紙の本
いつのまにか本に恋していた
2007/01/16 12:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
筑摩書房専務の松田哲夫による造本探訪。「ちくま文学の森」「ちくま日本文学全集」などその昔、その装幀や収められた作品に胸をときめかせた本が、松田さんの編集によるものだとは! もちろん装幀だけではなく、全集としての魅力を
ふんだんに盛り込んだお仕事です。改めて松田さんを崇拝しました。
しかしその根底には実は似通った感情が流れていることを発見。私、限定品の豪華本や稀覯本には全く興味がないのです。そういうのは美術館や図書館でお目にかかるもの。個人できちんと保管するには場所も手間もかかりすぎる。
松田さんも「普通のたたずまいの本が好き」という。普通の本屋さんに並んでいる普通の本が好き。
プロの、そして人気のある編集者である松田さんが、造本の現場を訪ね歩きます。
本を作る行程での「束見本」を作ってみたり、本の函を作ったり、紙を訪ねたり、装幀用の紙を選んだり、インキ工場で印刷用のインキをこねたり、印刷したり。
知識の上では造本を知っていましたが、現場の職人さんの技と努力には頭が下がります。
さらに私はここに登場する企業の株が好きなことに気づきました。出版社には見向きもしないのですが、業種でいうと、繊維・紙パルプ・化学(インキ)・その他製造(印刷)。なんとなく好きで投資していたんですが、共通点は「本」でした。無意識の選択にびっくり。
どうして本が売れないのに、出版社がつぶれないのかといえば、コストをこういう製造工程の会社(株式公開していない小さな会社も含めて)が負担していたんですね。頭が下がります。
紙の本
本好きにはたまらないタイトルと内容なんですが、文章もイラストも上手なんですが、どうも不親切なところがあって、見難いんですね、この本
2006/04/21 20:00
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
へえ、わが家でブックデザインが絶賛されているのちくまプリマー新書の編集長なんだ、編集長ってこれ読んでると本の全てを自分で決めて、結局、装幀家もデザイナーもDTPもなーんにもいらなくて、紙だって自分で決めて、要するにあとは印刷屋さんと製本屋さん、取次店とお店があれば、作家だっていなくてもいいんだ、そんな気になりますね。
よくいるでしょ、ちょっと思いつきみたいなイメージだけ伝えて、あとは全部その道のプロがチエを出し合って、極端なこと言えば最初の思いつきなんか無視していいデザインをつけちゃう。それでも、結局、それは俺が作った、なんてえこと平然と言うプロデューサー、っていう人種が・・・
なんていうか、そういうスメルがプンプンしちゃうんですね。ま、偉くなるていうのはそういう人なんでしょうが。でね、この本、とても魅力的で、それはブックデザインの平野甲賀とイラストレーションの内澤旬子に負うところが大きいんじゃないか、って思うんですが、これも結局は松田の手柄なんですかね?写真撮影は、広瀬達郎(新潮社写真部)。
でね、さらにいうとこの本、とても内容が理解しにくいんですね。文章は平易です。専門用語は出てきますが理解はできます。問題は素晴らしいイラストとの連関が上手く行っていない。もっというと、このイラスト、絵自体は大変魅力的なんですが、詰め込みすぎでしかも番号の振り方が下手なものだから、順番がわからない。
矢印でもきちっとつけてくれればいいのに、それもしない。してあっても、詰め込みすぎた情報がランダムに配されているものだから、理解を妨げる。しかも字が小さくて色が薄い所為か読みにくい、一体誰がこんなデザインを!って読者が騒ぐと、きっとしれは自分のせいではなくて担当者が、てなことになるんでしょうか。
そういう不満は多々あるんです。ただし、盛り込まれた情報は本好きが肯き、あるいは手を叩くようなものが満載です。シーナさんたちは本の値段はもっと高くていい、みたいな発言をしますが、この本を読む限り製本原価は以前に比べれば激減、それでなんとか凌いでいるのが実際だとか。なーんだ、テレビと同じじゃん・・・
