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商品説明
【吉川英治文学新人賞(第24回)】【日本冒険小説協会大賞(第21回)】あるべき姿に日本を導くため、密かに進められた恐るべき終戦工作。船籍なき戦利潜水艦クルーは、秘密兵器「ローレライ」とともにそれを阻止する航海に出た。どの世代にも描き得なかった「あの戦争」がここに。書き下ろし。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
福井 晴敏
- 略歴
- 〈福井晴敏〉1968年生まれ。千葉商科大学中退。98年「Twelve Y.O.」で江戸川乱歩賞受賞。「亡国のイージス」で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞をトリプル受賞。
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紙の本
国家的切腹
2003/01/10 20:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:jupitorj - この投稿者のレビュー一覧を見る
★作者が人生を削って書いただけあって大傑作だと思います。考えさせられるし、面白いし、泣けます。
特に考えさせられるのは、人の生き方についてと浅倉大佐の思想について。
特に面白いのは、伊507が東京への原爆投下を阻止しようとする戦い。
この戦いは、日本人が与えられるべきものを与えられれば、どれくらい日本人が戦えるかを示しています。
特に泣けるのは、戦後、天本徹二の上官などによって折笠征人とパウラ・エブナーが守られていた話。
ところで、時局多難な折り、重大問題なので、浅倉大佐の思想について考えてみます。
浅倉大佐は、日本が国家的切腹を遂げなければ、日本人は米国に精神的に蹂躙されて消滅してしまうと考え、国家的切腹の手段として東京に原爆を投下し、
それにより民族精神を確固たるものにして日本民族を生存させようとしました。
米国による精神的蹂躙について。
半分間違いであり、半分正しかった。
半分の間違いは浅倉大佐の主張する国家的切腹を遂げなくても、ある程度民族精神を維持できた戦後の歴史が証明しています。
半分正しかったのは、東西冷戦の終了後、米国による日本の民族精神破壊工作がひどくなり、惨憺たる状況を呈した歴史が証明しています。
国家的切腹の手段として東京に原爆を投下する点について。
この点については断じて賛同できない。折笠征人の主張が全く正しい。
そもそも絶対に許せない行為だし、不必要な行為だったと言えましょう。
民族精神を確固たるものにする点について。
これは全く正しい。その手段を浅倉大佐は間違えたと言えるでしょう。
そのような大義を創出せざるを得なかった境遇には多少同情の余地があります。
★では、その民族精神とはどのようなものがなるべきか。
フェミニズムがなりえないことは明らかです。
フェミニズムは日本男児の男らしさを否定し、大和撫子の婦徳を抹殺しようとしました。
フェミニズムというのは美徳を抹殺し、人間の動物化を進めるものです。
フェミニズムを信奉するということは、フェミニズムの母国、アメリカの支配を受け入れ、
日本人の根底をなす美徳を放棄し、アメリカに魂を売り渡すことに他なりません。
これは先の戦争で、日本の美を守るために日本の大義を守るために死んでいった人々に対する裏切り行為です。
日本人に日本人としての確固たる基盤を与える哲学・思想を求めなければなりません。
そして、それを現実に支える制度と力を求めなければなりません。
国家的切腹の手段を真剣に考えるべきでしょう。
★戦後、折笠征人は自分が伊507号の乗員の期待に答えられたのだろうかと悩みます。
彼は、浅倉大佐に対峙することで、伊507号の乗員を救い、
戦後を人間として見事に生きたのですから、必要以上に悩む必要はなかったと言えます。
戦後のアメリカの精神的侵略に対抗して、日本人の民族精神を再建することはまた、
別の種類の人間の役割です。
★ところで、私はこの本を読んで初めて海軍五省なるものを知りました。
極めて立派なものです。これを将来建軍される宇宙海軍は取りいれるべきものと考えます。
このような立派な精神を有していた日本海軍は
なぜ、壊滅されなければならなかったのでしょうか。
紙の本
戦争を知らない私たちだからこそ読みたい作品
