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紙の本
ネットvs.リアルの衝突 誰がウェブ2.0を制するか (文春新書)
著者 佐々木 俊尚 (著)
インターネットは「ウェブ2.0」というパラダイムの出現で大きな岐路に立たされた。ネット社会の理想は国家権力と激突し、インターネットの覇権を巡って国家間の総力戦が開始された...
ネットvs.リアルの衝突 誰がウェブ2.0を制するか (文春新書)
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商品説明
インターネットは「ウェブ2.0」というパラダイムの出現で大きな岐路に立たされた。ネット社会の理想は国家権力と激突し、インターネットの覇権を巡って国家間の総力戦が開始された! 渾身のネット社会未来論。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
佐々木 俊尚
- 略歴
- 〈佐々木俊尚〉1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとしてIT企業関連の取材を行う。著書に「ウェブ2.0は夢か現実か?」など。
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紙の本
ウェブ2.0の背後にうごめく国家権力を注視する
2007/04/19 13:32
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:西下古志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本には、ひとつの高遠な理想が貫いている。その理想とは、インターネットが誕生して以来、技術者たちを中心に追求されてきたものであり、ウェブ2.0と呼ばれる世界においてようやく体現しつつある理想である。著者の佐々木俊尚は、ウェブ2.0の概念を定義して、「ひとことでいえば『すべてをオープンにしていこう』ということだ」と述べているが(p.261.)、それこそが、ウェブ世界の理想である。
本書は、この理想——もちろん、異なる視点からもさまざまに表現されているが、このウェブの世界で追い求められている理想をめぐる近年の事象をとりあげ、それらを国家による「排除」と「囲い込み」という観点から論じている。とりあげられている事象は、「Winny」をめぐる問題や、「標準化」の問題など、リアルの世界に属する国家が、どのようにネットの世界にかかわり、はたらきかけているかという問題である。それらを著者は、「排除」と「囲い込み」というキーワードで分析している。
「Winny」をめぐる問題では、「すべてをオープンにしていこう」というウェブ2.0につながる理想が、国家による「排除」やウィルスという悪意によって挫折する過程を描いている。「標準化」の問題では、米国や中国によるインターネットの「囲い込み」戦略・政策を追っている。そこでは、ネットの世界での理想の追求が、リアルの世界からの「排除」と「囲い込み」によって、どのように捩じ曲げられ、変質していくのかが具体的に描き出されている。
ネットの世界とリアルの世界のそうした対抗関係を著者は、「自由と独立を求めるバーチャルな世界と、従来型の空間秩序を維持してきた国家権力との衝突」(「プロローグ」、p.14.)として捉え、現実世界での文明間・国家間の「水平的な衝突」に対して、「垂直的な衝突」であると述べている(p.14.)。この「衝突」は、国家による「排除」と「囲い込み」という方法によって引き起こされているのだ、と著者は見ている。
著者は、明言こそしていないものの、「すべてをオープンにしていこう」という理想の側に立っている。だからこそ、国家(や企業)によるネット世界の「排除」と「囲い込み」を現場に密着して取材し、分析し、将来の見通しを考えようとしているのである。多様な価値観や生き方が共存できる社会を構築するひとつの方法論として、「すべてをオープンにしていこう」というウェブ2.0の理想は意味があるものだ。その理想が、公権力や企業の「排除」によって、また「囲い込み」によって変容し、まったく別の何かになってしまうのではないか、という危機意識が本書の背景にある。
安易な結論は、本書にはない。ただ最終章(第11章)で、「いまや局面は、ネットの世界の基盤が社会に浸透していくのか、それとも国家の覇権が復活するのか、あるいはその両者が何らかの歩み寄りをして調和していくのかという、その選択肢を突きつけられつつあるように思える」(p.277.)という著者の発言は、ウェブの世界を考えるにあたって徹底的に検討されるべきものである。
同じ新書判の梅田望夫著『ウェブ進化論−本当の大変化はこれから始まる』(『ちくま新書』、2006年2月)は、ネット世界の未来を論じた好著である。しかし、本書のように公権力との対抗関係のなかでネットの世界を論じるという側面が弱い。そのため、バラ色の未来としてウェブ2.0の世界を強調する傾向が強く、これでは思わぬところで足をすくわれるのではないか、という危うさを持っている。本書『ネットvs.リアルの衝突』は、思わぬ場面で足をすくわれないためにも、『ウェブ進化論』を読んだ人たちをも含めて、多くの人たちに読んでもらいたい一冊である。
紙の本
書名と内容に齟齬を感じないでもないが、ネット関連事件の経緯や背景を知るにはとても参考になる一冊
2007/02/11 10:55
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ文春新書で昨2006年「グーグル—Google 既存のビジネスを破壊する」を物した著者の最新刊。
「ネットvs.リアル」とありますが、率直な読後感から言えば、この書名と内容には距離があると思います。300頁に満たない本書のうち153頁がWinny事件の摘発から公判までを追っていますが、これをサイバースペースとリアルワールドの攻防として描くというのはぴんと来ませんでした。おそらくこの書名は、Winny開発者である被告が当初2ちゃんねるに書き込んでいたように、ネット社会で生まれたものが著作権など既存社会の従来の概念を破壊していくという対立構造の到来を、著者が半ば強く期待してつけたものだと思われます。しかしWinny開発者は公判では、そのような殉教者的証言は一切していませんし、著者の期待が空回りしている感が否めません。
とはいうものの、普段からネットでの出来事すべてに目を通しているわけではない私にとって、Winny事件の顛末もさることながら、政官財を巻き込んだ国際的なコンピュータ・ソフト開発抗争の経年変化を丹念に追ったくだり(「第七章 標準化戦争」、「第八章 オープンソース」、「第九章 ガバナンス」)は大変興味深く読みましたし、勉強にもなったと感じています。
毎日新聞記者という経歴を持つ著者の文章は、老若男女の理解を前提にした、大変読みやすいものです。その分野に明るい者だけが理解できればそれで結構という態度の硬質かつ衒学的な文章とは縁遠いものです。その点を私は前著「Google」以来、大変信頼しています。今後もネット関連の興味深い事件や現象を、分かりやすい文章で私たちに提示してもらいたいという期待を、私は引き続き持っています。