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海図の世界史 「海上の道」が歴史を変えた (新潮選書)
著者 宮崎 正勝 (著)
何もない海上での航海のために正確な経線・緯線を付した海図を描くことは、世界を俯瞰する試みでもあった。新大陸発見、産業革命、資本主義の誕生、世界大戦…。海の視点から読みとく...
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商品説明
何もない海上での航海のために正確な経線・緯線を付した海図を描くことは、世界を俯瞰する試みでもあった。新大陸発見、産業革命、資本主義の誕生、世界大戦…。海の視点から読みとく、全く新しい通史。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
宮崎 正勝
- 略歴
- 〈宮崎正勝〉1942年東京生まれ。東京教育大学文学部卒業。北海道教育大学教授退官後、著述業、中央教育審議会専門部会委員。著書に「イスラム・ネットワーク」「海からの世界史」など。
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海図を見ながら読みたいところ
2015/10/26 00:00
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投稿者:okadata - この投稿者のレビュー一覧を見る
地中海とエリュトラー海を含むプトレマイオスの海図にはアレキサンドリアに集積された地図や海図の集大成であり1世紀にはモロッコから中国までの俯瞰的な世界を描き出していた。ここで言うエラトリュー海=赤い海は紅海、アラビア海、ベンガル湾、インド洋までをひとまとまりの海とした言葉である。モンゴルの海上航路や明の鄭和の大艦隊など東方世界の方が進んでいた時期はあるが明の海禁策によって古代の海図が失われたために、この本では地中海世界から拡がっていく世界史と海図という捉え方をしている。
始まりはマケドニア王アレクサンドロスの東方遠征、これにより商業はギリシア人が主導し、二つの海を結ぶ要所のアレクサンドロスは海上路の起点となった。ローマ時代には地中海は内海の航路が発達したが沿岸のガレー船が主流となり、一方エラトリュー海ではモンスーンを利用した沖合航法がとられた。プトレマイオスの海図は円錐投影法を用いており当時の知識でも緯度や地球の半径はかなり正確に測れたが経度については18世紀まで正確な測定が出来なかった。
プトレマイオスの海図はイスラーム世界を経て、元にも伝えられている。モンゴル帝国は外国商人を登用し、明に引き継がれるまでこの影響は見て取れる。1378年の大明混一図には伝統的な中華世界にインド洋、アラビア半島からアフリカまでが描かれている。アフリカ遠征をした明の鄭和もイスラーム商人の宦官でありここで中国の伝統的なコンパスを使う海域とイスラームの天体航法を使う海域を書き分けた海図が用いられていた。しかし明は宦官を敵視した官僚により海禁政策をとり海図を焼き払い、勘合貿易の世界に閉じこもる。
十字軍の時期から少しずつヨーロッパにイスラーム文明、中国文明が流れ込む。地中海交易の制海権がイタリアに戻ったことからヴェネチア、ジェノバ、ピサなどの商人が台頭していく。逆風で走れる三角帆はダウ船から、コンパスは中国から測天儀はイスラーム世界からもたらされ、コンパスと沖合航法により新たな海図が生まれた。
マルコポーロのジパング伝説に踊らされ、イスラーム商人を避けてアジアとの交易をめざし大航海時代が始まった。海図は徐々にスペイン、オランダ、イギリスにも拡がっていく。リスボンからカナリア海流と偏西風によって東大西洋を周回する航路が出来たことが後にコロンブスのカリブ海進出のベースとなったのだが、その海上交通の要所となったカナリア諸島の征圧に成功したのがカスティリャにやとわれたフランス人だった。ポルトガルが砂糖の生産で大きな利益を上げており砂糖貿易をするジェノバ商人に雇われたのがコロンブスだったが、カナリア諸島をベースにすれば簡単にアジアに到達できると信じるようになっていた。しかし実際にはコロンブスは実際には海図のないリスクだらけの航海をし幸運にも大西洋の対岸にたどり着いたのだった。
マゼラン、キャプテン・クックなどが新たな航路を開拓していくがアメリカ大陸とアジアの交易はなかなか進まなかった。アジアからアメリカに戻る航路がウルダーネタにより発見されたのが16世紀で、その時既に知られていたメキシコ湾流にのってヨーロッパに戻るのと同じような航路が太平洋にもあると考えたのだ。ウルダーネタは黒潮に乗って日本列島東岸を北上し偏西風にのってカリフォルニアに戻る航路を発見した。コロンブスに匹敵するウルダーネタの偉業だがあまりにも知られていないように思える。
せっかくの面白いテーマなのに肝心の海図が通常のものしかないのがやや残念。復元した海図を載せてくれれば当時の世界観がイメージとしてつかみやすいのに。