紙の本
1枚の写真に翻弄された人たち
2024/03/01 15:49
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
かの有名な、米兵たちが硫黄島に星条旗を掲揚する写真。日本軍との激戦を制した米軍が立てたと単純に理解していたが、この写真は(1回目ではなく)2回目の国旗掲揚である。しかもその後も血みどろの戦闘は続き、ここに写る6人のうち3人はそこで戦死。
生き延びて帰国した3人は、「英雄」として持ち上げられ、国策に利用された。うち2人は、その「運命に圧倒され」、アルコールや心臓発作で亡くなっている。
もう1人は生涯、このことを封印した。
本書はそのジョン・ブラッドリーの息子であるジェームズ・ブラッドリーが、父の足跡と真実を追ったノンフィクション。訳書なので読みやすくはないが、元米兵の息子のいわんとすることは分かる。
ある表象が誤った伝達や理解で、事実がねじ曲げられていく怖さを痛感する。
紙の本
映画原作
2015/08/31 21:22
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投稿者:しましま - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリント・イーストウッド監督の映画の原作ということで読んでみた。ドキュメンタリーというけど、自分の父親を持ち上げすぎじゃないの?と突っ込みを入れたくなる客観性のなさ。息子が自分の父親に取材して書かれたものだということを割り引いて考えるべきだろう。また、当時のアメリカ人としては無理もない感覚なのかもしれないが、アメリカ人が日本人をどう見ていたのかを感じると胸くそ悪い。
賞を取ったりこの写真を元にしたレリーフが戦没者墓地に立てられたりで有名になりましたが、実はこの写真を元にしたレリーフは硫黄島にもあります。出来は大分劣りますが…。
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クリント・イーストウッド監督、ライアン・フィリップ主演で映画化される話題の原作(ピューリッツァー賞受賞!)。硫黄島の摺鉢(すりばち)山に星条旗を立てる写真は〈決定的瞬間〉をとらえたものとして世界的に有名なPhoto Iconになっているが、6人の米軍兵士はうち3人死亡。激戦を物語る。筆者のジェームズ・ブラッドリーの父ジョン・H・ブラッドリーは3人の生還者のうちのひとりで、彼らは「英雄」として米国民に迎えられた。
ノンフィクション小説として読むと、あくまでアメリカからの視点で日本人の描き方に多少疑義を感じる部分もある。『プライベート・ライアン』で成功したスピルバーグが真っ先に映画化権を取得した企画だが、アイロニーに定評あるイーストウッドだけにバランスの良い描き方をするのではないか、と期待がもてる。最近発表されたニュースでは、日本軍の側から描く『Lamps Before the Wind』(風前のともしび)もカップリング企画として、日本人監督(Who is that?)の手により映画化されるらしい。
イーストウッドによると、ブラッドリー家の資料はすべて、『マディソン郡の橋』のフランチェスカ(映画ではメリル・ストリープ)が隠していたように、屋根裏部屋にあったらしいが、この本をもとに、どうやってエモーションをつむいでいくか、名手イーストウッドの手腕に期待大。
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作中にも触れられていましたが、ジョニーキャッシュの歌で興味を持って読みました。
前半、硫黄島上陸まではなんとも説明調で退屈な本でしたが、
戦闘が始まると読む速度がぐんぐんとましていきました。
フィクションではなく、実際にこの戦闘に参加した
海兵隊員から聞き取りをした話。
日本という国を知らず、ただこの島で
敵として向き合ったら
日本人を憎んでしかたないかもしれません。
もちろん殲滅された日本兵も犠牲者ですが。
この作者の父親についての本なので、
どうしても良く書いてしまうのかもしれません。
実際には彼ら海兵隊も、そして日本兵も、
どちらも家族を持った人間だったのでしょう。
一番の収穫は、太平洋戦争はアメリカにも
大きな傷を残したということがよく理解できたこと。
戦争はいつまでもなくなりませんが。
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(2007.01.14読了)(2006.11.03購入)
(「BOOK」データベースより)amazon
