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紙の本
上巻は面白いんだけど
2002/07/14 07:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ビンゴ - この投稿者のレビュー一覧を見る
うーん、悪くはないけど特別凄く良いって訳でもない微妙な読後感。特に上巻は傑作! と思ってこの本に出会えたことを喜んでたけれど、正直下巻はイマイチだった。特にアトランティスのハーツのヴェトナム戦争で大きな深手を負ったアメリカの姿が描かれるくだりは、読んでいてあまり面白くなかったしちょっと違和感があった。個人的には上巻のノリで最後まで書いてほしかったなぁ……。
紙の本
少年の前に現われた不思議な老人が、小さな世界を押し広げてくれる大きな存在となる——コンサバな滑り出しだが、胸に眠るおさな心をくすぐってくれる魅力的な前半。
2002/05/20 11:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『IT』と『スタンド・バイ・ミー』という少年たちを主人公にした作品を読んでいないから、それらと比較することができないのが残念なのだけれど、キングという作家には、これからもっともっと少年時代にこだわった小説を書いてほしいな、と強く思わせられる上巻だった。あるいは、もう当然のこととして彼の頭のなかには、その辺の構想が広がっているのかもしれないが…。
力のある作家には、義務として、死ぬまでに良質の児童文学や、少年時代の思い出を結晶させた小説をいくつか書いてほしいものだと思う。子どもの本作りに少し関わったことのある者として、ぜひにと切望する。
あらゆる可能性が開けた子どもたちに、本物に出会う率が高い環境を用意しておくことは、大人たちの努めなのだ。どうでもいいような童話や児童文学が出回り過ぎているから、キングのような人には、気合いを入れて貢献してほしい(『ドラゴンの眼』は気合いに欠ける気がした)——そんなことまで考えた。
成長してしまった読み手たちが心の奥底にしまい込んで忘れていた大切な思いに手を入れ、ぐっとつかんで存在を思い出させてくれるような感じで、この上巻は進んでいく。そう、ちょうど『グリーン・マイル』に出てくるハンド・パワーのようだ。
話がやや巻き戻しになるが、家人を始めとして人から薦められていたキングのホラーには、なかなか足を踏み入れる気がしなくて、ずっと留まっていた私が初めて読んだのは、『グリーン・マイル』であった。
そこにあった<ファンタジー味>というのは、正に私が小説に求めるものであって、こういうものを書く作家なのかと驚いた。それから読み始めた血の凍りつくようなホラーでも、どちらかというと、おとぎ話のような町の人びとの人格や性格の描写、夢(たいがいは悪夢)のような不思議な出来事に魅せられてきたから、キングの「懐旧」や「ファンタジー」への傾倒は、とても嬉しいことである。古いファンは、その逆かもしれない。
シングルマザーと暮らす少年ボビーは、仕事や、女としての自分の確認のため、子どもの世話がおろそかになりがちな母親に、愛情を抱きながらも疑問や不安をもって日々を送っている。
しかし、心の隙間を埋めてくれるような素敵なガールフレンドがいるし、気の合う親友もいる。
ある日、小さな少年の世界を押し広げてくれるような人物が近くに越してくる。ぱっとしない風采の老人テッドを、ボビーの母親は疎ましく思うが、本の話題をきっかけに少年と老人の魂は相呼ぶのである。老人が薦めてくれた小説『蝿の王』は、ボビーが新たな扉を開ける鍵となり、目に見えない形で、少年と母親、友人たちとの関係に変化をもたしていくのだった…。
(この『蝿の王』——たぶん過去に文庫で出ていたのだろうから、だとしたら再版を望む)。
何か超常的らしい力が登場し、後半の展開の中心的な素材になっていく。これも『グリーン・マイル』を思わせるものだ。「それが下巻ではどう展開していくのだろうか」という期待とともに、「下巻で思いっきし泣かせてくれるかもしれない」という期待もふくらむ出来になっている。
わりとコンサバと言えなくもない物語の滑り出しだが、そこをしっかり押えている点に、癒しの魅力を感じた。
紙の本
訳文の所為でしょうか、いつものキング節にくらべれば格段に読みやすいもの。文学作品が沢山出てくるのも、読書好きには魅力のひとつです。
2006/05/31 20:38
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《自転車が欲しくてしょうがないボビー。彼の家の上に引っ越してきたテッドと言う老人が持ちかけたアルバイト、それは街で起きる異変の兆しを彼に知らせるというものだった》ファンタジック・ホラー。
舞台は1960年のコネチカット州ハーウィッチです。36歳の父親を亡くし、母親のエリザベスと2人で暮らすボビー・ガーフィールドは11歳。誕生日には自転車が欲しいと思っています。しかし、お金に厳しい母親は、ボビーがそんな素振りを見せるだけで怒り狂うのです。その荒れ方の酷さと言ったら、とても普通の母親とは思えないくらいです。
そんなことで母親からのプレゼントをあきらめたボビーは、自分でアルバイトをして自転車を買うことを決心します。その彼が住む建物の3階に、一人の老人が住むことになりました。名前はシオドア・ブローティガン、疲れたボリス・カーロフといった印象の男の人です。少年の母であるリズは、早速、この老人を胡散臭い怪しい人間と決め付けるのですが・・・
誕生日に、リズから成人用の図書館利用カードを貰ったボビー。自転車こそ自分で買わなければならないけれど、ガードナー『ビロードの爪』、シマックのSF『太陽をめぐる輪』を借りることが出来て、少し大人になった気分です。そんなボビーが家に帰ると、テッド老人が声をかけ、読書の話をしてくれました。そして夏休みが近づいたある日、老人は少年に一冊の本をプレゼントします。その名は『蠅の王』、これがとっても面白く、ボビーが全く知らなかった世界を見せてくれます。
そのテッドが少年にアルバイトを持ちかけてきました。表向きは、老人に新聞を読んであげることです。でも、本当は街に現れる黄色いコートを着た下衆男たちに注意し、不思議な兆候があれば知らせること。
ガールフレンドのキャロルとの始めてのキス。テッドを敵視する母。老人に連れられていった店で知らされた父親の本当の姿。少年をテッドに預けて男達と旅に出た母親に降りかかる運命。ボビー、キャロル、サリー・ジョンに因縁をつけるセント・ゲイブリエル中学の生徒たち。
テッド老人が見せてくれる本当の世界の素晴らしさに気付き、彼に友情を抱き始めたボビーは、テッドが街を去るのが嫌で、自分が街で見かけた様々な兆候を老人に教えようとはしません。そのことを後ろめたく思っている間に、テッド老人は時折、放心状態に陥るようになっていきます。
同じ年頃の仲間同士の友情、年齢の壁を超えた愛情と信頼、親子であることで誤魔化されてきたもの、本当の人間らしさとは、勇気とは。人を愛すると言うことの意味を問う作品でしょう。
上巻は、予想もしない形で終わりを告げます。この話は下巻で40年の歳月を経た1999年まで繋がっていきます。今回はあえて上巻の途中まで紹介しましたが、文章はいつもほどの粘着性を感じさせず、キングの文が苦手な人でも、どんどん読めるものです。ちょっと映画のシーンを思わせるロマンチックな装丁は、単行本とは違いますが、面白いもの。ロゴの選び方といい、内容の面白さといい見事といえます。