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紙の本
書評は書くものではない、読んでもらうものである
2008/10/27 00:12
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブライアン - この投稿者のレビュー一覧を見る
『文章は書くものではない、読んでもらうものである』
この本の主旨を一言で示せば、この言葉に尽きます。
広告コピーという商業文章は、新しく創造するというよりは、そこにあるものを見つける作業です。ウケ狙いの奇抜な表現よりも、気づきをそっと提供するようなコピーこそが名作と言われる広告として語り継がれていくのです。
“上手い文章”はちょっとテクニックを身につければ誰でも書けます。ただし、それが他の人に読んでもらえるかどうかは別の話です。文章をコミュニケーションの一手法として定義するのであれば、読んでもらえる文章こそが良い文章ということになります。
そんな著者が主宰しているコピーライター塾の1人の生徒の成長が“伝える言葉”を如実に示しています。
◆第一回原稿
(二分法による比較=差異を際立たせる)
カフェオレとカフェラテは同じようだけど違います。
どちらも同じミルク入りコーヒーですが使っているコーヒーが違います。
カフェオレは普通のコーヒーですが、ラテにはエスプレッソを使います。
エスプレッソはコクがあり、旨味がつまっています。
なので、コーヒー飲料としては、カフェラテの方が上です。
◇添削
(無駄な表現を省く)
カフェオレとカフェラテは/どちらも同じミルク入りコーヒーですが
使っているコーヒーが違います。
(不似合いな表現)
缶でも瓶でもないのに、「つまっている」という表現?
違いはコーヒーだけで、ミルクに違いはないのか?
「上」とはなんだ?どのような視点での上下関係だ?
◆第二回原稿
(新たな視点を加える)
カフェオレとカフェラテに使うコーヒーとミルクの温度は、
どちらも92度と66度で、同じです。
しかし、コーヒーを3倍多く使うカフェオレの方が、
カフェラテよりも温かくなります。
よって、寒い冬に飲むのなら、カフェオレです。
◇添削
(表現への気づき)
「よって」はよくない、「ですから」だろう。
実態から「熱く」と書きたいところ、「温かく」と書いた気づきが素晴らしい!
「寒い冬に飲むなら」という身近なシーンの表現に繋がっている。
◆第三回原稿
(広告コピーに仕上げる)
冬にほしいものは
温もりと優しさだと思う。
コーヒーが、もっと温かく優しくなれないか。
スターバックスは考えました。
その答えは新しいカフェオレ。
92度の熱いコーヒーに66度のふわふわなミルクを贅沢に加えて、
この冬、いちばん温かくて優しいコーヒーができました。
スターバックスコーヒージャパン
◇論評
(整理力)
最終的にはカフェラテのことはばっさりと切り捨て、
温かさと優しさという表現を実際の商品イメージに合わせて
上手く使っている。
特に、「66度のふわふわなミルクを贅沢に」の表現は秀逸。
文章の無駄な部分を削りながら、もっとも伝えるべきポイントを明らかにして、感性に訴える表現によって命を吹き込んでいく。そんな文章を磨き上げていく過程を楽しみながら、「読ませる文章」としての実例の名作コピーがずらりと並んでいる内容には、とても知的好奇心を刺激されることでしょう。広告コピーのみならず、文章で表現するすべての人へ、「伝わる言葉」とは何かを考えるきっかけとなる良書です。
紙の本
至芸に学ぶ文章の心得
2008/12/02 13:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テレキャットスター - この投稿者のレビュー一覧を見る
広告コピーが題材の文章読本。著者は、広告のコピーライターとして、そして広告学校の講師として活躍されている方なので、本書の内容もかなり広告寄りだ。
しかし、この本が教えてくれるのは、広告コピーに限定された話ではない。むしろ、すべての文章へ通じるような示唆に富んでいる。それが端的に現れているのが、書き出しの一文だ。いきなりシビれた。
文章は書くものではない
読んでもらうものである
本書は、「書き出しは軽いほどいい」など、具体的な文章テクニックについても触れている。しかし、心に残ったのは、文章を書く上での心得の数々だ。
例えば、「読み手に『自分に呼び掛けているのだな』と意識させること」。「読み手の顔つきを想像して、どう反応するか、これでいいかどうか、用心深くよーくチェックしながら書き進め」ること。「二行目を読みたくなるように」一行目を書くこと。「読者への土産話」として喜んでもらえるように書くこと。「ちょっと違う発想で、とても大きく頷いてもらえる発想をだいじに」すること。「モノか、コトか、ココロの説明文」として書くこと。どれもこれも、訓示として心に留めおきたい言葉たちだ。
