紙の本
菌(微生物)と、我らとの関係を知ったら、イヤな人に「〜菌」なんて言うイジメはしなくなるかも。
2017/01/26 03:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オカメ八目 - この投稿者のレビュー一覧を見る
菌(微生物)と、我らとの関係を知ったら、イヤな人に「〜菌」なんて言うイジメはしなく成るかもしれない。 その位、微生物と我らとは、関係が深い事を示してくれる本。 目には見えず、その存在もなかなか感じ難いが、その微生物が発する「言葉」に耳を傾ければ、我らに、「花粉症」とか「アレルギー」とか、下手すりゃ「自閉症」とか「癌」とかと言う重たいメッセージを厳しく伝えてたりする。 我ら人間を含む動物は、皮膚と腹の中に、植物は自分の根と、その根の周りの土とに、それぞれ「菌」を、それとは気付こうが、気付くまいが「飼って」いる!
本書を読んでいて、かつて庭で「泥遊び」をしてて、木の近くの土を掘った時に嗅いだ、なんとも言えぬ、いい匂いを思い出した。 あれは「根圏」の「菌」の活動によるものだったんだと判った。 「微生物」の活動は実に静かだが、それを知ると、なかなか終わらない、静かなワクワク感のようなものが、染み込んで来る。 どっから読んでも面白い。 それらは、「悪い菌を無くす事」に熱中してる人達には、なかなか判って来ない事のようだ。 「微生物」は一筋縄では、判らない、奥の深い存在だ。 なお、「腸内革命」と言う本も合わせて読むと、異口同音の事を言っている所があって、興味が尽きない。
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関連書を辿ってゆくうちに、腸~細菌~ウイルス~土という流れになったわけだが意外なほど知的刺戟(しげき)に満ちている。
https://sessendo.blogspot.com/2020/06/blog-post_14.html
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思い切った邦題だが、原題は"The Hidden Half of Nature- - - The Microbial Roots of Life and Health"。「自然の隠された裏側。微生物が担う生命と健康の根幹」といったあたりか。
土にも生物にも元来、多くの微生物が住み着き、「共同体」としてバランスを取りながら存在してきたのに、近年、前者は抗生物質や食習慣、後者は化学肥料や単一作物の連続栽培などで、微生物叢が破壊され、あるいは単純化されてきている。現代病の頻発や収穫量の減少はそこから来ているのではないかというのが全体としての趣旨である。
これにプラスして、微生物学の歴史も記載される。
微生物学は専門外である学者夫妻が、専門用語や専門的すぎる言い回しを排して、わかりやすく解説するというのがミソで、読みやすく、興味深い読み物となっている。
執筆のきっかけは妻がガンになったこと。
宣告後、自らの食生活を見直し、また趣味の庭いじりに奮闘する中で、世界の中で微生物が果たす役割の大きさに気付いていく。
幸いにも治療は功を奏し、著者らの食生活も改善されて、夫は減量にも成功したようである。
治療や食事、園芸を通し、現代社会に考察を加える間に、レーウェンフックから始まる、微生物学の発展史があり、これがなかなかおもしろい。コッホとパスツールが実はあまり仲良くなかったとか、レーウェンフックの小さな珍しい生き物を見るためにロシア大帝やイングランド女王もデルフトを訪れたなど、小ネタも適度に混ぜ込まれている。糞便移植療法などの新しい話もあり、人と微生物との関わりをざっくり俯瞰するにはよさそうだ。
肝は、「土」も「内臓」も、実は複雑であるのに、過度に単純化されてしまったことで、さまざまな不具合が表出しているという問題提起である。
化学肥料も抗生物質も登場したときには、世紀の発明・発見だった。これさえあれば、安価に健康で豊かな暮らしが手に入ると思われた。
だがそれは目に見えない複雑さを切り捨て、バックグラウンドを痩せ衰えさせることにつながっていった。このあたり、多分に微生物が培養できるものばかりでなく、そして人は培養できるものにばかり目を奪われて、見えないものになかなか気が付かなかったことが関連している。
主張としては、非常にわかりやすく、説得力があるのだが、一面、ガンを初めとする現代病を避けるために推奨される食生活というあたりは、ちょっと根拠が薄いようにも思われる。いずれにしろ、アメリカ流の大容量のコーヒーと甘いスコーン、肉をがっつり、野菜はちょっぴりという食事はよいとは思わないし、スローフードもよいのではあろうが、精製糖や精製炭水化物が即悪というのもいささかヒステリックで短絡的に聞こえる。
野菜をたっぷり食べて、食物繊維を取り、ふすま入りの穀物を食べるのは悪くはないのだろうけど、それで直ちに現代病が予防できるかというと個人的には少々疑問だ。
