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芭蕉紀行 (新潮文庫)
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紙の本
そゞろ神に誘われた、江戸の俳聖と現代の作家の時を越えた夢紀行
2004/12/11 01:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:らせん - この投稿者のレビュー一覧を見る
大の松尾芭蕉フリークとして知られる嵐山光三郎さんによる松尾芭蕉ガイド。文庫裏の解説によれば、『野ざらし紀行』『冬の日』『笈の小文』『奥の細道』はもちろん、従来の案内書にはない『かしま紀行』『更科紀行』ゆかりのスポットも完全網羅。中学三年で芭蕉の言霊にふれ、自らも「旅を栖(すみか)」とする著者が、足と目と感性で俳聖の全足跡を辿る。研究者のあいだではタブー視されている、蕉翁の衆道にも踏み込んだ稀有な書。沿道の美味な食べ物も紹介。著者手書きの絵地図入り。『芭蕉の誘惑』を改題。
松尾芭蕉は言わずとしれた俳句の神様で、この偉大すぎる個性に凡人が正面きって向き合うには、嵐山さんのように、芭蕉が句を得た全紀行を自ら辿り検証することしかないのかもしれませんね。芭蕉と同じ目線で芭蕉が見たであろう光景を幻視し、芭蕉を丸ごと取りこむことで、嵐山さんは芭蕉について様々な発見を掘り起こしています。こんな風に好きな作家の好きな作品を感得できるとは、フリークの冥利につきると思います。うらやましい。芭蕉の生きた時代から遠く離れ、世は移り変わっても、芭蕉が土地ごとに残した言霊は今も確かに息づいており、それは見る目聞く耳のあるものにしか分からぬほど微かなもので、それを嗅ぎ取るため五感を研ぎ澄ませて辿る旅は、なんと贅沢な旅でしょうか。「俳聖」として教科書で学ぶ通り一遍の松尾芭蕉像ではなく、ひとりの人間としての松尾芭蕉が浮かび上がる本です。この本と、松尾芭蕉と『奥の細道』を、とある外国人が書いた作品の翻訳という形式で徹底的にパロディ化した、小林信彦さんの名著『ちはやふる奥の細道』(新潮文庫)を合わせて読めば、松尾芭蕉の認識が変わること間違いなしです。しかし、芭蕉が歌に詠み嵐山さんが辿った、この国の四季と自然は素晴らしいですね。私も芭蕉ではないですが「漂泊の思いやまず」どこか遠くへ旅に出たくなりました。