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商品説明
【ゴールデン・エレファント賞大賞(第1回)】幕末の長州藩士・一ノ瀬周は瀕死の重傷を負うが、刺青師・宝生梅倖の秘技「鬼込め」で不老不死の「呪い」を纏う宝生“閻魔”に生まれかわる。20歳から時を止めた姿で生きる刺青師の支えとは…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
中村 ふみ
- 略歴
- 〈中村ふみ〉1961年生まれ。専業主婦。27歳で結婚後、育児の合間を縫って執筆活動を始める。
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書店員レビュー
鬼の刺青によって、不...
ジュンク堂書店京都BAL店さん
鬼の刺青によって、不死となった彫り師閻魔。大政奉還前夜の京都から、太平洋戦争終戦直後の東京までの激動の時代を生きた彼の悲恋と宿命の物語です。と同時に希望と再生の物語ともいえます。閻魔は不老不死の絶望を乗り越え、最後に「もう明日しかみえねえ」とつぶやきます。
この小説は、09年創設の国際的なエンタテイメントに贈られる第1回ゴールデン・エレファント大賞受賞作です。日米中韓の審査員の選考により選ばれた大賞でこの4カ国で同時発売もされます。
今後、この賞からどんな面白い小説が生まれるのか、期待しています。
京都BAL店文芸書担当
「不老不死は幸せなの...
ジュンク堂書店ロフト名古屋店さん
「不老不死は幸せなのか?」読んでいると、ふっと疑問を抱いく。望みもしない不死身の体を手に入れてしまった主人公・・・。幕末から終戦までの115年にわたるスケールで描かれる物語には、宿敵との戦い、愛すべき人を愛することができない葛藤、不老不死となった者の苦悩が詰め込まれている。バトルあり、恋愛あり、友情ありのライトノベル感覚で読めるエンタメ作品。新しく創設された「ゴールデンエレファント賞」の、記念すべき大賞第1作でもある。
文芸担当 清水
紙の本
激動の時代を描き切ったダークファンタジー
2011/12/02 19:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紫月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ゴールデン・エレファント賞」第1回〈大賞〉受賞作。
密偵として新選組に送り込まれた長州藩士・一之瀬周は、正体が知られて追われる身となる。
瀕死の重傷を負ったところを刺青師・宝生梅倖に助けられ、掌に彫った「鬼込め」と呼ばれる刺青を掌に彫られて命をとりとめる。
しかしそれは、不老不死となる呪いの刺青だった。
「不老不死」といえば吸血鬼が主流だが、本書では刺青による呪いによって不老不死を得るということになる。
「鬼込め」とは、その名の通り鬼を体の中に封じ込む呪いだという。
不老不死だけでなく、本人が心から望めば、様々な望みをかなえることができる呪いだ。
しかし、不死を彫ることだけは禁忌だとされていた。
閻魔も兄弟子の夜叉も、禁忌を犯して仲間を増やすことはしない。
己の不死に苦しみ、死にたいと願いつつ死にたくないと思う。
しかし他者にその苦しみを分け与えることはしない。
不死を得たいきさつも、安易に仲間を作ろうとしない潔さも、不老不死を得た人間を描きつつ、巷に溢れるヴァンパイアものとは大きく異なる。
永遠の命を得たものが手にするだろう苦しみ。
そして近しい人たちと同じように老いていけない哀しさ。
周囲に疑惑をもたれないよう、ひとところに落着けないわずらわしさ。
閻魔と名乗るようになった周は、驚くほど不器用だ。
不老不死の体を利用して器用に生きようという気持ちもなく、いつまでも二十歳の体と同じように、心もまた周囲となれ合うことを拒む。
その、だれよりも人間らしい生き様がとても魅力的だ。
不死であるが故の哀しさとは別に、本書の底流を流れるのは、生涯をかけて閻魔を想う奈津の心だ。
閻魔の妹から姉と名乗る年へ、さらに母へ、そして祖母ほどの年になる。
女としてなんと辛いことだろうか。
老いてなお閻魔を想い、それ故に閻魔の前から姿を消した奈津の恋心は切なく、胸に沁みる。
自ら禁忌を犯して不死となった閻魔の兄弟子、夜叉。
想いを胸に秘めて生きる奈津。
閻魔を庇護する信正。
良い小説には不可欠な、魅力的な脇役も数多い。
維新の時代から大戦まで。
激動の時代を描き切ったダークファンタジーは、一読の価値がある。
紙の本
死ねない苦悩。いかに生き、いかに老いることが人間にとって重要なのか。
2022/06/18 18:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
生老病死こそ人間の最大の課題。
その克服のために釈迦は仏教を説いたとされる。
ならば、それが解決したならば、不老不死を手に入れることができたのならば、人はどうなるのか。
老いず、病に倒れず死なない、死ねない、生き長らえてしまう運命を背負った主人公・閻魔。
江戸に生まれ、明治、昭和を青年の姿のまま過ごしていく苦悩。
いかに生き、いかに老いることが人間にとって重要なのかを痛感させられた。
第一回ゴールデンエレファント賞大賞作。
紙の本
不老不死の男の悲哀
2011/03/04 16:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルからイメージされる軽さに反して
幕末、明治、終戦の時代背景と
不老不死にされた男をしっかり描いた時代小説。
新撰組に追われ、負傷した長州藩士・一ノ瀬周は
彫り物師の宝生梅倖によって、不老不死の体となります。
「鬼込め」といって、自分の禁忌を手の平に閉じ込める刺青で
不死はそのなかでも最大の禁忌です。
彼もまた、彫り物師として鬼込めの技を習得し
宝生の名を受け継ぎます。その手の平に刻まれた「閻魔」の
梵字から「宝生閻魔」と名乗るようになります。
彼は友人の遺児・奈津を育てながら、
一方、兄で師であり、姉の敵である夜叉を探し求めます。
この二人の対決はとってつけたかのようなクライマックスで
どうでもいいような気がします。
それよりも、不老不死の体のために、人目を避け、
奈津が自分を追い越して成長し、
恋心を秘めながら、彼女が妹から姉、母、祖母へと
変わっていくことに苦しんでいます。
人目を避けるとはいっても、同じように鬼込めをしている
実力者の牟田信正、猫のクロ、悲しい妾のちゑなど
閻魔の心を動かす、人(?)とのつきあいが発生します。
心まで鬼になってしまうのではなく
閻魔を人間くさく描いたところが魅力的です。