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商品説明
人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。そして今、未曾有の台風が二組の家族を襲う。最注目の新鋭が描く、慟哭と贖罪の最新長編。【「BOOK」データベースの商品解説】
【大藪春彦賞(第12回)】雨のせいで、彼らは過ちを犯す。雨のせいで、彼女は殺意を抱く…。人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。暗転する事件の果て、2組の子供達がたどり着いた、慟哭と贖罪の真実とは?【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
道尾 秀介
- 略歴
- 〈道尾秀介〉1975年生まれ。2004年「背の眼」でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。07年「シャドウ」で本格ミステリ大賞を受賞。ほかの著書に「鬼の跫音」など。
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紙の本
見えているものは本物か
2010/03/10 12:18
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
母が亡くなり、再婚した父も亡くなり
継母と暮らすことになった
中二の辰也と小四の圭介兄弟。
辰也は継母を困らせるために万引きを繰り返します。
一方、父が失踪し、再婚した母も亡くなり
継父と暮らすことになった
19歳の蓮と中三の楓兄妹。
蓮は、自分たちに暴力をふるい、
退職後、引きこもったままの継父を殺害しようと計画します。
よく似た二家族が、あるきっかけから知り合います。
やがて蓮と楓の継父は死に、その遺体を隠したものの、
その様子を目撃し、証拠品を手に入れた辰也から
楓に脅迫状が届き始めます。
運命の皮肉な巡り合わせで不幸を背負う
10代の若者たちの閉そく感と
繊細な心が痛々しく描かれます。
何を信じ、何を頼りに
生きていけなければならないかもわからず
追い詰められて罪を重ねる若者たち。
小説の間じゅう、降り続く、台風による雨と強風。
その暴風の中に、凶悪な龍を見てしまっても
しかたのないことでしょう。
しかし本当の敵は社会にありました。
真実を追い求めて二転三転する彼らの気持ちと行動を
降りしきる雨と神話によって翻弄する著者の
新たなる企みに戦慄しつつも、賞賛をおくりたい。
紙の本
誰の上にも降り注ぐ雨。願わくば慈雨となり、豊かな生を育む流れとなるように。
2010/10/11 23:58
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はりゅうみぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここ1年ちょっとの道尾作品って、少し変わってきたよな~。
と、感じるのは私だけではない気がする。(よね?)
全てではないとはいえ初期作からコンスタントに読み継いできて、「ん?なんか違うぞ?」と感じた最初の作品、いわば創作源流の分岐点と思えるのがこの作品だ。
「雨のせいで」「雨のせい」「雨の…」「雨の…」「雨の」…
タイトルから、目次から、本文から、病的なまでに繰り返される「雨」のリフレインが、まるで台風=雨や風による暴力のごとく激しく脳裏に降り注ぎ、読者を感涙の世界に溺れさせていく。
天災か人災か、雨に流され翻弄される2組の主人公・子供達は、それぞれ兄妹、兄弟の間柄である。様々な事情で愛に恵まれなかった彼らは、信用できる「大人」などこの世にいないと思いこんでいた。
「大人」は汚い。「大人」はずるい。「大人」は黒。
でも彼らの考える「大人」とは親、家族だけを示している。
子供ゆえ、幼さゆえに、「血の絆」のみに真を見出す無垢な魂。そして無垢ゆえに、「疑惑」(灰)を黒=悪と断じてしまう。白か黒しかない純粋で未完な世界に生きる彼ら、幼さと高潔はこの作品では同義語なのだ。
「弱い」大人と「汚い」大人は違うと、そろそろ彼らも知らなければならない時期だった。弱くとも優しい大人に囲まれて、穏やかに学んでいける時期だった。そうして彼らも「大人」になるはずだった、「雨」さえ降らなければ。
思春期とは子供が大人になる過渡期のことだが、見方を変えれば、大人の代表である親の「濁」部分に初めて気づく時期、若干の寂しさをもって親も自分も同じ「人」であると悟る時期なのではないかと思う。
