紙の本
彼らはどんなふうに歌っていたのだろうか?
2005/11/16 23:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後の日本で、「自衛隊」をエンターテイメントにまで仕立て上げえたのは、おそらく『戦国自衛隊』と福井氏くらいではないだろうか? ややもすれば、マニア受けにおわりかねない素材を、万人向けのエンターテイメントに仕立て上げた技は見事である。
その彼が、「大日本帝国海軍」という歴史を舞台にした。反戦か、郷愁か、忌避、しかありえなかった舞台を改めてよく出来たエンターテイメントに仕立てた。ここで問われるべきは、作品のリアリティやメッセージ性ではなく、その娯楽性である。あまりに映像化を意識しすぎた文体や、SFアニメチックな戦闘場面など(宇宙戦艦ヤマト? かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』?)、いくつか難点があるにしても、十分に楽しめることは請け合える。すでにいろいろな人が評していることと思うので、本書のポイントとして三つ考えてみたい。
ローレライシステムという海上索敵システムが作品の中核に据えられているが、そのシステムの仕組みはかなり荒唐無稽だ。下手をすると、一般読者に疑念をもたれて、リアリティを失いかねないあやうささえある。しかし、そのシステムが実は人の死に敏感であるという、きわめて「人間的な」欠陥があることを示すことでそれをうまく逸らすのに成功している。
第2に、兵器関係の知識は相変わらず細かいが、それらを通して潜水艦は「水圧」という世界にさらされていることを描写し得ていること。兵隊は「散って」はいかずに、「潰されて」いくのである。この死の指摘は、先のローレライシステムの「欠陥」と相乗効果をあげ、読者にある種の重みを感じさせる。
最後に、「ローレライ」の名を冠した通り、「唄」が陰の主役であるといっていいだろう。潜水艦の戦闘というものは格好のいいものではなく、重苦しく陰惨なものである。それでも、フランス人も、ドイツ人も、帝国海軍軍人も歌っていた。駆け足の戦後記述の中でも歌を忘れていない。
評者は映画は未見である。当初は見る気はなかった。ところで、原作を読んでみて、海軍軍人が「どんなふうに『椰子の実』を歌ったのか」が気になって仕方がない。
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全ての登場人物が、自分の関わった「戦争」にたいしてケリを付ける(あるいは付けさせられる)怒濤のクライマックスに、ただただ感動。
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この戦争は一体、誰が何のために始めたのか…という問いが本を読み始めてからずっと頭の中で繰り返される。南方戦線でまさに地獄絵図を体験した兵士たち。焼夷弾の雨から逃げ切れずに焼かれた人々。「片道切符」しか与えられない特攻隊員…。現場で何十、何百の命を預かる上官の苦悩。国を動かす者がそのことから目をそらさなければ、この戦争はもっと早く終結していただろうし、そもそも戦争なんて起きなかっただろう。戦争は狂気を生み、狂気が新たな悲劇を生むことは現在の世界情勢を見れば歴然である。そのことを肝に銘じるためにも是非、一読することをお勧めします。
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戦争・・・
もはや原因も定かではなく、
誰ひとり自信も確信も持てないまま、行われている戦争。
あらかじめ敗北という選択肢を持てなかった戦争。
茶番と括るには、あまりにも重すぎる戦争。
――その潜水艦は、あてどない航海に出た。
太平洋の魔女と恐れられた兵器“ローレライ”を求めて。
「彼女」の歌声がもたらすものは、破滅か、それとも――
長いです。非常に長いです。
始めSFなのかなと読んでいたら
当時の軍事専門用語とかバリバリだったです
途中苦痛になるかもしれないです
実際僕も大変でした
ぶっちゃけ飛ばしながら読んでいた個所も幾つかあります
でも、、終わった時は「もう終わりか・・・」って感じでした
理由は後半の物語の加速が凄いからだと思います
この本読み終わった後、暫くの間椰子の実の唄聞くだけで泣きそうになりました
テーマは今まで作品の中で一番重いと思います
色んなものが交差しています
太平洋戦争にて既に敗戦が決まりきっている中での登場人物達の苦悩
何のための戦争なのか。何になるというのか。戦うものの本音。
戦争から日本人が学んだ事とは?
