紙の本
1から一気に読める
2022/08/31 21:31
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投稿者:みー - この投稿者のレビュー一覧を見る
1を読んだら、無条件に2がすぐに読みたくなると思います。どこか謎めいて、でも先が気になって読んでしまう、というのが最後の最後まで続きます。私も面白かったし、50代の母も、面白くてつい読んでしまうといっていました。おすすめです。
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ハードカバー版を既読。もう何と言ったらいいのか。何と書いたらいいのか。まさに慟哭と呼ばれるかたまりを喉元に詰まらせながら読み進めたⅡ巻は、悲劇と残虐と無力をこれでもかと描いている。すべてを背負って生きることを当然としたアルベルトが民衆の目にどのように映ろうと、彼の生き様はまるで神に仕えるものと同等か、それ以上であると言わざるを得ない。憤怒の嵐のなか苦悩するマティアスの対極で、凪いだ風のように立つアルベルトの姿が脳裏に浮かぶ。信仰と法と戦争。それらを小説というかたちでこうも深く表した作家が他にいるだろうか。
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Ⅱ巻では激戦〜終戦直後の様子が描かれる。
加筆訂正により、登場人物の心情がより細やかになったように感じられた。それ自体は良かったのだが、そのせいもあって、マティアスの信仰心がややファナティックに感じられることが多かった。
はっきり読み比べていないので、記憶と照らし合わせた印象論に過ぎないのだが、単行本版と文庫版、小説としての完成度が上がっているのは文庫版で間違いないと思う。ただ、単行本版であった荒々しさが無くなってしまったのはやはり残念だ。
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取り扱うテーマとしてはどうしても避けられない残酷なシーンの数々に打ちのめされながらも、最後見たさについ勢いで読んでしまいます。
2人の運命が奇妙に交差するローマへの道程がとても好き。
そして最後のアルベルトの台詞で、何度も泣いてしまいます。
文庫では会話が増えたことによって、人物の温かみが増した気がします。
マティアスもアルベルトもよく動きよく喋るなあと。
特にマティアスはシーンが追加されたことにより、新たな魅力を感じましたね。
1巻でも述べましたが、全体的に読み易くなっていると思います。
この「易しさ」が結構好みを分けるような気もするのですが…。
個人的な意見としましては、単行本の淡々とした温度感の方が好きです。
だからこその、アルベルトの貫いたものに余計込み上げるものがあったかな、と。
しかし最後はほんと何度読んでも泣いちゃいますね。
追加の会話によってアルベルトの心情に足しの部分もあったんですけど、それでもやっぱり最後の一言が何より重い。
胸が締め付けられます。
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「天使と悪魔」のようなストーリーをイメージしていたので、少々面食らいながらもアルベルトとマティアスの行き着く先が気になり、一気読み。
ナチスドイツ下における過酷な運命に思わず顔をしかめながらも、潔すぎるアルベルトになんだか涙。後半のアルベルトの妻の告白には参りました。
長いけど、読みごたえのある一冊でした。
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以前に読んだ「提督の娘」でもすごく頭のいい人なんだなーと感心して経歴をネットで見てなるほどと思いつつ同郷の方なのでシンパシーを覚えつつ2作品目読了。
終盤は涙なしには読めず泣きながら読みました。
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マティアスとアルベルト、時代に翻弄されながら、置かれた環境下で、自分がなすべき事を問い続け、やり続けた。
暗い時代の中で、そんな人の強さ、煌めきが描かれている。
しかし、現代の日本で生きるものとしては、政治権力と宗教との関わりがどうしても理解しきれない。
今でも宗教を表に出した戦争は行われていて、唯一神を信仰する宗教は他者を受け入れられず、迫害する方向にしか進まない様にしか思えない。
神が神を受け入れなくては、前には進めない。
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鉄拳神父マティアスさん素敵です!