2003/02/05 17:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:むつきジン - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦中、負けることを知らなかった、あるいは「負け方」を知らなかった日本に、「あるべき終戦の姿」をもたらそうとした男、朝倉。彼の策略にとって帝国海軍の潜水艦「伊507はドイツ軍が無くした秘密特殊精機ローレライの回収に出発する。多くの人間の様々な思惑と共に。 これほどまでにリアルなフィクションがあっただろうか。と感じさせる作品である。戦争の残酷さを誇張することも飾り立てることもなく伝えながらストーリーも十分楽しませる(一部ローレライの実態など、それはありえないだろうと突っ込みたくなる部分もあるが)。
極限状態で、人でありつづけようとした伊507乗組員の姿が胸を打つ。その姿がまた「どうしようもない大人たちが始めたどうしようもなく愚かな戦争」という絶望の中に一縷の希望を残している。
ある意味でタイムリーな時期に発売されたこの作品、戦争を知らない私たちだからこそ読んでほしい。半端でないボリュームだが決して損は無いはずである。
紙の本
潜水艦伊507とローレライの自発的意志による戦い
2003/01/12 21:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
終戦のあるべき形とは何か,それは国家の切腹を断行する,ということであり,具体的にそれが何を指すのか,ようやく明らかになる.優秀な海軍軍人の精密な頭脳によって打ち立てられた論理は理解しうるものではあるが,納得できるものではない.むろん,少年の一声をきっかけに伊507の人々はひっくり返し,日本人を救うために,絶望的な戦いに挑んでいく.そして,結論は…。
前作を鷹派的警世の書として受け取られたということで,著者は悲しんだというが,すなおに読めばそう読めたものだ.でも本書はあきらかに違う.著者の主張が明らかに変わったように読める.伊507の死闘ののちにつかんだもの,すなわち現代を,著者は肯定している.終章は別の書き方もあったろうと思われるし,もの足りなさを感じなくもないが,これがきっと,著者の言いたいことなのであろう.『子に誇れる国を造れ,自由を腐らせるな』という約束は守れなかったが,『いま私たちは生きている.きっとね,それが大事なことなのよ』.そして,いつかきっと,『悲鳴の聞こえない海を』取り戻すのだ.
著者の主張とは別に,潜水艦によるアクション小説としても圧倒的に面白い.そして,登場する人間達は皆魅力的だ.
紙の本
彼らはどんなふうに歌っていたのだろうか?
2005/11/16 23:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後の日本で、「自衛隊」をエンターテイメントにまで仕立て上げえたのは、おそらく『戦国自衛隊』と福井氏くらいではないだろうか? ややもすれば、マニア受けにおわりかねない素材を、万人向けのエンターテイメントに仕立て上げた技は見事である。
その彼が、「大日本帝国海軍」という歴史を舞台にした。反戦か、郷愁か、忌避、しかありえなかった舞台を改めてよく出来たエンターテイメントに仕立てた。ここで問われるべきは、作品のリアリティやメッセージ性ではなく、その娯楽性である。あまりに映像化を意識しすぎた文体や、SFアニメチックな戦闘場面など(宇宙戦艦ヤマト? かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』?)、いくつか難点があるにしても、十分に楽しめることは請け合える。すでにいろいろな人が評していることと思うので、本書のポイントとして三つ考えてみたい。
ローレライシステムという海上索敵システムが作品の中核に据えられているが、そのシステムの仕組みはかなり荒唐無稽だ。下手をすると、一般読者に疑念をもたれて、リアリティを失いかねないあやうささえある。しかし、そのシステムが実は人の死に敏感であるという、きわめて「人間的な」欠陥があることを示すことでそれをうまく逸らすのに成功している。
第2に、兵器関係の知識は相変わらず細かいが、それらを通して潜水艦は「水圧」という世界にさらされていることを描写し得ていること。兵隊は「散って」はいかずに、「潰されて」いくのである。この死の指摘は、先のローレライシステムの「欠陥」と相乗効果をあげ、読者にある種の重みを感じさせる。
最後に、「ローレライ」の名を冠した通り、「唄」が陰の主役であるといっていいだろう。潜水艦の戦闘というものは格好のいいものではなく、重苦しく陰惨なものである。それでも、フランス人も、ドイツ人も、帝国海軍軍人も歌っていた。駆け足の戦後記述の中でも歌を忘れていない。
評者は映画は未見である。当初は見る気はなかった。ところで、原作を読んでみて、海軍軍人が「どんなふうに『椰子の実』を歌ったのか」が気になって仕方がない。