紙の本
経営者も人、社員もまた人。
2008/10/06 19:23
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
会社を辞めて四ヶ月が過ぎた。せっかく「無所属の時間」を得たのだからと、いわゆるビジネス書といわれるジャンルを自然と遠ざけてきた。今回その禁を破って本書を読んだのには理由がある。まず、稲盛和夫氏の著作であったこと。それと具体的事例としての経営問答であったこと。その中から自分が過ごしてきたことの、そしてこれから行うであろうことの、何らかの道筋がみえてくるのではないかという期待があった。
この本を読むと、経営者といわれる人々がいかに悩んでいるかがひしひしと伝わってくる。「硬直化した組織を立て直すにはどうすればよいのか」「経営不振を払拭し、社員の心をまとめていくにはどうすればよいのか」「社員の経営マインドを高める方法はあるのか」といった16の問いに対して稲盛氏が答えるという形式をとっているのだが、いずれも経営者も「オレはここまでやっているのに、どうして社員はわかってくれないのだろう」という嘆きのようにも聞こえる。たぶん、その一方で社員たちは「うちの社長は何もわかっていない」とこれも嘆き、悩んでいるにちがいない光景が見えるようだ。企業を経営する側と企業で働く側の、こういった心の不一致こそ不幸というしかない。
そういうなかで、稲盛氏は時に経営者の悩みの欺瞞を咎め、時に経営者を激励する。稲盛氏が多くの経営者に支持されるのは、その時々の判断の軸がぶれないことだろう。人はそれを氏の「経営哲学」と賛辞するが、稲盛氏だけでなくどの経営者であっても「哲学」を持つことは重要である。そして、その「哲学」は本来その経営者が自らの経験と知識から構築したものであるべきはずなのに、本書で問いを発する経営者の多くは稲盛氏の「哲学」をなぞっただけであるのは情けないどころか悲しくさえある。これではマインドコントロールされた邪宗の信者に等しい。「社長、また稲盛さんにはまっているよ」と社員に馬鹿にされるのがおちだ。
だからといって、社員がすべて正しいのではもちろんない。経営者の言うことを理解しようとしない社員たちのなんと多くいることか。本書は実は経営者が読むのではなく、社員と呼ばれる人たちが経営というものがいかに困難であるかを理解するために読むべきものかもしれない。誰もが経営者になれるわけではない。しかし、少なくとも企業にあって同じ方向に進むべきだと思えば、経営者がいわんとすることを理解しようとする姿勢はあってもいい。その上で自分たちの経営者が稲盛氏の実践してきた、「事業の目的・意義を明確にし、部下に指し示すこと」や「誰にも負けない努力をする」や「常に創造的でなければならない」といった「リーダーの役割一〇ヵ条」からはみ出したり、不足している時、NOといえばいい。まずは互いに理解することから始めるべきだ。経営者も人、社員もまた人。だからこそ経営とは難しいのだが、その一方で、だからこそ理解しあえると信じる。
「無所属の時間」はある意味、心地よい時間だ。しかし、これからの時間が所属するにしろ所属されるにしろ、人間として必要な、緊密な時間かもしれないというのが、「無所属の時間」を四ヶ月過ごしたものの感想である。
紙の本
京セラ元会長、稲盛氏の経営問答集
2008/09/27 20:26
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
京セラ元会長、稲盛氏の経営問答集。本書には著者が主宰する盛和塾の塾生から寄せられた「ひと」に関する質問について、回答が書かれています。
著者の「ひと」に関する考え方は、いわゆる経営資源の一つとして取り扱うことをしません。「ひと」中心の会社づくりが大切だと説いています。
以下、気になった部分と感想。
「私の思想、哲学を命をかけて伝えるような・・・そういう幹部をつくらなければ」
組織が小さなうちは、社長自ら直接思いを伝えることができますが、大きくなったらそれも難しくなります。そこで、社長の思想を正確に理解してくれ、それを伝える能力がある幹部社員が必要になるのです。
「経営者は一流の心理学者たれ」
人事評価はどんなに基準を作っても、それは常に動くし、人間が評価する以上、絶対ということはあり得ません。そこで、経営者に必要なのが社員の心の動きを正確に読み取る力なのです。
