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商品説明
六世紀の中国。無能な皇帝の統治のもと、北斉は西に北周、南に陳、北に突厥と、三方を強敵に囲まれる内憂外患をかかえていた。後世の歴史書にその美貌と智勇を称えられる北斉の皇族、蘭陵王は、戦えば必ず勝つという活躍で傾きかけた国を必死でささえていたが、皇帝の嫉妬をかい、やがて悲劇が訪れる。【「BOOK」データベースの商品解説】
6世紀の中国。無能な皇帝の統治のもと、北斉は三方を強敵に囲まれる内憂外患をかかえていた。後世の歴史書にその美貌と智勇を称えられる北斉の皇族、蘭陵王は傾きかけた国を必死でささえていたが、皇帝の嫉妬をかい…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
田中 芳樹
- 略歴
- 〈田中芳樹〉1952年熊本県生まれ。学習院大学大学院博士課程修了。第3回幻影城新人賞を受賞しデビュー。「銀河英雄伝説」で星雲賞長篇部門を受賞。他の著書に「アルスラーン戦記」など。
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紙の本
敵から見れば鬼、その仮面の下には美しき顔
2009/10/31 22:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
隋建国の少し前、新三国時代の一角、北斉の皇族である高長恭(蘭陵王)の悲運の一生を、徐月琴という道姑を見聞者として、北斉の勃興から滅亡までと絡めて描いた作品。顔が美し過ぎて威厳を欠くので仮面をつけて戦った蘭陵王という若者が実在し、その知武によって国の運命が左右されたとまで言われた時代があったことは、素直に驚く。
現代戦争の勝敗が兵器の優劣によって決定的に定まるのと同じように、当時は将の知と兵の勇によって勝敗が決していたのだろう。ただ自分を鍛えあげ、その力を目の前の敵にぶつける。そういった、現代には少ない一種の単純明快さが、人の心の奥底にある本質的なものをくすぐり、長く惹きつけて離さないのだと思う。
しかし、現代と変わらないこともある。自らの権勢を求めて国の行く末も考えず、ただ足の引っ張り合いをする者たちがいる。疑心暗鬼に駆られ讒訴し、無実のものを死に追いやるものがいる。このような事例を見るにつけ、歴史は繰り返す、という言葉を苦い思いと共に引用せざるを得ない。
蘭陵王は悲運の主人公であり、それは同情に値するものかも知れないが、良くも悪くも王でしかないとも感じた。皇帝が率先して政治を放棄し佞臣をはびこらせ、おそらくは民が苦しんでいる間も、自分たちが殺されないように息をひそめているだけだった。それは仕方のないことなのかも知れないが、正史には現れない、庶民たちの生活がどんな様子だったのかも知りたかった。
なお、この作品では徐月琴という元気な少女を蘭陵王の側においているが、これは悲運の物語を少しでも明るくする上で、とても役立っていると思う。