紙の本
ツン読は立派な読書なのです。
2007/03/31 17:21
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕は岡崎武志ブログを時々訪問しますが、著者の本をこれまで、ちゃんと読んだことがなかったのです。雑誌や新聞の記事をつまみ食いした程度で、図書館や本屋で偶にめくっても、購入することがなかった。今回初めて買ってしまったわけは、恐らく、書名に『古本〜』という冠がなかったことが第一だと思う。
だからと言って僕は古本に拒否反応を示しているわけではない。古本屋を覗くのは好きだし、ネットで日本の古本屋さんもクリックする。でも、かって、古本を冠した書籍、雑誌を愛読したことがありましたが、古書の分野は申すまでもなく、チラシ、紙くず、日記の類もアンテナを伸ばして、底なし沼に彷徨う世界にいささか恐れをなしたのでしょうか、知らぬ間に古本屋さんの世界に近づかないようになりました。
その代わりと言ってはなんですが、本書で著者が「ブ」と表示している新中古書店には足繁く通うようになりましたね、そこで、思わぬ本と巡り会う。
実は僕は最近、近所の「ブ」で、百五円の佐藤泰志の『きみの鳥はうたえる』を見つけたのですが、その翌日、本屋で、本書を立ち読みしたら、161頁に何と「本の熱病は伝染する−佐藤泰志を求めて」がありました。まさに鳥の声で、「買いなさい」なのか、それで、持ち帰ったわけです。
見事に感染しましたよ。著者のファンは殆ど古本狂に近い方々だと思いますが、僕のように成る可く古本に感染しないように気をつけている、むしろ、新刊が大好きなオヤジにとっても愉しい『本の本』になっている。
著者の読書を通した自分史にもなっており、16歳の時、旅行中に不慮の事故でお亡くなりになった父親とのエピソードや、娘さんに仮託して朝日新聞に書評『かいけつゾロリの大どろぼう』を書いたくだり、学校での担任との本にまつわる悲しい思い出、著者を勇気づけた担任の一言などは力のこもったエッセイです。
寺山修司、高橋源一郎、色川武大、植草甚一、丸谷才一、川本三郎、吉田健一、開高健、長田弘、エリック・ホッファー、田中小実昌、保坂和志、小林信彦、荒川洋治と僕の好きな作家について語ってくれるのも嬉しいのですが、著者は山本健吉が命名したとされる「第三の新人」達に最も感化されているみたいです。
特に庄野潤三の思い入れは尋常ではない。著者が最も好きな読書空間は乗り合いバスの運転席のすぐ後ろ、「一人掛の席」ですが、バスの揺れに任せて庄野潤三の『夕べの雲』を読んでいる姿が目に飛び込んでくるのです。
本書は大文字で語るくだりは全くないけれど、暮らし、生身の著者の日常が本を飲み込んで立ち上がってくる。強い読後の印象が残ります。古本と言う限定した分野だけではなくて、本書のような「本の本」についての本をどんどん書いて欲しいと思いました。
歩行と記憶
紙の本
泣かせてやろう、っていうお話は読みたくないんですが、人間には慟哭することがあります。ドキュメントを読んだ時の涙は、許せます
2007/06/06 21:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
これが岡崎武志初の新書、というとウッソーと思いません?ま、岡崎の本と言えばソフトカバーなので、新書と勘違いされやすいのかもしれませんね。しかも出したのが光文社。筑摩あたりから出た印象ですが、それって先入観です。でも、積読を評価する、っていうのは、ある意味、常識の破壊です。
そんな言葉は、カバー折り返しに出ています。
「人間の土台は「読書」がつくる
よく見ると、「ツン読」には、ちゃんと「読む」という文字が入っている。現
物が部屋にあることで、いつも少しずつ「読まれている」のだ。プロ野球の
ピッチャーが、投げないまでも、いつもボールをそばに置き、ときどき触る
ことでその感触を確かめるようなものだ。だから「ツン読」を避けようとす
る者は、いつまでたっても「読書の腕前」は上がらない。これ、たしか。
(本文より抜粋)」
うーむ、自虐的に「積読」状態を反省していた私には、嬉しい一言。で、目次を見れば、そんな先入観をぶち壊すタイトルがいっぱい。まずはご覧下さい。
はじめに
第一章 本は積んで、破って、歩きながら読むもの
第二章 ベストセラーは十年後、二十年後に読んだほうがおもしろい
第三章 年に3千冊増えていく本との闘い