とまあ、そこでも納得。そして本つくりを支える製紙、インキ、函作りなどに携わる人々の研究開発の努力にも脱帽。ただし、最終章の印刷会社、具体的に言えば凸版印刷の人間のゴーマンさはなんだろう。例えば紙の種類に対して「あんまり色々作るなって言いたい」「(インキの)粉が問題ですよ」「製本の時に折りで傷つけることがありますね」と言いたい放題。無論、松田が水を向けてるんですが。
でも、製紙屋さんもインキ屋さん製本屋さんも後工程、前工程の人に一言も文句をいってません。ただひたすら人々の要求を満たす努力をしている。それに対し、この松田・凸版タッグの人のワルサはなんでしょうねえ。これは人格の問題、企業姿勢のありかたかな、なんて思ったりして。素晴らしい内容の本なのにねえ。
序章 ぼくは「本」に恋してる、第一章 思い出深い本を解体してみる、第二章 束見本を自分の手で作った、第三章 中本作りの大切さを痛感する、第四章 均して寝かしていい本作る、第五章 紙の反りを活かす函作りの知恵、第六章 紙を抄く 巨大製紙工場見学記(上)、第七章 紙を抄く 巨大製紙工場見学記(下)、第八章 装幀用の紙ができるまで、第九章 色鮮やかなインキの世界を知る、第十章 インキのことをもっと知りたい、第十一章 印刷後の表面加工にはこんな方法が、終章 「印刷」から本作りを見直す、あとがき。
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いいっす。ちくまの髭のおじさんが印刷会社・製本会社を社会科見学したときの話。鉛筆画の絵入りで細かく説明してある。こういう社会科見学いいよね。俺も行きたくなってきた。クエタラ工場が懐かしい。印刷についての説明は細かすぎて少ししんどいんだけど、本への愛がにじみ出ているから全然読める。あと、ちくまプリマーの装丁がクラフトエヴィング商繪だって今日初めて知った。
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手作業での製本、機械での製本、函作り、製紙、インキ、表面加工・・・本にまつわるあれこれを、これでもかと堪能出来る。
いずれの分野でも「プロの職人」のお話が面白い。
個人的には、ファンシーペーパー、レザック、タントの語源が一番面白かった。
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松田哲夫さんが書いたのだから文句はない。「クラフト・エヴィング商會と氏との付き合いの深さも含め、以前から氏の造本に対する造詣、いや、愛情の深さは尊敬に値するものだと思っていた。その人が本がどう作られているかを探訪したのがこの本である。読まずにはいられない。(前著「印刷に恋して」は読んでいない。気にはなったのだけれど、この人と印刷にはまだ距離があるよなと個人的に感じていた。今回はタイトルだけで充分に大丈夫だと感じた。)
本はこうして作られるのです、と書くのではなく、あくまで編集者としての考えと、だからこその盲点という視線で書いているのがいい。どこまでも自戒の念を感じるのだ。その上で「恋」なのだ。とりあえず、この本に対する悪口の書きようを思いつかない。
折角そういう本だから言うのだけれど、カバーを外してこのところ持ち歩いていた。面白いもので、この本は気圧と湿度に見事に反応していた。湿度が低いと表紙が外に反り、雨が近くなると内側に反り始めた。雨が降っている間はずっと内側に反り、雨が上がるとまっすぐになった。時々感じていたことだけれど、本と天気や湿度のことなんて今まで考えもしなかった。
それにしても「恋」なんて文字をタイトルに入れられる還暦間近の人物なんて他にいるんだろうか。松田氏はきっとこれからも恋をしていくに違いない。
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精密で味のあるイラストがたまらない。
職人仕事ってかっこいい。
それが伝統芸能とか国宝級とかそんな雲の上レベルではなくて、
毎日の仕事の中の職人技というのにドキドキする。
体も頭も使ってなんぼだよ。
モノを作らない人を私はあまり信用してない。
http://takoashiattack.blog8.fc2.com/blog-entry-780.html
