紙の本
地下に巨大なホテルを築く男の物語
2016/02/08 16:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雪風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピュリツァー賞受賞の長編です。
主人公ドレスラーは葉巻屋の息子でしたが、持ち前の才覚でホテルのベルボーイから次々と出世を重ねます。やがてカフェの経営に乗り出し、大成功を納めます。
次にホテル経営に乗り出し、これも大成功を納めていきます。
しかしやがて来る、結婚生活の破綻。そして事業の失敗。
ホテルでありながらその枠を完全に逸脱したものへ、彼はどんどん突き進んでいきます。また、彼は地下社会への強い執着を持っており、地下12階という途方もないビルを作ります。そしてその地下に公園や池や渓谷も作ってしまいます。
この地下へのこだわりが、作品全体に大きな流れを作っています。
最後は全てを失い、それでも夢から覚めたように新しい世界に向かって行く姿で、物語は締めくくられます。
ドレスラーの夢とは何だったのか?それは読み手によって感じ方が違うかもしれません。
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舞台は、1800年代のアメリカ、葉巻商店の息子マーティン・ドレスラーが徐々に成功し、ホテル経営者になるというアメリカのサクセスストーリー。サクセスストーリーだからこそ読み進めるのが容易で、読んでいて気持ちがいい。やがて次から次へと、新しいホテルを建てるのですが、そのホテルが自分の夢を体現するごとく、すごく悪趣味で閉鎖的な一つの都市的な構造で、その建物の描写が夢のイメージを文字にしてる感覚に似ていて、その感じがいい。
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[ 内容 ]
20世紀初頭のニューヨーク。
想像力を武器に成功の階段を昇る若者の究極の夢は、それ自体がひとつの街であるような大規模ホテルの建設だった。
ピュリツァー賞受賞の長編小説。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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昔、マーティン・ドレスラーという男がいた。って文から始まるこの小説。
葉巻屋の息子として生まれた彼が、そのお店の常連客に誘われ老舗ホテルのベルボーイになり、ある日、天からの啓示にも似た情景、夢の中にいるような感覚を頼りに、それを追い求めて、どんどん成り上がっていくって話です。多分。
いろいろとボンヤリとした表現が多くて、(特に性描写など)、なんかモヤモヤするんだけど、きっとそれが文学ってもんだよね、多分。
主人公のマーティンも、ヒロイン的存在のキャロリンもキャラが掴みどころなくて、やっぱりモヤモヤする。
ただまぁ、マーティンがどんどん己が信じる道を突き進んでいく様は、感心するっていうか、起業家の人の頭の中ってこんな感じなんだろうなぁって漠然と思いました。
だからきっとその結果、どうなったとかは、さして重要な問題じゃないよね、多分。
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元のタイトルに『The Tale of an American Dreamer』とあるので、一人の青年の栄光と挫折の物語…何だろうけれど、結末を読むに邦題にある通りの夢の話なのかもしれず。
夢の話とすれば、この物語に感じる『捉えにくさ』もある程度は納得できるのか。
どうにもこうにも評価しにくい小説です。
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夢は理想のまま叶うものではない。多少、現実に沿ったもので実現する(実現って夢ではないものね)。マーティンよ・・悲観に暮れているけれど、最後は「終わり」ではなくて「始まり」にも見えるよ。
こういう夢を見る人って、ハーウェン氏のように世の中の有りの侭を受け入れる人か、マーティンのように夢を追う人かにわかれるのかしら。
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柴田元幸訳。ミルハウザーの作品は3作品目になりますが長編は初めてで、ピュリツアー賞を受賞作品と言えども少し評価が微妙というのが率直な感想。 20世紀初頭のニューヨークにて驚異的なホテルを次々と建て、アメリカンドリームを成し遂げたマーティンのお話なのだが、伝記風に淡々と語っているので心情が薄くて感情移入しにくかった感じですね。もちろんミルハウザー特有の精緻で緻密な面(とりわけホテルに関する具体的な描写)も織り込まれているのですが。
登場する女性たち(とりわけ3人の親子)に影響と言うか翻弄されている主人公の苦悩と、仕事面におけるサクセス・ストーリーとがあんまり上手くマッチングしてるように感じられなかった。もちろん作者はそこにカタルシスを感じさせようとしたのであろうが・・・ 夢を叶えた物語なのであろうが、日本人的な感覚で読むとマーティンの成功よりも人生の儚さを感じたところの方が大きい。失敗を恐れてはならないというよりも、有頂天になってはいけないということを教えてくれた物語であったような気がする。
