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商品説明
【日本推理作家協会賞(第58回)】エレベーターに暗証番号、廊下に監視カメラ、隣室に役員。厳戒なセキュリティ網を破り、社長は撲殺された。凶器は? 殺害方法は? 弁護士純子は、逮捕された専務の無実を信じ、防犯コンサルタント榎本のもとを訪れるが…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
貴志 祐介
- 略歴
- 〈貴志祐介〉1959年大阪府生まれ。京都大学経済学部卒業。生命保険会社勤務を経て、作家業に入る。「黒い家」で第4回日本ホラー小説大賞受賞。他の著書に「天使の囀り」「青の炎」など。
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紙の本
この本で貴志が見せる建築にかかわる知識は、生半可なもんじゃあない。やっぱり本格ミステリなら、これだけの準備は必要だよね、祝、名コンビ誕生!
2004/06/04 20:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
貴志祐介は寡作である。あとがきに、『青の炎』が出てから四年半も経つと書いてあるのを読んで、驚いてしまった。そんなに経ってしまったのか、それにしては貴志の作品は、どれも強烈に脳裏に焼きついているなあ、と思うのである。話の内容だって、ほぼ思い出すことができる。作品数が少ないせいだ、ということは簡単だけれど、そうとばかりはいえないだろう。
『黒い家』はホラー小説大賞を獲りはしたけれど、前作の『青の炎』同様、犯罪小説といった感じが強くて、読んでいて連想したのは、最近エドガー賞候補になって再び脚光を浴びた桐野夏生『OUT』で、ホラーというか、現代の伝奇小説としては、『天使の囀り』のほうがしっくり来る、いった当時の感想まで思い出してしまった。
で、今回のこの小説、ホラーだとばかり思っていたら、本格も本格、ガチガチの本格ミステリだった。ただし、さすが貴志祐介、密室が単なる密室に終わらず、皮肉に満ちた、それでいてロマンもある、どんでん返しの連続という優れもの。しかも、ロジックが奇をてらっていないし、登場人物が洒落ていて、小説好きなら誰でも楽しめる。うーん、脱帽である。
それに反して、けっしてワクワクするようなものではないカバーの写真は、Photo amana imagesと書いてあって、装丁は角川書店装丁室。申し訳ないけれど、素晴らしい本を作りつづける新潮社装幀室と、装「幀」という字だけでは終わらないレベル差がある。でも、繰り返すけれど、本の中身は文句無し、ピカ一である。
全体は二部構成。「見えない殺人者」と「死のコンビネーション」に分かれる。全体の主人公、というかコンビは弁護士で30歳くらいの青砥純子と、調査員というか『F&Fセキュリティ・ショップ』の経営者で30代半ばくらいに見える泥棒の榎本径の二人である。それに純子の同僚で、ちょっと裏がある今村が憎まれ役で出てくる。二人はどうも短期間つきあっていたことがあるらしい。
で、事件の舞台となるのが12階建ての六本木センタービルの10階から12階までを占めている介護支援会社『ベイリーフ社』の、最上階の役員室ゾーンである。休日だというのに、出社して株式公開を控えて会社の将来を担うであろう事業の検討をするために、会社のトップが集まるのである。社長の穎原昭造、副社長の穎原雅樹、専務の久永篤二、そして彼らの秘書の伊藤寛美、松本さやか、河村忍。
それに実験に使われるフサオマキザルの房男と麻紀、二匹を訓練して今も研究に余念のない安養寺課長。動物の手による介護よりは、日本人には受け入れられやすいだろうと介護ロボットルピナスVを開発した岩切課長。それにELVの扉を社長のために開けるだけの小倉課長である。二種類の介護システムの優劣を比較する実験が一段落して、休憩をしている時に悲劇が起きた。衆人環視の密室で、人が死んだのである。純子は容疑者の潔白を証明するために、人から紹介された榎本を訪ねるが。
ともかく、いいのである。普通であれば、またか、と思わせるような純子と榎本の関係が、決して不自然ではないのである。妙に甘くならない、それでいて遠くもない絶妙の距離感。いわゆる大人の会話ではないけれど、妙に若ぶったためぐちもない。彼らの推理の過程も、極めて自然で、バランスがいい。
殆ど予想はできたけれど、あえて長女に聞いてみたら「榎本さん、格好イイ! 特にラストが最高!」だそうである。オシャレ、そういっていいのかもしれない。どこが赤川次郎やはやみねかおると違うのか、それを考えるだけでも楽しいのである。この二人のコンビに再び出会える日は案外早いかもしれない。最近、最もわくわくするカップルの誕生である。
紙の本
美人弁護士と泥棒探偵コンビのシリーズ化はあるか?