フェルシャーの告白を聞いたうえで分かりやすい棘(拳)を与えてやれるマティアスと、望んだ棘を与えられてなお自分を赦していたのかどうなのかとか考えているフェルシャーの差たるや。左の頬も殴られてろ。
先が分かっているぶんラストは穏やかに読めたのですが、イルゼへの老婦人の言葉でびっくりするほど涙がでてしまいました。アルベルト夫妻の恋愛描写少ないなーまあ須賀作品では真っ先に削られるところだよなあーと思っててこれだから、もし出会いのくだりをしっかり書かれてたらカサカサになってたかもしれません。命拾いをしました。
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Ⅰの続き。
ナチス時代のドイツ。親衛隊に入隊したアルベルトと、修道士のマティアス。図らずも対立してしまった旧友の物語。
ドイツのポーランド侵攻から第二次世界大戦、そしてドイツの敗戦。戦後の様子までが書き綴られているのだけど、本当に一言で感想を述べるとすれば、「戦争は人々に何ももたらさない」ということ。
だからこそ今読めてよかった。プレゼントしてもらえてよかった。
著者の須賀さんは大学で史実を専攻されていたようだし、この小説を書くにあたってたくさんの文献を読まれたそうなので、この小説を読んだだけで当時のドイツで起こっていたことが分かりやすく理解出来ると思う。
物語としても、とても面白かった。
戦中の描写はハラハラするけれど、最後はとても静かに終わったのも印象的。
アルベルトはとても冷酷な人間の設定だけど、なぜか憎みきれないところがあって、その理由が後になってから明かされるという、枠としてはミステリ小説。
マティアスはそのまま純粋で真っ直ぐな青年で、読みながら思わず「頑張れ」と応援してしまうような人物。
その二人が基本は平行線を辿りながら、たまにその道が交錯する。人と人の不思議な縁を感じずにいられない。
個人的に思うのは、この表紙の感じは作品としてはちょっぴり損しているような。中身はとても硬派でしっかりした歴史ミステリなので、もっと重厚な表紙の方が合ってるような気がする。
自分ではあまり選ばない小説を読めて、そしてそれがとても面白くて読んでよかったと思えたのもひとつのめぐり逢い。
時を置いて再び読み返してみたい小説。
そして関連本にも興味が…。
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愛する者を守るために
神に怒り、嘆き、赦しを乞う。
妬み、憎悪、それは愛と表裏一体。
極限の中で見つけた己の願い。
神の棘は時に人を神のもとへと誘う
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ナチスや当時のキリスト教界の勉強に、もってこいの本。
どうしても、アルベルトに注目してしまうけど、他者のために必死で足掻き、祈るマティアスの生きざまも眩しいです。
ただ、マティアスに限らず多くの登場人物たちがなぜこうも、神やキリスト教に依存しているのか分からなかったです。
ナチスがここまで教会を弾圧していたこと、ドイツを占領した米軍の「解放者」とは程遠い行いなど、初めて知ることばかりでした。
私がこの世界にいたら、ただおびえて逃げるばかりで二人のような行動する人間にはなれないです…。
できれば翻訳されて、多くの国の人々に読んでほしいです。
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WWⅡ前後のドイツにて、それぞれ信念、信仰を持つ男2人を軸に進む物語。
誰しも生きるに必死な中、マティアスとアルベルトの繰り返される衝突は仕方のない事とはいえ悲しい。
終盤の交流が静かだけど、穏やかではなく、美しい。
Ⅰは展開の重苦しさに乗れず、なかなか進まなかったけど、Ⅱはどうなってしまうのか気になりすぎて一気に読んでしまった…。
Ⅱの終盤におけるマティアス視点の驚きは半端じゃない。
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上下巻一気に読み終わってしまった。須賀しのぶらしい、骨太な作品で、読み終わったあとの充足感はひとしお。第二次大戦前から戦後にかけてのドイツの、社会や人々の生活がリアルで、映画を見ているような気分にもなった。