摺鉢山に星条旗を掲げる海兵隊員―「世界で最も美しい戦争写真」にその名を刻んだ6人の兵士は、その後どんな運命をたどったか。そのひとり・著者の父は終生、輝かしき過去を語らなかった。太平洋戦争の帰趨を決定づけた硫黄島をめぐる日米の血みどろの死闘とそれを戦った男たちの知られざる人生を描いた迫真のドキュメント。
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米軍がすり鉢山に星条旗を掲げた金属パイプは日本兵の生命線ともなる地下壕に張り巡らせた水道管だったとか。わずか65年前の同胞の蒙った悲劇に心揺さぶられる。著者、そして2部作として映画化してくれたクリント・イーストウッドに感謝。日本の失敗の歴史を忘れてはいけない。ただ、現在の官僚システムが当時と比べてもそれ程改められてない事が日本2度目の敗北にカウントダウンされている。
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想像しかできない世界。想像しなくてはいけない世界。けれど、想像に取りつかれてはいけない世界。
65年前に実際に起こったこと。
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日米ともに最大規模の犠牲者を出した、「硫黄島の戦い」と、硫黄島で(2度目の)星条旗を立てた若者たちのその後の人生を追う。
ま、ドキュメンタリー/歴史論文というよりは、ノンフィクションですよね。
著者本人は一大歴史録を書いたつもりでいるようだが、その割には妙に私見やロマンティシズムが入っているし、おそらくインタビューをする内にインタビュイーに共振してしまったのだろう、明らかにインタビュイーの感情的で非論理的な発言をそのまま「記録」にしてしまっていたりもする。
ついでに言うと、彼の父親(星条旗を掲げた若者兵士の一人でもある)について皆が悪いことを一切言わないのは、もちろんブラッドリー氏の本当の人柄にもよるだろうが、インタビュアーが他ならぬブラッドリー氏の息子だからという理由もあるだろう、という極めて当たり前なことも勘案すべきかと(そういうところに気づかないのがなんというかアメリカ人っぽいというか…って、それは偏見か)。
そんなこんなで、日本人からすると「いやいやそれは…」と軽くいさめたくなる部分もある。
ただ、やはり価値ある一冊であることは間違いないと思う。
硫黄島の戦いは、日米の両軍がまともに地上で闘い合った数少ない戦いの一つで、日米双方の記録や言い分を知ることができる。
日本での太平洋戦争に関する話って、どうも東京大空襲や沖縄戦、原爆に関するものが多く、それはそれで非常に貴重なのだが、中国やフィリピンで何が起きていたか、硫黄島で何が起きていたかっていうのも、もう少し勉強すべきではないかなぁと思う。特に、こういう「互いの言い分を聞ける」ケースをちゃんと取り上げて、中高生に戦争について考えさせるべきではないかな。
この本を読んで、「じゃあ日本側はこの戦争をどう考えていたんだ」と調べてみると興味深い。栗原中将に関する本は数多く出版されているが、インターネット上に一兵卒の手記が公開されていて、こちらも一読の価値あり。
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ペリー提督の航海誌と平行して読んでいるせいもあるが、まず感じるのはアメリカ人の
自分たちが正義で世界のリーダーであるという考え方だ。
相手の土地に踏入り、自分たちで勝手に名前をつけ国旗を掲揚する。
自分たちの要求を押しつけ、通らないなら武力行使に出るとはっきり明言する。
江戸時代から、おそらくその前から、ずっと変わらない自信に満ちたアメリカの姿。
アメリカでは兵士は国を守った勇気ある英雄と扱われる。
戦時中は勿論、戦争が終わった後でも讃えられる。
しかし日本では、責められる。
残虐行為だ、侵略戦争だと責められ、
国の命令で仕方なかったのだからあなたも被害者だと言われ
どちらにしろ報われない扱いだ。
この違いは、勝者か敗者の違いなのか。お国柄だけの違いだろうか。
この違いとは逆に、人の愚かさは国境には関係ないのだなということも感じた。
地獄のような状況で必死に戦い、ただただ必死だった。
自分はたまたま戻ってきただけで、本当の英雄はあの場所で雄々しく戦って散っていった。
そんな”英雄”の声を、誰も聞こうとはしない。
観衆が聞きたい言葉ではないからだ。
勇ましく常に英雄であって欲しい。観衆の幻想を押しつけ、つきまとう。
若者達のその後の人生まで狂わせたのは、単に戦争が全て悪いという話には留まらないだろう。
筆者の父がどうしても日本に来るつもりになれなかったことは、想像に難くない。
仲間が酷い目に遭わされた。
それをした人間と息子の友人達が同じ人間ではないとわかっていても