「あなたが現場にいくです」
いわゆる経営コンサルタントが言っていることの、反対のことを言っています。社長は現場に出ないで、経営をするのだ、と。でも、それは現場が動いてくれることを前提としているのです。だからこそ現場に出て、その姿を見せることで社員にメッセージを伝えるということ。理にかなっています。
「意見が出ないなら、あなた自身が・・・」
会議の一場面。どの会社でもある光景。現状を変えるためにトップは率先垂範しなければならないのです。
「それを売ることが、どういう社会的意義があるのか」
社員をモチベートすることがトップの仕事です。
「あまり細かく分けすぎてしまうと、採算を上げるための創意工夫の余地がなくなってしまいます」
独立採算で一組織として採算が見られるような組織形態にすべき。
「「ワンマンではダメ」という言葉に耳を傾ける必要なし」
社長が身をもって見本になるということです。
「「儲」ける、という漢字は分割すると「信者」」
自分の人格も含めたところで、尊敬に値する経営者になることです。
「ベーシックな倫理感を堅持」
究極は人格を高めること、それに尽きます。
どの言葉も、現場でたたき上げてきた経験に裏打ちされているため、説得力があります。でも、著者の求めている社長像は本当に努力しなければなりません。
世の中にハウツーものとして、「こうすれば経営がうまくいく」といった類の本が多く出ています。しかし、経営の本質は小手先の技術ではなく、こうした社長の姿勢なのかもしれません。
社長道は、本当に厳しい道です。
http://blog.livedoor.jp/c12484000/
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部下の評価方法は、共に働く中で、自分の部下をどこまで見ているのかが決め手になる。
給与水準、ボーナスの水準は同業他社を参考にすべき。同業他社や地域よりも若干いい待遇ができにようにする。世間相場というものを見てやる。
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はじめて社員をもつ私に、勇気をくれた一冊。
任せる器。人を生かす器。最終的な決断をする社長は、立派な哲学を持っているか
つまり、心の座標軸をもっていることが決め手となる。
というのがなにより心に刺さった。
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会社を大きくし その運営をしてきた著者だから語れることがあると思います
盛和塾という人生哲学 経営哲学 を学ぶ経営者の為の経営塾の中で
塾生からの質問に対し
稲盛氏が回答する という形の本でした。
経営を目指す人
今現在 経営の悩みがある人にお勧めできる本田と思います。
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著者の運営する稲和塾の塾生(企業の経営者)の方々との対話式で掲載。
ひとり一人の質問に対して、
愛情をもって答えていらっしゃるのが伝わって涙が出てきました。
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経営者は一流の心理学者たれ。
大きな夢や目標を掲げることは大切なこと。どんなに偉大なことも地味な努力を積み重ねることでしか達成できません。
人は高い目標を掲げ、さまざまなこんなを乗り越える中でこそ、遊びややりがいを感じることができるもの。
人格を高め、人柄を良くするには、先人に学ぶ、善き事をなす。
・事業の目的、意義を明確にする。
・具体的な目標を掲げる。
・強烈な願望を心に抱き続ける。
・誰にも負けない努力をする。
・強い意志を持つ。
・立派な人格を持つ。
・どんな困難に遭遇しても決して諦めない。
・愛情をもって接する。
・モチベートし続ける。
・常に創造的。
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中小企業経営者の悩みや経営課題に対して、稲盛和夫が自ら返答するQ&A形式。
それぞれの社長が抱えている問題点、それに対する熟達した経営者である稲盛氏の考え、会社を動かす立ち場にある人の心構え等を学べる。