第四章 私の「ブ」攻略法
第五章 旅もテレビの読書の栄養
第六章 国語の教科書はアンソロジー
第六章(ママ。目次の間違い。本文は第七章、と表記) 蔵書のなかから「蔵出し」おすすめ本
ささやかなあとがき
おお、本を破って読むか・・・図書館の本が傷むはずよ。でも、自前の本だって私には破れない。でも積読ならば、得意。たしかにベストセラーを読まない、っていうのは見識なんでしょうが、読んだ本があとでベストセラーになるのは私の責任じゃあない。時代を膚で感じるには軽薄も一手ではあります。
でも、年3000冊増える蔵書、っていうのは恐怖ですね。実家から移動した本が3000冊くらいですが、もうお手上げですから。それに私、ブックオフに入ったことないし・・・。でも、教科書をアンソロジーとして楽しむという発想には驚きでした。もし装丁がもっと良くて、文庫にでもなったら私も買うかも。
で、読みたくなったのは第七章 蔵書のなかから「蔵出し」おすすめ本 の「詩は「別腹」」にあげられている高階杞一『早く家へ帰りたい』偕成社。息子さんを三歳で失った親の慟哭を綴った詩集ですが、想像しただけでも目がウルウルしてきます。お涙は嫌いなんですが、二児(もう大学生と高二ですが)の母としては、気になる・・・
投稿元:
レビューを見る
この本の著者はいわゆる愛書狂、活字中毒者とも言えるでしょう。もちろん、積読(ツンドク)を恐れません。
それでいて何年か手元に滞留させておいたのに読まなかった本はいらないと、ドカンと手放してしまいます。
確かに年間3000冊買ったりもらったりしていては、積ンドクに期限を設けないと住居が倒壊しますね・・・。
投稿元:
レビューを見る
早速、著者のお薦め本から一冊買ってみることに・・・アマゾンの中古だけど。神保町はよくいくけど、絶版本の知識ないし、相場もわからないからディープな探索はしてないけど、もう少し勉強してみたくなりました。
投稿元:
レビューを見る
前に読んだレバレッジリーディング(ISBN/ASIN:4492042695)は、読書を投資と捉え、実利的な目的を持った、ビジネス書の読書術で、この本では、楽しく読んだり、教養として読んだりする、読み物としての読書術であるように感じた。
ツン読など共通点も多々あった
投稿元:
レビューを見る
著者の読書好きは中々のもので、私も本を読むのは好きな方だが、足元にも及ばないとただただ思うばかり。
いつか読みたいと思うものも何点かあり、また開こうと思った一冊。
投稿元:
レビューを見る
書評家・岡崎氏による読書にまつわるエッセイ。
「読書=投資」ではなく、「読書=趣味」と考える本好きなら、絶対に楽しめる一冊ではないでしょうか。
読書という行為自体を論じた後、ベストセラーとの付き合いかただったり、本の整理の仕方・買い方、本を読むシチュエーションに、作者の読書遍歴等々、一人の本好きの楽しい語りが存分に展開されている。
それに同意したり、新鮮な発見があったり、首をひねったりしながら、最後まで楽しく読めた。
学生の頃、海外の小説をよく読んだが、社会人になってからはビジネス書に読書生活の大半を割いてきた。
でもやっぱり、自分の望んでいる読書生活ってこっち方面だな、と再認識。
それと、世の教養人の幅広さ・奥深さに脱帽し、二兎を追うこともやはりできないのだな、とも再認識。難しいね。
投稿元:
レビューを見る
読書で何かを得よう、などという下心が全くない著者の本好きぶりに好感を持ち、また共感した。
読書の快楽は本を読まない人には伝えにくいのだが著者はおそらくそれに成功しているだろう。本を読まない人がこの本を手に取ればの話だが。
投稿元:
レビューを見る
この人のように本にはまった、
というより本に狂った人を見ていると、
僕の本好きなんて大したことありません。
「趣味・読書」というのもアクティブになりうるというのが分かります。
投稿元:
レビューを見る
はぁー面白かった。
年に3000冊もの古本を購入し、毎日、古本屋をパトロールし、仕事も読書、趣味も読書・・・読書家として神の域に達しているといっても過言じゃないかもしれない岡崎氏の著作。
読書術を指南するというより、読書と、本への愛情があふれんばかりのエッセイで、読み出したら止まらないくらい面白い。
(Ex.古本屋でいかにして本を発掘するか、読書にどのようにのめりこんでいったかなどなど)
読書好きにはたまりません!!