あからさまに日本を嫌うことはしない人だったとしても
日本と聞いただけで脳裏を過ぎる辛い光景を打ち消すことは十数年経っても難しいことだったろう。
ただ、もしもそれでも彼が日本に来たとしたら
もしかしたら何かどこかで軽くなるものがあったかもしれないと思うと悲しくなる。
また、硫黄島の戦闘においての記述でところどころに栗林閣下の名前があがる。
悲壮な戦いに胸が痛くなる。
”歪められた武士道”という言葉を、正直に言えば『外国人』に言って欲しくないというのが自分の個人的な印象である。
日本人でもそうした言葉を使い、それによってあるものを讃えあるものを貶めようとする人
(まったく他意もなく人に言われてそうだと思いそのまま使う人もいるが)
がいるが、
『武士道』たるものを履き違えての発言であることが多く、よく悔しい思いをする。
筆者は日本人の友人もおり、日本という国を比較的理解している人ではあろう。
しかしどうしても歴史観等について疑問に思う部分がある。
その点については訳者が、抑えた言葉でたった数行で簡潔に書いておられた文章を読んで
やや溜飲を下げた。
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欺瞞を暴くという爽快感に溢れる一冊。
硫黄島の戦闘の悲惨さがまずもってリアルだが、やはり1番興味深いのは、写真の3人が英雄にまつり上げられていくシークエンスだろう。そもそも戦闘中の写真じゃなかったことからして馬鹿馬鹿しいが、国威発揚に利用したアメリカの欺瞞も馬鹿馬鹿しいし、それに熱狂したアメリカ国民も馬鹿馬鹿しい。美談によって正当化される戦争は勿論ないのだが、ましてやそれが偽りの美談だったのだから噴飯ものだ。
ただ、他の2人は愚かな生き方をして、真面目な人生を送ったのは自分の父親だけだったという著者の礼賛はやや鼻につく。
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映画原作。表紙の有名な写真である旗を立てる米海兵隊員たちのことを描くノンフィクション。著者はその内の一人の子供で、父は戦争の経験をほとんど語らなかったのだという。激戦地硫黄島の戦いで偶然に撮った写真が米国のシンボルになり彼らはヒーローになってしまった。戦時国債の客寄せとして彼らを使おうとする国や軍部と熱狂的に持て囃されるそれぞれの生き方を取材している。硫黄島の戦いの話は当然重要だが、その後のことと父と子の話がテーマだと感じた。日本人への偏見が強いかなと感じたが著者は現代日本に親しい人のようだ。
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「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」両映画の原作にもなった、「父親たちの星条旗」の主人公三人のうちのひとり、ジョン・ブラッドリーの息子さんが書いたドキュメンタリー。
両方の映画も観たし、かなり脳内で合体していい感じに仕上がりました。
「世界で最も美しい戦争写真」
その内のひとりが自分の身内だったら?
自慢しちゃう?と、思う。だって教科書にも載るだろうし、正しく「Theヒーロー!」と子供心に思うだろうな。
でも、ブラッドリーは自分の子供にこう云う。
「ずっと忘れないでいて貰いたいことがあるんだ。
硫黄島のヒーローたちは、帰ってこなかった連中だ。」
そして「仲間の為」に戦ったと。
決して日本が憎い(その時とは別に)訳ではなかったと思う。
あとこれだけは心に留めておきたい。
「良い戦争」なんてある訳がない。
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[ 内容 ]
摺鉢山に星条旗を掲げる海兵隊員―「世界で最も美しい戦争写真」にその名を刻んだ6人の兵士は、その後どんな運命をたどったか。
そのひとり・著者の父は終生、輝かしき過去を語らなかった。
太平洋戦争の帰趨を決定づけた硫黄島をめぐる日米の血みどろの死闘とそれを戦った男たちの知られざる人生を描いた迫真のドキュメント。
[ 目次 ]
神聖な土地
アメリカ代表の若者たち
アメリカの戦争
使命感の呼びかけ
槍の穂先の鍛練
艦隊
Dデイ
Dデイ・プラス・ワン
Dデイ・プラス・ツー
Dデイ・プラス・スリー
硫黄島の星条旗
神話
「火の消えた地獄のようだ」
アンティゴー
帰国
マイティ・セヴンス
名誉に関する戦い
映画と記念碑
戦闘犠牲者
ありふれた美徳
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
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