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- カテゴリ:中学生 高校生 一般
- 発行年月:2009.1
- 出版社: アスキー・メディアワークス
- レーベル: 電撃文庫
- サイズ:15cm/270p
- 利用対象:中学生 高校生 一般
- ISBN:978-4-04-867467-6
紙の本
プシュケの涙 (電撃文庫)
著者 柴村 仁 (著)
「こうして言葉にしてみると…すごく陳腐だ。おかしいよね。笑っていいよ」「笑わないよ。笑っていいことじゃないだろう」…あなたがそう言ってくれたから、私はここにいる—あなたの...
プシュケの涙 (電撃文庫)
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商品説明
「こうして言葉にしてみると…すごく陳腐だ。おかしいよね。笑っていいよ」「笑わないよ。笑っていいことじゃないだろう」…あなたがそう言ってくれたから、私はここにいる—あなたのそばは、呼吸がしやすい。ここにいれば、私は安らかだった。だから私は、あなたのために絵を描こう。夏休み、一人の少女が校舎の四階から飛び降りて自殺した。彼女はなぜそんなことをしたのか?その謎を探るため、二人の少年が動き始めた。一人は、飛び降りるまさにその瞬間を目撃した榎戸川。うまくいかないことばかりで鬱々としてる受験生。もう一人は“変人”由良。何を考えているかよく分からない…そんな二人が導き出した真実は、残酷なまでに切なく、身を滅ぼすほどに愛しい。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
想いの在り方、表し方
2009/01/10 21:36
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏休みのある日の高校。補習中の榎戸川は、窓の外を落ちて行く少女、吉野彼方を目撃する。そんな自殺騒動も落ち着いた頃、榎戸川の前に由良という美人の少年が現れる。吉野と同じ美術部だった彼は、自殺の真相を知りたいといい、その調査に巻き込んで行く。明らかになる真相。なぜ由良は真相を知りたがったのか。
表紙、イラストと進んで行くと、次にあるはずの目次がない。でも、おそらくこれは意図的。読み進めていけばその理由は分かる。はじめはほのぼのした感じの展開になるかと思わせておきながら、急転直下、吐き気のする様な話になってくる。しかし、その後に付け加えられたストーリーのおかげで、少しは救われた気持ちになれる。
心から幸せ、という話ではないし、哀しみをより深めるだけという考え方もあるかもしれないけれど、最後まで読み終わった後はさわやかな気分。落差が激しかった分の好印象ということもあるかもしれないけれど。
後半に出てくる人たちを使えば、もっといろいろな話が書ける気がするけれど、それを使い捨てにしてしまう大胆な構成だと思う。
紙の本
僕に残るは君の残した真実、呼吸する場所
2009/04/06 19:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高2の夏休み、むせ返るような教室で補修を受ける榎戸川が何気なく眺めた窓を通過し一人の女子生徒・吉野彼方が自殺を「目撃」したところから始まる。
唯一ソレを目撃した榎戸川と友人・旭の前に「変人」の異名をとる美男子・由良が現れ根掘り葉掘り事件の真相を問い詰める。
「自殺」のはずはないと主張し揺さぶりをかけてくる由良、文化祭の準備でにぎわう学校。受験に交友関係にと鬱々とした日々を過ごす受験生たち。
そして今は亡き彼方には登校拒否や援交のうわさが飛び交っている。
生も死も、確かな意味も確固たる意思も持つことの出来ない「どうでもいい」日々が、私にも確かにあった。
思春期といえばソレまでかもしれない。
おそらく殆どの人間が、何にも価値や重みを見出せず漫然と過ごしてしまう日々がある。けれどそんな「私」たちの生死を分けるのは4階から落ちて死ぬかどうか程度の、偶然に左右されるような小さなきっかけなのだ。
そうして彼女が死に、二人の男子生徒によって死の真相が明らかになるのが前半。そして本当の悲劇は後半の、彼方と由良の物語にこそある。
「私はここにいる―あなたのそばは、呼吸がしやすい。・・・だから私は、あなたのために絵を描こう。」
由良にリクエストされたのは蝶の絵。そして実物(標本)を模写すべく向かった4階の生物室から、何故か彼方は「自殺」した。なぜ?
そこにこそ謎が在り、その真実が後半のすべてである。
ギリシア神話における美女プシュケは女神の嫉妬により数々の試練を受け、それでも愛する男のため、苦難を乗り越えて女神に昇格した愛の女神である。容貌や見せ掛けではない、心にこそ愛を感じ取ると説くその魂は蝶のモチーフに象られる。
ギリシア神話の背景を知って、一層彼・由良がプシュケ(彼方)から得た真実の心の重さが解る。
しかし物語は冒頭で彼らの関係が悲劇に終わることを告げている。
後半に続く、既にいない彼女と彼の物語を知らなければ、こんなに心は痛まない。
ようやく居場所を見つけ呼吸を始めた彼女と、ようやくプシュケの心による愛を受けた少年の物語を知らずにいれば、これほど切なく、哀しい思いはしない。
それでも彼女の生きた物語を知ることに意味があると思えるのは、彼女の涙が決して悲哀にくれた涙ではないからだと信じたい。
絵筆をとるたび、彼女の死という悲劇を呼吸するように思い出し、呼吸するたびに受け容れながら彼は生きていくのだろう。
心の傷を抉り傷ついた自分を見せ付けるようにして生きる生き方を、私は好きになれない。けれどどれほど沁みようとも舐め続けてなければ生きていけない傷口を、多かれ少なかれ人は負ってしまうのだろう。
そうして生きる生き方を自虐的とは思わない。
それでも在り続ける生き方は、きっと彼が言う「カワイソウ」ではないはずだ。
紙の本
2通りの感じ方がある。むずかしい
2019/05/29 18:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たなかじゅぴたー - この投稿者のレビュー一覧を見る
やりたいことをやる由良に感情移入できるならば、この物語は憎い。
中途半端に生きてる榎戸川に感情移入するなら、この話は切なく美しい。
私も読後の感想は後者でした。
青春は儚いもの、線香花火みたいなものだと感じたからです。
しかし、読み返して由良は一体どう思っていたのかに気づき、前者にたどり着きました。
青春はそりゃ美しいものだけれど、死ぬ必要はないわけで。
どう考えたって不条理が過ぎる。
感想が後者になる工夫もされていると思います。
みなさんが言われている通り、この小説は二部構成であり、
前半が江戸川視点、後半が由良視点。
そして、前半で由良の変人天才ぶりが細かく描写されているので
読者は江戸川主観、もしくは第三者視点で後半部分を読み進めていくことに。
由良に感情移入しないまま読了するため、感想が後者になる。
絶望感を味わいたい人におすすめかも。読みやすいし。