彼らにとって最愛唯一の人間=大人(親)以外の血族を守るために取った汚れない行動は、本当の汚い大人に利用され、最悪の汚濁となってしまう。嵐がもたらす濁流で世界は決壊するのである。
そして彼らは無垢ゆえに、汚れた自分たち(だけ)の世界を許せない。
ラスト、2組の兄弟の迎える末路は全く違う。初めは確かに同じ所にいたのに、濁路を二つに分かったのは皮肉にも「大人」の力である。
結末の違う2組の子供たち。
これこそ既存作品とは違った新たな流れを感じたところだ。これまでの作品ならば、おそらく主人公は1組、結末は1つ(バッドエンドのみ)だったのでは。そんな気がしたのだ。
今作では、作者お得意のホラーめいた異形ファンタジー設定を封印している。巧みなトリック的文章は変わらずながら、描く舞台はあくまで現実。作者が「現実社会で実際に起こりうる悲劇(ドラマ)」を終始意識しているのがよくわかる。
「龍神」という幻想的な生物をタイトルに冠していても、決して荒ぶる龍神のきまぐれから起きた運命のいたずらを描こうとしているのではなく、引き起こしてしまった最悪の現実を天災=龍神のせいに、雨のせいにしたい、この罪から逃げたい、何も起きなかった頃に戻りたいという、幼い彼らの後悔の催涙雨を作者は描きたいのだと思う。
さらに言えば、守ってやれなかった幼な子たちに対する龍の悲しみの咆哮、すなわち天から彼らを見守っていた父や母の慟哭だとも言いたいのだろう。
だから作中の雨は、決してやむことはない。
起きる事件や真犯人など早い段階でアレコレわかってしまうにもかかわらず、道尾作品の既存作風と幻想的な「龍」に目を奪われて、読み手が勝手にやっかいな迷宮を創り出してしまう作品である。
この読後感を肩すかしと感じるか、意欲作と取るか、意見が分かれるかもしれない。
が、この方にしか書けない作品であることには間違いない。
ダークファンタジーの皮を被ったヒューマンミステリー、今後は、今回のような「現実」により重きをおいたドラマ性の高い作品が増えていくだろうと予想できる。齢を重ねなければ書けない作品とも言えるかな。
直木賞候補にもなるぐらいだ、ゴール(完成型)はそう遠くない。
ついに到達した!と感動する自分を想像しながら、今後も氏の作品を読み続けようと思う。
紙の本
雨の先に見える景色は一体何だったのか。
2010/04/11 03:28
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:依空 - この投稿者のレビュー一覧を見る
母を交通事故で亡くし、再婚相手である継父・睦夫と暮らしている添田木蓮と楓。母を海の事故で、父を病気で亡くし、継母である理江と暮らしている溝田辰也と圭介。親との関係に問題を抱えながら生活していたこの2組の兄弟が、台風の夜に起きた事件をきっかけに運命を交錯させていきます。
2組の兄弟が抱えている思いは暗く重く、冒頭から緊迫した雰囲気が漂っていて、肌に絡み付いて身動きが取れなくなりそうでした。
降り始めた雨、そして降り続ける雨、激しくなる台風。話が動くたびに効果的に雨が使われ、激しくなるほど追い詰められていく過程にゾクゾクしました。この重さは決して嫌いではなく、むしろ読書としては楽しく読めたのですが、やはり追い詰められていく兄弟たちが辛くて読むのが大変でした。もう1つのキーである龍に関しては効果的であったかどうかには少し疑問が残りますが、彼らの置かれた状況の異様さを考えるとすとんと納得できるキーであるかなと思います。
私にとって、ラストは辛かったです。台風が過ぎた後の晴れた空には未来を信じたくなるけれど、それでも経緯を考えると希望が持てないのです。溝田兄弟はともかく、蓮と楓の兄妹の行く末はどう思ってよいのか判断がつきません。読んだ方の中には未来を感じる方もいらっしゃったみたいですが、私は雰囲気に取り込まれすぎてしまったのかなぁ。
彼らが語り合うことを避けてきたツケは計り知れないほど大きく、取り返しの付かないことが起きる前に何が出来ることがあったのではないかと思わずにはいられません。思い込みの怖さをじわじわと思い知らされました。何でこんなことになってしまったんだろうと悔やむことは多いですが、この内容があってこそ、ラストの「家族のことだけは信じなければならない」というくだりが重さを伴って胸を打ってくるのだと思います。
紙の本
我が道を
2011/08/26 20:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koo± - この投稿者のレビュー一覧を見る
