紙の本
これが新世代エンターテインメント
2020/02/16 09:26
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジャズミュージシャンを目指す青年が、真のジャズを見つけるために世界放浪の旅に出るというのだが、その初っぱながバイカル号に乗ってナホトカに向かうという、当時の若者にとって憧れそうで、手の届きそうな、音楽よりは人生修行という旅である。モスクワから北欧、パリ、南欧へと転々とするが、観光案内、名所紹介的な旅行記風なところはない。彼の行くところといえば、その土地のジャズバー、ダンスホール、とにかく若者がたむろしている場所であり、皿洗いや遊園地の鼓笛隊のアルバイトが日常生活であり、むしろ放浪記なのだが、うす汚くも、みじめでもなく、ポップでスマートだ。なんの権威ばることもないのがジャズであろうし、現代風ということだろう。
それはいいのだが、行く先々でどういうわけか現地の女性に好かれ、大物ミュージシャンに認められるという、漫画のような展開の道中であったりもする。読んでいるうちはその先の展開にひかれるけれど、あとでその意味が説明されたりはしない。それは主人公のジャズについての疑問「アーチストはどれだけエンターテイナーより偉いのだろうか」を、小説というものに置き換えてみれば、作者の言いたいことは理解できるわけだ。当時大衆小説と言う代わりにエンターテインメントという言葉を持ち込んだのには、様々なメディア間での一貫性があったのだろう。そしてその主張を徹底した作品がこれなのだろう。
主人公がリスボンからジャズの聖地アメリカへと向かうところでストーリーは終わる。そらアメリカでそれまでのような幸運が続くというのは無理があるだろうが、そうしてみるとヨーロッパでのジャズ体験は、アメリカにコンプレックスを持った人々が、ヨーロッパという繭の中で主人公を刺客として育成していたのだとも言えそうだ。
とにかく若者は夢を見なくてはいけない。ジャズ小説であり、エンターテインメントであり、そして路地裏から見た「世界」であるこの小説が、その格好の道案内として今でも通用するだろう。
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「善い事とか、悪い事とか、そんな事はどうだっていい事だ。おれたち人間は、自分の生命をおびやかす行為を悪、その反対を善と名づけただけさ。」
「音楽は、クラシックも、ジャズも、ポピュラーも、みんなひっくるめて、やはり人間だという感じがするのです。道徳的な意味や、教養とは別な、人間性。どんな飲んだくれの魂の中にある、あの広い永遠の荒野。どんな無知な人間も持っている、その深い魂の淵。国境や、肌の色をこえて、なにかの共通するものが、そこにあると僕は思うのです。そして、それを音で表現するのが音楽だと考えるようになりました。」
ユダヤの若い娘の肌全身にタトゥーをほどこし、その皮を剥ぎランプを作ったナチスの将校がピアノを弾くシーンで、それをたまたま聴いたユダヤ人は不覚にも感動してしまう。
常識的に考えた世界で行われる、善悪の行為を超えたところに音楽はあって、人を感動させる。
具体的な例を挙げれば、Sex Pistolsのシド・ヴィシャス、THE LIBERTINESのピート・ドハーティ。彼らはドラッグにはまり、破壊的な行為を繰り返していたが、彼らの音楽は魅力的で人気を博している。
槇原敬之もドラッグを使用していたが、「世界に一つだけの花」などの曲を作り出した。
人の感動なんて善悪を超越したところにある。
この小説で大切な部分は次の詩が良く表していると思う。
この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ
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主人公であるジュンは「大学の講義を聴くよりも、数倍良い経験が出来た」と言う。
旅を通して色々な経験をし成長していく。
旅の魅力、そしてなにか煽動力がある。
今まで読んだ旅物語の中でも最高の作品であることは間違いない。
一晩で読みきってしまった。
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ジャズミュージシャンを目指す20歳のジュン。
行きつけのBarで「お前さんには何か欠けているものがある」
「音がキレイすぎて、こっちに共鳴させるものがないわ。鑑賞用演奏なのよ」
と言われ自分はもっと苦労しなければならないとソ連へ旅立つ。
旅はソ連からヨーロッパへ続くが、その先々でハプニングや強烈な人々との出会いに遭遇することになる。
自分は、ジュンがそれらの出会いを通じ一歩一歩成長していく姿にとても励まされた。
自分もジュンの様にチャレンジ精神を持って、生きていきたいと強く思った作品。
名言が沢山ちりばめられていて大学生活の中で出会った本で一番心に残っている本です。
人生のバイブルにします・笑
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学生時代に五木寛之にハマッてよく読んだけど
今の年齢で読み直してみると、甘ちゃんだね
なんでこんなレベルに夢中になったのかなぁ‥
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本が呼ぶのか自分が呼び寄せるのか、そのときにベストな本と出会うことがたまにある。タイトルや表紙に惹かれる本は大概当たりだったりする。この本がまさにそれだった。
斜に構えれば主人公の辿る道筋にいちいち難癖を付けたくもなる。しかし、舞台は60年代なんだからこれでいいのだ。当時に生きていなかったから、いくら現在の尺度で判断しようとしても無駄だ。
変などんでん返しもなく、純粋に最後までトントン拍子にストーリーが進んでいって読んでいて気持ちがよかった。
