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追跡する数学者 (新潮文庫)
数学者フィリップのもとに、かつての恋人アーマが失踪したという知らせが届く。そして彼女が“遺贈”するという351冊の蔵書。ボルヘスやセルバンテスなどの作品は彼女自身が装丁・...
追跡する数学者 (新潮文庫)
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商品説明
数学者フィリップのもとに、かつての恋人アーマが失踪したという知らせが届く。そして彼女が“遺贈”するという351冊の蔵書。ボルヘスやセルバンテスなどの作品は彼女自身が装丁・製本に携わり、自作も含まれている。フィリップはこれらの作品を綿密に解析し、南欧へと探索の旅に出る—。書誌学と数学を大胆に駆使し、濃密なエロティシズムで包みこんだぺダンティックな快作。【「BOOK」データベースの商品解説】
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〈濃密なエロティシズム〉っていう言葉があっても、このタイトルならごまかせる、と思って手にした人も多いんじゃないでしょうか。かくいう私もその一人。たしかにイヤラシイところもあるんですが、それより本を追うのがメイン、あてが外れた、なんて思わずに読みましょう。エンタメを超えた作品です。
2011/08/06 19:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の中で新潮社の翻訳書というもののステータスは結構高いのです。純文学単行本に関していえば、新潮社>集英社>早川書房>白水社みたいな感じですが、集英社以下の差は殆どないといっていい。無論、量的には早川の圧勝なんですが、早川はラテンアメリカ文學に弱いので、その分、集英社のほうが上かな、なんて思います。白水社は、ちょっと内容が渋すぎて売れていない。装丁は好きなんですけど、一般受けはしません。
これがジャンルをミステリに限って、しかも文庫となると、これはもう早川の圧勝。でもです、質を加味すると様相が変わります。量で早川>東京創元社>早川>角川だったのが、新潮>早川>東京創元>角川に変わる。で、ここでも新潮だけが一歩抜きん出ています。ま、ここらは主観なんですが、我が家の書棚を見てみるとそれがいえます。
で、『追跡する数学者』ですが、デイヴィッド・ベイジョーについていえば、全くの無名といっていい。だから、著者で売れることはないでしょう。いいのは、第一にタイトルです。『追跡する数学者』、新潮文庫のミステリはともかく粒揃いなので期待したくなる。しかもカバーがいいんです。
カバー写真 Frans Lemmens,John Heseltine,
Anton Belitsky/Getty Images
とありますが、これだけでも手を伸ばしたくなる雰囲気のあるもの。おまけにカバー後の内容紹介には
*
数学者フィリップのもとに、かつて
の恋人アーマが失踪したという知ら
せが届く。そして彼女が“遺贈”す
るという351冊の蔵書。ボルヘスや
セルバンテスなどの作品は彼女自身
が装丁・製本に携わり、自作も含ま
れている。フィリップはこれらの作
品を綿密に解析し、南欧へと探索の
旅に出る――。書誌学と数学を大胆
に駆使し、濃密なエロティシズムで
包みこんだぺダンティックな快作。
*
と、好奇心を擽る〈濃密なエロティシズム〉なんていう言葉が出ています。タイトルに〈エロス〉とあると引くのが日本人読者なんですが、まさか『追跡する数学者』というタイトルがエロ本だとは思われないわけで、読んでやろうというスケベニンゲンも出てこようというわけ。しかも351冊の蔵書に、ボルヘスとくれば文學愛好者、愛書家にだって魅力ありげに映ります。そう、この本、結構手を出した人がいるんです。
で、読んだ印象ですがピーター・キャメロン『最終目的地』をふと思いました。『最終目的地』は、作家の遺族と著作権を絡めたで主人公は若者、『追跡する数学者』は、装幀者と遺産を扱い、主人公は中年ですから、違うといえば違う。第一、キャメロン作品にあまりエロスの要素はありません。でも、本、遺産という共通点はあります。それと探査行。そして全体の雰囲気。
主人公はフィリップ・マスリク、41歳の数学者です。一瞬で数学的計算を解く能力があり、入力の手間を考慮に入れればコンピュータを凌駕するという天才です。システムアナリストの前妻ベアトリスと離婚後、会社を退職していますが、その数学的才能ゆえにお金にこまることがないという羨ましい男で、ジョギングが趣味というか、作中に走る様子が何度も登場します。
そしてベアトリスだけが妻であったわけではありません。フィリップにはレベッカという数学者の最初の妻がいました。彼女は再婚で、最初の夫・アンドルーとのあいだにニコール、サムの二人の子供をもうけています。ニコールは、現在、ラトガーズ大学の一年生で、彼女が八歳の時、フィリップとレベッカが結婚しています。サムはニコールより一つ年下。ハイスクールの最終学年で、400メートルハードルをやっています。
フィリップの女性関係はなかなかのもので、まずは作家・翻訳家・装幀家・製本職人のアーマ・アーキュリがいます。奔放な性格で、男女を問わず性的な関係を持つことができ、フィリップや彼の友人アイザックと付き合って16年になります。彼女がフィリップに遺した351冊の本には、彼女の書いた作品、五冊が含まれ、38歳の時、『ピーター・ナヴラティル論』を書いています。
そしてジョギング中のフィリップと出会い、関係を持つことになる翻訳者のルシアもその一人です。なかなか有能な女性で、アーマの行方を捜すフィリップに行動の鍵となるヒントを与えたりします。彼女たちとの関係が、この話のエロスの要素で、その部分だけ取り出せばなかなかのものですが、全体に占める割合は決して多くはありません。
それはともかく、翻訳、ということもあるのでしょうが文章に決してエンタメではないぞ、という品があるような気がします。日本では、最近の女性作家にこういう文章と内容をもった作品を書く人がいますが、男性ではなかなかいません。そんなことを思ったり、親子のことを考えたりしました。ま、私にとっては海外作品、というだけで似通った印象を持つのですが、それでもこの二作には現代というものがしっかり描かれていることも含め、共通したものを感じています。
ただし、エロスという言葉にだけ惹かれて読むと、結構難しいかも。むしろ、映画にしたらいい作品になるだろうな、なんて思います。全体の構成は、ゼッド、本文16章、謝辞、訳者あとがき(鈴木恵)、からなります。でも、巻頭の〈ゼッド〉って何? 私にはよく分かりませんでした。
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書物をテーマにしたミステリー
2016/02/24 21:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山好きお坊さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公のフィリップ・マスリクは数学者、保険会社の投資コンサルタント。毎日のようにランニングしている。その恋人のアーマ・アーキュリは、小説家で本の装丁家、二人は学生時代3年間の付合い後、結ばれた、20年も前のことであった。351冊の自装丁の蔵書をフィリップに残してアーマは失踪した。濃密なエロティシズムと紹介しているが、その表現は稚拙で、たいしたことなし。熟しきったセックス大国アメリカのごくありふてた生活の断面を色づけした感じがする。
アーマは最後まで見つからず、スペインで別れたかって義理の息子であったサムのこと、その姉ニコールのこと、全くはっきりさせず終わっている。消化不良のイライラが残る本であった。たびたびフィッリプがあらわす数式は何の意味があるのか最後まで不明であった。