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原書名:MARTIN DRESSLER:The Tale of an American Dreamer(Millhauser,Steven)
ピュリツァー賞受賞の長編です。
主人公ドレスラーは葉巻屋の息子でしたが、持ち前の才覚でホテルのベルボーイから次々と出世を重ねます。やがてカフェの経営に乗り出し、大成功を納めます。
次にホテル経営に乗り出し、これも大成功を納めていきます。
しかしやがて来る、結婚生活の破綻。そして事業の失敗。
ホテルでありながらその枠を完全に逸脱したものへ、彼はどんどん突き進んでいきます。また、彼は地下社会への強い執着を持っており、地下12階という途方もないビルを作ります。そしてその地下に公園や池や渓谷も作ってしまいます。
この地下へのこだわりが、作品全体に大きな流れを作っています。
最後は全てを失い、それでも夢から覚めたように新しい世界に向かって行く姿で、物語は締めくくられます。
ドレスラーの夢とは何だったのか?それは読み手によって感じ方が違うかもしれません。
原書名:MARTIN DRESSLER:The Tale of an American Dreamer
ピューリッツァー賞
著者:スティーヴン ミルハウザー(Millhauser, Steven, 1943-、アメリカ・ニューヨーク、小説家)
訳者:柴田元幸(1954-、大田区、アメリカ文学者)
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記憶や夢や妄想をするのは、そこにいる時が最も楽しい。
一度この世界に足を踏み入れたものは帰ってこれない。帰り方は誰も知らないのである。
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いつの時代も人はまだ見ぬ何かを求める。
大きな建物。見たこともない造形のビル。
19世紀終わりから20世紀初拡張していくNYとともに育った青年。
彼が抱いたのはそんな巨大な夢でした。
野心、孤独、そして夢。
アメリカの産声がきこえる。
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舞台は 19世紀末のニューヨーク。レストラン経営で成功を収めたマーティン・ドレスラーは、かつて自身がベルボーイとして働いていたヴァンダリン・ホテルのオーナにまで登りつめる……と、ここまではアメリカン・ドリームを体現した少年の伝記的小説にも読めるのだが、ドレスラー自身が構想したホテル「ザ・ドレスラー」あたりから物語は徐々にミルハウザー・ワールドへ。3建目のホテル「グランド・コズモ」に至っては完全に虚実が入り交じり、並列して描かれる結婚生活とともに、夢とも現ともつかぬ物語に変遷する。
19世紀末から20世紀初頭のニューヨークの微細な描写も素敵だが、何といっても白眉は『バーナム博物館』を彷彿とさせる 3建のホテル。訳者の柴田元幸が「境目がない」と評した通り、ごく普通の小説を読んでいたはずなのに、いつの間にかミルハウザーの幻想世界へと引き擦り込まれている感触も良い。
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着々と拡張し続ける都市の躍動感が生々しい。
そんな中で、夢想を次々に実現化させていくマーティン。
時代の先を読んでいたようで、ズレが生じてしまう。
事業としては失敗でも、彼の夢は果てしない。
時代とマーティンの熱気にこちらも高揚してくる。
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19世紀末から20世紀初頭にかけてのアメリカの成り上がり若手実業家の話。この作品は大都会ニューヨークが舞台である。奇しくも同時代の東北の山里を舞台とした熊谷達也氏の邂逅の森という作品を読んだ直後だったが、登場人物の女性の象徴性を通じて主人公の内面を照らそうとしている点では、手法の部分で共通性のある作品だと感じた。
プロットの展開が早く、その点では読みやすい部類に入るかもしれないが、一方で主人公の心情描写にはある種不可解な部分が多く感じた。この違和感こそこの作品の奥行きであり、作者の緻密な戦略を感じる部分。複数回読み謎解きをしたくなる作品。
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その題名の通り夢うつつのような、淡い幻想のような、マーティンの夢とキャロリンの夢。キャロリンはどんな夢を見ているのだろう。シルヴァンショメのアニメみたいな少しセピアがかったイメージ。とてもすきでした。ミルハウザー他のも読みたい。
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20世紀初頭のニューヨーク、一人の男が築いた帝国の興亡記、成就しない恋愛、勝手な当てはめだけど、ミルハウザー版ギャツビーっぽいな、と。
第一次大戦前後で差があるし、ギャツビーは帝国の成立については伝聞で語られるだけだし、違いの方が多い気もするけど、全編漂う寂寥感というか。