紙の本
パワーズらしい作品
2024/02/24 23:42
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常にリチャード・パワーズらしい作品としていいだろう。スケールの大きな物語に、理系の最新知見が盛り込まれ、さらにセンチメンタルでもある。
紙の本
飛び立つ先は
2020/06/25 11:04
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分を姉として認識しない弟、さらには惰性で付き合っている恋人に悩むカリンが鬱屈としています。随所に散りばめてある鶴のモチーフが、閉ざされた人間関係を変容していく後半が圧巻です。
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発売と同時に買って読む本なんてリチャード・パワーズくらいしかいない。「われらが歌う時」もそうだったけど、この「エコーメイカー」も一気に読んだ(とはいいつつ、途中「生物の進化大図鑑」という分厚いのを買ってしまったせいで読書ペースはがた落ちだったけど)。
「囚人のジレンマ」や「われらが歌う時」と同じく、この本も家族が濃密に描かれる。親や姉や弟など人と人の距離が近いという感じ。それをさらっとさまざまな知識をおりまぜつつ(ほんと博識だなあと思う)、読み手自身の日々日常のイライラを彷彿とさせながらいろんな複線を絡ませ(このあたりはいつも村上春樹と重ね合わせてしまう部分と感じる)、とても読みやすくしあげてしまうのはあいかわらずだな(これも村上春樹っぽい)と思う。
「ガラティア2.2」自体が人工知能、そしてこの「エコーメイカー」は脳それ自体を模して作られている感があるのが面白い。今回はミステリーっぽく読めるところもいい。
読んでる最中に寄り道して「脳のなかの幽霊」を読みたくなって仕方なかった。例の章だけでもちょっと読んでみてもよかったかも。
さて「2666」をいつ読むか。
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彼の翻訳小説は全て挫折せずに読んできた。エンタメ小説とは違う深みがある。カフェモカを飲みながら2ヶ月かけて読んだパワーズの本作は、またしても面白い。今回のテーマは『脳』。交通事故によるカプグラ症候群により、親しい人が偽物のなりすましだという妄想を抱いてしまった男と、その姉、脳科学者などを巡る物語。鶴も出るよ。ちょうど同時期に『Mother』というTVドラマを観ていて、渡り鳥の場面が印象的で、鶴の群れとシンクロするのだった。
自我って、いい加減で、臨機応変で、ゆらぎまくってるものらしい。だからこんな勘違いをやらかす。「自分自身にはなじみを覚えているが、世界が見慣れぬものに変わってしまった。そのギャップを埋めるために妄想が必要なのだ。自我の至上目的は自分自身の継続だから。」(p.417) ここまで深刻な症状でなくても、みんないろんな脳の勘違いを抱えながらも、ふつうに生きている。先入観、脚色など色々。。。 つまり脳ってヤヴァイ。そんな脳の話を読む自分の脳って一体何??? 脳科学者による症例紹介がやたらと面白い。それを小説に組み込んでくるから夢中になって読める。単なる脳科学本で読むのと、小説として読むのとでは、感じ方が違ってくるのかもしれない。「ノンストップのスローのデスマッチ」という言葉に象徴される、なんとか折り合って生きている下降局面の人物たちを丹念に掬っていく物語。でも温もりや救いもある。Life goes on.
パワーズの小説は未訳がまだまだあるので、次の刊行を楽しみに待とう。
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金属製の鉤爪がついたロープを、
頭上でクルクルと回して投げてみるが相手に届かず、
または届いたとしてもうまく引っかからないのだが、
何度かやっているうちに、
今度はしっかりと相手に鉤爪が食い込み、
その瞬間、一気に相手を手繰り寄せる、
いや相手に手繰り寄せられる感覚。
2006 年 第 55 回全米図書賞小説部門受賞作品。
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随分読むのに苦労した本でした。こんなに苦労したのは久しぶり!
