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商品説明
田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
夫のため田舎に移り住んだ梨々子が、妻、母、女として迷いながら進む日々を丁寧に描く。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。『別册文藝春秋』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
かすりの梨々子、田舎に立つ | 7−50 | |
---|---|---|
潤とピアノと二人三脚 | 51−90 | |
たくさんの間違い、ひとつの出会い | 91−133 |
著者紹介
宮下 奈都
- 略歴
- 〈宮下奈都〉1967年福井県生まれ。上智大学文学部卒業。2004年「静かな雨」で文學界新人賞佳作入選、デビュー。ほかの著書に「スコーレNo.4」「太陽のパスタ、豆のスープ」など。
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紙の本
シンデレラはその後、幸せだったのかしら・・・?宮下さんの煌めく言葉で綴られたそんなお話です。
2010/11/22 09:06
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nyanco - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブランチでご主人のことをハンサムで、名前を見ただけでドキドキしたんです…と話していらした宮下さん。
転出届に書かれた夫の名前を見るシーンから物語が始まります。
4年前はあんなにときめいた夫の名前なのに…、たった4年でいったい何が変わってしまったのだろう…。
幼稚園児と2時間おきに泣く乳飲み子を抱え家事に育児に追われる生活。
あんなに好きだった夫なのに、彼のことを心配する時間はあまりなかったかも、そう一日8秒くらいだったか…。
子育てをしている、そしてしてきた女性に沁み込む言葉です。
こんなに一生懸命頑張ってきたのに、夫が鬱病になり、田舎の帰ろう…と言いだす。
いる、いらない…と引っ越し荷物と捨てる物を分けるシーンも印象的。
知り合いが一人もいない田舎に引っ越した梨々子、もうそれだけでも息が詰まるのに、子供たちがトラブルを起こすたびに学校から呼び出される。
よく彼女は耐えられるな…と読んでいて本当に辛い。
東京時代のママ友達からのメールの軽さ、でも自分には友達と呼べる人もいない。
息のつまりそうな毎日。
子育てと家事に流されていく…。
子育て中って外界との繋がりってママ友しかいないんですよね。
○○ちゃんのママでしかないけれど、それを失うと繋がりが何も無くなってしまう、自分は何者なのかという恐怖。
子育て中に田舎引っ越し、ママ友を失った彼女、その後のメールでそれがくだらない付き合いだったことが解る、しかし新たな出会いがない状況で更に自分の存在価値が見いだせない葛藤。
子育て経験者としてはヒリヒリと彼女の痛みが伝わってきます。
≪圧倒的な孤独の中で正気を保つために
鍵が欲しい。
どこかへつながるドアを開けたい。≫
≪ありがとう、と言ってもらいたい。≫
こんな言葉達にかつて同じ痛みを感じた者として掛ける言葉も見つかりません。
アサヒと出逢い、自分の存在価値を見いだせそうになった彼女、しかし彼女はアサヒの手を離し子供の元へ。
彼女の選択はとても宮下さんらしい。
でも彼女はいったいどうなってしまうの。
ヘルペスになっても夫は自分の病気ほどに心配はしてくれず、頑張っている彼女を誉めても労ってもくれない。
今までの宮下作品は普通の女の子が煌めく何かを見つけていく作品でした。
本作は『幸せに暮らしましたとさ…というお伽噺のその後を描きたかった』とおっしゃっていました。
夫の病気が完治する訳でもなく、彼女は現状を受け入れることで終わる…いえ、続けることを選んだラスト。
う~~ん、ちょっと辛い感じがしました。
無理やり納得させる感がしてしまって…
(もしかしたら私が読み違えているのかしら・・・)
何者にもならなくても良いかもしれない、でも、いつまでも輝いていたい…そんな思いを抱えていてはいけないのかしら。