厚さもそれなりにあるので、一見、取っつきにくい本に見えそうだが、いろいろ考えさせてなかなかの掘り出し物であった。
*学名の表記で1つ。ラクトバキラス(=Lactobacillus?)、バキラス(=Bacillus?)とい���表記があるが、ちょっと違和感が。ラテン語の原則としてはcをkで読むものらしいが、生物学的には慣用的にバチルスかバシラスを使うと思う。本文では原語が併記されていなかったので、新しい細菌なのかとちょっと驚いたが、文脈的にはバチルスっぽい。
*こぼれ話的におもしろかったのは、種痘で知られるジェンナーがカッコウの託卵の研究もしていたという話。あとはミトコンドリア共生説で論争を巻き起こしたリン・マーギュリスが天文学者のカール・セーガンの最初の妻だったという話か。
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土壌と大腸,その中で大切働きをする微生物に驚き,認識を新たにした.養分や栄養を与えるだけでは駄目でそれを助ける微生物が重要なのだとよくわかる.医学細菌学などの歴史も含めてとてもよくわかる.そして何よりこれから健康のために何をすべきか何を食べるべきか考えさせられた.
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本を一目見て驚くに違いありません!!
重厚ですぞ、分厚いですぞ!
そして、専門用語も出ますぞ!!
そんな本が伝えてくれることは
菌類がいかに大事かということ。
そして、菌類をなくす、ということが
おっそろしいことを招くかという
警鐘も促しています。
抵抗力がなくなる…
それは体にある大事な菌が
ある種補給されないのも
原因かもしれませんね。
それがない食習慣は
太ります。
(ン?うちはなんでなんだろう
ストレスの線が強いかも)
それとロカボと言われていますが
精製されたそれは
人は分解に適さないようです。
菌類を補充している人は
ある程度耐えうるのですが
そういった人が、率先しては、ありえないですよね。
菌類を消すだけの農業は
いずれ、ひどいつけを見ます。
健康も、栄養もそう。
楽はやっぱりだめみたいですね。
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すごい!おもしろい。
はじめの岩だらけの庭の土づくりのところからどんどん引き込まれた。
人間の消化管と植物の根の働きが似ているって、ひゃー。
自然界の様々な微生物のはたらきの話はちょっとややこしいけど、歴史的に微生物を人間が見つけてどうやって理解してきたかという話は興味深いし、共著者がガンになってしまってから食事を見直す話もなるほど、であった。食生活を変えることは腸内環境を整えること、豊かな土壌を作ることと同じなのだ!
人間も自然の一部だということをあらためて実感した。このコロナの時代に、またちょっと違った目でウイルスとか微生物を捉える視点を得た感じ。
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原題は「The Hidden Half of Nature」。自然の隠された半分、といった意味で、こっちのほうがしっくり来る。目に見えない微生物の働きが、自然、あるいは人間に多大な影響を与えている、という話。
最近、植物と協力して働く菌類や土壌生物、また腸内フローラと呼ばれる微生物群の働きに興味を持っているので、楽しみに読んだ。
著者は夫婦で、ガーデニングを始めた奥さんの話に始まる冒頭の話は調子よく、面白かったのだが、途中だからだんだん発散してきて、顕微鏡の発見まで遡る。面白かったけれど、寄り道が多すぎてポイントがぼやけてしまうという科学系の翻訳書にありがちなパターンで、その点は残念だった。300ページを超える結構厚い本で、半分か1/3の分量でまとめてくれたらなあ。
土壌と菌類の関係は欧米ではそれなりに重視されているらしいが、日本ではなぜかあまり知られておらず、もっと知りたい。
腸内フローラと人間の健康の関係についてはこれからさらに研究が進み、いろいろ新しいことがわかりそうだ。盲腸炎になったから切っちゃうとか、お腹調子悪いから簡単に抗生物質を使うとか、そういうこともこれからは見直されるのかもしれないな、と思いつつ、引き続きこの分野はウォッチしていきたい。
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知らなかった、マイクロバイオームの世界。土も内臓も、いや世界中も、微生物があふれている。私たちは微生物とともに生きている、というより元々微生物の世界に私たちが住まわせてtもらっているだけなのd。マイクロバイオームが安定することが、私たちが健康に生きられること、そのために何をしたらいいかを考えたい。
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世界は、なんとフラクタルにできているんだ!
