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商品説明
カフカは世に知られることを少しも願わず、勤めのかたわらひっそりと書いていたと言われるが本当なのか。手紙や草稿、日記などをもとに執筆の過程をたどり、新しい発見に満ちたカフカの姿を鮮やかに描き出した最新のカフカ像。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
池内 紀
- 略歴
- 〈池内紀〉1940年兵庫県生まれ。ドイツ文学者。「海山のあいだ」で講談社エッセイ賞、「ゲーテさんこんばんは」で桑原武夫学芸賞、その他毎日出版文化賞や日本翻訳文化賞を受賞。
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紙の本
カフカのすごさ
2004/06/20 17:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桑畑三十郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
不条理文学の大家カフカがどのように小説を書いて行ったかが、手に取るようにわかる。それは作品が作者自身にもどう展開するかわからない、「暗いトンネル」を行くようにして書くものだった。
筆者が述べているように「変身」のすごいところは、主人公が虫に変身したことに驚かず、仕事に遅れそうなことに驚いていることだ。このようにカフカの小説の魅力は読者の予想を裏切り続けることにあると思う。
「審判」や「城」などの長編小説はカフカは発表を望まず、友人のマックスブロードに死後廃棄してくれと、原稿を託した。しかしマックスブロードはどうしても廃棄できず、自分で編集して発表した。そして第2次大戦後実存主義の流行と共に、世界的カフカブームが起きる。この辺の歴史は小説より、ドラマチックだ。
「断食芸人」の中のせりふ「つまり、わたしは…」「自分に合った食べ物を見つけることができなかった。」というのは、カフカ自身の孤独な内面を表しているようだ。
紙の本
カフカはいい
2004/05/15 15:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
カフカがどのようにして小説をつくったのか。私(池内)はそれをそばで見てきた。あとがきにそう書いてある。手稿版全集を訳したからである。『カフカ小説全集』全六巻(白水社)。私はそのうち『失踪者』を読んだ。大学生の頃、角川文庫の『アメリカ』を読んだことがあった。そのときは主人公が新大陸へ上陸したあたりで中断した。つまりほとんど読んでいない。面白くなかったからだ。これは私の知っているカフカではない。『変身』や『城』を書いた作家の作品ではない。そう思った。それでは私の知っているカフカとは何だったか。たぶん実存主義だとか不条理だとか「孤独の三部作」だとかの出来合の言葉で損なわれたものでしかなかったろう。その頃はまだカフカの面白さを、自分の眼と頭と身体で味わった面白さを素直に表現する言葉を知らなかった。いまならこう言える。上質のユーモア小説。『失踪者』はスラップスティック・コメディとして最高だった。
本書には「「変身」の誕生」「「失踪者」の行方」「「審判」の構造」「短編集のできるまで」「「城」のあり方」「二人の「断食芸人」」の六つの文章が収められている(それぞれのタイトルが秀逸)。たとえば「「失踪者」の行方」は、『失踪者』と『ライ麦畑でつかまえて』の引きくらべ(『ちいさなカフカ』に収められた「少年」でも同じ話題がとりあげられていた)にはじまって、カフカのトラウマ説(『誘惑者』の主人公が女中に誘惑される話はカフカの実体験だとする解釈にもとづく)に軽くふれ、熱烈なシオニストであったマックス・ブロートによる物語の結末の改竄(「罪なき者がアメリカの罪深い都市社会から抜け出て、自然な共同体へと入っていく。オクラホマは約束の地であり、恩寵の場所である…─」、つまりオクラホマはイスラエルである)へと説き及ぶ。カフカはいい。正確には、池内紀の手の入ったカフカはいい。(『小説全集』の残り5巻を早く読もう。)