ぐさっとささるような文章も多かったです。特に↓は不覚にもじーんとしました。じーんと。
「読書に費やしたこれまでの膨大な時間を、もっと別の有意義なものに置き換えられなかったのか。そんなふうに悔やんだことは一度もない。一度もない、といま気づいたことに驚いている。」
私も一生、本を読みまくろうとここに固く誓いました。
《所持》
投稿元:
レビューを見る
この人の古本がらみの本はいくつか読んでるし、『ビッグイシュー』の連載「ひぐらし本暮らし」も読んでいるが、こんな新書が出てるのは全く知らずにいた。この本も、この人の新しい新書『蔵書の苦しみ』というのが出ている、とどこかで見かけて、図書館の所蔵検索をしてみると、新しい本はまだなかったが、いっこ古いのが引っかかって借りてきたのだ。300頁近くあって、なかなか厚い新書だ。
この本は、「これからもずっと楽しみとして本を読んでゆきたい、できるだけ読書の時間を多くとりたい。いろんな作家のいろんな本に触れてみたいと考えているような人に、少しは役に立つように書いたつもりだ」(p.6)と、「はじめに」のところに書いてある。
人がすることすべて上達というものがある、何度も繰り返して腕前が上がる、読書だって同じだ、と岡崎はいう。
▼読めば読むほどいろんなことがわかってくるし、前にはわからなかったことが突然見えてきたりする。若いときに読んで気づかなかったことに、年とって再読したとき、ああそういうことかと気づいたり。
そんなとき、あなたは少しだけ「読書の腕前」が上がっているのだ。(pp.7-8)
そういう本なので、本をたくさん読んできて「読書の腕前」が上がっている岡崎の、本についてのうんちく、この本はこんなんですという解説、こんな本も読んでおきたいですねというおすすめを語る口調は、ちょっとばかり説教くささを感じるところもあった。「書斎は男の戦場だ」てな小見出しには、はぁー?とも思った。
そういうところもあったけど、全体に「おもしろかった」と思って読み終えたのは、やはり私も本ネタが好きだからかなと思った。こんなふうに読んだ、こうして本を手に入れた…という昔ばなしのところなんかは、自分はその年回りのころ、どうしてたっけなと思い出したり、あの頃こんな本を読んだりもしたなあと何冊か思い浮かべたりもした。
次の新しい新書は『蔵書の苦しみ』というくらいだから、その方面の話がもっとたくさん書いてあるのだろう。蔵書をどうするかという話は、この古いほうの新書にもそれなりに書いてある。
ある本を探しもとめて古本屋でみつけて…というような話を読んでいると、これは、岡崎に限らず、本を買ってどうのということを書いてる人に感じることだが、「図書館は、使わへんのだろうか?」と思う。もちろん、図書館に所蔵されている本ばかりではないし、国会図書館にだって入ってない本はあるのだから、本を探す、とりわけ古いものを探しだして手に入れることは、時と場合によっては、唯一の「その本を読む手段」だということはわかる。
それでも、本や古本の話を書く人って、図書館へは行かへんのかなと思うことがよくある。私は10年くらい前に、かなりたくさんの本を手放して、そのせいで「昔買ったはずだが、手放したかどうか不明」で、うちの中にあるのかどうかがはっきりしない本ができてしまった。しばらく探してどうしても見つからないときには、図書館で借りてくる。借りてきた本を読み終わって、ふと本棚を見ると、その本があった、ということも何度か。
私も、今ある本���はすでにあふれてるし、図書館頼みといっても多少は本を買うし、どうしたもんかなと時々思う。一方で「図書館は、自分の本棚の延長」という気持ちがあって、読みたい本のほとんどは、どうにかして図書館で読めるという信頼感もある。
本を買いまくっていたある時期、もちろん「失敗した!こんなん買わんでよかった」という本もあって、そういう失敗経験が、自分の"本感覚”みたいなのを鍛えたかなと思うところはあるけれど、本を買う系の人の書くものを読んでいると、「図書館は、使わへんのだろうか?」とやはり思うのだった。
(9/7了)
投稿元:
レビューを見る
書評家による本の読み方、付き合い方。
本との付き合い方の参考に読んでみたが、本を読むことを生業にする人と、趣味で読む人では考え方が違うかもしれない。だいたい年間三千冊増えていく本をどう処分するかなんて書評家だけの悩みであって、普通の人はそれだけ買う財力も読む時間もないのであまり参考にならない部分もある。書評家の読書生活はどんなものかという視点で読めば良いと思います。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
読書しない人生は、書~もない人生―“空気のように本を吸う男”の体験的読書論。
[ 目次 ]
第1章 本は積んで、破って、歩きながら読むもの
第2章 ベストセラーは十年後、二十年後に読んだほうがおもしろい
第3章 年に三千冊増えていく本との闘い
第4章 私の「ブ」攻略法
第5章 旅もテレビも読書の栄養
第6章 国語の教科書は文学のアンソロジー
第7章 蔵書のなかから「蔵出し」おすすめ本
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
本がたくさん読みたい!
たくさん買いたい!
いまのところは、本屋に行くと、興味はあるけど知識のつながらない本ばかり。もっともっとフックを増やしたい。
投稿元:
レビューを見る
「ときに、本それ自体を読むより、本について書かれた本のほうがおもしろいくらいだ」と本書にかかれているが、まさに本書はそんな本。読書好きには、そうそうと思える箇所が随所に発見できて楽しい。しかもそれだけでなく、岡崎さんの文章自体楽しい。じっくりと楽しみながら読める本。