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- 税込価格:14,662円(133pt)
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商品説明
熱田家の母・乙美が亡くなった。気力を失った父・良平のもとを訪れたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。乙美の教え子だったという彼女は、生前の母に頼まれて、四十九日までのあいだ家事などを請け負うと言う。彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を、良平に伝えにきたのだった。家族を包むあたたかな奇跡に、涙があふれる感動の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
母・乙美が亡くなり、気力を失った父・良平のもとに、乙美の教え子だった金髪の女の子・井本が訪れる。彼女は四十九日までのあいだ家事を請け負うと言う。彼女は乙美が作ったあるレシピを良平に伝えにきたのだった…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
伊吹 有喜
- 略歴
- 〈伊吹有喜〉1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒業。2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞してデビュー。
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書店員レビュー
母を亡くしたばかりの...
ジュンク堂書店秋田店さん
母を亡くしたばかりの父と娘、喪失感とともにそれぞれに事情を抱え、家には重々しい空気が流れる。そんな中、突然現れた金髪ギャル。彼女は亡くなった母の依頼を受け、四十九日までの期間限定で家事を請け負うという。とまどう親子だったが彼女の出現により二人の気持ちに変化が訪れていく・・・・・。
主人公の父と娘はそれぞれに悲しみ、苦しみを抱えて前に進めずにいる。その背中を押してくれたのが突然の来訪者である金髪のギャルと母の遺したお手製の生活レシピ集。この「レシピ」には処方箋という意味もある、と分かってくるとこのタイトルにこめられた意味を改めて感じることができる。家族とは、幸せとは、という普遍的なテーマではあるがだからこそ読みながら自分自身についても改めて考えさせられた。読み終えた後はなんだかほっとできる、あったかい気持ちにさせられる、そんな作品であった。
秋田店 文芸書担当
紙の本
「まごころ」ということ。
2010/12/31 05:14
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はあまり「愛する人の死」のような作品を好まない。「大事な人が不治の病だけど二人で闘っていこう・・・ああダメだったかでも私は強く生きて行くよ」のような作品。どうも何だか不憫でならなくなってしまうのだ。本作品でも、冒頭に大事な人が亡くなる。家族の太陽、お母さんである。しかし読み終えた時、胸も目頭も熱くなった。こんな寒い季節にこそオススメな、暖かい一冊である。
70歳を越えたとはいえまだまだ明るく元気だった乙美お母さん、乙母さん。そのお母さんが、突然の心臓発作で死んでしまう。既に二人暮しだった夫の熱田はなぜ最後まで優しくしてやれなかったかと悔やみ、やさぐれた生活を送る。血の繋がらない娘百合子は夫との離婚を目前にして、母の死にさらにショックを受ける。二人が歩く道を見つけられずに路頭に迷いかけた時、現れた一人の少女。金髪頭に、今どき流行らぬガングロフェイス。井本と名乗った10代のその少女は、生前乙母さんに大変世話になったという。そして乙母さんに「自分に万一の事があったら、49日の間だけ家族の面倒を見てやって欲しい」と頼まれていたのだという。はすっぱだけど、ハートで付き合う井本に、やがて二人は心を開くようになる。そして見つかる、乙母さんが残した「人生のレシピ」。そこには掃除や洗濯から、女の子の身だしなみに関してまで。さまざまなレシピが、可愛いイラストと共にカードになっていた。そのイラストのキャラクターは可愛らしくデフォルメされた、熱田と百合子。二人は亡くなって初めて、自分達がどれほど乙母に愛されていたかを知る。そしてカードレシピの「49日」には。何と法事など行わず、大宴会を開いて欲しいと書いてあった。熱田に百合子、井本と井本が連れてきたブラジル系の優しき青年ハルミの4人は、乙母の遺言とも言える大宴会を開こうではないかと準備を進めるのだが。乙母の人生を振り返るほど、切なくなる二人。あって当たり前、空気のような存在だった母親が。どれほどの人々の人生に貢献してきたか、力を与えてきたのか。それを知るに連れ、乙母さん失ったか事の重大さを、また痛感してしまう。やがてやってきた49日。開かれた大宴会。そしてその場で小さな奇跡が・・起きる。
何せ乙母の人となりに、頭が下がる思いがした。突然の死だったのだから、もちろん何を残そうとしたわけでもない。しかし彼女の人生は、誠意と愛情に満ちた人生は。そうせずしても残っていく、伝えられていく。「まごころ」がそこにあるのなら、形にせずとも言葉にせずとも、残っていくのだと思い知らされぐっと来てしまう。自分もそういう人間であれたならと、痛感させられた。