稲盛氏の強烈なリーダーシップが行間に滲む。非常にストイックな経営スタイルで、皆が皆このようなリーダーシップを発揮できる訳ではないと思うが、どこぞの社長にも爪の垢を煎じて飲ませたい。
京セラは"狂セラ"と揶揄されるくらい、働きぶりが凄まじいことで知られているが、これを読むと、何となくそれも納得が行く。社長がこのような猛烈で厳しい人だったらそうならざるを得ないだろうな、と。
個人管理No.: JI20091114-001
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★自己犠牲を払わなくてはならないのです
経営者とはリーダーとはどうあるべきなのか?社会にでれば大小あれど、どう人々を束ねていけば良いか?と悩むことがあるだろう。この本は稲盛和夫(京セラ、KDDIの創業者)が開校する盛和塾の塾生たちが直面した経営上の問題について、アドバイスする問答形式で書かれている。稲盛氏自身が悩み抜いた末にたどりついた、人や組織を生かすための方法や考え方が書かれている。それではその内容の1部を紹介していこう。
一般に企業発展の重要な要素は人材や商品、設備、資金といった目に見える資源であると考えられている。しかし経営理念や経営哲学といった見えないものも企業が繁栄し、存続していくうえで欠かせないものである。すばらしい経営理念があれば、従業員は心から賛同し、会社発展のために自発的に行動するようになる。
「大きな夢」を描けるかどうかで、未来は大きく変わっていく。会社経営においては、経営者と従業員が同じ夢を共有することでどんな障害も乗り越えようという強い意志が集団の中に生まれる。人は高い目標を掲げ様々な困難を乗り越える中で喜びや、やりがいを感じることができる。将来に向かって大きな夢を描き、仕事の意義を明確にし、従業員の心に火をつける。これがリーダーに与えられた大きな役割である。
経営者にとって、自分の考えを理解し、自分の分身のように経営責任を担ってくれる幹部の存在は不可欠である。会社を伸ばしていこうとするなら、経営幹部を育成していくしかない。会社をいくつかの小集団に分け集団ごとにリーダーを設ける。すると従業員として、「してもらう」立場からリーダーとして「してあげる」立場となる。活躍の場を与えることで、経営意識を持つ幹部を育てることができるのである。
リーダーは仕事の面でも、人間性の面でも、信頼され尊敬されることが必要である。リーダーとなり集団をまとめ、発展させていくには、自己犠牲を厭わない「無私」の心が必要である。そうすることができる勇気を持った人でなければ、リーダーになってはならないのだ。
この本を読んで感じたのは、稲森氏は情熱やバイタリティに物凄く溢れた人であるということ。本からでも凄く熱い感情を感じることができる。実際に会ったら火傷してしまいそうな気がする。おそらく成功する人は皆熱い熱を持っているのだろう。今回その熱に触れることができたことが収穫である。そして皆さんにもこの熱を体験してもらいたい。
(オススメ人:作前雄也)
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(K) 稲盛さんが塾長をしている盛和経営塾の塾生が、経営上の課題について質問し、それに対して稲盛さんが答えていくという形式の本。主な対象者が中小企業の社長なので、京セラ創業時代の苦労について語っている場面が多い。オムロンの立石一真でも、日本電産の永守重信も同じだが、日本で名だたる経営者は創業時代から人を引きつけるものを持っていることがわかる。また、その目線は今にあるのではなく、必ず未来を向いている。
「人を生かす」というタイトルの本なので、人材育成に関する内容が多いのはもちろんだが、経営とは人作りであるということがわかる。とりわけ、企業の規模が大きくなると社長一人では会社は回らなくなるので、人作りが最も重要な課題になるのであろう。与えられている役割は違っているとは言え、責任と権限の範囲が拡大するにつれて中小企業の社長と同じような役割を演じて行かなければならないのだろう。
読みやすく、大変理解しやすい本なので、人材育成について勉強したい人に推薦できる。
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以前勤めていた会社の社長から贈られたものです