これらの心得を伝えるための題材として登場するのが、「名作コピー」の数々。言葉を操る名人らによる、至芸とも呼べる仕事たちだ。
松木圭三氏によるアシックスの企業広告は、最高の「土産話」を最高のテクニックで料理した好例。かなりの長文だが、あまりに感動的で、何度も読み返してしまった。児島令子氏による日本ペットフードの広告コピー「死ぬのが怖いから飼わないなんて、言わないで欲しい。」にもハッとさせられた。こちらは「ちょっと違う発想」の実践として紹介されている。
本書には、文章の練習法についても書かれている。「一日一言的文章作法」は、自分でもさっそく実践中だ。これは、日本たばこ産業や楽天トラベルなどの広告コピーのように、「短いけれども人の『なるほどね』を引き出すようないい文章」を毎日書くというもの。「いい文章」はなかなか書けないが、楽しみながら毎日続けている。
また、広告学校で採点票として使っているという「Yカード」も面白い。「情報」「整理」「表現」の3軸で文章を評価するものなのだが、文章を書く上でのガイドラインとしても使えそうな優れものだ。「説明文を書くうえで必須の3つの仕事」として、それぞれ下記のように解説されている。
情報:内容がなければ説明文にならない。説明するに足るだけの事柄を知っているか。調べたか。ぜひ人に説明したいと思ったか。
整理:条件内で説明するため情報の整理。より豊富に、親切に。そのための取捨選択。説明を受けとりやすい筋道になっているか。
表現:正確で魅力的な言葉と文章の発見。もっと適切な表現がないか。無駄はないか。書き間違いはないか。いい余韻を残せたか。
広告コピーを書く機会は、あまりないだろう。それでも、私たちは毎日のように、何かしらの文章を携帯電話やパソコンで書いている。そんな私たちにとって、本書が教えてくれる心得の数々は、知っていて損のないものだと思う。広告コピーを見る目も変わって、新しい発見が生まれるようになって、毎日がちょっと楽しくなる。かもしれない。
紙の本
自分自身と自分自心
2008/11/11 00:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ショートチョット - この投稿者のレビュー一覧を見る
「よいと思うコピー」には自分自心の鏡を見つけることができます。
なぜ、「よい」と感じるのかを展開ししていくと、自身でも気づかなかった心のヒダに埋れた大切な思いを発見することができる。
表面的には見えないが、深く掘り下げることによって湧き出てくる言葉、それが自分自心であった。
本書を読んで「人と同じことを思い、人と違うことを考えよ」との著者のすすめに応じて考えてみた。結果、実に楽しいということが理解できた。
紙の本
名作コピーに学ぶ視点が偏っている
2009/11/27 20:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はコピーライターとして40年のベテラン。
タイトルが「名作コピーの書き方」ではなく、「名作コピーに学ぶ読ませる文章」となっていたので、文章の巧みな書き手になりたいと考える私のような一般読者向けの書だと思い、手にしてみました。
著者の同業者が作り上げた巧みなコピー作品を引き合いに出しながら、それぞれの文章のどこにどんな工夫があり、それをどんな風に応用していけるかについて平易な文章で綴っています。
「どんな文章であれ、どんなトクであれ、読む人がトクする話を書いてください」
「読んでもらう文章を書くことは、読む人の気持ちとのゲームです」
確かに一理ありと思わせる文章作法が記されていて、学ぶところがないわけではありません。
しかし、どことなく胡散臭さを感じるのもまた事実です。
広告コピーは、広告主にとって都合の良い情報と都合の悪い情報とを仕分けて、消費者に言葉巧みに伝えるという宿命を背負っています。
著者は本書の中で、「35%の人しか石油にいいイメージをもっていない」という消費者意識調査の結果を利用して広告コピーを書く場合、「三人に一人しか石油にいいイメージをもっていない、といちばん具合の悪い読み方を誘い出してしまう」ことがないようにするにはどうしたらよいかということを指南しています。
その上で、著者は「石油は温暖化防止や災害に強いなど実は大きな効果があるのです」と書く石油連盟の広告コピーを賞賛しています。「石油が温暖化防止」?
その他にも、生命保険の広告コピーの「名作」を紹介していますが、公的社会保険の存在を都合よく度外視した民間保険の宣伝文句に昨今辟易としている私には、賛同しかねる「名作」といえます。
広告コピーとは広告主にとってトクする情報の取捨選択を行っているということを知ってはじめて、「コピーに学ぶ」ということになる。
そんな思いを強くしました。