紙の本
全世界に「在日」がいるという気づき
2008/06/11 01:20
12人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
在日問題に限らず、イラクやアフガンなど様々な問題で辛口の発言をしている筆者の基盤は、ふたつの故郷の狭間にいる「在日」という境遇にある。インサイダーでもアウトサイダーでもないからこそ、どっぷりと日本に浸りきっている日本人には見えないものが見えるという。
「狭間」の境遇を積極的に生かす筆者はしかし、子供のころから自分のおかれた状況になやみつづけてきた。そんな半生を、格好つけず、てらうことなく、赤裸々につづっている。
在日2世として朝鮮戦争の年に熊本に生まれた。学校では歴史の授業に疎外感をおぼえ、家では、かたくなに朝鮮半島の因習にこだわる母に違和感をかんじた。
一世にある「朝鮮民族」としてのアイデンティティは欠落している。かといって日本人にはなれない。根っこがない不安定な感覚になやみ、ときに過剰なほどにナショナリスティックにもなった。
「在日」としての自分、「在日」の世界観にしばりつけられていたことに気づかされたのが、30歳を前にしたドイツ留学のときだった。
在独ギリシャ人の友人の父母は、ドイツでは差別され、それでもギリシャ文化を頑固に守りつづけていた。まさに自分の父母ら「在日1世」とおなじだった。在日は孤立した存在ではない。全世界に「在日」がいる。在日の問題は普遍性のある問題なのだということに気づく。
今は、一世の思いを胸にしっかり抱いて、しかし、彼らにできなかったことをやっていこう、「東北アジア人」として生きていこうと思っているという。
紙の本
在日という立場
2020/12/31 13:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりすたるくりきんとん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルからして大変重い内容だなと思いましたが、思い切って手に取って読みました。
日本の新聞や周りの日本人から聞いたことしか知らなかったので、この本を通して正確な状況が分かり、大変苦労されたことが心底分かりました。
涙が止まりませんでした。
紙の本
まっすぐな本です
2022/06/13 20:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビでおなじみの姜さんの作品です。テレビでは落ち着いた物静かで、知識人でとても頭の良い方です。とは私の印象です。
若いころの、感情が抑えきれず泣きそうな写真も掲載されていました。私にとっては意外な印象を受けました。
「在日」という難しい題を当事者の作者が書かれています。
とても素直にまっすぐに書かれていることにとても感動いたしました。
ご両親から愛されて育たれたことがよくわかりました。
是非皆さま、ご一読ください。
紙の本
私は勝手に彼が裕福な家庭の人だと思い込んでいた
2023/04/03 16:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は在日韓国人の政治学者で、この本が出版された2004年ごろは東京大学社会情報研究所教授だった、在日の裕福な家庭に育ったと勝手に思っていたのだが、かなり苦労した人のようだ、永野鉄男という名前を捨てて姜尚中として生きることを決めたころの話は引き込まれる
投稿元:
レビューを見る
カンサンジュンの著作を読んだり講演会に行ったりしていて、彼の経歴にすごく興味があった。日本人の在日化というのは面白い概念だなと思った。朝鮮半島についてこれからも勉強を続けていきたい。ブルース・カミングス、ちゃんと読んどくんだった。。。
投稿元:
レビューを見る
3/3
有名な姜尚中さんの自伝。
もう15年以上前に朝まで生テレビに出てた
頃は非常にスマートでロジカルな人という
印象があったが、本書を読むと当時でも対北朝鮮対応をどうするか、指紋押捺問題など揺れ動いていた事がよく分かる。
人間味を感じる1冊でした。
投稿元:
レビューを見る
著者や著者の周囲の人々は在日として大変な思いをしたはずなのだ。そのことも書いてある、いやそのことを書いたはずなのだ。なのに強く訴えるものが何も伝わってこないのが不思議だ。義務感で最後まで読んだがつまらなかった。
先日読んだ『越境の時』の方がずっと胸に迫るものがあった。
投稿元:
レビューを見る
苦悩、葛藤の量こそが人生の深さならば、自分の人生はあまりにも浅い。
人間は、生身の人間に支えられることによって前へと進んでいく。