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印刷所へ走っていきたくなる!!!はだしで♪かけてく♪な・・・電子書籍ワールドになったらどうなるのやろ
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“編集者として、ご自分が携わってきた本にまつわる思い出話を書いた本”なのかと思って読み始めたので「???????」。「1冊の本ができるまで」を追った体当たりレポートだったのですね。 さまざまな印刷の現場を見て歩いたレポートである『印刷に恋して』の続編的存在の本で、製本、製函、製紙、インキ製造の現場まで実際に足を運んで体験して紹介。今、書店に並んでいる本がどのような過程を経て、どのように作られているのか、松田さんの目と内澤さんの詳細なイラストで、読者に判りやすく紹介してくれます。 普段何気なく読んでいる本が“工場製品”として、どれだけ多くの技術と過程を経て作り出されているのかに驚くのと同時に、本ができるまでの過程って、(私も含めて)ほとんどといっていいほど知られていないんだなあと、痛感しました。どんな風に作られているのか、ただ漠然と思い描いたことはあっても、実際に目で見たことはなくって。だからこの本で長年の疑問を解決してもらって、とてもすっきりした気分です。 いやあ。スリップやちらしって、機械で挿入するんですね。カバー&帯をかけ、スリップ、読者カード、ちらしの挿入を一度にしてしまう優れモノの機械があるなんて!てっきり人間の手で行なってるのかと思ってたわ!しかもこの自動カバー掛け機、日本独自のものなのだとか。ますますビックリです! 機械を実際に動かす技術者の方々の現場での姿も印象的。こういう方々の存在があるからこそ、本が本として存在するんですねえ。今後本を読む時、装幀だけでなく造本の部分にまで注目してしまいそうです。前編にあたる「印刷に恋して」も、ぜひ読んでみたいです。 本の形態はこれからどんどん変わっていくんでしょうが、私はやっぱり紙で出来た本がいいなあ。
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おすすめ資料 第131回 紙の本の楽しみ方(2012.1.20)
みなさんは紙の書籍と電子書籍、どちらをよく利用しますか?
タブレット端末の普及によって電子書籍はさらに身近なものになりました。
重さや大きさを気にせず何冊でも持ち運べる携帯性は紙の本にはない魅力ですが、紙には紙だからこそ感じられる魅力もあります。
今回ご紹介するのは、読むだけではない、物としての本にも注目している資料です。
『「本」に恋して』では、原材料である紙の製造工程から、装丁の決め方、製本作業、印刷の色指定の裏側など、紙の本が完成するまでを、実際にそれぞれの工場を取材して描かれています。
著者は編集者でもあるので、編集段階も含めた本の製作過程がうかがえます。
さらにイラストレーターの内澤旬子氏による細密で温かみのあるイラストが数多く挿入されており、それぞれの工程を魅力的に伝えています。
『印刷に恋して』は『「本」に恋して』と同じ著者とイラストレーターによるもので、本が作られる工程のうち印刷技術について詳しく紹介されています。
若干専門的な内容が多いのですが、内澤氏のイラストが理解を助けてくれます。
手触りなどで確認できる紙質や装丁とは異なり、完成した本から印刷工程はなかなか想像できませんが、活字を組んでプレスする活版印刷という技術で印刷された紙は、文字の上を指でなぞるとかすかな凹凸が感じられます。
印刷技術の進歩により活版で印刷されるものはほとんどなくなってしまいましたが、現在でも漫画雑誌や週刊誌などザラザラの再生紙で発行されるものは活版で刷られているそうです。
手に取る機会があれば、ぜひ誌面の凹凸を確認してみてください。
電子書籍か紙の本かという択一論が語られることもありましたが、電子書籍の便利さと紙の書籍の味わい、両方を上手に楽しみたいですね。
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印刷に恋して、はフィルムからDTPへの移行期の話で今では状況が全く変わるが、こちらはアナログな印刷の話なので今でも役立つ。