その順調な展開が、時が経てばずいぶん青臭いと苦笑するかも知れない。だけど、青臭さを感じられることを大真面目に言葉にできたこの小説が生まれた時代がうらやましいことに変わりはない。
60年代や70年代辺りに、ジャズ喫茶でコーヒーを片手にこの本に熱中して異国に夢を求めて旅する主人公に憧れていた若者がいたかも知れない。そんな過去の若者たちとの交錯に思いを馳せられるのもまたよかった。
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少年の成長がうまく描かれていていいと思う。難点は、ジャズをプレイしているところの表現が乏しい。あと、まあ、ストーリーが強引すぎる。
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海外へ行くことが特別なことだった時代に、トランペッターとして成功するためにヨーロッパへ渡る青年ジュン。彼の無軌道なだけで夢にあふれた冒険を描いた小説です。この小説は当時大学生のバイブルだった「平凡パンチ」に連載されたもの。ヨーロッパ、パリへ行くのに、船でソ連(現ロシア)のウラジオストックへ渡り、シベリア鉄道でほぼ10日間。当時はこれがいちばん安いルートでした。そのために小説が発表されてからシベリア鉄道でヨーロッパを目指す若者が続出。建築家の安藤忠雄もそんなひとりだったそうです。
当時陸路でヨーロッパを目指した人たちの必携書がこの「青年は荒野をめざす」と、小田実の「何でも見てやろう」だったとか。ストーリーは音楽とセックスと人生と、という時代を感じる青春小説ですが、希望と絶望が交差するような青年の旅行小説と読むと、また違った趣があります。
ちなみにパリはヨーロッパのジャズの都。この小説は「スイングしなけりゃ意味が無」かったバガボンドたちを思いながら、パリで読むのも一興です。
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・この前読んだ「荒野」って小説に出て来た超然とした少年がいつも読んでいたので、気になって読んでみた。そしたら高度経済成長の日本にぼんやりとした不満を持った中流育ちの青年が海外に飛び出して魅力的な金髪女性とセックスするって内容だったから、正直に言ってあの少年にはがっかりした。中学の頃からこれ熱心に読むとかどんな設定だよと…
・それを抜きにして読むと、結構面白かった。ハタチ前後で読んだらきっともっと面白かっただろうな。真に受けて海外に飛び出したかもな。
・今現在これを読むと、なんか甘ったれた奴が海外に飛び出してって良くある話なんだけど、昭和40年代に書かれてるところを考えてみると、かなり挑戦的な内容だったのかなとも思う。40年前に、今読んで「よくある設定」の本ってのは刺激的だったのかも。ハタチの童貞が金髪のスチュワーデスと夜の公園で初体験するとか、当時の若者の心を鷲掴みにしたに違いない。
・それにしても五木寛之って適当だよな…細かい話だけどクリスチーヌとはセックスしてないよね?ラストの手紙と本編矛盾してるし。すっごい気になったわ。
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世界にはいろんな人がいるんだなと思った。
いろんな国の人とセックスしたいと思った。
本来それは特異なことじゃないし、
みんな同じ人間。
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五木寛之著「青年は荒野をめざす」文集文庫(1974)
青年達はいつでも荒野を夢見る。ジャズミュージシャンを目指す60年代の自由と夢への若者のあこがれを求め走り続ける。モスクワ、ヘルシンキ、パリ、マドリッド、そして最後は自由の国アメリカ/ニューヨークを目指す。
最近、こんな海外を目指す人々の本を読みあさりたくなった。フィクションでもノンフィクションでも、とりあえず30冊ほどアマゾンで購入してしまった。なんか、昔、バックパック1つで世界一周の旅に出かけていたそんな雰囲気を思い出したいのだろうか。。。人間が若く見えるのは歳ではない。
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もっと無骨で硬くて乾いているイメージだったのだけど、
思っていたよりしゅっとしていたというか、ウェットな感じ。
人間、というか青春ぽくて、でも読みやすい。
もちろん、とても面白かった。
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「1960、70年代の青年のバイブルだった」と帯にあるように日本が敗戦から、いや敗戦後に生まれた世代にとって海外に出て行くことが新しい価値観や思想を手に入れていく過程であり、今ならば外こもりと言われるような旅の中で出会う人たちと様々な出来事は未知である部分が多かったのがデカいのだろう。
日本が内籠りになってしまった前の十年は海外の文化を取り入れて熟成されたガラパゴス的な日本文化のひとつの形だったが世界へ目を向けれる人が、若い世代が減ったようにも感じられた。世界に目を向けなくても日本自体が進んでいる国で面白いのだから、でも内側からも外側からも見える客観性が必要だと思うのは僕がやはり年をとって青年ではなくなったからか?
いろんな視線、角度を持てる方がきっと世界はまだ拓けるしもっと近くなると思いたいし、そっちの方が面白いはずだ。
今、読むとやっぱり旅に出たいよねって思うし、出たら帰らないのだろうなとも思う。
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後半の大所帯はかなりわざとらしいが、青春の発するパワーがいたるところでフツフツ煮えたぎっていて、勢いを感じる。
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バックパッカーをやっている時に持って行った一冊。
読みながらこんな旅いいなーと思いながら、それ以上の旅が出来たのは、この本のおかげかも…