マネジメント、経営、ひととして・・・等等いろいろなことを学ぶことができた力強い本でした
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Kodama's review
『価値判断の座標軸は人間性』『価値判断は人格を投影したものである』『正しい判断をするために心を修養し、人間がいかにあるべきかを学び、人間性を高めていくことが人柄を変えていくことになる』
いつもその深さに感服します。
(10.4.17)
お勧め度
★★★★★
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企業時の悩み、成長期の悩みに対して考え方がわかった。
一貫して仕事そのものは儲けが目的でなく社会のために貢献することという考えかたに納得した。
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松下幸之助さんから学んだ一人
リーダー(経営者)こそ、率先して働き、
人格を高める
「儲ける」とは信者を作ること
お金という報酬ではない
社会的道義、夢など社員の心に
動機付ける
この動機付けこそが
会社の繁栄と社会貢献につながる。
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稲盛さんが主催する若手経営者のための勉強会(盛和塾)で、中小企業の経営者が抱えている様々な経営課題について相談された折に稲盛さんがアドバイスした内容がベースになっている本です。
内容自体はとても平易に書かれていて、アドバイスも「経営者の心構え」的なものでそれほど目新しいものはありません。でも、質問の1つ1つがとても切実であり、会社員であれば誰もが自社で抱えている課題に近いものが幾つかあるはず。また、僕のように大学を卒業して大企業に就職した人は忘れがちですが、同書に登場する中小企業経営の難しさに触れることで、いかに大企業は恵まれた環境にあるのかという当たり前のことを改めて思い起こさせてくれます。
中小企業は、資金もあまりない、技術もない、徒手空拳で創業するケースが多いと思います。そうすると、そこにあるのは社員を含めた人間の心しかない。私の思想の根底にあるのは、その人間の心というものを大事にしてあげなければ、人をまとめることはできないということなのです。(p.63)
先日読んだ「よき経営者の姿」伊丹敬之(日本経済新聞出版社)にも通じますが、会社とは社員の集合体であり、その会社を経営するということは社員の心にどうやって火を付けるかが勝敗の分かれ目。社員を鼓舞し、より働きやすい環境を整えるのが経営者の役割であり、そのためには単に経済的な理由だけではなく、その仕事が持つ社会的な意義までも含めて社員に考えさせ、納得してもらうことが結果としてその会社の大きな原動力になるのでしょう。
営業の社員に「おまえ、これを売ってこい。これをやってこい」と命じるだけではモチベーションになりません。それを売ることが、どういう社会的意義があるのか、わが社にとってどういうことを意味するのか。あなたの人生にとってはどういうことを意味するのかをいわなければならないのです。(p.87)
そして、経営者にとって重要なことは自らのビジョンを持ち、深め、噛み砕いて、分かりやすい言葉で繰り返し社員に語り続けること。社員は日々の目の前の仕事の忙しさに追われて近視眼的になりがちであり、トップの言葉はどこか遠い世界のことのように聞こえがちです。社員一人ひとりの腹に落ちるまで経営者が辛抱強くビジョンを語り、自らが有言実行してみせることで初めて経営と社員との間で信頼関係ができるのだと思います。
「何としても成功させる」と強い意思を持ち、努力を続ければ、必ず道は開ける。従業員にそのような思いを持って仕事をしてもらうために、仕事の意義を、自分のエネルギーを相手に注入するぐらいの熱意で説き続けるのです。意義や目的に納得できれば、従業員は自ら燃えて、その高い目標にチャレンジするようになります。(p.73)
経営者をリーダー、社員をチームメンバーと置き換えれば、そのまま今の自分の仕事にも通じます。稲盛さんと若手経営者とのやり取りは時に禅問答のようでもありますが、経営において哲学、理念といったものがいかに重要かということが多数のケースを通じて伝わってきます。