紙の本
当時の熱気
2017/02/03 21:10
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投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が生まれるよりだいぶ前の時代が舞台の物語ですが、まるで当時を生きていたかのような、そして自分もトップ屋だったかのような錯覚に陥るほどの熱気を感じることができました。
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【本当にお前は何もかも欲しい男なんだな──】オリンピック前夜の熱を孕んだ昭和三十八年東京。連続爆弾魔を追う記者・村野に女子高生殺しの嫌疑が。孤独なトップ屋の魂の遍歴。
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今時の売れ筋の本を立ち読みしてみたけれど、今ひとつピンと来ず、平成7年に発表された昭和38年の東京を描いたこの本にしてみた。
そんな古いお話が今更新装版と銘打たれて発売されたのは、4年後に東京五輪を控えた今の世情が、昭和39年にオリンピックを開催する前の世情に似たものがあるという意図かしらん。
草加次郎事件を追う一方、身内のトラブルに端を発し女子高生殺しの犯人として警察にマークされる身となったトップ屋の村野。
もはや死語に近い“トップ屋”という職業や描かれる風俗・風景には流石に古めかしさを感じるものの、言葉遣いや小道具はその当時に書かれたと見紛うばかりの臨場感。
「警察に睨まれながら無実の罪を晴らさんとする一匹狼」なんて設定からして懐かしい香りがするが、その展開はまるで古き良き時代の日本映画を見ているようなサスペンスがたっぷり。
私たちの世代にはそうした既視感の上に展開された物語はミステリーとしても上出来で、現実の草加次郎事件に独自の脚色を施した結末も興味深く。
ただ、この頃と今では世相の根底が違う気がして、わざわざ今新装版として出した意図はズレている様に思える。
★は昭和の香りに浸れたことから多少甘めで。
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舞台はオリンピック前年の昭和38年。
私はその数年後に産まれたので当然、この時代は知らない(両親もまだ小学生だった)
この時代は高度成長期と呼ばれて、日本のそこここで活気が溢れ、貧しくても人々はみーんな前向きだった。古き良き時代。なんて、テレビやその時代を設定にした映画でよく紹介されているのを何度も目にした。だからこれを読むまでは、"本当にそんな時代だったんだなぁ、今なんて殺伐としすぎてその頃に戻れるなら戻りたいよ。。。"と勝手に思っていた。
でも、この物語を読んでそんな事は幻想だと気付いた。
いや、闇でしょ、充分に。
この高度成長期時代の闇、それもすごく深くて真っ暗な闇を覗き込んだ、そんな印象を持った。これでもか!というぐらい闇をえぐり出しているので、途中で読むのやめようかと思ったぐらい(辛くて)
もはや、戦後ではない。と世間ではもてはやされていたのかもしれないけれど、その影で戦後や高度成長期の歪みや皺寄せを受けていた人間がいたということ、それによって産まれる格差。現在と背景は違うけれど結局は、今も昔もあまり変わりないのだと知った。
これを書いている現在、4年後にまた東京でオリンピックが開催される。エンブレムや競技場の問題で迷走している感がひどいが、後書きにもあったように都心では整備工事なんかが徐々に進みつつまる。また前年の2019年には、この物語のように東京が、そして日本が前夜の熱気を孕むんだろうか。
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桐野作品のシリーズものはあえて避けてたんですが、どうやらシリーズ番外編のようです。とはいえ少し腑に落ちないところはあるものの、本作だけでひとつの作品と成立しますね。そんなに違和感ありませんでした。
ハードボイルドというか、男くさい作品でした。桐野作品は女性が主人公のものが多いので新鮮でしたが、好みの問題でいうならそこまで入れ込むほどではありませんでした。やっぱり女性が主人公の方が読みやすいかな。村野からトップ屋という仕事の面白さや魅力が伝わってこなかったですし、登場人物が多い上に名字だけで書かれていることが多いので誰が誰だか整理するのがちょっと大変でした。わりとありきたりな名字ばかりで記憶に残すのが難しかったです。
ちゃんと先に書かれたシリーズから読めばもう少し面白く読めたんじゃないかなと思います。作品としては成立しますが、やっぱり順番は順番かも。
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1960年代の物語。
トップ屋 村野善三は、地下鉄の爆破事件に遭遇。
その犯人は 草加次郎かもしれなかった。
村野は、その犯人らしき人物とすれ違って、
バイタリスの匂いを感じた。
遠山をトップとして、村野、後藤など 勢いがあった。
この村野と言うオトコの造形がすばらしくいい。
実に 芯がある。戦争で 両親と妹を亡くした。
トップ屋としての矜持があり、
調査屋として力量を発揮していた。
草加次郎とは?迷宮入りになった 愉快犯。
その時代背景が 浮き彫りになっている。
様々なタイプのオトコたちが いる。
後藤の雰囲気は スマートで、おしゃれ。
こだわりをもっていた。
市川という刑事も堂に入った刑事だ。
敵に回すと怖い存在であることがよくわかるが
ちゃんと 村野を認めているのが すばらしい。
早重という存在が 不安定で、なんとも言えず
方向性が定まらないのが、この物語をおもしろくしている。
後藤を思いながらも、村野さえも射程に入れている。
タキという存在が、村野の立ち場を悪くするが、
それを受け止めながら 切り抜けていこうとする
村野の意地が なんとも 頼もしい。
がんばれ。村善。
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村善の若い頃のお話。ミロシリーズでもわずかながらミロに重要な鍵をさりげなく残して去る彼がすごく気になっていた。この本で見事に村善に陥落した。昭和のいい男だ!