まずはページ数が多過ぎる事。翻訳の問題なのか、原作そのものの問題なのか、とにかく回りくどくわかりずらく、そして一向に共感出来る事も無く「ひたすらどういう事なんだろう?」と、ただそれだけを知るのために何とか最後まで読み終えました。
交通事故で脳に損傷を受けた男がカプグラ症候群と言うごくまれな症状に見舞われると言う、医療ミステリーものなのかと思って読み始めてけれど大きな勘違いのようでした。
これが全米図書賞受賞作と言うのが不思議。。。
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最後の訳者解説によりあ!そういうことだったんだ!という驚きも含めて面白かった。実験的で理解しにくい構造の中にハッと琴線に触れるような一文を紛れ込ませるさすあのパワーズらしさもあって好きは好きなんだけど、他のパワーズに比べていまいち愛着がわかないのは、登場人物に特に共感できる人がいなかったからなんだろうな、きっと。
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難解だった。。しかしこんな作家がいたんだという発見もあり。時間があれば、もう少し理解出来るまで読み返してみたい。
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マークが、事故に遭った。カリン・シュルーターはこの世に残ったたった一人の肉親の急を知らせる深夜の電話に、駆り立てられるように故郷へと戻る。カーニー。ネブラスカ州の鶴の町。繁殖地へと渡る無数の鳥たちが羽を休めるプラット川を望む小さな田舎町へと。頭部に損傷を受け、生死の境を彷徨うマーク。だが、奇跡的な生還を歓び、言葉を失ったマークの長い長いリハビリにキャリアをなげうって献身したカリンを待っていたのは、自分を姉と認めぬ弟の言葉だった。「あんた俺の姉貴のつもりなのか?姉貴のつもりでいるんなら、頭がおかしいぜ」カプグラ症候群と呼ばれる、脳が作り出した出口のない迷宮に翻弄される姉弟。事故の、あからさまな不審さ。そして、病室に残されていた謎の紙片―。
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すさまじい。ポスト伊藤計劃は全てこの本が語っている。「意識の役目とは、自分にとって自分が馴染み深いものだと思わせることだ」
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事故により主人公カリンの弟がカプグラ症候群という記憶障害を発症(自分を姉と認識されない)→それに悩む悩む悩みまくりいいかげんしっかりせーよカリン!とハラハラしてしまう主人公の愛と葛藤の日々を大ボリュームで綴る人間ドラマ本なのだが、この弟の記憶が不安定なところがサスペンスである。
つまり事故の原因は?書置きは誰が?という謎解きサスペンスになっており(ただし推理小説ではないので推理はできません)、カリンの長すぎるうじうじっぷりが辛かったが読了後さわやかな気分に。
極限生活を送るカリンの恋人ダニエルがいけ好かない理由については、この2本後の『スマートサイジング』レビューにて。
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事故で脳損傷を受けた弟(損傷した脳で施行される事柄やパターンが凄く面白い)と、それを親身に看病する姉や周囲の人々が織り成すドラマ。社会的状況、水域・環境問題、鶴の保護、姉の置かれた状況、脳神経学者の葛藤、事故の真相と残された謎のメッセージ。それぞれが絡み合って物語はすすむ。登場人物の全てが大なり小なり問題を抱えている。飽きることなく最後までグイグイと引っ張られるようにページが進む。最後の方に出てくる鶴が舞う描写は凄く詩的で美しい。パワーズは美しいものを実物よりも美しく描写する作家だと思う。
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カナダヅルの飛来地ネブラスカを舞台に、事故から親しい人を偽物と感じてしまうカプグラ症候群を発症した青年を巡る物語。
ケアマネ、介護士としての私の仕事柄、脳が萎縮したり、傷ついたりしたときに生じる心や性格の変化、その中でなんとか統合を守ろうとする本人や他者の受容について考えてしまう。新しい〝その人らしさ〟として接していくのか、それとも改善すべきものとして治癒を目指していくのか。
分厚いけど一気読み、専門用語など全て理解できたわけじゃなけれど、あとがきの言うとおり、この本自体か脳を模した構造をしているとするならその脳というものの凄み、そして著者の力量を強く感じました。
カナダヅルの大群を、いつか死ぬまでに見に行きたい。
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表現の仕方がとっても美しい本です。
私が無知なせいで途中何度か読めない漢字が出てきて、調べてる間にリズムが途切れてしまったのが悔やまれます(自業自得です…)
登場人物が抱えるそれぞれの荷物や葛藤の中に身を置いた時、いいようのない息苦しさのようなものを感じました。ストーリー的には途中でなんとなくオチが読めてしまうところが少しだけ残念。
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いやー長かった。なぜこんなに長いのか、著者なりの理由はあるのだろうが、そこまでの熱心な読者でない人間からすると、もう少し核心をコンパクトにまとめてほしかった。
911後のアフガン・イラク戦争について、おそらくはリベラルであろう著者と違った登場人物たちの思いが丁寧に描かれているところは感心した。