』という作品が溶け込み、精神科医の妻Kという女性が絡むというのは、なかなか複雑な構成です。
仕事のスケジュールが突然空いて、山に向かった男が出会った女との交わりを描く「すだま」。山にこもって小説を書こうと、亡くなった作家の山小屋を借りた男が出会う吹雪の中の銃撃と、山荘の持ち主である娘の怪「洞喰沢」。
シンポジウムで不本意な発言をして気が滅入った帰り道、見知らぬ男から持ちかけられた「人を殺してしまいそうだ」という言葉と、女との不倫行を絡ませた「樹の泪」。朽木沢というひなびた村の温泉旅館での女将との濃密な情交を描く「ぐじ」。
全編、女との妖しい交わりと主人公の心の奥底にあるものを描いたものばかり。主人公である作家の精神状態の不安定さが、現実とも幻想ともつかぬ世界を作り出す点では、現代の最先端を行く小説群に入りますが、論理より感覚的に話を進める点が、如何にも椎名らしいといえます。
今までの作品に比べてエロスが前面に出てきて、ユーモアが影を潜め、妖しさが溢れています。なんだか、つげ義春の漫画を、小説で読むような感じとでも言ったらいいでしょうか。カバーを飾る原マスミの画の土俗的な風合い、これが何とも内容にマッチしていて、ありふれてはいるのですが、インパクトは中々なものです。
紙の本
新境地開拓
2001/11/02 21:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:茶羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
摩訶不思議。そんな本です。内容もその通り摩訶不思議なのだが、この本はなかなか読者にそのジャンルをはっきりとは表せてくれない。そんな特徴も持っている。
最初、椎名誠十八番のSFではないかと思いつつページをめくっていったのです。ところが、どうも椎名誠が普段から書いているエッセイにも思えてくるのです。実際、彼のファンなら一度は聞いたことのある身辺雑記の内容が随所に現れてくるのです。最後の最後まで???? を頭に漂わせ、そして読み切った瞬間に「これはエッセイではない」と結論がつくのです。読後の余韻は今までにない感じになります。しかも、初めてではないでしょうか、椎名誠がラブシーンを書いているのです。是非、一読を勧めたい本であります。
椎名誠の新境地、是非遭遇して下さい。
紙の本
不思議な余韻
2004/02/24 16:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:より - この投稿者のレビュー一覧を見る
不思議な短編集。
どの話もそれはなんなの? どうだったの? というのが正直な感想。
タイトルになっている「飛ぶ男、噛む女」では精神科医の感情がまったく文面からは読み取れずそれがかえって気になって仕方がなかった。
椎名誠の本はこれが初めてなので、もう少し色々読んでみたくなった。
紙の本
椎名誠の本格的フィクション。巧いので感心した
2002/01/09 22:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
椎名誠の小説はエッセイの延長線上の作風が多い。むろん、これはこれで面白いのだが、この短篇集、彼としては珍しく本格的フィクションで、しかも巧いので感心した。表題作の他に、「すだま」「洞喰沢 ほらくいざわ」「樹の泪」「ぐじ」「オングの第二島」と全6作入っているが、「樹の泪」以外は『小説新潮』(99年〜01年)に載ったものである。すべて楽しめたが、ここでは「飛ぶ男、噛む女」を紹介しておこう。椎名誠の小説にしては艶っぽいシーンもあり、怖い小説でもある。
「二年ほど私の家に居候をしていたチベット人のツアンが帰国した。ツアンは二十九歳。純朴な青年であった」と、この短篇、とりあえずいつもの乗りで始まる。妻もツアンと一緒にチベットに旅立つ。前年は、妻を成田空港まで送り、その足で赤坂にある14階の仕事場に向かった。その日はとても風が強く、彼の神経症が頭をもたげた。「その時、吹きつける風が私の立っているベランダの下から煽(あお)るように私の背中の後ろを走り、頭の上のほうを通り抜けていった。激しい陽光は緑の海にまんべんなく降り注ぎ、さらに激しく沢山の樹々が揺さぶられ、うねり、身をゆすっていた。/今しがた、私の体をもちあげんばかりに吹きすぎていった上昇気流のような風が再びやってきたら、その荒れ狂う樹々の海のなかに飛んで行けそうだった。(……)/やっぱりそうか。こういう時は人間だって、空を飛ぶことが出来るのだ。そんなことはとうにわかっていることであった……。激しく揺れる緑の海の上を両手を拡げ、“K”がかろやかに飛んでいる」。
これは比喩ではなく、「私」は時折、こうした気分になるらしい。翌日彼は、四年ほど前から通っている柿の木坂の精神科医、飯塚医師のカウセリングを受けに行く。これまたフィクションではなく、岩波書店のPR誌『図書』の連載エッセイなど、これまでにも何度も書いている。超元気なアウトドア派、椎名誠のイメージからすると、ちょっと意外な気もするが、作家気質と思えば、何となく納得出来る。
「私」は、こうした心情の時は旅に出るに限ると、かねてより依頼されていた「離島ルポ」の仕事も兼ね、「甑(こしき)島」に行くことにし、鹿児島の串木野港からフェリーに乗る。するとその船内で“K”に似た女を見かける。“K”とは数年前、中国で知り合ってちょっと関係のあった若い女だったが、妻が日本を留守にしている間、必ず彼の周辺に現われた。「私」が村営ホテルに着くと、偶然、“K”に似たその女も同じホテルで、「このカメラ、買ったばかりで操作が分からぬので教えて欲しい」と、声をかけられる。そして夕食時、気をきかせたホテル側が二人だけのテーブルにしてくれる。二人は焼酎を飲み、「私」は彼女を自室に招く……。ここから濡れ場となり、さらに怖い話になり、意外な「オチ」もある。