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紙の本
おにのさうし (文春文庫)
著者 夢枕 獏 (著)
人は何ものかを愛しすぎると鬼になる…魑魅魍魎が跋扈する平安の都を舞台に、鬼と女人を描く「陰陽師」の原点ともいうべき奇譚集。「紀長谷雄朱雀門にて女を争い鬼と双六をする物語」...
おにのさうし (文春文庫)
おにのさうし
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商品説明
人は何ものかを愛しすぎると鬼になる…魑魅魍魎が跋扈する平安の都を舞台に、鬼と女人を描く「陰陽師」の原点ともいうべき奇譚集。「紀長谷雄朱雀門にて女を争い鬼と双六をする物語」など全3話を収録。〔「鬼譚草紙」(朝日文庫 2006年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】
これが「陰陽師」の原点だ!
人は何ものかを愛しすぎると鬼になる…魑魅魍魎が跋扈する平安の都を舞台に鬼と女人を描く陰陽師の原点ともいうべき奇譚集。【商品解説】
収録作品一覧
染殿の后鬼のため【ジョウ】乱せらるる物語 | 7−48 | |
---|---|---|
紀長谷雄朱雀門にて女を争い鬼と双六をする物語 | 49−129 | |
篁物語 | 131−266 |
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紙の本
鬼にまつわる平安時代の物語
2015/03/31 22:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
巻末の解説を先に読むと、夢枕本人が本書は陰陽師の別巻的存在だと言っている。本書は3つの話から構成されている。いずれも平安時代のストーリーである。ここでは3話とも陰陽師は出てこないが、タイトルのとおり出てくるのは鬼である。陰陽師でもそうだが、鬼と言われてもどんな存在なのかピンと来ない。都合の良い、あるいは都合の悪い時に登場してもらうキャラクターなのかも知れない。
最初は今昔物語に登場する話である。染殿の后という大変美しい姫がいたが、妖しの怪がとりついた。その祓いに呼ばれたのが真済聖人であった。妖しの怪は祓うことができたが、聖人が染殿の面差しを見て、ぞっこん惚れ込んでしまった。とはいえ、相手は后なので簡単にはいかない。そうは言っても諦めきれない。そこからの話が面白い。
二話目は紀長谷雄という文章、詩の達人の話である。あるとき、長谷雄が道を歩いていると、誰かが詩について話しかけてくる。しまいには、勝負することになった。長谷雄が勝ったのだが、相手は鬼であった。鬼は次はすごろくで勝負だという。鬼は絶世の美女を賭けるという。とうとう長谷雄は自分の持っているもの全てを賭けて、鬼を勝負することになった。勝負にはさらなる条件があった。長谷雄草紙という本があったそうだが、本話はそれが出典だそうである。
三話目は小倉百人一首でも参議篁として名高い、小野篁の話である。篁は文章にかけては白楽天にも認められた英才である。風変わりな性格らしく、人からは冥界で閻魔大王の傍らにいて、裁判を手伝ったと言われていた。本書では出てこないが、伝説ではこのために篁が使ったと言われる冥界に通じる井戸が遺されているとも言われている。
篁は腹違いの妹がいたが、いつしか妖しい関係になる。しかし、妹はほどなくこの世を去る。篁は何とかしたいと願って道摩法師に依頼する。道摩法師は、陰陽師などに登場する蘆屋道満の原型らしい。道摩法師の指導で冥界に行き、閻魔大王に相談するという話である。何とも童話的だが、いかにも闇の世が支配する時代の創作である。
長谷雄や篁は文章、詩の達人だけあって、とくに詩がいくつも登場する。詩に興味のある人には楽しみ方がさらに増えるであろう。百鬼夜行の描写も面白いが、くれぐれも鬼に遭遇した際はバリバリと喰われないように注意したいものだ。