戦争とは?命とは?国家とは?
「戦争を知らない世代」である僕らが学ぶべきことは?
この作品には戦争はいけないとかではなく、
その時その時を必死に生きる人の「今」が描かれています。
戦争を知らない僕達が生きる「今」と比べてください
悲鳴の無い海を目指すもの。
希望という名の椰子の実たちは大海に乗り出して行きます。
映画化が決まってる作品です
第24回吉川英治文学新人賞。第21回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞。
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下巻の途中まで読むのがしんどかったです(^^; テーマとして重たいのはわかるんだけど、ちょっと重ねすぎかな?もっとスマートに持っていくこともできたんじゃないかなぁ?けど、ラストはいいね。長々と読まされてつまんなかったら最悪やけど、終わりがよかった、ほんと読み終えてよかったです(^^; ほんと、途中でやめようとおもったもん(笑)
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前作「亡国のイージス」と同じく、,重厚また重厚、、、と言う感じに時代を描いた2段組でしかも上下合わせて1000ページを超える大作です。
第二次世界大戦末期、ドイツは降伏し、ローレライシステムを搭載したドイツのUボートが日本に到着する前に、米国潜水艦との戦闘から、ローレライを投棄し、そのローレライの回収が前半のテーマとなります。
後半は、その回収したローレライを元に、日本の終戦工作に使おうとする新たな大きな陰謀が、密かに進行していたことが発覚します。日本の敗戦は確実になり、それでも東京に3番目の原爆が落とされるのを阻止しようと新たな旅に出るのですが・・・
潜水艦と言う閉じた男だけの世界に、ローレライと言うシステムのアイディアから女性が登場し、魅力ある乗組員がいるために、大作だけど読めます(と言う私は最初の段階で1度挫折しましたが、下になるとさくさく進みました)。1つの潜水艦が、米国の艦隊を次々に倒して進み、乗組員のキャラから宇宙戦艦ヤマトを思い出すような気分です。
2004.5.24
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何回泣いたかわからないぐらいに泣かされて、また読んで泣いて、そんなことを繰り返して大好きだ、最高だといえる本。
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ローレライのような兵器があったなら。パッシブソナーの趙高感度バージョンが似ている。が、全方位を遠距離で一度に探知する事は?。ローレライがパウラでなく機械として存在したら、どうなるのだろう。上巻に続き下巻もどうぞ。
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下巻では広島に原爆が投下され、長崎と続き第三の原爆投下が東京に設定されている事を知る。
男だらけの狭い潜水艦内にひときわ目立つパウラとフリッツ兄妹。彼を取り巻く周りが次第に変化を見せ、そして原爆投下を阻止する為に米艦隊がひしめく海原へ向かう。
上下巻の量がとんでもないけれど、ラストシーンへ向かう<伊507>は泣かずにはいられない。日本人なら見るべき。
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平和ボケしたわたしに戦争というのはやっぱり実感がわかない。60年前に平和をこれからの時代に託した人々が今の世界を見たらどう思うんだろう。
こうやって思ったことを書こうと思ってもなかなかうまく言葉にできない。勉強不足を実感させられるお話でした。
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戦争の描写や兵器の描写が細かいこと、また戦火に生きる男たちの信念や生き様がまざまざと描き出されていてかなり泣ける作品ではないかと思います。
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兎に角、何も言わずに読んで貰いたいです。福井独特の読ませ方に引き込まれればもうこっちのモンです。小説で感動したのってこれが始めてかも…っていう位感動できます。
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で、下巻。ほんまにこれはあっという間でした。怒涛の展開。小説やのに小説っぽくない。先日映画化されましたね。あれもよいですがこの原作はその上を行きます。ぜひ一度。日本人であることをはたと思い出させられる作品でした。
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映画より原作!文庫よりハードカバーです。エピローグは賛否両論みたいだけど自分はこのエピローグがあってこそのこの物語だと思う。敗戦。多くの犠牲の上で今の我々が在ることを忘れてはならない。
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泣いた。激しく。再起不能になるほどに。
すごい。この本は凄すぎると思います。日本国民全員に読んで欲しい本です。