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長かった。
んで、わかりにくかった。
好きな作家さんなのに残念。
時代が懐かしすぎたのかな。
ただただ、タキが可哀想。
日常から、家族から、逃げてもいい!
自分を痛めるより、全然いい。
それから時代は良くなったのかなぁ。
生きやすくなったのだろうか。
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私立探偵村野ミロシリーズは未読だが、そのスピンオフである本作はそれを知らずとも楽しめた。五輪開催を目前に控えた高度成長期の東京を舞台に連続爆弾魔と女子高生殺人を週刊誌記者が追いかけるという設定だけでも充分面白いはずなのに、主人公の村善をはじめとした魅力的な登場人物たちが物語を大いに盛り上げてくれる。各局記者同士の戦友と呼ぶに相応しい絆が事件の真相を炙り出す様に胸が踊り、女性たちはそんな男共を翻弄しつつも翻弄され彩りを添える。熱気と共に加速し続ける昭和という時代の光と陰を描いた骨太で煙草の煙が香る物語だ。
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カオスなエネルギーに溢れた高度経済成長期が舞台。雑誌制作のアウトソーシングを請け負うチームが、闇社会の思惑をつかみ、巻き込まれながらも追っていくストーリー。
骨太で人物描写も素晴らしく、当たり。特に思い入れも無く、本書の背景も知らずに手に取ったが、どうやら、シリーズものの番外編らしい。他も読んでみよう。楽しみが増えた(^-^)
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昭和38年東京五輪前年、実在した未解決の連続爆弾魔草加次郎の事件に遭遇したトップ屋の村野は事件を追う中、高校生殺しの嫌疑をかけられる…。最初から最後までこの年代の物語。何故かと思ったら別のシリーズの主人公の義父のスピンオフだそうで、また読まねばならぬ本が増えた。
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2019/5/10読了。桐野夏生初読。なかなか硬派な感じで
ストーリー展開もトップ屋村野の生き様がよく出ていて
良かった。1960年代は、作家と同年代となるとまだまだ
子供の頃だが、モノクロームの映像が想像できる真迫感がありのめり込めた。
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昔読んだ記憶はあるものの・・
すっかり忘れていました
村善、かっこいい!
ミロシリーズも読み返したいです
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1964年の東京五輪の前年に起きた実際の事件をモチーフにしたフィクション。迷宮入りの事件をよくもこんなに面白い話に仕上げたものです。ラノベファンや当時の状況を知る由もない読者の興味は惹きづらいかもしれませんが、ケータイのない時代の経験者であれば面白く読めるはず。ま、昭和生まれ向きの話ということですね(笑)。私だって経験はしていない時代のことですが、当時のファッションが目に浮かびそう。
草加次郎による犯行がピタッと止んだことを思えば、本当に犯人は死んだのかもしれない。想像する楽しさを味わえる、圧巻の読み応え。
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以前、ミステリをむさぼるように読んでいた時期に買った一冊。久しぶりに引っ張り出して読んでみた。桐野夏生は他にも何冊か読んでいて、この本よりもOUTの方が(その特異性ゆえに)印象に残っていたが、実際に起こった未解決事件を題材にしつつも、独自の人物像を作り上げ、ストーリーが作られていくプロセスには、共通する人間観察力みたいなものを感じた。一つの事象や言葉などから妄想を広げて、自分だけのキャラクターを作っていく作業って、きっと面白いだろうなぁと思う。