修道士・マティアスと、軍人・アルベルトの軌跡をたどっていると、作者はドイツを舞台にしたかったのではなくて、『神』とはなにか、『赦し』とはなにかというテーマを描くために、この時代のドイツを選んだのではないかと思えてくる。その問いかけがはっきりと示されるのはマティアス視点の話のときだけだし、カトリックの神に問いかけを続けるマティアスとは違って、アルベルトは棄教しているし、自分の行動の結果とそのための救済を自分自身に負わせる。でもアルベルトのこの考え方も、○○教の神と名はついていなくても、1つの信仰の形のように見えた。『神の前に何も持たずに立つことと、実はとてもよく似ている』とあるし。
タイトルの『神の棘』とはなんなのか、その発言をするヨアヒム・ フェルシャーの告解に鳥肌が立った。棘は神の愛情の証だと彼は捉えていたけれど、その棘は果たして神から与えられるものなのか、それとも罪悪感をきれいな言葉に言い換えただけなのか、なんだかすっきりしない気持ちが残る。それも踏まえて、何度も読みたい小説。電子書籍ではなく、紙の本でおいておきたい。
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ユダヤ人大量殺害という任務により、消えない罪を背負うアルベルト。衛生兵として戦地にあり、神への救済を求めながら死んでいく兵士たちを前に苦しむマティアス。
ふたりの男は、歴史の流れに呑まれながら運命の悪戯のように巡り会う。
この作品は物語の進行それ自体は、ほぼ想像通りに進む。
その点だけを見れば、意外性のないつまらない作品とも言える。しかしこの作品に意外性を特に求めず読んでいたため、そこに問題は余り感じなかった。
カトリック教会が時代にあわせナチスを否定したり、ヒトラーを祝福したりと態度を変えたことは、やはり残念だ。
教皇や司教たちであっても人間であり、カトリック教会の総本山であるバチカンが、余りにも巨大でありすぎるために矛盾としか思えないことが起きてしまう。神様はそんな哀れな人間をどのようにご覧になっていただろう。
カトリック教会に矛盾があっても人々は、辛く苦しいときにこそ神の救いを求める。そのときに神のかわりに神の言葉によって救いと癒しを与えるのは、カトリック教会司教や司祭だ。
信仰は欠かせない。
そう改めて感じたのはマティアスが衛生兵として加わった戦地での描写だった。普段とても敬虔とは言えない、自分がキリスト教徒であることさえ忘れてしまっているような人であっても、死ぬ前には自分の行いを赦してもらいたい、心安らかに命を終えたい。きっとそう思う。
たとえ矛盾があってもバチカンの存在は大きな意味がある。
キリスト教徒であればイエスの受難がユダヤ人によるものということはわかっている。しかし、だからユダヤ人は迫害されても仕方ないと考えるキリスト教徒は殆どいないと信じている。
教皇がユダヤ人迫害に対して何らかの苦言を呈してくれたならと思ってしまう。
この作品を読みながら考え、なるほどと腑に落ちることと更なる疑問を持ったりと大変愉しく読んだ。
物語の進行に面白さがないと書いたが、最後には、ああ、そうきたか、と思う場面があり、最後まで愉しませる作品だった。
他の作品にも興味が出てくる良い作品と出合えて嬉しく思う。
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第二次世界大戦下、ナチスの支配するドイツで対照的な立場にある二人の奇妙な運命を描いた作品。誰もが知る「非道」の代名詞である組織を中心にした話とあれば、どうあっても重い物語にはなりますが、それでも先を読ませる筆力、そして主人公ふたりの荒々しい魅力に満ちた作品でした。
「時代」のせいばかりとするにしてもあまりに非情な所業を成してきたアルベルトのひとつの真実が最後に明かされるという意外な展開がさらに深みと最後の場面の余韻を深めています。
余りに多くの命が無碍に失われ、それを自ら執り行ったり、見送るしかなかったという人生は想像することもできない「フィクション」です。
けれどもかつて…いや、今でもきっと、このようなことは続いてしまっているのでしょう。それを思うと、あまりに平和に生きていることの幸せを思わずにはいられません。