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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2002.3
- 出版社: PHPソフトウェア・グループ
- サイズ:20cm/254p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-569-62006-X
紙の本
響くものと流れるもの 小説と批評の対話
小説とは何か。批評の役割とは何か。ときに共感し、ときに激しく激突する。今もっとも活躍する両作家の、妥協なきスリリングな対話! Webマガジン『JUSTICE』他掲載分と、...
響くものと流れるもの 小説と批評の対話
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商品説明
小説とは何か。批評の役割とは何か。ときに共感し、ときに激しく激突する。今もっとも活躍する両作家の、妥協なきスリリングな対話! Webマガジン『JUSTICE』他掲載分と、既刊単行本からの転載をまとめる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
福田 和也
- 略歴
- 〈福田〉昭和35年生まれ。慶応義塾大学助教授。評論家。著書に「日本の家郷」(三島由紀夫賞)等。
〈柳〉昭和43年生まれ。東京キッドブラザースを経て作家に。著書に「命」「魂」等。
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紙の本
「タフな保守反動の若手文芸批評家」と「辺境の超克を目指す数奇な作家」との論争の顛末、そしてふしぎな信頼関係。
2002/06/11 17:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
なあなあの日常会話の延長は論外として、じゃれるように言葉を遊ばせ応酬するスタイルの対談というのも、まあ面白いには面白い。だが、やはり対談というもの、互いの喉元に切っ先をチラつかせながらマジで組んでもらいたいものだと思っている。
「福田和也」と「柳美里」——文芸に興味を持つ人というのは世の中のごくひと握りという感じがしないでもないが、その稀少な同好の士の集合体にとって、このふたりは今もっともホットな批評家と作家だと言えるのではないだろうか。
平たく言ってしまえば、売れっ子であり話題が多い。それゆえにか、好き嫌いの対象として意見が分かれる…といったところ。その気になるふたりが、読者の間で勝手にひとり歩きを始める「小説」と、それを分析した上で価値をくだす曖昧な「批評」というジャンルを背負って真っ向から対決するのであるから、これは、なかなかにスリリングな本なのだ。
福田氏と柳氏の著作は数冊ずつ読んだことがあるものの、前者の『日本の家郷』『甘美な人生』『奇妙な廃墟』『日本人の目玉』、そして近作で石原莞爾を書いた大著『地ひらく』、後者の『水辺のゆりかご』『命』『魂』『生』といったかんじんな著作群をまだ読んでいないのが何とも悔しい。
それでも、小説とは、批評とはどういうものなのかという理念をしっかり見据えるふたりの攻防には、ものごとの核心に立ち向かう真摯な姿が露わに出ていて、各人の著作を知らない読者であっても置き去りにされる感じはまったくない。むしろ、これをとっかかりに各作品世界へ踏み込んでいけばいいのではないか。
福田氏は巻頭言で、「読者をもつこと」「独自の価値観をもつこと」——この2つの要請に応えた時に、批評は独立した一個の文学ジャンルになったと指摘している。そして、近代批評の祖として小林秀雄が批評を文学作品化した途端に、小説を必要としなくなった。批評は、小説にとっての他者に、むしろ対立物へ転じたと続けている。
その上で、自分が批評家であろうとしているのに負けず、より強く、作家であろうとし、その全存在を文学に捧げている柳美里を同時代に生きる作家の中で数少ない、「他者」と認めている。
対談や雑誌『新潮』で戦わされた論争を読み進めていくと、「戦友」という言葉がふさわしい気がしてくる。同じ隊で同じ釜の飯を喰ったという意味ではなくして、戦線のこちらとあちらの塹壕の中にふたりは身を潜め、ときどき猛烈な銃撃戦を行いながら生きのびている。
福田氏が『命』を倫理的な本だと評しているのが興味深い。「良い」「悪い」という価値判断をくだす最もピュアな形が倫理観だと私は思う。
人間各人が属す集団の教育やら個人的、集団的経験を越えて、倫理観というもの、人間の本能的なところに宿っているものではないか。それを宿しながら、人は後天的に得た要素を、その倫理の壷の中に溶かしこんでいき、「無意識の意識」のうちに殺人や近親相姦を犯していく、堕ちていく…といったイメージを持っている。
柳さんが経験した、大切な人の死と出産のパラレルな体験は、そのようにしてある倫理を、ラジカルに目覚めさせたのかもしれない。歯のかみあった対談には、深くものを考えさせてくれる力が宿っている。
紙の本
天才
2002/04/22 21:32
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
福田和也の著書はいつかまとめて読もうと思いながら果たせないまま、日々積み上げられていく膨大な物量に圧倒されている。とりあえず『奇妙な廃墟』と『日本人の目玉』を読んでみよう(本書に収められた対談で柳美里がこの二冊を読んで「天才だと思いました」と言っている)。柳美里の文章はこれまで一字一句たりとも読んだことがなかったし、処女小説「石に泳ぐ魚」をめぐる訴訟沙汰やサイン会の事件にも全く関心がなかったのだが、少し興味を覚えたのでいつか読んでみよう。それから「セリーヌ全集」もまとめて読んでみたいと思った(まとめてとかいつかとか言っているうちは、まあ駄目だろうけれど)。