人間を支えることができるのは人間であって、人間への信頼こそが生きる核心となる。
投稿元:
レビューを見る
メモ:
*サダム・フセイン-イラク元大統領。独裁政治、度重なる平和条約不履行によって西側諸国との軋轢を生む。2003年の米英によるイラク攻撃後、逃走中に米軍によって身柄を拘束される。
*湾岸戦争-1990年8月イラクのクウェート侵攻に対し、ブッシュ・アメリカ政権は即時撤退を求める国連決議採択を取り付け、武力解放のために多国籍軍を結成し、翌91年イラク空爆を開始。日本政府は総額130億ドルを支援。
*イラク戦争-2003年フセイン政権が大量破壊兵器の破棄に応じないことを理由に米英軍がイラクを攻撃。イラク軍の抵抗を受けぬままアメリカ・ブッシュ大統領が一方的に戦闘の終結を宣言。
*マーガレット・サッチャー‐英国初の女性首相。1979年の就任以来、強い個性で11年半にわたり英国を導き「鉄の女」の異名を持つ。
*朴大統領暗殺‐1972年に独裁的な維新体制を断行し民主化運動弾圧を進め、78年に第9代大統領に就任。18年間の軍事独裁に対する民衆の不満が爆発し79年に部下に射殺される。
*満州事変‐1931年、関東軍が中国の南満州鉄道の線路を爆破。中国軍のしわざと偽って中国に侵攻、占領して満州国を樹立させる。列強の反発を受けた日本は国際連盟を脱退、戦争への道をひた走るようになる。
*スンニー派、シーア派、クルド人‐イスラム教徒はその従う指導者によって教義が異なり、スンニー派、シーア派に2分される。(ただし、スンニー派が全イスラム教徒の90%を占める)。クルド人はイラン、イラク、トルコの3国にまたがって住んでいるイラン系アジア人で民族独立をめぐってイラクのフセイン政権と対立。
投稿元:
レビューを見る
・姜尚中氏の自叙伝。
・「GO」とか「血と骨」みたいなものを期待してたらずいぶん違った。もうすこし、一般的な在日像に肉薄するのかと。
・姜尚中って人をよく知らないのでなんとも。
投稿元:
レビューを見る
先日,ある人から「良くテレビに出ている『姜 尚中』って,何をする人?」という質問がありました。
実際,私もよくわからなかったので,この一冊を読んでいます。
読み終わったらコメント書きます。
投稿元:
レビューを見る
クールな論客、姜尚中(カン・サンジュン)氏。
低音で繰り広げられる簡潔で明確な論理。
しかし朝鮮半島がらみの話題になると口調が激しくなる。
北朝鮮問題についても甘いんじゃないか、理想主義が過ぎてやないかと思えるくらいである。
本書では在日二世としての苦悩、苦難の生涯を過ごさざるをえなかった一世に対する強い想い、ご自身のビジョンや理想について書かれており、メディアで発言してることの意味がようやく理解できた。
特にドイツの政治家で、冷戦の終結と東西ドイツの統一に尽力したゲンシャーの言葉
「わたしはいつも、東ドイツがこの地上からなくなって欲しいと祈り続けた。しかし、東ドイツは存在する。存在する以上、交渉をするのが外交である。」を引用したくだり。
ここに姜尚中氏の考えの核があるのだと感じた。
祖国と故郷が一致しない「在日二世」としての自分に悩みつつ、それを乗り越えた姜尚中氏の南北統一に対する想い。
この情にあふれる熱く激しい血を持つ民族の悲願が叶う日がいつか来るのだろうか。
この本はあくまで自伝であるので、姜尚中氏の一世に対する想いは伝わってくるが、一世の生き様について詳細は記述されていない。
一世についてのことや、次世代の在日について書かれた資料も読んでみたいと読後に思った。
投稿元:
レビューを見る
カン・サンジュンの佇まいと語り口が好きだ。
柔らかいのに芯の通った姿勢が。
彼の出自が書かれたこの書籍には、
逆境に裏打ちされた知性の根っこが垣間見れる。
痛みで立証された言葉は、
どんな形であれ何らかの意味を伝えてくれる。
支持しないわけにはいかない。
投稿元:
レビューを見る
評論ではなく物語だった。小学生とかが読んでも面白いんじゃないかと思う。ときどきロマンチストな姜さんの、民族的側面を軸にした自伝といったところか。情景描写がすごい。在日を内側から見てみたかったので、とても面白かった。(「政治の時代」の話なので現代とは違う部分もあるだろうけれど。)学者としての道すじもよくわかって勉強になった。
投稿元:
レビューを見る
一世の「恨」を解きたいという願い。
幼いころの思い出を何度も蘇らせるような作業。
それが「宿題」であるという、生真面目さ。
出自が似ているからだろうか、共感できる部分が多い。
先生の言葉には、少なくとも偽りはない。
それとも、アイデンティティによって保証された真摯さが、言葉に真実味を与えているのか。