だって彼女は私よりずっと若いのに…。
いつか写真館に輝くような頬笑みを浮かべた家族写真をみたい…と感じました。
相変わらず、言葉の紡ぎ方が本当に巧い作家さんだと感じます。
気になる言葉に付箋を付けながら読んでいたら読み終わった時には付箋だらけでした。
結婚前の若い世代はこれをどう読むのでしょう。
10年後なんて誰にも解らない。
でもきっとそこに光があると思って私は生きていきたい。
紙の本
作者の温かい眼差しが心に突き刺さる一冊。
2011/10/19 22:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
初出 別冊文芸春秋。
本作は本来女性が読まれて大きな共感を呼ぶ作品なのでしょうが、男性読者の私が読んでも同様の結果を得ることができました。
それは女性としてだけでなく、人間として主人公の梨々子が魅力的に成長をした証しだと思います。
これから結婚しようと思っている女性にも是非読んでほしいです。
結婚してからの良い点と悪い点との両方が巧みに描かれていて良い勉強になるんじゃないでしょうか。
宮下さんの作品は本作で5冊目ですがいずれも外れがなく安心して読めます。
読者が“ああ、読んでよかった”と必ず満足感を得て本を閉じることができます。
私の好きな作家である瀬尾まいこさんが“平易な文章で感動を呼び起こす作家ならば、宮下さんは“美しい文章で感動を呼び起こす作家だと言えそうです。
私的には2人とも共通してるのは“この本に出会えて良かったということ”ですね。
何が好いかと言えば、物語の着眼点&着地点が良いんですね。
全6編、2年ごとに描かれているのですが、心の葛藤が本当に素晴らしいのですね。
冒頭で夫の病気の都合で会社を辞めて、東京から夫の田舎である北陸に引っ越しします。
前途多難が待ち受けてるわけですね。
壁にぶつかりながらも主人公は徐々に田舎に順応していきます。なかなか普通にかつ平凡に生きれないものですよね、人間って。
途中で出てくるアサヒとのミニスキャンダル(心の浮気ですが)の話なんかもいいですよね。
そして前述した着地点、それは主人公の成長による落ち着きですね。
読者は2人の子供(潤君と歩人君)が心配でたまらなくなりますが、おのずと自分の10年後も考えてしまうのですね。
ちょっと頼りなげな夫の達郎、まあうつ病なので仕方ないのですが、イライラする点をも覗かせながらも温かい眼差しを忘れてないのですね。
とりわけ本作でも描かれている夫の妻に比しての子供に対する愛情の薄さなんかは、結構リアルに描けてると思い作者に脱帽です。
作家の力量としてはそうですね、最後の筒石さんとのやりとりなんかは物語全体をかなり引き締めていて良かったと思います。
最後に率直な思いを吐露すると、こんな素敵な女性を妻とした達郎さん、うつ病ですが幸せものだと思います。
達郎さんに代わって2人を引き合わせた藤沢さんに感謝、そう思って本を閉じました。
紙の本
しなやかさを身につけて生きる
2010/11/23 17:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
うつ病の夫が退社し
故郷の北陸の小さな町に帰ると言い出します。
夫は、シュッとしててハンサムで
名前も竜胆達郎とカッコイイ。
なにしろ田舎に帰ったら
さっそくモデルの話が持ち上がるくらい。
そして、笑う顔も好き。
こんな人と結婚できて幸せな自分が、もっと好き。
と、東京生まれの美人の梨々子。
戸惑いながらも、そうするしかなく、
専業主婦の梨々子は受け入れます。
梨々子がはじめは現状に流され、主体性がない。
友人未満の知り合いに餞別に気になる言葉とともに
10年日記を送られ、イライラしても、それをつけてみたり。
しかし、彼女はかわっていきます。
無口な息子ふたりのうち、
弟の方がより社会への順応度低いのも
「歩人は歩人」と受け入れてしまいます。
そして動じない。
もちろん、田舎暮らしはそれなりに気を使うことも
生活習慣が違うこともあります。
夫ともすれ違い、別の人に目がいってしまうことも。
孤独を知ることも。
けれど、静かにすべてをこなしていきます。
しなやかな生き方をやわらかく身につけていく梨々子に
深く感情移入でき、田舎暮らし10年を迎えた頃には
すっかり「自分」ができあがっている気分になれるのです。