分厚いけれど飽きさせない導入部、そして研究者の歴史も読み応えあって「へぇー」の連発。
植物の根≒人間の腸
であり、
土壌環境≒腸内環境
なので、肥満もアレルギーも癌もうつ病も、栄養満点の有機的な土壌で作られた野菜を食べれば、ほぼOKということらしい。
植物が健康的に育つには、土が大事。
お茶の出涸らしや動物の糞といった自然のものを土に混ぜば、微生物が勝手に育ててくれる模様。
農薬を使うと植物の根が張りにくく、土の栄養価も激減する。
微生物は、土にも内臓にもいて、よき働きをしてぅれるので、味方にした方がいい。
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ちょうど読み終えたところ、今日の「クローズアップ現代」が「腸内細菌の知られざる力」とあったので、先を越してご紹介(この本が紹介されるかはわかりませんが…)。
植物も動物も如何に微生物との共生が重要かということを教えてくれる書籍です。人間の身体には数キログラムのマイクロバイオーム(≒微生物)が棲んでおり、ヒトの皮膚1平方インチに約50万個もの微生物がいるとのことです(著者はこの面積に住む微生物の数は、「ワイオミング州の人口とほぼ同じ」と表現していますが、自分流には、故郷の「鳥取県の人口とほぼ同じ」と思いました)。
植物は根から微生物が喜ぶ物質を放出し、代わって微生物は必要な養分を根(植物)に供給するそうですが、腸も植物の根と同様の役割を果たしており、「免疫系の約80パーセントは腸、特に大腸に関係している」ということを実証しています。全粒穀物を推奨していますが、精白した穀物は、単純糖質となって身体への吸収が早いのに対して、全粒穀物の場合には糖成分をゆっくりと吸収するので腸(身体)に良いのだという部分はなかなか読ませる内容でした。
プレートの半分を野菜・果物、残り半分の多くを植物性タンパク質、残りを全粒穀物で構成する「ハイジの皿」という図柄も紹介されますが、やおら微生物にとって棲みやすい食事にしようと思わせてくれる1冊です。
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前作の土の文明史と比べると、エッセイ的な要素も多くて、彼ら夫婦の経験談を楽しく読めます。
や病気と治療の歴史、食など、について、科学者的な雰囲気も保ちつつ、エッセイ風に平易な言葉で語っており、一気に読み終えてしまいました。
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ずっと気になってた本がブックカフェで見つけました。
土壌にも人体にも同じ構造と機能があることを発見して
双方の生態系復活を行っている科学者夫婦の理論⇔実践リアルドキュメンタリーです。
自分たちも、都内からだいぶ田舎に引っ越してきて
コンクリートのような畑を少しづつ手を掛けているので
一層共感。
土壌も人体も社会も繋がってる事を実感させる一冊です。
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土を肥沃にしているのは微生物、我々の内臓である大腸を効果的に動かしているのも微生物、こんなところに共通点があるとは気付かなかった。そして植物や動物という目に見えるところに重要なものがあるのではなく、RNAや微生物という目に見えないところに重要なものがあるという考え方は”星の王子さま”からも教わった。非常に知的好奇心のそそられる宝物のような1冊に巡り合えた気がした。我々の食べているものも精白した糖類は健康のためにも控えよとのこと、細菌は有益、16SrRNAはリボソームを作るのに必要、全ての植物にはマイクロバイオーム、根、葉、芽、果実、種子を覆う微生物の集合体である、SCFA(酢酸、酪酸、プロピオン酸)には薬効ある、微生物の凄さを再度感じてみたいと思った。
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根圏と大腸という、これまで省みられることの少なかった「世界の隠れた半分」における、驚くほど精巧なフィードバックループ。本書は両者における微生物たちの役割に光を当てるとともに、利便性と快適性を重視するあまりこの豊潤な小宇宙を軽視してきた現代人の生活に警鐘を鳴らす。地質学者と環境計画学者の夫婦の共著だが、それぞれのアネクドーツが生化学という専門外領域への関心を呼び覚まし、本書の執筆に繋がったというのが面白い。