問題作「向日葵の咲かない夏 」を読んで以来、敬遠していた作家。先日、ふいに読んだアンソロジーに収録されていた短編が思いのほか良かったので購読。
蓮と楓、辰也と圭介。家庭に問題を抱えた2組の兄妹(兄弟)が織り成す、せつなく悲しいストーリー。どうやら青春のダークサイドを辛辣に描くのが著作の特徴らしい。寂しがり屋のひねくれ小僧にはたまらないだろうな。実はこういうの嫌いじゃなかったりする。
表題から連想させるように、どんより重暗くペシミスティックな世界観。「愛する者に命を奪われ、悲しみながら沼に沈み龍神に転生した」と伝えらえる千葉県手賀沼の藤姫伝説になぞらえて物語は展開して行く。
驚愕のトリックで唸らせるミステリというよりは、巧みな心理描写で読ませる良質なサスペンスといった所存か。読みやすい文体と整理されたキャスティングでリーダビリティ良。
真犯人は読めるが、ちょっとこじつけっぽいな。配役の無駄のなさが裏目に出たかも。ともあれ2組の家族の苦悩と絆が切々と描かれていて感情移入できます。私的には辰也と圭介の義母・里江にハマった。
悪く言えば毒が抜けて普通になったなという印象。まあ直木賞作家になったことだし、周到な変化って奴だろう。でも、ちょっともったいないな。せっかく独自の世界を築き上げているのだから、流されず我がミチオ突き進んでほしい。
鬱を助長させられるので気分的なタイミングが難しいが、秋風がしんみりと吹きすさぶ頃に著者の作品をまた読み浸りたいと思う。
紙の本
ふたつの線がクロスするタイプのミステリーのなかでは、格別の妙味、面白みはなかったですね。期待はずれのミステリー。がっかりです。
2009/06/21 09:39
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリー大好き人間なので期待して読んでいったのですが、私はこれ、ダメでした。正直、期待はずれで、がっかりしました。面白くなかったのは、どの辺なんだろう? 読後感を整理するつもりで、ちょっと考えてみました。
話の中で「台風」が近づいていて、「雨」がいつも降っているところ。あるいは、暴風雨の空の中に「龍」が見えたり、「龍」にまつわる伝説が話にからまるところ。カッコで括ったキーワードがうまく生かされていないっていうか、話の中で浮いてしまっている気がしました。それが描かれている必然性みたいなものが、よく分からなかった。「龍」でなくたっていいじゃん、「雨」降ってなくたって別によかったんじゃないか。雰囲気作りにしかなっていないような。そんなふうに感じてしまったんですね。
がっかりさせられたもうひとつの大きな点。それは、あまりに都合が良すぎるタイミングで何かが出てきたり、ある人物がその場に居合わせたり、重要なものがセットされてたり、などなど、話の流れが不自然なものに感じられたこと。ぶっちゃけ言わせてもらえば、神の視点である著者に都合のいい展開になっていて、登場人物の動きに無理があると思えてならなかったこと。特に終盤、ある人物が本格的に動き出し、それまでの話の絵柄ががらりと変わる辺りから、話の不自然さに拍車がかかる印象を持ちました。
別々の人生の線が点となってクロスし、からまり合うところに妙味があるミステリーは好みですが、この作品はその見せ方があんまり上手くなかった。「私はこの新機軸で勝負するんだ」「読者をうまく引っかけてやるぜい」という、著者のミステリー魂、ショーマンシップ精神が欠けていると感じられてならなかった。そこが、とっても残念。
紙の本
これが大藪春彦賞受賞作
2012/01/01 14:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:renogoo - この投稿者のレビュー一覧を見る
全308ページ読むのに40分ほどしかかからなかった。
面白かったからではなく、途中からどうでもよくなって斜め読みした結果。
技巧ばしって上っ面ばかり、
雨と龍伝説をからませようとしても空回るばかり、
感情論に呼掛けようとしても陳腐になるばかり、
中途半端に伝説の類をいれこむ浅はかさ、
登場人物の視点を交差させなんちゃってトリックにさせようとする安易さ、
登場人物が小学生から高校生そして19歳と微妙な年齢に設定してあるのにそれ全てを幼さだけで表現しようとする乱雑さ、
子供っぽいミステリーじゃなく人間の深層心理にせまるみたいなものも書けるぞってとこを見せようと躍起になった末の愚かさ, と全てにおいて鼻につく作品だった。
これと比べて、ラットマン、シャドウなどのほうがずっといい作品だとおもう。