そしてこの作品「ぐっとくる」だけじゃない。ラストに想像もしなかった「うわ・・・やられた・・・」が待っている。まさかこういう展開で「布石」が散りばめられていたとは・・・久々にしてやられた。参った。
世には色々な意味で「良い本」というのがある。しかし「面白い」だけじゃい「泣ける」だけじゃない、「笑える」だけでもない。色んな意味で「良い本」というのは中々出会えるものでは無いと思う。その作品を読み終わったときに「ああ、自分はもう少し良い人であろう」と思えたなら、それこそそれは「良い本」に違いない。・・・本作品は、そういう本だ。ぜひお手に、取ってみて欲しい。
紙の本
心、ほっかほか
2010/04/15 07:28
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kako - この投稿者のレビュー一覧を見る
四十九日を済ませると忌明けとなり、喪に服していた遺族が日常生活にもどっていきます。
初七日、四十九日と日本の独特の風習で最近は煩わしいと感じられがちですが、私にとっては亡くなった方を偲び、残された人が外に自分の思いを出す大切な行事でした。
一区切りつくことにより、素直に「さぁ、頑張ろう」という気持ちに自然となります。
悲しくて辛いだけだった通夜や葬式から時間が過ぎて、ちょうど亡くなった人に対する喪失感や楽しかった思い出がとめどなく出てきてしまうこの期間、乙美を亡くした夫良平と娘の百合子はどのようにして四十九日をすごしていくのでしょうか。
良平は、最後に乙美の寂しげな顔をさせてしまった自分、最後の手料理を「いらない」と言ってしまった自分を、百合子は初めて会った時に心をこめて作った弁当をたたき落とした自分を思い返していました。
二人に共通しているのは後悔の念。
伝えたかった言葉、伝えられなかった言葉を胸に抱え互いに辛い日常を送っていかなくてはいけません。
しかしそんな二人の前に井本という19歳の女性が家にやってきます。
そしてこの瞬間から四十九日に向けて乙美の用意した「レシピ」が、二人を癒していきます。
後に残していってしまう人たちへの「レシピ」。
料理、掃除の仕方等をイラストを入れて素敵な可愛い言葉を添えて。。。
読んでいくだけで涙がこぼれてしまいました。
本当に温かい。
自分がいなくなっても生活できるように。
四十九日に皆で楽しめるように。
家で作られた慣習という財産を後にしっかりと引き継いでいけるように。
作成されたレシピには愛が沢山こもっているように感じました。
実生活では夫が外に子どもを作り、姑さんの介護に疲れ果てた百合子や、一人家に残されてしまった良平は、決して今の現代珍しくはない日常です。
そんな二人が今はもういない乙美によって癒されていくのと同時に、ストーリーが進むにつれて、自分の心が優しくなっていくような気持ちにさせてくれる作品でした。
紙の本
食べることが生きることに
2022/02/21 22:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
白・黒・赤・黄・緑をバランスよく取り入れた、乙美の特製レシピを真似したくなります。死者を見送ることで、残された人たちが旅立っていく姿も感動的です。
紙の本
思い違いをして読んだ本
2011/01/09 10:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
四十九日のレシピ 伊吹有喜 ポプラ社
読み始める前に予測した筋書きは、次のものでした。妻が亡くなる。彼女の部屋で、彼女が死んでから四十九日を迎える日までのレシピが見つかる。家族はそのレシピに従って毎日食事の支度(したく)をする。その経過のなかで、亡妻から家族へのいたわりを中心とした愛情が伝播(でんぱ)され、味わい深い感動が広がっていき、ラストシーンでは嗚咽(おえつ)をともなう妻への感謝の気持ちが生まれる。でも、違っていました。できればその筋書きでもう1本書いて欲しい。
「レシピ」とは、料理の手順です。この物語の場合は、料理に限らず、自分の四十九日には、法事ではなく関係者の宴会を開催して欲しいとか、娘の髪型とか、料理以外も含めてのメッセージとなっています。継母と娘に関するお話となっています。また、娘の夫が不倫で、愛人が妊娠する話ともなっています。親子、親戚関係のぐちゃぐちゃとした内容です。その点で小説としての古さは否(いな)めません。現代は個人(孤独)の時代です。家族が何人いてもいなくてもひとり暮らしなのです。まず、ひとりひとりの自立とか自活があって、基本として現代の日本人は親族には頼らないのです。
亡くなったのは乙美さん、その娘が百合子さん(連れ子で乙美さんとは血縁関係なし)、百合子さんの父親が熱田良平さん、それから井本さん(19歳)、百合子の夫の愛人笹原亜由美さん、何人も登場する親族その他の関係者は、負担のかけあいをします。それも一方的に負担が一か所にかかるのです。
百合子さんに関する愛情が壊れた生活は確かにせつない。亡くなった人の思い出を引きずる49日間ですが、その日にち以上にひきずりそうです。それは、亡くなった乙美さんの遺志ではないと思うのです。