本書は微生物の発見の歴史や、進化の過程における「シンビオジェネシス(共生)」の解説を経たのち、人間の農作物への関与の歴史の詳述に入る。モンゴメリーは、植物の生長に必要な窒素・カリウム・リンの供給を重視する「最小律」に過度に傾斜してきた19世紀以降の欧米農学を批判し、自身の庭づくりの体験から、サー・アルバート・ハワードが提唱した、化学成分に加え細菌類と植物の相互作用である「肥沃度」を重視すべきと説く。
ここで紹介されるのが農作物と土中微生物の共生により形作られる「根圏」。微生物は作物の根が化学成分を吸収しやすくするタンパク質やホルモン等を提供し、見返りに農作物は炭素やフィトケミカルを分泌し有益な微生物を呼び寄せる。殺虫剤の多用はこのような共生関係を破壊し、結果的に植物の抵抗力を損なっていると警告する。
ここまでが本書のいわばA面。盤面をひっくり返してB面に針を落とすと、共著者のもう片方であるA・ビクレー自身のガン罹患体験が語られる。慢性的な炎症がDNAコピーミスを惹起し、ガンの遠因となることを確認した後、GALT(消化管を取り巻く免疫組織)における腸内細菌・セグメント細菌が、免疫抑制/促進のバランスをとる役割を果たしていることが紹介される。もちろんここでの記述は「根圏」におけるのと同様、人体とこれらの非病原性細菌を含むマイクロバイオームの共生(commensalism)にフォーカスが当てられたものとのなっている。
ここから感染症の原因としての微生物に人間がいかに対処してきたが語られる。微生物を一掃することで感染症が撲滅できるというパスツールの信念、治療とは病原菌の特定であり、培養できない微生物は研究の埒外としたコッホのスタンスは、人類への重要な科学的貢献ではあったが、副作用として「理解するより撲滅せよ」という短絡を生み、その後の抗生物質の多用に繋がったことが指摘される。
そして、リポ多糖(内毒素)を産生する細菌を優遇し、炎症増、代謝低下を惹起する欧米的食生活へのカウンターとして、中国の細菌学者趙立平により提唱されたWTP(全粒・伝統的食材・プレバイオティクス)が紹介される。全粒穀物などの多糖類(食物繊維・セルロース等)はその消化しにくさのため小腸で吸収されるのではなく大腸発酵細菌により発酵され、SCFA(短鎖脂肪酸…酢酪酸・酢酸・プロピオン酸)という人体に有益な物質に変換されるというのだ。欧米系の、特に精白された穀物中心の食事が、早すぎる消化により糖分が急速に吸収されるため、余分な糖分が脂肪として蓄積され、内毒素の存在の下ではIL-6の放出により炎症を誘発してしまうのとは対照的だ。有益な生きた細菌をそのまま取り込む「プロバイオティクス」とともに、慢性的炎症を抑え免疫系を調整する細菌との共生を前提とした食生活への転換が提唱されている。
現在流通している食品の中には、本書で紹介されているアイデアが反映されたものがすでにある。それはもちろん一部の動きでしかなく、未だに農業の現場では消毒薬が爆撃のように使用されているし、畜産や医療においても抗生物質が使用されなくなることは当面ないだろう。しかし結局のところ、地表の上と下は、人体の表と裏をひっくり返したのと相似形なのだ。そう考えてみると、「世界の隠された半分」にいるのは微生物などではなく、通常彼らの宿主とされている我々人間の側なのではないかと思えてくる。人間は、豊潤な生物世界の片隅での部分最適にとらわれるあまり、ロングランでの有益性に対してブラインドでありすぎたということなのだろう。
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この本のことは、数年前から知っていた。
分厚さと値段の高さから敬遠してたが、
今、感染症が広がっている、
このタイミングで読んで良かったと
思える一冊。
家庭菜園的な畑をやっていて、
自然栽培風にやりたくて苦戦していた理由と
土の中の微生物と野菜の共生、人間と常在菌や
腸内微生物の関係が同じような働き方を
している不思議感。
個人的に畑での野菜のお世話で
元気になれるのは、自然の癒やし効果かと
思っていた。
でも、微生物も関係していたのだとわかった。
畑の土の中の微生物は、私にとっても常在菌として
良い方向に働いているのかもしれない。
慣行農法で育った野菜と、
有機的な資材を投入して、
微生物が野菜と矯正して育った野菜では、
微量栄養素の含有量があきらかに違うとのこと。
近年、メンタル疾患の一部やアレルギーが急増してるのは、
微量栄養素に含まれるミネラル分が
野菜に含まれにくくなったからではないかということも
具体的な研究結果に基づいて書いてあった。
めったに★5つはつけない私が5つけた理由は、
巻末にキーワード解説と参考文献と索引があったから。
これが無ければ、★は4つかな?