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2021.6.27市立図書館
序章が目当てだったといっていいけれど、本全体もおもしろかった。
本の世界をめぐるオデッセイ。初出は「季刊 本とコンピュータ」(2002年秋号〜2005年夏号)全11回の連載「造本に恋して」に序章と終章を書き下ろし。造本にかかわるさまざまな工場を訪問して見学・体験した顛末を松田さんが語り、内澤さんの図解がその理解を助けてくれる。
本の解体、をスタートに、束見本づくり、製本(折り、貼り込み、丁合、かがり、均し、断裁、表紙貼り、スピン、背貼り、くるみ、カバー掛け、挟み込み…)、函づくり、紙抄き、装幀用の特殊紙づくり、インキ製造、インキの元の顔料づくり、そして印刷後の表面加工…こんなにもたくさんの工程があって、それぞれの工程に難しい部分があってそれぞれ職人さんの調整があってこそ、うまくまわって1冊の本に仕上がるのだ、ということを改めて知る。どの本もぎゅっとしまって平らなのも、表紙のインクが手にうつったりこすれたりしないのも、あれもこれも職人さんたちの細心の注意や工夫のおかげなのだという、本が本として完成するまでの長い旅を知るだけで、手元の一冊一冊がとてもいとおしくなてしまう。
最後の章の凸版印刷の人との対話も、印刷現場から紙屋さんやインキ屋さんへの率直な注文や印刷業界の現実が語られていて興味深かった。
序章にあった、松田さんが信頼するブックデザイナーの名前は自分にとっても好きなブックデザイナーばかりで、その感覚はちくま文庫、文学の森シリーズから頓智、プリマー新書、と主に松田さんと筑摩書房の本に育ててもらったのかもしれないなと思った(平野甲賀の名は高校生の頃に晶文社の一連の本ですでに気がついていたが)。安野光雅、和田誠、南伸坊、平野甲賀の共通点といえば、松田さんが言う、絵もデザインもする(印刷の現場の事情もわかる)両刀遣いというほかに、描き文字(レタリング)もいい、という点だろうか。でも、この一二年ほどで和田誠、安野光雅、平野甲賀、とあっというまにいなくなってしまった。もう、こういうブックデザイナーのジャケ買いをすることもないと思うと、ちょっとさみしい。
この本がどんな紙でできているのかもカバー見返しに情報があるのだけど、図書館のフィルムがかかっているため、ぜんぶを味わえないのが心残り。入手しようにも、もう新潮社のサイトに書影さえ載っていないのが残念。
いずれ古書を探して手に入れる可能性も高いけれど、こうなっては、『印刷に恋して』とセットでちくま文庫入りを切望するほかあるまい。
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読むための本の紹介本だと思って図書館で借りました。
そうしたら、本当に「本」そのものが好き!という本でした。
製本、紙、印刷、インク…本はそういうものたちでできていると改めて意識。
そして私は紙が大好き…インクの匂いが大好き。
まさに私のための本でした。
松田さんも本を知るために本を壊すのは「犯罪に手を染めるような気分」とのこと。ですよねー。
しかし、本を作るのにはたくさんのメーカーさん、職人さんが関わっているんだと痛感。そして、今出版業界は厳しい。私も今たくさん本は買えない。でも、ステキな装幀を世間に見せながら読むのが好きで、重いけれど、ハードカバーが好き…この気持ちはいつまでも持ち続けると思います。
製造工程の専門的なお話やイラストは、私自身も見学者としてふむふむと読んだり眺めたり。
終章の対談も、内輪事情をかなりつっこんで話してくださっていました。おもしろい…
本文の紙がとってもステキな質感でした。
発売当時に嗅ぎたかった…(笑)
これからも「紙の本」主義で行きたい。生きたい。
本屋さんがある限り、本屋さんに足を運び続けよう!とまたまた決心しました。
カバー、表紙、見返し、帯、本文、それぞれで使用したメーカー名も記載あり。
そして、今まで以上に、装幀やデザイナーさん、印刷所に製本所まで、眺めることになりそうです。