2004/06/20 14:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオトリさま - この投稿者のレビュー一覧を見る
「黒い家」が発表された後に和歌山カレー事件が起き、「青の炎」が発表された後に神戸連続児童殺傷事件が起こった。
まるで時代の預言者のように次々と衝撃的な作品を発表している貴志祐介さんの新作は意外にも密室ミステリー。
第一部の「見えない殺人者」では、完璧な密室ミステリーが展開される。
株式上場・介護ビジネス・二足歩行ロボット・複雑な防犯システム
謎が謎を呼び誰が犯人なのかは全く見えない。
第二部の「死のコンビネーション」では犯人が犯行を犯す動機とトリックが語られる。
複雑な伏線・緻密な取材は貴志祐介さんらしい出来だと思う。
この作品の原案は20年以上も前に思いついた物だそうだ。
永い間暖めてきた案が最近の技術開発(これを書くとネタバレになるので何の技術かは書けません)により作品として発表できるようになったそうだ。
トリックが技術的に可能になったと言っても、細かなディーティルの取材にはさらなる時間をかけてあるのが、行間からにじみでている。
綿密な設計図に基づいた密室殺人のトリックを堪能してもらいたい。
作者のただひとつの誤算は最初クールな美人弁護士の設定だった青砥純子が書いているうちに人間臭くなり、防犯コンサルタントの榎本径と良いコンビニなった事だろう。
作者の中ではこの二人のコンビのシリーズの計画も浮かび上がっているらしい。
今までに無い探偵コンビになりそうで期待が持てる。
紙の本
☆防犯探偵榎本の推理☆
2024/04/21 08:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ACE - この投稿者のレビュー一覧を見る
日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。発見者は、ビルの窓の清掃員。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務に疑いがかけられる。
専務の家族から依頼された弁護士の青砥純子は、この密室を崩すことが出来ず、防犯コンサルタントの榎本径に密室崩しを依頼することに。榎本は、防犯のプロである(と同時に、実は泥棒としても現役でもあり、)警察ですら思いつかない方法を武器に密室に挑む。しかし、一方を立たせればもう一方が立たず、という具合に推理は一向にうまくいかない。青砥も思ったことを口にしますが、頭の良さと天然の入り混じった推理はほとんどが的外れ(そこが可愛いのだが・・・)。
弁護士の青砥純子と防犯コンサルタントの榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む!
紙の本
ウェル・ディファインド・ミステリー
2004/06/22 21:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GG - この投稿者のレビュー一覧を見る
密室殺人という不可能犯罪。謎に挑むのは、若く美しい女性弁護士と謎を秘めた防犯コンサルタントのコンビ。ハイテクノロジーで構成された地上十二階の完全密室の謎はどう解かれるのか。…
本格探偵小説として、アオリ文句を考えると上のようになるだろう。実際、本書は本格マニアの細かい詮索にも耐えるように細部に気を遣って構成されている。もし、古典的な探偵小説作法を遵守するなら、第一部終わりに「読者への挑戦」が挟まれてもよいくらいである。第二部は、これも本格ファンを意識した倒叙形式となっている。
ことほど左様にパズラーとしての魅力を十二分に備えた本書だが、トリック以外の部分をとても面白く読ませるところが流石だと思う。『青の炎』や『天使の囀り』でもそうだったが、現代日本に舞台設定するときの細部が非常に具体的なのである。出てくる固有名詞や専門用語が作品の迫真性をぐっと盛り上げる役目を担っている。旧作『天使の囀り』で私が一番感心したのは、「横歩取り」という将棋の戦法がある場面で効果的に使われていたことだった。そういうディテイルがあればこそ、ホラーとしての大きな仕掛けも決まるのだと思う。
本書においても、同様の筆法(開巻すぐのビル警備員の描写など)が巧みに用いられていて、悪くすると単なるゲームとなってしまう密室の謎がある種のアクチュアリティを持って迫ってくる。貴志祐介の名は知っていても、ホラーには興味のなかった読者は、本格ミステリーとして楽しめる本書を手にとってはどうだろう。週末一日の楽しみというミステリ本来の味わいプラスアルファを楽しむことができます(プラスアルファを何に感じるかは読者次第)。
あえて難を言えば、今回の小説、謎解きの主人公二人の書き込みがやや不足している感じである。この二人ではシリーズ化は難しいだろう。
紙の本
ミステリーの本格密室ものはなかなか映像化しにくいのだがこれはそのまま映画化しても面白いだろう
2004/07/25 20:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
殺人の現場が「六本木センタービル」と言っても回転ドアにはさまれて子どもがなくなったあの超高層ビルではない。12階建てのこじんまりしたビルだ。新興の介護会社「ベイリーフ社」の役員室はその最上階にあって、開閉のない強靭な窓、いくつかの最新の電子機器と警備保障会社の堅いガードなど、鉄壁のセキュリティーシステムでよそ者の侵入から防御されている。そこで社長が殺された。
探偵役は防犯コンサルタント(こういう職業もこのご時世だからあるのだろう)なかなかの好人物。むしろ本職は怪盗ではないかと思われるぐらい、防犯システムの網をくぐって忍び込む技術を会得している。この探偵が犯行を成立させるいくつかの方法を考えそれを実験してみるのだが、第一にこのディテイルが読ませる。
前段はこの結果ほぼ外部からの進入は不可能と読者に印象付ける。後段は犯人側から見た犯行のプロセスが描かれる。つまり鉄壁の監視システムをいかにかいくぐって目的を達成したか、その頭脳的プレイを披瀝するわけである。第二の読ませどころはこの構成の妙である
第三にこの頭脳犯が目的を達成するために必要とするさまざまな小道具を入手するあるいは作り上げる過程もインターネットや携帯電話などの最新の情報機器の高度な活用を詳細に紹介し、いかにも現実にありえそうな気にさせるのも楽しいところだ。
しかし、私がこの作品でもっと評価したいのは実はそこではない。
最近の密室ものミステリーにはない新鮮さを感じたからだ。最近の作品であっても舞台は現代ではなく昔々で、あるいはわれわれの生活とはまるで関係がない寒村、孤島や古城がほとんどである。それを都市の中の都市と言うべき六本木、サラリーマンならだれでも想像できる警備体制下の事務所ビルとリアルな設定にして謎ときの興味をマニアだけのものにしていない。
また、この作品では最新の建築技術とITシステムで具体的な密室空間を作り上げている。密室トリックには心理トリックあるいは作者の叙述方法に仕掛けられたトリックが多く、あきあきした感じがしていたところでこの作品を興味深く読んだ。
身近な生活空間に謎が構成されているとなると読者はむしろ作者の作った枠組みのどこかに間違ったところはないか、無理筋はないかなどとあらさがしの視線で読むことにもなる。
作者もそのあたりは見通しているようになかなか用心深く話を作っていることがわかる。私は現在使用しているビルの警備システムと比較しながらあらさがしをしていたら、このミステリーの基本的誤り、作者の見落としている重要な点に気づいた………。とこんな得手勝手をするのもまた楽しいところだ。
書評集(よっちゃんの書斎)はこちらです。
紙の本
熱烈なファンの方には本当に長かった4年半だったに違いない。その方々ははたしてどう感じ取って読んだのだろう?
2004/05/31 23:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
貴志さんの作品は全作読んでないので語りづらいのだが(笑)、帯には“著者初の本格ミステリー”となっている。
はたして貴志さんの選んだ道は正しかったのだろうか?
個人的な評価としては可もなく不可もなくって感じかな。
無難にまとめすぎていて読者の心に残るものが少ないような気もする。
確かにトリックは密室殺人事件ということで引き込まれて読まれるのだが、探偵役の弁護士純子と防犯コンサルタント榎本がなんと言おうかあんまりしっくりとしたコンビと言いがたいように見受けれた。
やはり泥棒探偵はいただけない!
この点が最大のマイナスポイントであろう。
逆に2人の距離感が合う読者は最後まで楽しめるかもしれませんね。
構成的には2部構成となっていてこれが大きな問題だと思う。
まず第1部にていろんな謎を提供してくれているのはいいのだが(もちろん最大の謎である犯人が誰であるかも含めて)、第2部に入るとすぐに犯人を登場させて推理して読む楽しみが萎んだのは残念だった。
作者としては違った観点で物語を捉え展開させていたのであろうが、少なくとも本格ミステリーという宣伝文句で売ってる作品としたら途中で興味が半減したような気がする。
“何故密室殺人が可能だったか?”という興味だけでなく、“誰が殺したのだろう? 専務? 副社長? 秘書? それとも競馬好きの警備員?” そう思われて読まれていた方は肩透かしを喰らった感じかな…
こんな展開になるのだったら(第2部)、私的にはもっと犯人の動機付けを泣かせる話で書いてもらえたら盛り上がったような気がする。
やはり犯人が地味過ぎたかな。
まあ、トリックがセールスポイントの作品であるから仕方がないか(笑)
熱烈なファンの方には本当に長かった4年半だったに違いない。
その方々ははたしてどう感じ取って読んだのだろう?
もし“物足りない”と思われた方が多ければ、それは貴志さんの高い才能を認めた方の大きな声援である。
とっても興味深く思って本を閉じた。
トラキチのブックレビュー